【BL】魔導王と悪魔の支配者 作:腐エロのひと。
「……ぁっ……モモンガ、さんっ……」
自分の上に覆い被さっている、
「……ウルベルト、さん……。ずっと、俺の傍に……」
そう言う彼の表情は、悲しげな物で。苦しそうな声は、こんな行為をしている時の物とは思えなかった。
「は、い……俺は、ずっと、貴方の傍に居ますから……ぁ、ぁっ……」
モモンガさんの尖った指先が、俺の先端の小さな穴をこじ開けるようにして犯してゆく。その強い刺激に、自然と腰が跳ねた。
元々は、俺たちはこんな歪んだ関係じゃなかったのだ。それが変わったのは、転移して一ヶ月が過ぎた頃だっただろうか?俺とモモンガさん、たった二人きりで拠点ごと飛ばされて。モモンガさんは持ち前の真面目さで魔王ロールで必死にNPC達を纏め上げた。そして、俺はモモンガさんの補佐をしていた。二人きりの時にしか、素を出せなくなったモモンガさん。彼の素は、心優しい控えめな人で。あまりにも魔王とはかけ離れていたからか、徐々にストレスが溜まっていたんだと思う。俺の種族は悪魔だし、元来そんなに思い詰める方では無かったから、モモンガさんがこんなに追い詰められていたなんて、その時まで気付かなかったのだ。……俺は、悪魔としての第二の人生を楽しんでいたから。デミウルゴスの提案する、悪魔らしい遊戯の数々に心をときめかせ……時には一緒に遊んだりもしていたのだから。……モモンガさんには、そんな気晴らしすら無かったというのに。俺と違って、飲食も睡眠も出来ない彼。その彼が長い夜をどう過ごしていたかなんて、その時の俺には想像も出来なかったのだ。
「……モモンガさん……?」
頬に触れる、冷たい感触で目が覚めた。目を開けると、やっぱりそこに居たのはモモンガさんで。俺の寝室に入るには
「どうしたんですか?こんな夜中に。何か非常事態でも?」
俺の頬に触れたままの、冷たい掌の上に自分の手を重ねる。俺の手は姿形こそはまだ人間のそれだが、黒い爪に刻まれた金の魔法陣からは魔力が感じられ、普通の人間では無い事を明確に示している。
「あぁ……ウルベルトさんの体は、すごく温かいですね。触れていると、ホッとします」
俺の問いに答えないまま、そう言うモモンガさんに違和感があった。
「そうですね、俺は黒山羊の頭を持つ悪魔ですから……頬の辺りは毛に覆われていますし、保温性も高いんでしょうね」
とりあえず、無難にそう返すと、モモンガさんの眼窩の炎がゆらり、と揺らめいたのがわかる。その動きが何を現しているのか、今の俺では判断が付かなかった。そのままジッと無言で彼を見上げると、苦しげな声でモモンガさんが喋る。
「……ウルベルトさんは、俺から離れたりしないですよね?」
「モモンガさん?どうしたんですか、急に」
彼の真意がわからなくて。俺はそう問い返していた。
「ウルベルトさんが、時々デミウルゴスと外に遊びに行っているのは知っています。影の悪魔からの報告で、その時のウルベルトさんがすごく楽しそうだ、っていうのも知ってます」
「えぇ、外は楽しいですよ。玩具が沢山居ますから。モモンガさんが俺と同じようにそれを楽しいと思うのなら、一緒に遊びたいくらいです」
俺がそう返すと、モモンガさんがピクリ、と小さく反応した。
「残念ですけれど、それは難しいですね。血や肉、悲鳴にはどうにも感情が動きません。ほら、俺はアンデッドになっていますし……感情の抑制効果も働いてしまいますからね。ウルベルトさんが愉しいと感じる物を俺も愉しめないのは悲しいですけれど」
「そうですか。では、今度モモンガさんも愉しめるような事をデミウルゴスと一緒に考えてみますね。デミウルゴスは本当にモモンガさんを敬愛していますから」
先程身動ぎをしてから全然動かなくなったモモンガさんを怪訝に思いつつも、俺はモモンガさんを只ひたすら見つめ続ける。表情の動かない骸骨の彼の、感情の変化を見落とさないように、と。
「……敬愛、ですか」
「えぇ。ナザリックの全ては、モモンガさんを敬愛していますよ。何にも代えがたい、ナザリックの主だと」
微妙に感じた、不穏な空気。それが何なのか、俺にはわからない。……それが、酷く恐ろしかった。
「ウルベルトさんは、俺の事どう思ってるんですか?」
「好きですよ。大切な友人だと思っています。……その、改めて言うと照れますけど。モモンガさんは違うんですか?」
間髪入れずそう答えると、空気が震えた。……どうやら、俺は回答を間違えたようだった。俺とモモンガさんの周りの空気だけが、数度温度を下げたような気がする。
