※この作品はR-18です。

Fate/Urban Crisis   作:ソクリ

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R-18なシーンがある回にはタイトルに★マークを入れました。


標的 ★

――秋津市西側・繁華街・ビジネスホテル――

 秋津市繁華街に聳え立つ、ビジネスホテルの一室、大半の客室は単身かあるいはカップルでの宿泊を主目的としているからか、1人、あるいは2人での部屋の運用を考えて部屋の大きさが割り振られている。

ベッドの上に2人分の寝るスペースが用意されていることなど、その運用方法が正しいことの最たる例だろう。

 

 しかし、中には家族連れなどで、3人、あるいは4人の人間が宿泊すると言うケースも稀にある。秋津市における観光客が泊まる場所として最も人気があるのは電波塔周辺の駅近ホテルであるのだが、元々、昔からの繁栄を続けてきたのはこちらの西側エリア。過去にはこのホテルも賑わい、客を多く収容していた時代もあった。

そんな名残からか、ホテルの部屋のいくつかにはそうした家族が泊まるための少し広々とした部屋というものも用意されている。

 

 そうしたコンセプトの一室で、早朝からバスルームよりシャワーの流れ出す小気味よい音が響く。バスルームの扉は閉ざしているはずなのに、部屋に音が響いてくるのは部屋の防音性の問題なのか、シャワーの勢いが強いのか。

 

 果たして、早朝よりシャワーを浴びて寝ぼけ眼の自分自身に活を入れたセレスティーナ・アルブレヒトはバスロープ姿のままで、部屋の中へと戻ってきた。

 

「ハァ、我ながら情けない。夜の間に色々とあったからって、思考中に寝落ちしているなんて、探偵としては二流もいいところだ」

 

「ふむ、それは良いが、儂がおる部屋でそのカッコウは少々無防備が過ぎるのではないか?」

「何を今更。共同生活を続けてもう1週間でしょ。ボクだってそれだけ長く生活していれば、羞恥心も薄れるよ。良い意味で君のことは信頼している」

 

「ならば、眠ってしまうのも信頼の証ではないか?」

「茶化さないでくれ。これでも結構、ダメージ受けてるんだ」

 

 桜子と別れ、この拠点へと戻ってきたセレスは負傷したノルンの応急治療を行い、彼女を寝かしつけた後で、志士たちから回収した刀身と鞘の解析を行っていた。

解析を始めたのが日付が変わるかどうかという時間であり、それから2時間程度までの記憶はあるが、それ以降はない。

 

 気付けば陽が昇り始めており、自分が最低限の身だしなみすら放り出して眠りこけていたことがセレスには相応にショックであったらしい。

 

 セレスは良くも悪くも俗だ。魔術師ではあれども、魔術師然とした生き方が出来ない存在であると自分自身でもわかっている。だからこそ、普通に日々を生きている人であれば多かれ少なかれ感じることに驚きや悲しみを覚える。アサシンの先ほどの反応も、そんなセレスを微笑ましいと思っていればこそであった。

 

「それで、その羞恥心の代償は得られたのか?」

「ああ、結局、ボクらが追っている相手とあの人種差別主義者たちには何の関係もないってことが良く分かったよ」

 

「それは大きな進歩ではないか。すなわち、少なくともこの秋津の街で暗躍している陣営は二つあり、おそらく、相互に互いを放置しあっていると言うことだろう」

「そうだね、ボクたちが求めている本命は、もしかしたらあいつらが派手に暴れまわっているのを良しとしているのかもしれないね。あんな無法者どもが跋扈していたら、普通はあいつらが猟奇的な行動に出ていると考える」

 

 人間は安易な答えに飛び付きたがる、何故か―――安心が欲しいからだ。

 

これで自分は安全圏に飛び込むことができると分かれば、すぐにでもその選択肢に手を伸ばす。何も知らない人たちからすれば、秋津の街で二つの凄惨な事件が引き起こされているなどということは考えないだろう。

 

「ああ、そうだ。これも伝えておかなきゃね。あいつらの道具から記憶を読んでわかった。あいつらはキャスターのサーヴァントの配下だ」

「キャスター、か……予想通りと言えば予想通りではあるが、規模は?」

 

 アサシンの問いにセレスはバスロープを脱ぎ、自分の衣類を取り出して、決して豊満とは言えないが、貧相とも言えない彼女なりの中途半端な肢体を晒しながら着替えを進めていく。

