※この作品はR-18です。

Fate/Urban Crisis   作:ソクリ

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週2~3回くらいで投稿していきたいです。プロローグは各陣営ごとにあります。


プロローグ1:バーサーカー陣営

 ――秋津市・中心繁華街――

「おらぁ、テメェ、馬鹿にしてんのかッ!! 納められないってのはどういうことだ、あぁッ!!」

「も、申し訳ありません。か、必ず、必ず週末までには用意しますから……」

「本当だろうなァ、週末までに雁首揃えて用意するってテメェ、自分で口にしたんだよな? 払えなかったときは……分かってるよなァ?」

 

―――この世界はクソったれだ。クソにクソが煮詰められたような世界、華やかなネオンの裏で今日もまた世の中のゴミ屑どもが這いつくばる世界がある。

 脅す若造も頭を地面に叩き付けて自論を主張する中年もなりたくてこんな底辺に転がり込んできたわけではないだろう。

産まれた時は幸福だったのかもしれない。反対にここまでしか這い上がってこれなかったのかもしれない。どちらにしても、クソであることに変わりはない。華やかな社会の裏で、人に見下げ果てながら生きている。俺を含めてこの場にいる全員がそういう人種だ。

 

 這いつくばり、必死に俺達に媚を売る目の前の男は、俺達の組に上納金を納めることを条件にここらのシマで経営を任されている男だ。

その経営も昨今ではうまく行っている様子ではなく、こうしてうちの若いのに、恫喝される現場を何度目撃したかもわからない。

 煌びやかなネオンが光り、秋津市の中心繁華街として年を経るごとに発展していくこの場に相応しくなく、されど、確かにこの場を構成する要素としてこうした光景は珍しくない。

 この男だって、俺達の目の前から離れれば、生きるために俺達と同じことをもっと下の人間に強いるのだ。そうして街は回っていく。笑いながら平和を謳歌している上澄みの「真っ当な」奴らの幸福はそうした悲哀の上に成立している。

 

「……なァ、あんた。確か、娘がいるとか言っていたよな。稼ぎのいい事務所を知っているけどよ、紹介してやろうか?」

「ま、ま、待ってください!! お願いします、必ず、もう二度と滞らせることなどしません!! だから、どうか家族にだけは手を出さないでください!! 何があろうと必ず掻き集めてみせます!」

「そうだな、その方が楽でいい。お互い、家族は大切だもんな。組もアンタがシマを仕切ってくれているから、アンタらを守ってやることができる。お互い、上手くやって行こうじゃねぇか。搾り取るのなんざ他人からだけで十分、そうだろ?」

「え、ええ……」

 

 張り付いた笑みの奥で男は金の調達方法を考えているのだろう。当然、堅気なやり方で用意できるはずもなく、近しい誰かを蹴落として手に入れるしか方法がない。

家族を救いうための決意をした瞬間に、近しい誰かを地下に落すか、風呂に沈める算段をしているのだ。ここまでくると滑稽が過ぎる。何ら命令せずとも、言葉を匂わせるだけでこいつらは方法論を自分の中で確立してくれるのだ、

そういう方法しか思い浮かばない。それが常識だという層に自分がいることを理解できない。哀れを通り越して侮蔑すらも浮かべる。

 

「気が滅入るな、少し離れる。こういうことが起こらないようにするにはどうするか、悪いがうちの若いのと一緒に考えてくれや」

「へい、若頭。お気をつけて」

 

 此処から先は単なる展望を話すだけだ。我々、勢至姆組にとっての都合のいい展望を話すだけである以上、交渉ですらない。若いのにとっても、威嚇するために必要な上の人間はもう必要ないのだから、俺が離れても問題はない。

 

 中規模都市秋津市、老若男女を問わずに多くの人間が交差するこの繁華街の裏を取り仕切っているのが、勢至姆組だ。

この街を支える表側の奴らもオヤジの名前を口にすればある程度は黙る程度の共生関係を務めている。ある程度で問題ないのかと問われても、その線引きが出来ていれば何ら問題はない。線引きを超えるのはいつだって俺達が搾取する側の奴らなのだから。

 

 その組で俺―――神丘(かみおか)奉(ともゆき)は若頭などと呼ばれている。要はクソ共の中ではそれなりに上等なクソになれたというだけの称号でしかない。オヤジはこの街を発展させた名士かもしれないが、単一個人の名声が、そのまま構成員たちの良質化に繋がるかと言えば話は全くの別物だ。

