※この作品はR-18です。

【BL】魔導王と悪魔の支配者   作:腐エロのひと。

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最終話です。後日談を書くかどうかは未定です。(ハーメルンには改ページ機能がないので、改ページ有を読みたい方はお手数ですがPixivの方をご覧下さい)
※モモンガさんこの後ちゃんと戻ってデフォルト骨です。


万を超えて、無限に至る【モモウル】

sideウルベルト

 

 モモンガさんが冒険者モモンを引退させる、と言ってから二年が経過した。そして、俺は約束通りモモンガさんを人化させ……無事、式典は終わった。

 モモンの息子はアモンという名になった。……アモン。それは、彼方(あちら)の世界では悪魔の名として知られていたが……こちらでは、そうではないようで。母親の名前が入っているのだろう、としか思われていなかった。

「……まぁ、騒がれるよりは良いけどな。母親の名前か……」

 冒険者として俺が使おうと思った名前は、アレン。もし今後俺が人化して遊ぶとしたら、ちょっとばかり微妙な気持ちになるに違いない。

「ウルベルトさん、お疲れ様でした。やっぱりウルベルトさんの魔法は凄いですね!フールーダも是非教わりたいって言ってましたよ!」

 アモンとなったモモンガさんは、二十代の青年の姿の人間になっている。ほんの少し幼さを感じるその容貌は、彼の人間だった頃の容姿を色濃く残している。だけど、元々の骨格のせいかモモンのようなガッシリとした体格の人間種になっている。そのアンバランスさが、可愛いと思ってしまった。

「フールーダも元気ですよね。もう三百歳くらいでしたっけ?そろそろアンデッドにしてあげた方が良いんじゃないですか?アイツ、別に人間種という種族には未練は無いでしょうし。古代図書館(アッシュールバニパル)の死の支配者(オーバーロード)みたいにしてやったら、嬉々としてずっと魔法の研究をしてくれるでしょうに」

「そうですね。転職アイテムはまだありますし、始原の魔法とユグドラシルの位階魔法、こちらの位階魔法の解明にはああいった研究肌の人材が貴重ですものね」

 そんな話をしながらナザリックに転移して、自然と俺の部屋に入る。それが当たり前であるかのように。

「人化の時間、まだ残ってますけど窮屈なら戻せますよ?どうします?」

 鎧を脱いだアモンにそう言うと、アモンは小さく頭を振る。……咄嗟の時に間違えないようにアモン、と脳内で呼んでみたが、何だか違和感が酷い。

「いえ、暫くはこのままで。久しぶりの肉体ですし、この感覚を楽しみたいんです。……<上級変身(グレーター・ポリモーフ)> って時間どれくらい大丈夫でしたっけ?」

 そう問われて、俺は少し考えてから答える。

「えーっと……レベル百の術者が掛けて通常は百分間。で、俺は悪魔なのでその種族特性で倍になるから二百分、更に職業レベルで悪魔の支配者(オルクス)取ってますから更に倍の四百分ですかね。……あ、今回は人型の骨からの人化なので、その加算もあるから……一応、永続効果ですね。まぁ、人間のままだと歳を取ってしまって寿命で死んでしまうので……ちゃんと解除して下さいね?俺、モモンガさんが死んじゃうのは嫌ですから。

 黒の叡智を使ってモモンガさんが習得しても、俺とは種族が違いますし……使えるのは多分百分程度ですね。まぁ、顔見せ程度なら問題無いと思うんですけど」

「えっと……つまり、永続効果だけどずっと人間のままだとその寿命で死ぬ、って認識で合ってますか?」

 首を傾げながらそう訊かれて、俺は頷く。

「で、アモンは結構顔見せの機会はあると思うんですけど……その度に人化してたら、寿命はその度に縮む感じですか?」

 続けてそう訊かれて。俺は緩く首を振る。

「いいえ。元々モモンガさんには寿命はありませんし、一度解除して死の支配者に戻れば問題無いです。ただ、経年の老化を表現しなきゃいけないので……何年かするごとに、人化する際は微調整はしますけどね」