 

「北にさ、唯一神理教の総本山ってのがあるらしい。山の中に作られた天然の要塞さ。そこに昨日の剣士みたいなやつらがひしめき合っている。規模までは解らなかったけど、ざっと数えても百はくだらないかな」

「くく、それはまた、随分と豪勢だ。聖杯戦争の規模ではないな」

 

 アサシンが冗談交じりに呟くが笑い事ではない。ある意味、本当に戦争でも仕掛けるんじゃないかと思えるほどの規模だ。アサシンは1人で数十人の敵の対処を行っていたが、その数が数倍に膨れ上がれば昨日とはまた違った結果が生まれるに違いない。

 

「ノルン、起きてる?」

「休息の時間を与えていただきましたから。セレスも壮健なようで何よりです」

「うん、君も無事でよかったよ。正直、昨日は判断ミスだった。君とサクラコが生き残れたのは、奇跡と言ってもいいところだった。ボクももう少し先を考えて動くようにする」

 

 ノルンは不思議そうな表情を浮かべる。彼女からすればあの場で桜子を守ることができるとすれば、自分を置いて他にはいなかった。どこまでも合理的な判断であり、ホムンクルスの自分の生命を考えているのだとすれば、それは不毛以外の何者でもないと思っている。ただ、そこを含めて割り切れないのがセレスという人物なのだ。

 

「一応、二人に言っておきたいことがある。昨日襲ってきた相手はキャスター陣営だが、ボクはアレを相手にするつもりはない。もう少し正確に言うと、あんな奴らをまともに相手にして勝てる気がしない」

「ですが、彼らは我々の存在を確認しています。専守防衛にも限界があるのでは?」

 

「あれだけ派手に暴れまわっているのなら、他の陣営とだって遠からずぶつかるはずさ。なら、ボクらが必死になる必要はない。ボクらはあくまでもあの動画の謎を追う」

「初志貫徹というわけか」

 

「うん、あくまでもボクの直感、あるいは女の勘って奴かな、キャスターよりもあっちを放っておくほうが不味い気がするんだ。なんとなくだけど、誰もその歪さに気付いていない。それが後々になって取り返しのつかないことになってしまうんじゃないかって」

 

「ふっ、珍しいな。主が勘に頼るなどと。その領分は儂のはずだったがな」

「ボクだって何もかもロジックで語れるのなら苦労はないさ。それと、キャスターの正体に付いてはサクラコには伏せておいてもらいたい」

「何故ですか?」

 

 ノルンが非合理的な指示に疑問を呈する。情報共有の上では知っておくべき情報なのは間違いない。特に聖杯戦争を戦い抜くうえで相手が何のサーヴァントであり、どこを拠点にしているのか、それを知っているかどうかは戦局を大きく変えていくはずだ。

 

「……たぶんだけど、サクラコはあいつらの所在が分かってしまったら、絶対にあいつらを倒すために動くと思う。聖杯戦争のマスターとして利用するためだけの相手だったら、ボクは喜んで相手に情報を提供するよ。潰しあってもらうのはこっちにとって利益になる。でも、友人にそんな死ぬかもしれない行動を誘発させるようなことはしたくない」

 

 それは順番の問題だった。聖杯戦争のマスターとして出会ったのが早かったか、何のしがらみもない友人として出会ったか、そこの違いでしかないが、セレスにとってはとても重要なことだった。

 

「……とりあえず、やることは昨日までと変わらない。キャスター陣営に注意しつつ、今日も捜索を続けよう。出来る事ならサクラコと話をする前に何か見つかればいいね」

 

 そうすれば、少しは話を紛らわすこともできるかもしれない。小賢しい技術ばかり頭に浮かんでくるのはやはり自分が俗だからなのだろうか、自分の中での折り合いはまだまだつけられそうにない。

 

――秋津市東側・住宅街エリア・遠坂邸――

「ええ、承知しております。勿論、こちらとしては当初の計画からさほど修正はなく、勿論、長く手間を掛けさせるつもりはありませんよ。精々が一週間程度ではないでしょうか」

 

 結局、昨日は碌に寝付くこともできなかった。どれだけ考えたところで答えが出るはずもなく、ただ、自分の中で信じたくない、都合の悪い事実から目を逸らすように思考を遠ざけようとしているけれど、不安感がすぐにその思考を自分の心の中に連れ戻してきてしまう。

