週末には来週の中間試験に向けて、加蓮の勉強に付き合う事になった。中間、期末と結果を出さなきゃいけないからね。
とはいえ、デビュー以降登校を止めた俺に見せる為に、授業のノートをしっかりと取るようになったので、授業の内容はしっかりと頭に入っているようだった。
プロジェクトルームで勉強をしていると、他の子も集まってくる。
もちろん美城学園でも中間試験があるからね。
愛梨さんはああ見えても頭が良く、高1の分は全て予習済みで、今までも特に試験勉強はしたことが無いとの事。
友紀さんは『一番の得意教科は体育だよ』と言っていた。うん、試験に関係ないよね。でも苦手教科は無く、試験はいつも平均以上はキープしているらしい。
美波さんは普段から予習復習は欠かさず、前の学校ではトップクラスだったとか。資格の取得が趣味になるだけあって、憶える事が好きなんだろうな。
中1コンビは初の試験になるので、美波さんに試験勉強のコツ何かを教わったりしているらしい。
紗枝ちゃんは英語がちょっと苦手、アーニャは逆に漢字や歴史が苦手だとか。
レッスンに勉強に大変だろうけど、二人とも頑張れ!
試験明けの日曜は5月デビュー組のミニライブになる。
今回の場所は東京タワーのフットタウン屋上にある、屋外イベント広場だ。
特設ステージを設営して、午前と午後の2回公演になる。東京タワーを訪れる人たちがメインターゲットなので、もちろん無料。
本当なら俺の出番は無いので不参加のはずだったのだが、掲示板やSNSで俺を生で見たいから行くという話が多かったため、コーラスでの参加になった。
折角行ったのに俺が居なかったなんて、ネットで暴れられても困るからね。
でも、そうなると困るのは来月だ。美波さん、愛梨さん、アーニャの3人のデビュー曲にはコーラスの部分が無いんだよね。
「うぅ~、緊張します」
特設ステージ裏の控室で菜々さんが緊張に体を強張らせている。
菜々さんだけでなく、友紀さんと紗枝ちゃんも似たようなもんだけどね。
「先月も緊張していたけど、これほど酷くは無かったじゃない」
「先月はおまけみたいなものだったからですよ。今回は菜々たちがメインですから」
そう言う菜々さんのウサ耳もショボーンと垂れてしまっている。
うーん、相変わらず謎な付け耳だな、これ。触ってもフニフニしているだけで、中に何かが入っているわけじゃないんだよね。
「んー、前回は純君にギュッと抱きしめて貰ったんでしたよね~」
近くに居た愛梨さんが、顎に人差し指を当てながらそんな事を言ってきた。
そんな事もあったね。でも今日はもうみんな着替えもメイクも終わっているから、ダメじゃないかな。
でも愛梨さんの言葉でみんなが期待したような目で見て来てるしなぁ……
「でもみんな着替え終わってるし。出来てこの位かな」
俺は菜々さん手を両手で包んだ。
「大丈夫大丈夫。レッスンの時だって、俺たちに見られていたじゃない。その見てる人がちょっと増えるだけだって」
「そのちょっとのせいで緊張してるんですけど……。――でも、少し落ち着きました。純君ありがとうございます」
菜々さんは一度深呼吸をすると、顔の表情が柔らかくなった。
「アタシはやっぱり、たまにこう触れて貰えるだけで十分だね。純君にはまったら、たぶん他の事が手に付かなくなると思うし」
友紀さんにも同じようにすると、手を離した後にガッツポーズをして見せてくる。
キャッツにはまっている自分の事を分かっているからか、他の事にはまるのを避けているようだ。
俺としてもこの距離感は嫌いじゃないし、魅力的でも強引に関係を持つのは間違っていると思うからな。
それにしても、この世界でもガッツポーズというのかな? 後で調べておこっと。
紗枝ちゃんは逆に俺の手を取ると、自分の胸元に当てさせて、そこに手を重ねて来た。
「うちはやっぱし、体に触れてもろうた方が安心できるさかい」
この衣装の胸元が剥き出しだから、そうすると直に肌に触れる事が出来るんだ。
楓さんは別として、この面子だと年齢が低い方が積極的だよね。
べったりくっ付いてくるのはアーニャと紗枝ちゃんだし、愛梨さんも積極的。美波さんは遠慮しがちで、友紀さんと菜々さんはきっかけが無いと接触しないしな。
ミニライブが始まる。開幕は勿論『お願い! シンデレラ』だ。
今回はCDデビューの3人が中央で、身長のバランスから友紀さんがセンターを務めている。その両側に菜々さんと紗枝ちゃん。
実力的に言えば菜々さんだったのだろうけど、一番身長低いからなぁ。まだ紗枝ちゃんと同じくらいだけどね。
『みなさーん、こんにちは~。今日はアタシたち346アイドルのミニライブを見に来てくれてありがとーね』
1曲目が終わると、センターを務めた友紀さんが話し始める。
『この後は3人が、明日販売になるデビュー曲を順番に歌っていきますよー。まずはアタシ、姫川友紀の『ミラクル・ガール』聴いてください!』
『♪ 唇にメロディ いつしか刻む夕暮れ――』
曲が流れて、友紀さんが歌い始める。
他の6人はバックダンサーだ。4月の時と違って、他の人の曲で踊るとこまで出来るようになったんだよね。実際の振り付けとは違った簡易的なものだけど。
『♪ wow wow, Miracle Girl! Miracle Girl ♪』
歌い終わると観客から拍手が送られた。
自分の歌に拍手がもらえたのが嬉しいのか、友紀さんも笑顔だ。
『こんなに拍手を頂けて、ほんっとうに嬉しいです! ありがとー! 次は紗枝ちゃんのデビュー曲ですよ』
『小早川紗枝どす。次はうちのデビュー曲歌わせてもらうけど、今日は特別にJunにぃはんもコーラスで参加してくれるどすえ』