「……そうですか。安心しました。じゃあ、こうしてウルベルトさんに触れるときはこの姿でも問題無い訳ですね?」

「……え?」

 モモンガさんのその言葉に、俺は一瞬硬直し……その隙に、ベッドに押し倒されていた。

「この姿なら、ウルベルトさんの全てを俺の物に出来ますね。……ずっと、ウルベルトさんの中を味わいたいって思ってたんです」

 そう言うモモンガさんは、欲に滲んだ瞳で俺を見つめていた。骸骨だったときよりも遥かに分かり易い彼の欲情した表情に、俺は焦りを感じる。こんな彼は、知らない。

「モモンガさんっ!待って下さい、駄目です、それだけは……!今のモモンガさん、人間でしょう?俺と人間が交わったら……!」

「交わったら、何です?昔から悪魔が人間を誘惑する話なんて山程あるのに……何で、ダメなんですか?」

 モモンガさんは、そう言いながらも俺に触れる手を止めない。モモンガさんに散々慣らされていた躯は、あっという間に彼を受け入れられるように蕩けて。モモンガさんは、猛りきったモノを俺に宛がう。

「そんなの、決まってるじゃないですか!悪魔に魅入られた人間には、破滅しか無いんです!俺が、モモンガさんをそんな目に遭わせたいと思ってるとでも?」

 侵入されないように、とそこに力を込めるが、胸元を指先で摘ままれると、簡単に力が抜けて。その瞬間を狙って、モモンガさんは一気に俺のナカにいきり立ったそれを押し入れた。

「……ぁ……ッ……!!」

 骨の指よりも太いモノが、俺の奥に届く。その快楽に、躯が震えた。悪魔としての俺は、それを嬉々として受け入れてしまう。

「……あぁ……やっぱり、ウルベルトさんのナカは……熱くて、狭くて……俺を欲しがってるみたいに動いてて、すごく、気持ちいいです……」

 恍惚とした声でそう言われて、俺はモモンガさんから逃げようと藻掻くが……奥深くまでモモンガさんのモノに貫かれた俺の躯は、モモンガさんから距離を取ることが出来ない。

「駄目、です……モモンガさん、抜いて……俺から、離れて、下さい……っ!」

 下肢から立ち上ってくる快楽に、意識が揺れる。俺の悪魔としての本能が、この快楽を受け入れろと騒ぐ。だが、モモンガさんをこんな事に巻き込む訳にはいかない。

「いや、ですよ……ようやく……ウルベルトさんを、俺の物にっ、出来たんですから。それに、もう交わってる訳ですし……今抜いても、結果は変わらないでしょう?ウルベルトさんだって、こんなに欲しがってるんですから……ちゃんと、俺を受け入れて下さい」

「あっ、ぁあっ……!モモンガ、さっ……激し、ゃ、駄目……俺っ……!」

 気持ちいい。気持ちいい、気持ちいい……おかしく、なる。血の通った肉が、俺の躯を犯してゆく感覚が、俺の理性を蕩けさせる。躯に、染みてくる。快楽が、魔力が、精気が。きっとこれが、俺が悪魔として生きていく上で必要だった物なのだろう。今まで一度も得たことが無かったそれの味は、あまりにも甘美で……快楽の耐性があっても、理性が簡単に揺らぐ。人間から得るそれは、一度味わったなら忘れることなど出来る筈が無い。全てを吸い尽くして……俺の、力にしたい……。吸い尽くしたら、後は血を、叫びを俺に……。

(……!ヤバイ、ヤバイっ……コレは、ただの人間じゃ無い、モモンガさんだから……殺しちゃ、駄目だ……!力をセーブ、しないと……!)