 

 ガキの頃から変わらず吸っているタバコの銘柄は、粗悪品特有の苦みが口に広がっていく。下のモンにはもっと上等なモノを用意すると言われているが、一人になってまでそれを愛用する気はない。

どれだけ功績を積み上げたところで己はガキの頃から何一つとして変わっていない。それを思い出させてくれるこの苦味こそが、俺をここまで這い上がらせてくれた。

 

 ガキの頃から、必死に這い上がって行けば、いつか本物になれると思っていた。誰に対しても胸を張ることができるような、スポットライトを浴びることができるような奴だ。それがどんな立場であっても構わない。そういう道が開ける万能感のようなものを持つ物語の主人公になれる可能性があるように思っていた。

 

 だが、そんなものはなかった。人を殴りつけ、脅すことが最も簡単な方法であり成りあがるための方法であると考えた奴の末路なんてろくでもない。そこから道が開けるのならば誰だろうと同じことをする。それが許されないと分かっているから正当な努力をして、他人を気遣って、名声を得るのだ。

 

 それすらも理解できなかった男に用意された椅子なんざ、子どもの頃に思い描いていた「本物」には程遠く、ある程度の常識を持ち合わせている奴らからすれば、「偽物」の名声でしかない。

 

 お前など「組」を失えば、何もない犯罪者だなどと脅す奴がいる。当たり前だ、それ以外の何に見える。真理を突いた発言は理不尽な暴力で沈めてきた。それを行使するだけの権力がある。偽物だろうが力は力だ。

 「本物」になることなど、とうの昔に諦めた。「偽物」は偽物らしく、日陰の中でゴミ屑どもと共生していればいい。生まれた時から間違っていたのだ。自分よりも底辺の存在を見下しながら生きていくのが性に合っている。それ以上は―――

 

『神丘奉、魔術師の家系に生まれながらもろくに魔術を行使することが出来ずに、落ちこぼれの烙印を押された忌み子。出来の良い兄弟に痛めつけられ、両親からは虐待されて、気付いたら暴力の世界へ。なるほど、なるほど、実に素晴らしい転落人生だね』

「―――誰だ、てめぇ?」

 

 声を発するが早いか、背後の闇から聞こえてきた声に後ろを確認することもなく拳骨を突きだす。声の反応からして顔を近づけていたであろう相手の骨に少なからずの痛みを与えるはずだった拳は虚しく空を切り、その感覚の不自然さに俺は思わず振り返る。

 

 そこにはヒカリすら通さぬ路地裏に似つかわしくないような光が灯っていた。中空に浮かぶ光の球は、それ自体が意志を持っている様にこちらを見て笑っているような感覚を覚えた。

 

『子供のころから暴力塗れの人生の癖して、魔術師としての素養があるだけに他の者たちよりも筋が良かった。なるほど、なるほど、論理的にキミの状況を語れる。おめでとう、奉君。キミの人生は実にロジカルなキミの努力だけで描かれた物語だ。今ある地位は君が持てる力を振り絞って掴んだ地位だとも、喜びたまえよ』

「舐めてんのか、オラァ! ツラァ、見せろよォォォォ!!」

 

 おもむろに闇が広がる路地裏の中へと足を運ぶ。危機意識が低いと叫ぶ声があるが、それ以上に自分の中に踏み込まれたような不快感が勝った。誰の悪戯かそれとも俺を怒らせて闇討ちするつもりかは知らんが、身の程知らずに立場を思い知らせてやらなければならないだろう。

 

『怖い怖い。けれど、意味がないよ。「私」には実体がない。名前も覚束なくてね』

「身を隠して襲ってくるやつってのは大体、同じようなことを言うぜ。テメェもその口か?」

『いいねぇ、自分の住む世界でしか物事を計れない短絡的な思考、ううん、実に素晴らしい』

「御託はいい。テメェ、何がしたい?」

『――――聖杯戦争、魔術師の端くれなら聞いたことくらいはあるだろ?』

「――――ッ!」

 

 聖杯戦争、確かに知っている。魔術師同士で争われる万能の願望機を巡る戦い、勝利した魔術師はあらゆる願いを叶える聖杯を手にすることができる。ガキの頃に話しを聞いたことがある。もしも、自分が参加していれば、などと恥ずかしい妄想をしたこともあったかもしれない。