紗枝ちゃんの言葉に、セットのモニター下に作られた出入り口からステージに出て行く。
俺の姿に観客から歓声と拍手が上がるけど、今の主役は紗枝ちゃんだからちょっと申し訳ない気がする。
「どうも、Junです。紗枝ちゃんが言ったように、今日はコーラスだけでの参加です。今日は明日CDデビューの3人がメインなんで、勘弁してくださいね」
俺が観客に向かって言おうと、残念そうな声と拍手が返ってきた。
「なぁ、Junにぃはん。うちの隣で歌うてくれまへんか?」
「紗枝ちゃんの曲なんだから、一人で頑張らないと」
いきなり本番で何を言いだすのか。
みんなの姿が見えなくなって心細くなったのかもしれないけど、この先一人でのステージもあるだろうし、甘やかせないよなぁ。
「仲間が後ろで見守って、一緒に歌ってくれるから。自信をもって!」
紗枝ちゃんの肩に手をやって後ろを向かせると、みんなが手を振ったり握り拳を突き出したりした。
「……そうやった。――聴いとぉくれやす、うちのデビューの曲『極楽浄土』!」
紗枝ちゃんは一度深呼吸をして観客の方へ向きなおし、しっかりとした口調で曲名を告げた。
その紗枝ちゃんに観客から「頑張れー」とか声援が送られる。
紗枝ちゃんと目が合うと、頷き合ってステージの後方へと移動した。
そして俺が移動し終わると、曲が流れ出す。
曲に合わせて紗枝ちゃんが踊り――歌いだす。
「♪ 月明かり昇る刻 灯る赤提灯 祭囃子の合図 ふわり 蝶が 誘い出す ♪」
「「♪ ちょいと覗いて 見てごらん ♪」」
「♪ 迷い込めば 抜け出せない――」
きちんと歌えているし、俺たちのバックコーラスが聞こえると嬉しそうに目を細めた。
この調子なら大丈夫だろう。
「♪ 今宵 アナタと狂い咲きぃ~ ♪」
歌い終わって、踊りの最後の体勢のまま体を止める。
その姿は観客の目を惹き、拍手と「紗枝ちゃーん」という名前のコールを呼び起こした。
「いや、始めみっともない所を見してもうたのに。こないに拍手を頂けて、うちは幸せ者どす」
紗枝ちゃんはそれから観客の方へ姿勢を正して、深々と頭を下げた。
「次は菜々はんの歌どすさかい、最後まで聴いていってや」
「はーい。ウサミン星からやって来た、安部菜々ことウサミンです♪ 歌って踊れる声優アイドル目指して頑張っていきますので、応援よろしくお願いしますね」
『せーのっ』『『うっさみーん!』』
菜々さんの自己紹介が終わると、観客からウサミンコールが聞こえて来た。
「わぁ、ありがとうございます! きっと、地下アイドルをやっていた頃から応援してくださっているファンの方ですよね。菜々、嬉しくて涙出ちゃいそうです」
菜々さんの言葉と同時に、ウサ耳の片方が途中から折れた。
片方が折れるのは喜びの表現なの?
「それじゃあ、いきますよ~! ミニライブ最後の曲。菜々のデビュー曲で『天国と地獄 ウサミン星Remix』です!*1」
「『 (゚∀゚)ラヴィ!!』」
モニターに歌詞が出ていて、後ろの俺達が揃って人差し指を立てて突き上げていたからか、最後は観客の一部が一緒にやってくれた。
「最後一緒にやってくれて嬉しいです。菜々、最初この歌を聴いた時、運動会の曲でがっかりしたんですけど、今はこの歌を貰えて本当に嬉しいです!」
おぃ、観客の前で何言ってんだよ。
「この後はCDの販売&サイン会ですので、よろしくお願いしますね」
「うちら3人だけで、Junにぃはんは居ーひんけど勘弁してや」
「あと、アンコールは無いかんね。コールは無しでお願いだよ」
「ミニライブ、来てくれてありがとうございました!」
「「「ありがとうございました!!」」」
最後に3人が一言ずつ話して、菜々さんお礼の言葉に続いてみんなでお辞儀をしてミニライブが終わった。
その後は3人のCDの先行販売と買ってくれた人へのサイン会。
そしてミニライブの午後の部、CDの先行販売&サイン会が行われた。
買ってくれた人が多かったのか12時過ぎまでかかっていたけど、3人とも笑顔で戻ってきた。
14時から行われた午後の部は特に問題なかった。
一回やったことで緊張も無かったようだし、午前の部を見たお客さんが午後にも来て盛り上げてくれたりしたからね。
そして夜はミニライブの打ち上げだ。
4月の打ち上げの時と同じ焼肉屋さん。自由に食べられるのいう点では焼肉が一番楽なんだよね。
鍋なんかだと鍋の種類で好き嫌いがあるし、未成年も多いから居酒屋も無いだろうし、ファミレスなんかは番外だ。
今日はがっちりとガードされて、大人席の方に行く事は無かった。
前回と違って撮影会も無いので、三軒茶屋の駅で解散だ。
俺と加蓮と奏、3人でマンションに向かって帰る。
何か3人だけで外を歩くのって久しぶりだな。前は学校の登下校があったんだけど、今は無いからな……
焼肉屋では当然宴会用の個室ですよ。
大人数だし、純が居るのに普通の席なんて常務が許さないw
ライブのアンコールはどんな歌が良いでしょうか?
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YAH YAH YAH
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ultra soul
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想い出がいっぱい
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いい湯だな ビバノン・ロック
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他 割烹のメモに書いてください