 

 起床したのはいつもよりも大幅に遅い時間だった。あわや遅刻をしてしまうのではないかと思える時間であり、こんな時間に起床したのは本当に小学校に入りたての頃以来だったんじゃないだろうか。

 

 駆け込むように朝食を口の中へと含み、急いで通学の準備を済ませた僕は、日課であった父さんとの朝の会話をすることもなく出発の時間を迎えることとなった。

 

 出発前に父さんに声を掛けようとした折に、父さんは誰かに連絡を取っている様子で僕が自分の部屋に来たことにも気づいていない様子だった。

 最も部屋の中にはアーチャーが控えていて、父さんが危ないと言う状況が生まれる余地もないことは明らかだった。

 

「心配せずとも、こちらも既に準備は周到に。そちらの協力もあってか、思った以上に楽に勧められそうです。ええ、では、今夜」

 

 誰と話しをしているのか、電話越しに父さんは笑っているような反応で話していたが、僕から見れば父さんの表情は全く笑っていない

。むしろ、その表情はいつも僕が接している父の姿ではなく、魔術師・遠坂煉としての顔だ。二つの顔を人生の中で何度も何度見てきた僕だからわかる。

 

 聖杯戦争に関係した連絡なのだろうか、あるいは魔術師として表の有力者と呼ばれる人たちとの何らかの調整を行っていたのだろうか。父さんから何度かそうした話しを聞いたことはあったが、実感が伴わない言葉はすぐに忘れてしまうモノ。うろ覚えの知識だけでは何が起こっているのかを判断することは出来なかった。

 

「ああ、いたのか、蓮司。もうそろそろ学園に向かう時間ではないかな?」

「はい。ただ出発前に父様に挨拶をと」

 

「ああ、時間を取らせてしまったかな? 少し夢中になっていてね、気付かなかったよ」

「大丈夫です。元々、僕が起きるのが遅かったからですから、気を引き締めて行こうと思います」

 

「それがいい。既に聖杯戦争は本格化を始めている。これからは各陣営同士の潰し合いだ。参加者の中には魔術師のルールと規範を知ることなく、無粋な手を打ってくる陣営がいるかもしれない。今日からはアーチャーの部下たちを霊体化させた状態でキミの傍に置く。何かあった際にはすぐにアーチャーに連絡が行く流れとなっている」

 

「本音を言えば君に同行したいところだが、あくまでも私のマスターは煉殿だ。取捨選択の結果としてそのようになった。不満はあるだろうが受け入れてほしい」

「いえ……守っていただけるだけでもうれしいですから」

 

「とはいえ、蓮司、君も遠坂の魔術師だ。アーチャーの部下がいることに溺れず、状況の打開は自分自身の手で行いたまえ。いずれは己を己の手で守らなければならない日が来るのだからね」

「はい……」

 

 父さんなりの僕へのエールを受けて、家から学校へと進んでいく。微かに魔力反応が自分の周囲から感じられ、会話をすることはできないけれども、アーチャーの部下である兵士たちが自分に同行してくれていることは感じられタ。

 

 心強い、勿論、父さんが言うようにその力に溺れていては遠坂の後継者として未熟もいい所なのかもしれないが、いざという時に対応できる存在がいてくれるだけでも心持は変わってくる。

 何せ……この学園の中だけでも少なくとも一人は僕と同様にマスターとして何食わぬ顔で日常を謳歌している生徒がいることは既に知っているのだから。

 

「いつもより、少し遅くなってしまったな」

 

 自分のクラスに到着して、時計を見れば、いつも登校する時間よりもかなり遅い到着だった。常に優雅であれという遠坂の教えからすれば、赤点もいい所だ。

 もっとも、それを茶化してくるような相手もいない。特定の相手と親しくしているわけではないからこそ、特定の誰かなんてものが生まれるはずもない僕の日常は変わることなく過ぎ去っていくだけなのだから。無味乾燥な昼間の時間が過ぎ去れば、あとは夜の時間がやって来る。僕たち遠坂にとっての悲願を掛けた戦いの時間が。

 

「蓮司君!」

「―――――」

 

 ドクンと心臓が高鳴った。それは予想外のアクションであり、同時に自分の中で抱いている漠然とした不安感、その二つが相乗して引き起こされた生理的な反応だった。

 