 躯が勝手に吸収してしまう、モモンガさんの魔力と精気。それを抑えるべく、俺は快楽の方に意識をシフトする。モモンガさんの背に腕を回し引き寄せると、モモンガさんの動きが止まった。

「……モモンガさん……。良いですよ、人間の貴方もちゃんと受け入れますから……今日は、二人で気持ち良くなりましょうか?」

 甘くそう囁いてモモンガさんの頬に触れると、モモンガさんの喉が鳴った。その瞳は、熱く蕩けていて。すっかりと、欲情しきった雄の顔になっていた。アンデッドのモモンガさんが絶対に見せることが無い表情だから、ひどく新鮮で……それでいて、俺の中の何かが満たされるような気がする。征服欲のような、支配欲のような、歪んだ何かが。

「ウルベルトさん……」

 熱く掠れた声が、俺を呼ぶ。まだ俺は一度も彼に魔眼も魅了も使っていないのに、異形の俺に欲情しているモモンガさん。人化すれば、多少は意識も変わるかと思ったけど……それは、全く影響を受けていなかったようだ。

「俺が好きな場所……モモンガさんなら、知ってるでしょう?そこに、モモンガさんを下さい……ほら、早く……?」

「……ッ……!」

 太く逞しいモノを何度も締め付けながらそう誘うと、モモンガさんは俺の脚を抱え上げて、荒々しく腰を動かす。その動きは、今までの彼からは想像も出来ない物で。自然、口元が緩んだ。肉と肉がぶつかり合う音が、寝室内に響く。モモンガさんの先走りと俺の体液が混じり合い、濡れた音を立てる。その全てが、俺を愉しませて。俺はモモンガさんに抱きつきながら、ただひたすらに甘く鳴き続ける。

「ぁ、ぁ……っ……!モモ、ンガ……さ、ぁんッ……!」

 愚直な抽挿すら、この体は快楽を得てしまう。実際のモモンガさんには存在し得ない肉の体が、俺の奥深くまで犯してゆく。モモンガさんの骨の指程は長くは無いが、人間のモノとしてはかなり太く大きなソレが、焦らすように浅い場所を何度も擦り上げて。指でシていたのと同じ様に、俺の快楽を引き出してゆく。易々と最奥に届くソレに、素直に溺れる。それ自身の纏う魔力が、俺の体の中をジワジワと浸食して、内から全てモモンガさんに染められてゆくようだった。

「ん、っ……ぁ、あ……!」

 魔力に気を取られるとそのまま吸い尽くしてしまいそうだったので、モモンガさんの背中に腕を回してしがみつき、ナカの快楽に集中する。甘く疼くナカの感覚に、腰の奥から絶え間ない快楽が訪れる。猛るモモンガさんのモノは、俺の締め付けに逆らうように引き抜かれたかと思うとすぐにまた奥を穿つ。その激しい動きに、躯が小さく跳ねた。

「ウル、ベルト、さんっ……!ウルベルトさんっ……!!」

「ぁっ……!」

 腰を抱え上げられ、小刻みに奥を突かれた。その刺激に、溺れてゆく。切羽詰まった声が、モモンガさんの余裕の無さを如実に表していた。背に回した指先に、自然と力が入った。肉体のある今のモモンガさんの背中は、多分俺の爪で傷を付けられているんだろう。爪先に、温かく濡れた感覚がある。微かに香る、モモンガさんの血の濃密な匂い。

「モモンガ、さん……っ……」

 ギュッとしがみつき、モモンガさんの腰に脚を回してそう囁くと、今まで以上に動きが激しくなって。最奥まで貫かれたと思ったら、次の瞬間温かな魔力の塊をナカに感じた。

 

 

 

 

 

 

 

sideモモンガ(Ver.アモン)

 

 甘く掠れた声でウルベルトさんが俺の名前を呼んで、必死にしがみついて来る。そのあまりの可愛らしさに耐えきれず、そのまま一番奥にまで人化によって復活した俺自身を突き入れて……ウルベルトさんの柔らかくて温かなナカに、全てを注ぎ込む。ウルベルトさんのナカは、それを悦んででもいるかのように俺を奥に招き入れる動きを続ける。その心地よさに逆らわず、まだ萎えていないモノの先端を奥に押しつけながらウルベルトさんを抱き締めると、小さく開かれた口から、甘い吐息混じりの声がひっきりなしに漏れた。

(……ウルベルトさん、こんなに可愛くて無防備なのに……。それなのに、俺の事友達だって言うんだよな……。いつまで俺と友人でいるつもりなんだろう……?あの時から、もう何十年も経ってるのに)