「……俺は、ウルベルトさんをこの世の何よりも愛していますよ。あなたを失ってしまったら、俺自身、壊れてしまうんじゃないか……そう思うくらいに」
「モモンガ、さん……?」
「俺には、もうあなたしか居ないんです。あなただけが、俺の全てなんです。なのに、あなたは……」
眼窩の炎が大きくなって、激しく揺らめいたのを見た。この時俺は、漸くモモンガさんが追い詰められていた事に気付いたのだ。……全ては、遅すぎたのだけど。彼の手が、俺の頬から首に移動して……喉仏を潰すような位置で止まる。このまま力を入れられたら、確実に息が止まる。そんな場所で。
「モモンガさん?俺、貴方に何かしてしまいましたか?ハッキリ言って貰わないと、俺、解りませんから……」
首に掛けられたままの手に、そっと自分の手を添えてそう問えば。悲痛な声が、彼の動かない口から漏れた。
「ウルベルトさんは、俺が居なくても平気に見えます。俺にはあなたしか居ないのに、あなたは俺が居なくても変わらない。それが、酷く不快で……怖いんです」
「モモンガさん、それは誤解です。俺だって、貴方の事を大切に思っていますし……貴方の居ない世界なんて、想像も出来ません」
そう答えるが、モモンガさんはそれでは納得してくれないようだ。俺の首に掛かった手の力が、ほんの少し増したのが解った。
「……ウルベルトさんは、ナザリックが無くても生きていけるでしょう。でも、俺はダメなんです。皆で創ったこのナザリックと、仲間であるあなたが居ないと。もしあなたに何かあったら、俺はどんな手段を使ってもあなたを取り戻すし……もしあなたが俺より先に死んだとしても、絶対に復活させるでしょう」
「モモンガさん……」
怖いくらいの、執着。それは、彼がアンデッドになってしまったが故の、悲しい変化。彼の心は、きっとここへ転移した時に固まってしまったのだろう。ここ数年間、誰も戻ってこないギルドホーム。そこで、ずっと独りで待ち続けていた孤独なギルドマスター。その妄念が、強い執着心となって彼の魂に焼き付けられてしまったのだろう。だから、俺がずっと居ても不安が消えない。昼間は仕事があるから、それを忘れる事が出来るのだろう。でも、眠らない彼には夜は長くて……きっと、自然と妄念が甦ってしまうのだろう。そう考えると、一ヶ月もよくモモンガさんは耐えたものだ、と言えよう。
「俺が、こっちに来て嘘が吐けなくなったのは知っているでしょう?俺が貴方を大切に思っているのも、ずっとナザリックに居るというのも本当ですよ。なのに、何が不安なんですか……?」
そう問うと、モモンガさんは俺を真っ直ぐに見つめながら小さく呟いた。
「……俺にも、もうわからないんです。ただ、漠然とした不安だけがあって。ウルベルトさんを手放しちゃいけないって、変な強迫観念があって。毎日、ウルベルトさんには会ってるのに。それなのに、それでも不安が消えないんです……」
きっと、彼に肉体があったなら、その顔は涙で濡れていたに違いない。俺は右手をモモンガさんの頬に伸ばし、そっと触れる。やはり、体温の無い冷たい躯だ。滑らかな表面は、指の腹に心地良い感触として認識される。
「ねぇ、モモンガさん。俺にとっても、本当に貴方は大切なんです。その貴方が、そんな悲しい顔をしていたら、俺だって悲しいですよ?どうしたら、貴方はそんな顔をしなくなるんですか……?」
モモンガさんが言っている、俺を『この世の何よりも愛している』という言葉は、恐らくは恋情ではなく友愛なのだろう。だが、俺は彼の言う愛が理解出来ない。悪魔となったからなのか、元々愛なんて信じていなかったからなのか……それは、今となっては判断が付かないが。そのせいもあって、俺は彼に愛しているとは言えないのだ。嘘を吐くことが出来ない、という種族特性のせいで。ひょっとしたら、それも彼が不安に思ってしまう一因なのかもしれなかった。
俺の言葉に、モモンガさんは戸惑ったように俺を見る。
「すみません……俺にも、どうしたら良いのかは……」
首に掛けられていた手は、いつの間にか外されていて。俺は内心安堵する。
「そうですね……では、モモンガさん。俺は今からリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン以外の指輪を、全て外します。耐性も全部切ります。……俺の全てを、モモンガさんに預けます。貴方がそれでも俺を信じられないとか、不安に思うのであれば……モモンガさんはスキルを使えば良いんですよ。俺、貴方の絶望のオーラレベルⅤを使われたら即死しますし」