「なな、ほしさん……」

「おはよう。今日はどうかしたの? 蓮司君っていつも、すっごく早く登校して来るのに。今日はあたしと変わんない時間だったから」

 

 七星桜子、僕と同じく聖杯戦争に参加しているマスター、けれど、彼女はそんな裏の事情などおくびに出すこともなく、変わり映えのしない会話を続けていく。

 まるで昨日見た光景が嘘であるかのような反応、相手が気づいていないとしても、あんな戦いを繰り広げておきながら平然とした表情で日常生活を送れるのだろうか。

 

「ああ、ちょっと夜更かししてしまったんだ」

「へぇ、蓮司君でもそんな時があるんだね。家が厳しいみたいだから、寝る時間とかもすっごく厳しいんだろうなぁって思っていたのに」

 

「ちょっと調べ物をしていたらさ、遅くなっちゃって。父さんには朝から大目玉を食らっちゃったよ」

「ああ、わかる! あたしもね、いっつも寝坊しかけるとお父さんに怒られるもん。だって、仕方なくない? やりたいことはたくさんあるし、それと同じくらい寝られるんだったらいつまでだって寝ていたいはずじゃん!」

 

「はは、確かに、ね。七星さんは結構夜更かしとかするの?」

「あはは、あたしはほら、色々と捜査しなければいけないことがあるから……」

 

 七星さんの様子を注意深く観察しながら会話を続けていく。こちらが探りを入れられているかもしれないからこそ、自分自身の弱みを曝け出すわけにはいかないと言葉に出来るラインを常に考えながら会話を続けていくのだが……、彼女の方は嘘が下手なのだろうか。勘付いてしまう言葉を幾つか口にしてしまっている。

 

捜査、あるいは捜索、聖杯戦争に関わることを探し求めているのなら、ここ最近の彼女が活発に動き回っていることも理解できる。キャスターやバーサーカーが動き回っている現状、この秋津市は決して平和な訳ではないが、サーヴァントがいるとすれば、女の子であっても行動することはできる。彼女に抱いていた疑問は氷解し、やはり彼女もマスターなのだと言う確信が強くなっていく。

 

 いや、確信というよりも確認か。目を逸らしたい事実から、目を向けなければいけない気分へと浸っていくばかりだ。

 

「そういえば、七星さんが探し回っていると言うあの動画のコト、何か分かったの?」

「あー、恥ずかしいことに全然。色々と探し回っているんだけどねー」

 

 そう簡単には見つからないだろう。それはそうだ、サーヴァントが関わっていることである以上、僕が見つけられなかったものを彼女が簡単に見つけ出せるとは思えない。

 七星という家の魔術師がいるなんてことは父さんからも聞いたことがない。彼女が先に見つけることができるとは到底思えなかった。

 

「でも、もしかしたら、何とかなるかもしれない! あたしも、少しは変わることができるかもしれないから!」

「………それは」

 

 それはサーヴァントを召喚したからなのか、思わず口から零れ出てしまいそうになる言葉を、ギリギリで留める。彼女がどんな立場で聖杯戦争のマスターになったのかはわからないけれど、自分から正体を明かす必要はない。

 僕たちは戦争をしている。彼女がこうして会話をしているのだって、本当は僕を騙すためかもしれないのだから。

 

(本当に、僕はそんなことを考えているのか……?本当に七星さんが僕を騙すために演技をしている、そんな風に考えているのか……?)

 

 ただ、そのように思い込みたいだけなのではないだろうかと蓮司は思う。自分がそう思う事が出来れば彼女と戦うことができるから、クラスメイトではなく、聖杯戦争の相手方だと思う事が出来れば……

 

 それが正しいことなのかはわからない。判断をつけられるほど蓮司は自分の人生経験を持ち合わせていない。ただ分かることは、この迷いは自分の中でどれ程考えたところで解決策を見出すことはできないだろうと言うことだけだった。

 

――秋津市西側・繁華街・地下クラブ――

「へぇ、面白いことになってきたじゃない。じゃあ、目下の目標は唯一神理教になるってことなのね」

「ん……んぐ……んっ……!!」

 

「そういうことになる。俺様としてはどこの陣営に喧嘩を売るにしても構わんかったが、遠坂、教団、そして勢至姆会だったか? 奴らのどれか一つを潰さんことには好き放題することもできないと思っていたからな。いい機会だ、まずはキャスターを潰す」

「あら、カッコいい。でも、もっと慎重に動くのかと思っていたわ。貴方ってとっても大胆に動くけれど、それは自分が踏み込んだ先を確実に自分のモノにできるって言う確信があるからこそでしょ?