 所謂"賢者タイム"のお陰で、頭は妙にクリアだけどウルベルトさんへの想いは変わらないままだ。人間に変化した肉体でこうしてウルベルトさんと抱き合って、それでも尚ウルベルトさんが誰よりも好きで、愛しているって気持ちはそのままだ。久しぶりに得た肉体の感覚を離し難くて、俺はウルベルトさんから抜かないまま彼を強く抱き締める。

「だ、め……。ももんがさ、はな、して……」

 潤んだ瞳で俺を見つめながら、ウルベルトさんはそんな事を言って俺から離れようとする。……まだ、ナカの俺を嬉しそうに咥え込んでるのに。そんないやらしい動きをされたら、また反応してしまいそうになる。少なくともこの肉体は、アラサーのまだまだ働き盛りの男の物なのだから。

「どうしてですか?俺は、ずっとウルベルトさんの事を愛してるって伝えてますよね?愛しい人とこうしてようやくひとつになれたのに……そんなにすぐ離れたりなんて出来ませんよ」

 小さく笑いながらそう言えば、ウルベルトさんはその白い肌をうっすらと朱に染めたまま微かに体を震わせている。声は、まだ甘いままだ。こんなに余裕の無い彼は初めて見る。

「だ、って……おれ、ももんがさん、を、うしないたく、ない、から……ッ……!」

 俺が少し身動いだだけで、ウルベルトさんの腰は俺を誘うように淫らに動く。それはもっと欲しい、と俺にお強請りするときの物だ。今まで何度も見てきた俺が、間違えようも無い。

「俺を、失いたく無い?何でコレがその発言に繋がるんですか?悪魔であるウルベルトさんを抱いても、今の俺全然平気ですよ?そんなに心配だったら、<生命の精髄(ライフ・エッセンス)>と<魔力の精髄(マナ・エッセンス)>でも使ってみたらどうですか?この姿になっていても、俺は俺ですし……特に戦士化もしていませんから、レベルも最大MPも最大HPも変わってない筈ですよ?多少ウルベルトさんに持って行かれたような気もしますけど、自然回復もありますし……丸一日ウルベルトさんを抱いていても、問題は無い筈ですよ?」

 細い体を抱き締めたまま、そっと腰を撫でて。敏感な尻尾の付け根を軽く叩くと、途端にナカが強く締まる。

「あッ!ちょ、モモンガさん……!何、考えて……」

「ウルベルトさんの事だけを、考えてます。今も、昔も。……覚えてます?俺がウルベルトさんとこうなったきっかけ」

 そう訊けば、ウルベルトさんは俺の腕に抱かれたまま、小さな声で答えてくれる。

「……そりゃ、覚えてますよ。モモンガさん普通に異性愛者なのに、何で俺の事愛してるなんて言うんだろうな、ってずっと思ってましたし。友人に愛してる、なんて。誤解されちゃう発言なのに」

 ほんの少し困ったようにそう言われて。俺は大きく溜息を吐く。

「ねぇ、ウルベルトさん」

「はい?」

「俺、あなたと友人以上になりたいんですよ?ちゃんと分かってます?俺の言う愛してるって、ウルベルトさんと恋人になりたい、永遠に一緒にいたい、って意味ですよ?ぶっちゃけ、もう何十年もプロポーズしてた訳なんですけど。何で、気付いてくれないんですか?心の機微に聡い悪魔……しかも悪魔の支配者(オルクス)のくせに」

 そう言いながら腰を揺らせば、ウルベルトさんの瞳がより甘く潤む。

「んんッ!だ、って……ぁ!」

「……だって?」

「モモンガさん、そんな素振り、見せなかった、ぁ!動くの、やめっ……」

 いつもよりも冷静じゃないウルベルトさんを見て、俺は沈静化も効いていないのに妙に落ち着いてしまう。

「見せてましたよ。ウルベルトさんが、変な勘違いしたまま俺を見てたから気付かなかっただけでしょう?……本当は、もっと待ってあげるつもりだったんです。でも、今を逃したらウルベルトさん、一生気付いてくれなさそうでしたからね」

