『某県某所の山の中にある一軒家、ペンション相葉。スキー場や温泉街まで車で1時間と云う事もあり、一部の人に愛好されている宿である』
会場のスクリーンに冬景色の中にあるペンションが映し出され、ナレーションが流れる。
「ねぇ、ペンションの名前。本当に私の名字で良かったの?」
「印象に残れば夕美さんの名前も覚えて貰えるし良いんじゃない?」
「そうかなぁ……?」
成人の日の前日、日曜日。都内の某ドーム球場で冬フェスの最中だ。
2月のCDデビューを前に夕美さんが冬フェスでデビューをした。これに出れるかで収入も大きく変わっちゃうから、12月の中から猛特訓で練習してきたんだ。
「夕美ちゃんはおいしい役じゃないですか。一番目の被害者で後は天使姿になって歌ってるだけなんですから。それに比べたら菜々なんて……」
「役はくじ引きの結果ですから」
「美優さんは良いじゃないですか、私は絶対ネットとかでウサミンwwwとか草生やされるんですよ!」
この期に及んでぐぢぐぢ言ってる菜々さんを美優さんが宥めるも効果が無かった。
美優さんは最後まで生き残る役だからな、仕方がないことかもしれない。
「はいはい、そこまで。もう時間よ、しっかりやってファンに楽しんでもらわなきゃね」
菜々さんは瑞樹さんの声に溜息をついてから頬を叩き、気分を変えたようだ。なんだかんだ言って一番仕事に真面目だからな。
そして楓さんは包丁振り回すのやめてください。それの出番はまだ後ですから!!
スクリーンの映像とライトが消え、会場全体が暗闇に覆われると夕美さんと美優さんがステージの中央へ移動した。
ステージを照らすライトが再灯し音楽が流れだす。そして袖から菜々さん、楓さん、瑞樹さん、俺が順にステージに出ていき歌い始める。
♪ なんのかんので見知らぬ同士が集ったペンション
♪ 平和な時も束の間 その夜起こった殺人事件
♪ あー 犯人は誰か分からずに あー 吹雪により陸の孤島に
♪ あー 不安を胸に身を寄せ合い しかしそのひとりはこう言った
(菜々)「この中に犯人が居るかもしれないんでしょう~? いやよ私は部屋に戻らせてもらうわ~」
♪ 今なんて言った? 今なんて言った?
♪ それ それ それそれそれそれ それ それ それそれそれそれ
♪ それ それ それそれそれそれ それ言っちゃダメなやつ
♪ 立~てないで死亡フラグ~ べ~た~な展開に困惑~
♪ 絶対言ったらダメなやつ~ やめてもらっていいですか
♪ 止~めても言うこと聞かず~ 冷~や汗とおりこして汗だく~
♪ 立~てないで死亡フラグ~ それ言っちゃったらもうダメだから~
曲の流れに沿って先ずは夕美さんがステージから退場、その後は菜々さんが。
そして包丁を持った楓さんと瑞樹さんがもつれ合うようにしながらステージ袖に移動。
残った俺と美優さんが逃げるように花道を走って往復し、ステージ中央に戻る。
その後ステージ戻ってきた楓さんに追いかけられながら俺もステージから退場し、最後に美優さんだけがステージに残り歌も終了する。
ちなみに途中退場の夕美さん、菜々さん、瑞樹さんの3人は天使姿に早着替えをしてスクリーンの上に作られた第二ステージで同じく天使衣装の高校生組(友紀さん、美波さん、愛梨さん)と踊り歌っていた。
「はい。新曲『死亡フラグを立てないで』*1でした。ちょっと趣向を凝らしてみましたが如何でしたでしょうか?」
ステージに残った美優さんのMCが始まり、第二ステージからみんなが降りてきた。ミニスカ天使衣装なので見えそう……
降りてきた瑞樹さんと目が合うと、ウインクしてスカートの裾を捲って見せてきた。
咄嗟にしゃがんだら目の前に包丁が……。さっき使った小道具の包丁ってわかるけど、吃驚したからね!?