 

『その聖杯戦争、君に参加の資格を与えたい』

「は――――?」

 

 思わず、怒りも面子も忘れて呆けた顔をしてしまった。闇の先にいる存在がクスクスと笑っているように思えた。

『近々、この街で聖杯戦争が行われる。君にその参加者の一人になってほしいのさ。そのためにオファーを掛けに来た。悪い話じゃないだろう?』

「信用すると思っているのか?」

 

『さて、私はチャンスを与えるだけだ。モノにするか棒にするかは君が決めたまえよ。君以外にも候補者は幾つかいる。ただ、この街で君に声を掛けた意味を理解してほしいな。盛り上げ役として選出するなら自ずとキャストは決まってくる。この街の実情を知っているキミなら、この意味わかるよね?』

 

「遠坂とあの教祖、か……」

『偽物が本物になることはできない、それがキミの人生教訓だとしても、偽物が本物を喰らうことはできるかもしれない。一度くらい試してみるのも悪くないのではないかな?』

 

 例えばの話しだが、このふざけた声が言う通りに本当に聖杯戦争が始まったとすれば、間違いなくこの繁華街も戦場になる。そして遠坂と奴らがサーヴァントを手にすれば、連中がこちらを潰しにかかってくる可能性は非常に高い。

 三つ巴の均衡が取れているからこそ、今はまだどこも動こうとしないが、ほんの少しでもパワーバランスが変われば連中はこちらを喰らいに動くだろう。

 

『安心してくれ、声を掛けたのは君が最初だよ』

「そうか……」

 

 上手なのは間違いなく奴だ、こうして会話をする土俵へと上げられた時点で間違いなくこちらは掌の上に乗せられているのだろう。理屈としては分かる。何よりも偽物が本物を喰らう、その言葉は実に心の中に燻っていた過去の自分を想起させた。

 

 どうせ、何をしようとも偽物でしかない人生だ。ならば、これが最後の機会かもしれない。賭けに勝利すれば俺達はこの街の総てを手に入れることができる。まともなやり方では絶対に手に入れることができない「戦争」という大義が与えられるのだ。

 シマの奪い合いと仮定すれば、決して悪くはない。

 

『答えは、聞くまでもないかな。では、闇の彼方を見据えたまえ。そこに、が待っている』

 

 足を進める。路地裏の先に何があるのかなど考えもせずに進んでいく。次の路地に入ったと思った矢先だ。そこにぽつんとそれは立っていた。

 黒色の靄のようなもので全身を覆った四足の獣、犬か何かと思えるようなそれが、直感的に自分の使い魔であることを理解し、己の右腕の甲に赤色の紋章が浮かび上がった。

 

『令呪が浮かび上がったようだね、おめでとう。神丘奉。これで君はサーヴァント・バーサーカーのマスターだ』

 

 声の主が言った瞬間、俺の脳裏に無数の情報が書き加えられていく。聖杯戦争という事象への基礎知識、そして目の前にいる獣、バーサーカーという存在の本来の名前、その特性、端的に言えば戦う前の基礎知識というものか。

 だが、その持ち得る力や特性を知れば知るほどに理解させられることがある。

 

「おい、お前―――」

『面白いだろう、そのバーサーカーは本来の聖杯戦争では召喚することは極めて困難、あるいは召喚しようとすら思わないであろう存在だ。特性も非情に厄介でね、是非とも頭を使って運用してほしい。それとも、まさか召喚するだけで勝てるような存在を待ち望んでいたなんて言わないだろう? そんな「本物」の英霊は君には似つかわしくない』

「大した詐欺師だな、テメェは……!」

 

 最後に頑張りたまえよ、という声だけが耳をすり抜け、声の主の気配は何処にもなくなってしまった。結局、声の主が誰であるのかすらも分からない。

 

 ただ、これが夢の話しではないことは腕に光る令呪と目の前のバーサーカーがそれを証明している。まっとうに会話できるのかもわからない。そもそも、認識が狂っているとすれば行動指針に指示を出す事すらもできるかどうかわからない。

 何よりも、このバーサーカーは真っ当ではない。最大の特性を使いこなすことが出来れば聖杯戦争で無敵の存在になれるかもしれないが、それができなければただの雑魚だ。

 

「いい時間になっちまったな。クソ、無駄に時間を潰しちまった」

 