 そう言って、薄くて大きな耳を軽く噛む。

「ぁ、だから、それ、止めぇ……!」

 俺にしがみつく細い腕の力が、強くなる。そして、俺を締め付ける力も。

「俺は、ちゃんと言いましたよ。あなたが欲しいって。愛してる、って。友情じゃ無く……独占欲が強い想いではありますけど、恋愛的な意味の愛情をあなたにずっと抱いてます。だから」

 そこで言葉を切って、ウルベルトさんから躯を離す。本当はもっと柔らかなナカを味わっていたかったけれど、シながらする話だとウルベルトさんは信じてくれないような気がして。

「今、もう一度俺と契約して下さい。俺に、あなたの全てを下さい。ウルベルトさんだって、俺の事ちゃんと好きでいてくれてますよね……?少なくとも、失いたくないって思ってくれるくらいには」

 俺の前で小さく体を震わせている、まだ色気が溢れているウルベルトさんをジッと見つめる。すると、ウルベルトさんはほんの少し頭を傾げて俺を見返す。

「好きですよ。あの時モモンガさんにも言いましたけれど……俺だって、貴方が居なくなってしまったら、耐えられそうにありません。モモンガさんが俺を失いたくない、って言うのと同じくらいに。でも……」

 一瞬俯いて、すぐに顔を上げる。濡れた金と紫の瞳が、真っ直ぐに俺を見据える。

「これが、この想いが、モモンガさんの言う愛と同じか。どうしても、俺には理解出来ないんです……。確かに、俺にとってモモンガさんは何よりも大切なヒトなのは間違い無いんです。だけど、俺は……」

 ウルベルトさんはそう言うと、悲しげに微笑む。そんな彼を見ていられなくて、俺は衝動的にウルベルトさんを抱き締めていた。すると、おずおずと俺の背中に回されるウルベルトさんの腕。

「ウルベルトさん。実際の恋愛って、綺麗なだけじゃないですよ?」

 小さく動く愛らしい耳元にそう囁くと、ぴくり、と反応してくれる。そんな敏感なウルベルトさんが愛しくて。抱き締める腕の力を緩めないまま、彼の体温を感じている。今の俺の体はウルベルトさんの毛並みの些細な動きですら心地いいと感じられるから、それがすごく嬉しいと思った。

「モモンガさん……それって、どういう……?」

 俺の言葉が理解出来なかったのか、不思議そうにそう言うウルベルトさんが可愛くて。自然と笑ってしまっていた。

「ウルベルトさんの今までの言葉を聞いてると、まるで恋愛が高潔な何かみたいに思ってるように聞こえたので。……ねぇ、ウルベルトさん。あなたが俺の事を好きで、失いたくなくて、こうして抱かれることも許してくれるのって……俺からしたら愛だとしか思えないんですけど?」

「……!?ち、違いますよ!そんな、だって俺は……!」

 すごい勢いで頭を上げたウルベルトさんから、ほんの少し体をずらして頭を保護する。いつもは骸骨だからウルベルトさんの角が眼窩にハマっても問題無いけど、流石に今は危険すぎる。抱き合うのだって角度を気をつけないと刺さるし。

「何で、そんなに否定するんですか?ウルベルトさんは、俺が嫌いですか……?」

「嫌いじゃ、ないですよ。……俺はモモンガさんが好きだって、何度も言ってますよね?でも、その想いが恋愛のソレかは解らない、って。だから、俺は貴方に愛してるとは言えないんです。……嘘は、吐けなくなってますからね」

 もう冷静になってしまったのか、ウルベルトさんは静かにそう答えてくれる。……このままじゃ、前と同じ結果になってしまう。

「……ウルベルトさんは、自分が理解していない事にも言及出来ないって訳ですか?それが嘘じゃなかったとしても」

 俺が真っ直ぐにウルベルトさんを見つめながらそう言うと、ウルベルトさんは俺から僅かに視線を逸らしてから口を開く。

「……いいえ。言及自体は、出来ますよ。ただ、俺がモモンガさんには誠実でありたいと思っているから……不確定なことは口にしないだけで。その場では嘘ではなくても、後に嘘になってしまう可能性があるのなら、俺は口にしたくないんです」