視線を上げると案の定、微笑んでいる楓さんが居た。
「――私と一緒に始めにステージに出たのは、本日デビューとなった相葉夕美ちゃんです。今日は来月発売予定のデビュー曲も披露してもらいます」
微笑みながら無言の圧力をかけてくる楓さんと、ヤンキー座りの体勢で見上げる俺の横を戸惑いながら夕美さんが通り抜けていった。
「初めまして。本日この大きなステージでデビューさせていただいた相葉夕美です。先輩方に負けないくらい頑張っていきますので、応援よろしくお願いします。私のデビュー曲『Flower Ring』*2聴いてください」
♪ La La La La La La La~ La La La La La La La~
♪ La La La La La La La~ La La La La La La La~
♪ 真~っ白 光の中 目を覚ま~して 始まっていくストーリー
♪ 踏~み出す 新しい世界 どんな花を咲かせよ~う?
挨拶は硬かったけどちゃんと歌えてるようで一安心。
夕美さんが初ソロで頑張っているなか、ステージ裏では――
「楓ちゃんごめんね。夏は見ているだけだったから、ちょ~っとテンションあがっちゃってたのよ」
降りてきた瑞樹さんはジト目の楓さんに弁解をしていた。
そう、俺は瑞樹さんの行動に釣られただけだから、何も悪くない! だから、頭を押さえつけるの止めてくれませんかね?
「はいはい、じゃれあうのもそこまで。もう最後なんだから、着替えのある子は急いで。瑞樹ちゃんと楓ちゃんもよ」
ステージ裏にやって来た叔母さんの言葉に、事態を見守っていた数人と一緒に二人も衣装替えに移動していった。
「純君はこれね」
さっきまで羽織っていたコートを脱がして、変わりに革ジャンを着せられる。女のワンピースやドレス系衣装と違って着替えが楽でいい。
♪ 出会~って 出会~って 繋がっていく~
♪ 笑え~ば まわ~りも笑~顔になる~
♪ 小さな種まい~て育てよう~ やがて大~きな花~になる~
♪ 後悔や失敗は糧にして~ カラフルな 幸せで 溢れるように~
♪ 僕ら 手を取り合って 分け合~って 世界中に 広がっていけ Flower Ring
♪ La La La La La La La~ La La La La La La La~
♪ Ha~
夕美さんの歌も終わったし、さて最後まで一気に行こうか!!
フェス本編を終えた後、アンコールに応え今日最後のステージに戻る。
「アンコールありがと~! 言いたいことは全部本編の中で言ってきたけど、最後に。346のアイドル部門が出来て1年も経たないのに、こうしてドーム球場が満員になるなんてね、思ってもいなかったので、アイドルのみんなファンの応援に感謝しています。春には新しいアイドルや、オーデション合格組の練習生も増えます。後輩に負けないようこれからも頑張っていきますので、変わらぬ応援よろしお願いします」
夏フェスチケットの申し込み人数の多さをうけて、イベントホールからドームに変更されたんだよなぁ……。野球のオフシーズンだから何とか変更できたみたいだけど、夏はどうなるんだろうね?
まぁ先の事より、今だよな。さて最後の曲いきますか!
「じゃあアンコール曲は、夏と同じく『ultra soul』だ! 夏フェスに参加してくれた人、DVDを見てくれた人は分かってるかもしれないけど、一応練習いっとこっか。……掛け声は……瑞樹さん!」
そう言って瑞樹さんを見ると、頷いてステージの前の方へ進んでいった。
「じゃあいくわよ~、せーのっ! ウルトラソウルッ!」
『ハイッ!』
瑞樹さんの後に続いて観客席から声が上がる。
「う~ん。これだけいるんだから、もっと大きく期待したんだけど……。もう一回、次は藍子!」
「は~い。みなさん、元気よく行きましょうね。せ~の、うるとらそ~っ!」
『『ハイッ!!』』
「まだまだ、いけるでしょ。隣の人にぶつからないよう気を付けて、『ハイッ!』って感じで右手を上に突き上げてっ。最後にもう一回、夕実さん」
「Jun君が言ったように、一緒にやってみようね。いくよっ、ウルトラソウルッ!」
『『『ハイッ!!!』』』
夕美さんの声の後にステージ上にいるアイドル全員と観客が揃って右手を突き上げた。
「よ~し、いくよ。曲スタートッ!」
♪ どれだけがんばりゃいい 誰かのためなの? 分かっているのに
限定でお迎えできたのはみりあだけでした。
他のSSRはGOD2枚……
そしてフェス限で引く楓さん。う~ん、このっ!