俺はそう言いながら、両手に填まっていた指輪を外し次々とアイテムボックスにしまってゆく。
「えっ、ウルベルトさん、何言って……!」
動揺しているモモンガさんを余所に、俺はリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン以外の全ての指輪を外し終わる。元々寝ているときは全裸だし、無防備な俺は彼のスキルに対し何の抵抗力も持ってはいないのだ。
「……ほら。モモンガさん、これで俺の命は貴方の物ですよ?俺を生かすも殺すも貴方次第です。これで少しは、貴方の不安は消えますか……?」
沈静化をされている筈なのに、まだ動揺が見えるモモンガさんを見上げ、微笑みながらそう言うと、モモンガさんは小さく頭を振った。
「違うんです……ウルベルトさん、違うんです。俺、あなたの命が欲しい訳じゃ無いんです……!俺が欲しいのは……」
「っ……モモンガ、さん……?」
まるで、泣いているような声でそう叫ぶと、モモンガさんは俺の事を抱き締める。薄い上掛け越しに、モモンガさんの硬い骨の躯が俺に触れているのが解る。上から抱き締められているから、端から見たら俺がモモンガさんに押し倒されているように見えるんじゃ無いだろうか?
「俺が欲しいのは、ウルベルトさんの全部です。命じゃ、無いんです……」
「同じ事じゃないんですか?命を握れば、全てを手に入れたも同然だと思うんですけど……」
モモンガさんが、俺に求めている物が、理解出来ない。俺はしゃくり上げるようにして俺に抱きついているモモンガさんの背に手を回すと、幼子を宥めるように軽く叩いてやる。
「全然、違いますよ……命なんか貰っても、心は縛れないじゃないですか……ウルベルトさんは、俺の事見てくれないじゃないですか……」
「……モモンガさんは、俺の心が欲しいんですか?」
絞り出すようにそう言われて。俺は漸くモモンガさんが本当に欲していた物を知った。でも、心、って。俺はどうやってモモンガさんに差し出したら良いんだろうか……?
「欲しいですよ。俺はあなたを愛しているんです。あなたの全部が欲しいんです」
「……心なんて、今まで誰にも捧げたことはないので……どうしたらモモンガさんが不安に思わなくなるのか、解らないんですけど……」
真摯にそう訴えるモモンガさんに、応えられないこの身が辛い。大切な友人であるモモンガさんが、こんな風に悲しんだりしているのは見たくないというのに。小さく震える白い躯をそっと撫でると、モモンガさんは眼窩の炎を微かに揺らしながら俺を見つめた。
「……なら、まだウルベルトさんが誰にも見せていない姿を見せて下さい、俺だけに。絶対に、俺以外には見せない姿を」
そう言って、モモンガさんは俺に掛かっていた上掛けを捲り……そっと、心臓の辺りに触れた。
「裸なら……デミウルゴスも見ていますよ?俺の毛皮を洗ってくれたこともありますし」
小首を傾げながらそう言うと、モモンガさんは小さく笑う。
「違いますよ。……ねぇ、ウルベルトさん。ウルベルトさんはこの姿になってから誰かに触れられたことはありますか……?」
「……セックス、という意味でなら無いですよ。それよりも、悪魔として遊ぶのが愉しかったので……自分でしたりもしてませんでしたね」
モモンガさんの言葉に、何を求められているのかを察してしまう。一般的に考えると、友人とする行為では無かったと思うんだが……今の俺は悪魔で、そんなモラルとは別の次元に生きている。大切なモモンガさんが望むのなら、其れ位何でもないことだ。
「ウルベルトさん。俺が、ウルベルトさんに触れるのを許してくれますか……?」
怖ず怖ずとそう訊かれて。俺は思わず笑ってしまった。あぁ、モモンガさんにはまだモラルが残っているのだ。そう思うと、酷く愉しくて。
「構いませんよ。あまり肉体を損壊するような事は嫌ですけど……そうでないのなら、お好きに触って下さって結構ですよ。他ならぬモモンガさんのお願いですからね」
そう答えると、モモンガさんの眼窩の炎が一瞬小さくなって……微かに、揺らいだ。
「じゃあ、ウルベルトさん。今からすることは俺とウルベルトさんだけの秘密ですよ?……俺以外の人には、させたらダメですからね?」
「えぇ、約束しますよ。
俺がそう答えると、モモンガさんが小さく笑ったような気がした。