 ほんの少し苦しげにそう言うウルベルトさんが、愛しいと思った。やっぱり、悪魔になってもウルベルトさんはウルベルトさんだ、ってより強く感じたから。

(……何だかんだ言って、ウルベルトさん、ユグドラシルでも俺には甘かったんだよなぁ……。幾らでも誤魔化せる事も、馬鹿正直に話してくれて。だから俺は、ずっと……)

 自分にとってデメリットになる事でも、ウルベルトさんは俺にだけは正直に話してくれていた。ギルメンの他の誰もが知らないことを、俺とだけ共有してくれた。それが、ひどく嬉しくて。多分、その時からウルベルトさんへの見方が変わって……ウルベルトさんの一番になりたい、って思ってしまっていたんだと思う。こっちに来てから、随分とその想いは歪んでしまったと思わなくもないけれど。

「だったら、言及しちゃいましょうよ?未確定だけど、言い切っちゃえば良いんです。それで、それを真実にしちゃえば……何の問題も無いでしょう?ウルベルトさんは俺の事が好きで、抱かれることにも抵抗感は無いんですから。きっと、俺の事愛してるんですよ。恋愛的な意味で」

 俺はそう言いきると、ウルベルトさんの手を取る。骨の手程では無いが、人化して元々の鈴木悟の物より大きく戦士らしい物になった俺の手からしたら、小さくて指の綺麗な魔法詠唱者らしい手だ。

「……モモンガさん、暴論にも程がありませんか?」

 俺の言葉に、ウルベルトさんは呆れたような顔をしつつも小さく笑ってくれた。

「そうでもないですよ?だって、ウルベルトさんは多分、俺に恋してはいないと思いますけど……それを通り越して愛してるように、俺には思えてますから」

 キッパリ!とそう言い切った俺に、ウルベルトさんは大きく息を吐く。

「恋を飛び越えて愛とか……あり得るんですかね?まぁ、確かに一般的に言われるような恋のときめきとかは感じた事はありませんけど。だからって、愛なんて……」

 戸惑ったようにそう口にするウルベルトさんが、本当に可愛い。小さな手を両手で握り締めると、俺は更に続ける。

「あるでしょう?だって、ウルベルトさん、ユグドラシル時代から俺の事大好きだったでしょう?だったら、とっくに恋の段階なんて通り越してるんですよ」

 俺はまるでそれが真実であるかのように口にする。そうすることで、それが真実に変わることを祈るかのように。

「……恋とか、愛とかは今の俺にはまだ理解出来ませんけど……。そんな俺でも、モモンガさんは恋人になりたいって思ってくれるんですか……?」

 不安げにそう言われて。俺は大きく頷く。

「勿論です。ちゃんと"恋人"として付き合い始めたら、案外あっさりと理解出来るかもしれませんよ?……だから、ウルベルトさん。俺と付き合って下さい。俺の恋人になって欲しいんです」

 ウルベルトさんの、微かに潤んだ瞳を見つめてそう言えば、ウルベルトさんは小さく頷いてくれた。

「はい。……その。随分待たせてしまいましたけど……恋とか愛とか、理解出来てない俺でも良いのなら、今後はモモンガさんと恋人として接してみようと思います」

 ほんの少しはにかんだようにそう言われて。感情を抑制されない今の体に感謝しつつ、俺は再びウルベルトさんを強く抱き締めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

side ウルベルト

 

 ずっと、理解出来なかった。物語の中のヒロインやヒーローのような派手な心の揺らめきやときめきは感じられなかったから。人間だった頃だってロクに心を動かされなかったのに、異形になった今は尚更、そんな心の動きは感じられなかった。

 モモンガさんの事は、確かにずっと好きだった。でも、それはあくまでも友人に対する物だと、そう思い続けていた。

 モモンガさんの俺への想いを考えると、時々胸が締め付けられるような感じがすることはあった。だけど、それは多分俺への想いを錯覚してしまっているモモンガさんに対する罪悪感のような物なんだろう、と思っていた。