他人から見れば自分勝手にやりたい放題しているように見えても、そう考える誰よりも自分の立ち位置と力量、相手の実力を天秤にかけて動くことができる」

 

「ふっ、寄せよ。ただでさえ猫にじゃれ付かれているんだ。それ以上褒められたら、余計にむず痒くなってきちまう。ま、むしろ、お前はその方がいいか、円華」

「ふぐぅ……んんっ……んぷっ………」

 

 繁華街の地下クラブ、コルテスが率いている半グレ集団のたまり場と化しているその場所で、集団のまとめ役であるこの地下クラブのオーナーとコルテスはVIP席に向かい合って座り、昨日の大旦那様と交わしたキャスター陣営に狙いを絞ること、バーサーカー陣営を基本的には無視することを彼らに告げていた。

 

 その会話を進める席に私、九重円華はいない。いないけれども、彼は私が傍にいるように気安く話しかけてきて、私は息が詰まる思いで鼻息を発することしかできない。

 

「ちょ、息、できにゃ―――ふごぉ―――」

「喋る前に舌を動かせよ」

 

 それもそのはずだ。今、私はコルテスの股ぐらの下に跪くように座らされ、醜悪なコルテスの肉棒を口で咥えさせられて、強制的な奉仕をさせられている。

 わざわざ用意された深紅のホルダーネックのイブニングドレスは上から見下ろすと胸元がパックリと開いており、コルテスの視界を彩らせるためだけに用意されたことが分かって、渡された時から嫌悪感を帯びて、惨めな気持ちが湧きあがってきた。

 

 どうして、朝からこんなことをさせられているのかすらもわからない。コルテスはぶっきらぼうに「起き抜けの奉仕は奴隷の領分だろう」などと言って来ただけでそうなることが決まった。

目じりに涙を浮かばせながら、結局は咥えるしかない自分はコルテスたちの会話を足元で聞きながら、彼を喜ばせるために頭を前後に動かして、興奮を誘う。

 

「んむぅ……れろ、れろ……んっ……」

「くく、最初に奉仕をさせた時より随分と上手くなったじゃないか。なんだ、実は期待していたのか?」

「ひょ、ひょんなわけ、ないでひょ……ふむぅぅぅぅぅ」

 

 奉仕させられながら、とても我慢が出来なくて反論をするけれど、それで口の中に息を吸い込むと同時にむせ返るような雄の匂いが立ち込めてきて、身体が熱くなる。

 単なる生理現象のはずなのに、どうしようもなく恥ずかしさがこみあげてきて、一刻も早くこの時間を終わらせるために頭を前後に動かすのを早める。

 

「それで、唯一神理教を狙うって言うのは別に構いはしないけれど、勝算はあるの? 近頃、街をうろついている物騒な連中、あいつら、随分な数がいるわよ?」

 

「正面切った戦闘なんてしねぇよ。勿論、俺様はサーヴァントで神の再来とまで言われた男だ。戦って負けるつもりはないが、物量にかまけてお前らと円華に手を出されるのは困る。お前らは俺様がこの街を征服するためには必要な手駒だからな」

「あら、嬉しいこと言ってくれるわね」

 

「お前らは今まで通りに動いてくれていればいい。俺の代わりに街の中で動き回り、聞きかじってきた情報を俺様に寄越せ。どんな小さな情報だったとしても、使いこなすのが俺様だ」

「それはいいけれど、じゃあ、どうするの? あっちのキングが拠点に引きこもっているとしたら、戦わない限り討つことはできないわよ」

 

「ああ、だからこそ、内部から崩す! 唯一神理教の中に入り込み、マスターを見つけ出し、そいつを殺す。或いは殺すように手引きする。それで終わりだ。お前らが言うように外をうろつかせるほどの連中を抱えている奴なら、魔力のリソースも十分にあるんだろうが、その供給元を断てば一撃だ」

「そんな大役を任せることができるような奴、あたしには見当もつかないんだけど」

 

「くっく、いるじゃないか、ここに!!」

「んぐっ―――――!!」

 