 今日はこれで仕事も終わりだと思っていたが、数分前には考えもつかないほどに、やるべきこと、考えなければならないことが生まれてしまった。

 厄介なことこの上ない、今更になって面倒ごとを抱えちまったと思うが、後戻りもできないのだろうとこれから先のことを考える。

 不自然なほどに聖杯戦争で戦うことを考えている。まるで自分がこうなることを望んでいたかのように。

 

「どうでもいい、組のためにもなる」

 

 どうすればこいつを聖杯戦争に勝つために運用できるのか。聖杯戦争がいつから始まるのかは知らないが、そうそう時間があるわけではないだろう。

 であれば……

 

「ひ、ひぃぃ、助けて、許してくれ!!」

「………あいつは」

 

 路地裏から出てきた俺の目の前を身体をよろけながら逃げ去ろうとする輩がいた。先ほど、若いのに任せていた男だ。

まぁ、大方こちらの要求に耐えられるほどの心持ちを持っていなかったという所か。仕方がない。クソにはクソらしい末路を与えてやるとしよう。

 恐怖に怯えながら逃げ出す背中を捉えることなど難しいことでも何でもなく、呆気なく男は俺に肩を掴まれ、地面に引き倒される。

 

「よぉ、どうした? うちの若いもんと競争でもしてんのか?」

「わ、若頭……ひぃぃ、ち、違うんです。これは―――」

「何が違うってんだよ、舐めてんのか、アァ? テメェと俺達の命の価値が同じだとでもまだ思ってんのか?」

「ゆ、許し、許してぇェェェェ」

 

 くだらない、どこまでも醜い。窮地に立たされて襲ってくることすらできない半端者、労働力程度にはなるか、あるいはさらに上納金を上乗せするか、どちらにするかと思案しようとした時に、ふと横を見ると獣が滾っていた。

 まるで餌を見つけたかのように。

 

「ああ――――」

 

 そうか、なるほど。合点がいった。俺が聖杯戦争で為すべきこと、どのように動くべきなのか、天啓を得たかのように閃いたからこそ、男の運命はこの瞬間に決した。

 

「喜べ、クズみたいなお前の人生に最後の輝きを与えてやるよ」

 

 そして、数十分後、断末魔の声を路地裏に響かせながら男は文字通りの餌となってその命を役立たせた。最後まで己が殺されるということに対しての恐怖を吐きだしながら、それを獣は喰らったのだ。

 

「なるほど、恐怖を喰らう、か。俺たちにはうってつけの獣じゃないか」

 

 ほんの僅かではあるが、サーヴァントの魔力の高まりを感じられた。なるほど、こういう戦い方をしろということか。理解が進めば、後は時間と人員だ。こればかりは俺一人では達成できない。

 しかしだ、

 

「聖杯戦争? くだらない。こんなものは所詮シマの奪い合い、我々は魔術師共よりもよほどその手段に長じている」

 

 見ているがいい、魔術師共。今はまだただの獣だが、俺はこいつを怪物へと仕立てあげよう。そうなった時にこそ、偽物でしかなかった者が本物を喰らい尽くす時となる。

 

 誰も知らない繁華街の闇の中で最初の鳴動は始まった。やがて来たる戦いの時まで、静かに、されど着実にその牙はこの街の中で醸成されていくのだった。

 

 バーサーカー陣営、恐怖蔓延のための活動開始―――聖杯戦争開始まであと20日

 




【CLASS】バーサーカー
【真名】???
【性別】不明
【身長・体重】不明
【属性】混沌・悪
【ステータス】
 筋力E~A+
 耐久E~A+
 敏捷E~A+
 魔力E~A+
 幸運C
 宝具E~A+
 
【クラス別スキル】
狂化:A
バーサーカーのクラス特性で、理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。人々の願う姿、在り方こそが何より狂化の源泉であり、どのクラスで召喚されたとしても、その行動には一切の変化が起こりえず、ステータス強化のみに寄与している

【固有スキル】
無辜の怪物:EX
生前、人々の信仰によって生まれたイメージにより本質を捻じ曲げられ、在り方が変容したスキル。顕現したそれは黒い靄のような存在であり、特定のカタチを持たない。

自己改造:A+
自身の肉体に、まったく別の肉体を付属・融合させる適性。
このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。獣は人々の恐怖の数量に応じて、その形、質量を変容させていく。また伝聞によって与えられたイメージをそのまま自分に付与させていくことができる。


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