 だって、今のモモンガさんには俺しか居ない。なのに、俺はモモンガさんの誤解を解きもせず、彼に求められるがままに躯を与えていたのだから。……彼の、真摯な想いに応えられもしないのに。それは、酷く不誠実な態度のように思えた。

 モモンガさん以外の誰かを想いながら抱かれた事なんて、一度も無い。だけど、俺だけだ、と繰り返し告げる彼を宥めるでもなく窘めるでもなく、何十年も抱かれ続けた事は悪魔としては問題無い倫理観なんだろうが、元人間の俺からしたらその態度自体がどうしても引っかかってしまっていた。それでも、何が正しいのかが解らなくて。無為に日々を送っていたように思う。

 だけど、転移して来て三十一年目。建国して三十周年の節目の年に、事態が動いた。前々から話題にしていた、冒険者モモンの代替わり。それを、魔導国の建国三十周年記念式典で行うことになって。パンドラズ・アクターとモモンガさんと打ち合わせをして、次世代の子の名前を決めて。パンドラズ・アクターにモモンに変身して貰い、鎧を脱いだモモンを観察し、それをベースに息子であるアモンを創造した。モモンガさんに術を掛け、パンドラズ・アクターに容姿確認をして貰い、モモンガさんにも鏡で確認して貰ってから式の練習をして……。本番が終わってから、モモンガさんに襲われた。

 愛撫なんて殆ど無くても、何十年も抱かれ続けたこの躯は、あっさりとモモンガさんを受け入れた。受け入れた後、まるで女のようにナカが濡れてくるようになったのは、何年目の事だっただろうか……?そういった器官など存在しない筈だから、恐らくは自己防衛機能のひとつで、この透明な粘液も魔力で創造しているんだろうが。

 人間としての肉体を持ったモモンガさんは、酷く俺の欲を煽った。モモンガさんの魔力も精力も、その全てを吸い尽くしてしまいたい……そう思ってしまったのは、悪魔の性なんだろうか?

 悪魔と交わった人間は不幸になると知っていたから必死に堪えたが、途轍もない快楽に、理性が飛びかけた。本能のままに貪りたいと、何度思ったか知れない。それ程、初めて味わう人間の躯は魅力的だった。

 指で触れられている時も十分気持ち良かったが、モモンガさん自身で荒々しく貫かれて、その体温と精気を奥深くに感じて……魔力と精力を吸い取りたいと思う気持ちを抑え、快楽に意識を向けて其方に溺れた。ナカで動かれるだけでも気持ち良くて、より深く彼を受け入れられるように抱きついて。初めて、モモンガさんの精を受け止めた。

 [[rb:骸骨 > スケルトン]]のモモンガさんではあり得なかったが、俺の<[[rb:上級変身 > グレーター・ポリモーフ]]>で人化したモモンガさんは本当に人間の躯になっていたようで、肉体だけで無く吐き出した精ですら本物だった。……だからだろうか。精神も肉体に引き摺られているかのように思えた。

 アンデッドのモモンガさんは、その種族特性のせいで常に精神抑制されてしまうと言っていた。だけど、あの時のモモンガさんは、人間の肉体だからかいつにないテンションで。随分と熱く俺を口説いていた。人化してて、精神抑制もされていないのなら、性愛の対象は俺じゃなく、元々好きだった巨乳のお姉さんじゃ無いのか?と疑問に思う。

 だが、人化してもモモンガさんは俺が好きだと言い切った。愛していると、恋人になりたい、と。……正直、驚いた。モモンガさんもまだ若い男だし、一回抜けば頭も冷えると思っていたから。普通の男女だってヤった直後には男の方が冷静になって……なんて言うのは良くある話だ。それなのに、欲に駆られて激しく俺を抱いた男が、事後に頭に登った血が下がり冷静になっても尚、異形の悪魔である俺にあんな事を言えるとは思っていなかった。