 突然、頭の後頭部を握られて、まるでボールを動かすように私の頭をコルテスが乱暴に前後に動かす。自分で制御を掛けた動きではなく、無遠慮にコルテス自身が気持ちよくなるためだけに行われる動きは、私の口腔の深い所にまで肉棒が突き刺さり、思わず餌付くような声が上がりかけてしまう

 

「んぼっ、ふぐぅ、むぐぅ……んぐぅぅ……!」

 

 快楽などよりも苦しさが湧きあがってくる状況で先程以上に一刻も早く終わってほしいという思いだけでなんとか、彼を昂らせるために舌を使ってしゃぶりあげる。

こうなることをわかって行われる強制的な前後運動は、まさしく私が道具扱いされていることをはっきりと自分自身に打ち付けてくる。

 

「円華の本業は女優って奴だろう。自分とは全く異なる誰かを演じると言う役目、その世界でこいつは頂点に限りなく近い所にまで上り詰めたんだ。円華以上に今回の潜入、適任はいない」

 

「………呆れた。あれだけ自分のモノだ、手を出すことは許さないなんて言っておきながら、その子こそ、もっとも過酷な役割を押し付けているじゃない」

「俺は勝つためなら何でもやる、そう、何でもだ!!」

「――――――っ!」

 

 コルテスが叫んだその瞬間に、私の口の中にある怒張がさらにふくれあがり、雄の熱を急激に帯びていく。それが発車の合図であると分かり、何とか口から吐き出そうとするが、そんなことはさせないとばかりに、コルテスが両手で私の後頭部を掴むと、自分の身体に押しつける。

 

「ふぐぅ、んぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

 

 押しつけられ、何が何だかわからない間に口の中に熱い液体が叩き付けられるように吐きだされ、むせ返るようなその臭いと呼吸が出来ない息苦しさ、そして粘りつく液体を呑み込まなければ死んでしまうのではないかと思う感覚に、私は吐きだされたものの処理に選択肢など与えられもしなかった。

 

 ひとしきり吐きだされた自分の精製したものを、私が呑み込んでいることを見て、ご満悦なのか、コルテスはようやく私の中からその醜く、いまだ熱を帯び続けているものを、抜き出していく。抜きだされた瞬間、私の下唇にぬめっとした粘液がまとわりついて顎へと滴り落ちていく。

 

「ま、そういうわけだ、円華。お前は準備をして、唯一神理教へと入りこめ。嬉しいだろ、潜入している間は、俺様と離れていることができるんだからな」

「ごほっ、げほっ……ええ、まったくね。お前の顔を見なくて済むんだったら、今なら何処にでも飛び込んでいけそうだわ……」

 

 気持ち悪いものを呑み込んでようやく自由を得られた口は、コルテスに対して抗議の想いと同時に彼の問いへの同意を口にするほかなくなる。

 

 平時の私であれば、1人でそんな危うい組織に潜入するなんて流石に考えないだろうけれど、コイツの下を離れることができると考えれば、今ならどこにでも行けるような気がするように思えるんだから、結局はコイツの術中にはまっているってことなんだと思う。

 

「……決まりだな」

 

 コルテスは笑う。彼の頭の中で思い描く理想絵図は既に唯一神理教を潰すために動き始めているのだろう。

 

「でも、私は潜入捜査なんてできないわよ」

「構わんさ、お前は信者になりきってくれればいい。大きい組織ってのは必ずどこかでぼろを出す。要は三つの組織の中で、どこが最初にぼろを出すかの話しに過ぎない。あの狸爺は狡猾だ。勝てぬ勝負をするタイプじゃない。ならば、その付け入る隙があの組織にはあると言うことだ」

 

「その付け入るための隙を見つけろってこと……?」

「まぁ、な。別に何かが出来ると期待しているわけじゃない。純朴な信徒でも何でもいい。一番演じやすいものを演じろ。そうだな……異国人に襲われて男に恐怖感を覚えるようになった女、くらいがいいんじゃないか?」

 

「アンタ、本当にいい性格しているわね」

「よく言われるよ」

 

 方針は決まった。ならばあとは実戦をするだけだ。かの伏魔殿へと飛びこむ、それがこれより先のライダー陣営にとっての大きな意味を持つことをこの時はまだ……誰も知らない。

 

 




アサシン→バーサーカー
ライダー→キャスター
を標的とする流れは決定的かな。これがどう影響してくるのか!
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