その日は、モモンガさんが俺に抱きついて眠るだけだった。だが、回を重ねるごとに接触が増えていき……とうとう、俺はモモンガさんに抱かれることになった。とは言っても、モモンガさんには既に生殖器は無く。その指で触れられるだけだったのだけど。
あの日から、毎晩モモンガさんはやって来て俺に触れていった。流石に連日の事だったから、警護の影の悪魔経由でデミウルゴスにも知られていたようだ。賢い俺の
「何時になったら、モモンガさんは落ち着くんだろうな……」
思わず、溜息が出た。もう、俺に差し出せる物は何も無い。それなのに、モモンガさんはまだ不安だと言うのだ。その腕で俺を抱きながら。
悪魔となったこの身からしたら、モモンガさんと躯を重ねることには何ら抵抗は無い。モモンガさんは俺と同格と言う事もあって、強さを重視する悪魔としても申し分の無い相手だからだ。お互い同性で種族も違うが、そんな事を一々悪魔は気にしない。……ただ、一つだけ気がかりなのが、モモンガさんの俺への執着が前よりも強くなったように感じる事くらいで。俺を抱いているときも、酷く辛そうで。どうやったら、モモンガさんが昔みたいに笑ってくれるのかが、俺には解らないのだ。
今日もまた、夜が来る。そして、また繰り返されるのだ。モモンガさんの確認行為が。俺が何度此所に居る、と言っても辛そうな顔のままのモモンガさん。もう、そんな彼を見たくない。だが、他に解決策も思いつかず。俺はズルズルとモモンガさんと関係を続けている。……きっと、これからも続けてしまうのだろう。いつか彼に笑顔が戻るように……と願いながら。
sideモモンガ
たった一人、残ってくれたウルベルトさん。ここではNPCが命を持って自分の考えで動いたり喋ったりしているけれど……ちゃんと生きている人間は、ウルベルトさんだけだ。……もう、異形化してしまったから、正しくは人間、ではないのだけど。
もし、俺が独りでここに飛んでしまったら、相当辛かったと思う。だけど、俺にはウルベルトさんが居てくれて。ずっと、俺とナザリックで暮らしてくれるんだと……そう、思っていた。
だけど、ウルベルトさんは外の世界を楽しんでいた。その事は、別に構わない。未知の世界が楽しいのは、当たり前だからだ。でも……俺は、気付いてしまったのだ。あまりにも活き活きと外で遊ぶ彼を見て。……彼が、外の世界に出て行ってしまう可能性に。気付いてしまったら、楽しそうに外に出掛けていく彼を今までのように見守る事なんて出来なかった。今日は帰ってきてくれた。でも次は……?
一度気付いてしまったら、不穏なその考えが頭から離れなくなった。……アンデッドは睡眠が出来ない、というのも悪く働いてしまったと思う。他の者がブラック勤務にならないように、と設けた夜間の休息時間。半日ほどのそれは、飲食も不要な俺からしたら長過ぎる時間で。ずっとその間は、ウルベルトさんがどこかに行ってしまったらどうしよう、ってそんな事ばかり考えていて。……ある日、その感情が爆発してしまった。
まるでウルベルトさんの寝込みを襲うように、深夜にウルベルトさんの寝室に向かって。俺にとって、ウルベルトさんが何よりも大切だと告げていた。ウルベルトさんにとって、俺は友達の一人であるという残酷な事実を突きつけられて、かなりショックは受けたけれど。
……俺は、ウルベルトさんの一番になりたいのに。俺とウルベルトさん、二人しかこのギルドに居ないのに。それなのに、まだ俺は彼の一番になれないんだろうか……?
まだ誰も触れたことの無いウルベルトさんの体に触れる許可は貰えた。その日から毎晩ウルベルトさんの寝室に行って、ウルベルトさんに触れている。友人にするにしてはかなり性的な触れ合いをしているけれど、ウルベルトさんは俺を拒まない。……そして、触れる前も後も、ウルベルトさんは変わらない。彼は、一貫して俺を友人として扱うのだ。
悪魔の彼と約束と言う名の契約を交わしたから、ウルベルトさんは俺以外に触れられる事は無いだろうし、ナザリックからも出ていかないだろう。それは、確定した。でも、俺が心底欲しているウルベルトさんの心だけは、未だに手に入っていない。
「……ウルベルトさん、俺はいつまであなたの『友人』のままなんでしょうね……?」
思わず、そう呟いていた。最初に、愛していると告げたのに。体だって、重ねているのに。ウルベルトさんは変わらない。
今日もまた、夜が来る。いつになったら、ウルベルトさんは俺の想いに応えてくれるんだろう?そう思いながら、俺はまた彼を抱く。