 ……正直、俺はモモンガさんが夢から醒めると思ってのだ。まぁ、彼からしたらこんな事を俺が思うこと自体が大問題なんだろうが。

 俺への執着が途轍もなく強いギルマス、モモンガさん。彼は、どうやら俺の見た目ではなく、中身を愛しているらしい、と遅ればせながら気付いた。寧ろ、中身が好きだからこの異形の悪魔を平気で抱けるんだろう。ベッドの中では俺の容姿や声も褒めたりするが、彼の言動を見ていると容姿が好きだから俺を好きになった、のではなくて、俺の中身が好きだから、見た目も好きになったように思えた。ユグドラシルでは、俺のアバターを格好いいと褒めてくれていたが、その賞賛は純粋な物で色恋沙汰故の言葉ではなかったから。

 と、そこまで考えて、ふと思う。俺はどうだったんだろうか、と。

 俺も、モモンガさんの見た目は恋愛の対象では無い。何せ、彼は骨だ。余っ程の特殊性癖でも無けりゃ、アレを恋愛対象に、というのは元人間にとってはハードルが高過ぎる。ユグドラシルの時も今も、魔王っぽくて格好いいとは思っているけれど。それは当然、造型の格好良さを認めているだけで、恋愛や性の対象としてどうこう、とは思っていない。

 好きだ、と思う気持ちが純粋な恋愛感情では無いと、俺は知っている。欲得尽くの好き、肉欲的に好き……人間の好き、という言葉の殆どはこれだから。特に今の俺は、悪魔だ。だから余計、彼への気持ちが解らなくなっているんだろう。

 モモンガさんを好きだという気持ちは、本当だ。だからこそ、口に出来る。だが、それが今となっては友情の延長なのか、快楽を得られるから好きなのか、それともモモンガさんが言うように恋愛的な意味の好きなのかが判別出来なくなっている。

 俺にとってもモモンガさんは大切なヒトだ。だからこそ、こんな曖昧な気持ちで彼に愛を告げたりなんか出来ないと、そう言っていたのに……。モモンガさんは、この気持ちは愛だと、キッパリとそう言い放ったのだ。しかも、その気持ちは恋じゃ無くて、愛だと。それはもう、あっさりと。俺が一瞬呆けてしまうくらいには、それは衝撃的な一言だった。

 悪魔の俺だけれど、モモンガさんだけには誠実でありたいと。ずっと、そう思っていた。だからこそ、物語の恋愛のように解り易い症状が出ていない状態で、偽りの愛を囁くなんて出来ないと、そう考えていた。元より嘘は口に出来やしないが、モモンガさんが言っていた通り、推測混じりの断定では無い言葉なら口に出来るのだから。

 けれど、モモンガさんは口にしてしまえば良いと言うのだ。口にすれば、真実になると。俺の気持ちを疑ってもいないような態度で、そんな事を言うのだ。……これじゃあ、何十年も悩んでいた俺が馬鹿みたいじゃないか。

 モモンガさんへの気持ちが解らない以上、友人としての態度を崩さないのが正解だと思っていたのに。それなのに、モモンガさんはそうではなく、恋人になると口にしてそういった振る舞いをすればいい、と、そう言ったのだ。モモンガさんへの回答が、そんな単純な物で良かったのか?と思わなくも無いが、何より当のモモンガさんがそれを望んでいるのだから、そうするのが正しいのだろう。

 その、"恋人としての振るまい"事態も喪男の俺には中々に難しい課題だとは思うが、この辺はもうモモンガさんに丸投げで構わないだろう。骨と山羊とでデートでもするのか?とか愉快な考えが浮かんだが、その辺も含めて全部モモンガさんに任せてしまおうと思う。きっと、友人として過ごした今までの日々とは勝手が違いすぎて、刺激的な毎日になる事は間違いないだろうから。

 俺はモモンガさんの腕の中で小さく微笑むと、その大きな背中にそっと腕を回してモモンガさんに身を委ねた。相変わらず俺は恋愛感情なんざ理解していないままだけれど、それでも、モモンガさんと一緒なら何かが変わると確信していたから。

 

 

END

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