――秋津市北側・唯一神理教総本山――
思い返す、かつて、己が自ら命を絶ったあの時のことを。来島達歴々の家老たちが口にした謀反を抑えきることが出来ずに、卑しくも帝に叛逆する者として御所を囲んでおきながらも、薩摩と会津によって、反逆者の汚名を着せられながら、鷹司の屋敷にまで逃げ込んできたあの時のことを。
「頼む、鷹司殿!! 関白たる御身より、もう一度、もう一度、帝に我らの想いを、攘夷は必ず成す。それができるのは真に異国のケガレどもと対峙する気概を持っている我らだけだ。異国に頭を垂れた幕府ではない。ましてや薩摩や土佐でもない。己の身可愛さに旗色を変える一橋が顔を利かせている一会桑など以ての外!!」
「………既に帝はその意思を明らかにした。帝はケガレたる異国人たちを認めぬ。されど、帝は決して幕府を壊すことなど求めてはいない。帝はただ異国人の存在が許せぬだけなのだ。久坂よ、理解せよ。そなたらは、負けたのだ。もはや、帝はそなたらを求めてはいない」
「…………ッ」
「そも、自分がもう一度、帝の前に立てるなどと本気で思っているのか? 帝を己の政治のために利用し、畏れ多くも偽勅までもを三条卿たちと共謀し、生み出したそなたらが何故、帝の前に立てると言うのだ。都を追われただけで済んでいるという現状に何故満足できたなかった。それすらも慈悲であろう。久坂よ、帝はそなたを信頼していた。そなたはそれを裏切った。それでも、帝はそなたを生かすことを選んだ。
何故――――それで満足できぬ? もはや時代は、そなたを求めてはおらぬのだ」
分かっている、己は政争に敗北した。長州の実権を握るために幕府と協調を結ぼうとしていた愚かな長井を失脚させ、三条卿たちと友誼を結び、京の都にて確かな己の実験を確立した。帝に取り入るために、帝に最も信頼されていた岩倉卿を三条卿たちと共謀し、都より追放し、攘夷より離脱しようとした貴族すらも手に掛けた。
己が謀略を生み出すことに掛けては非凡の才能を抱いていることは理解していた。だからこそ、私は帝というこの国の正統なる支配者のためにそれを使うことを望んだ。
黒船来航以後、帝は常に異国のケガレを祓うことを求めていた。しかし、惰弱たる幕府はもはや異国のケガレと戦うだけの力を持ち得ない。ケガレと手を結び、あまつさえ、ケガレたちをこの神国の中へと招く始末。
まったくもって度し難い、我らが徳川に艱難辛苦を与えられてより250年、臥薪嘗胆を願った長州の怒りは、もはや留まることを知らない。
だからこそ、己の才覚を使った。帝の願いを叶えるために、この国を神の国へともう一度戻すために。邪魔なモノは誰であろうと潰した。幕府の将軍であろうが関係ない。
江戸にて閉じこもっている軟弱な名ばかりの将軍を引き摺りだし、帝の前に立たせたその時、私は帝と共に歩むその先の未来を見たのだ。
後は帝の威光によって、幕府を取り潰し、帝という存在に依って統一された国がケガレどもを駆逐する。その間際まで来ていた。あと少しで幕府は終わりを迎えるはずだった。
ああ、いと憎しきかな薩摩と一橋、貴様らが帝を囲い込んだことに気づけなんだことこそがこの久坂の生涯最大の汚点。だがしかし、それ以上に許せぬのは……
「私は避難する。このような謀反で関白たる私が命を落としてはならぬ。私はまだまだこれからも帝に仕えねばならなうのだからな」
ああ、憎しいぞ、鷹司。我々と共に攘夷の決行を口にしておきながら、幕府や薩摩と通じ、まるで己だけは帝の味方であったかのように示し合せ、今この瞬間にも、己は無関係と示す貴族らしいその思考、逃げていく男の背中を私は強くその瞳に焼きつけた。
今でも思い出すことができる、こんな者たちが帝の傍にいるのだ、帝が真の攘夷を誤解したまま、我らが擦れ違ってしまったことも仕方がないことであったのだ。
主が消えた鷹司の居の周囲を、敵対する者たちが取り囲んでいく。帝を操ろうとした私を討てと誰も彼もが叫んでいる。愚かしい、私はただ、帝が本当に望んでいることを果たそうとしただけだったと言うのに。
「しかし、それが全ての過ちの始まりであった。私が目指した理想の国と帝が目指した理想の国は異なった。攘夷という目的こそ同じであれども、求めた世界は違っていたのだ」
私は帝による統一された国家を理想とし、帝は幕府が引き続き国を運営していく姿を求めた。それが始まりにして大きな差であった。
国とは何を以て生み出されるのか。人か制度か、あるいは法か……?
否、否、否、そんなものはすべて後付によって生み出される国を運営していくために必要な要素に他ならない。
国を生み出すために必要な要素は領土と主たる存在だ。私と帝は我らが国と異国人たちの住みつく他国を明確に分けた。これまで国を閉ざし、外から来る者たちを認識すらしていなかった我が国が、黒船という脅威によって領土の概念を再認識した。
あとは治める者である。幕府ではいけない、幕府は所詮各藩による分割統治を求めているだけだ。それでは国は成立しない。絶対的な象徴たる帝を奉じ、帝の為に闘うと言う絶対的な国民性を持ち出さなければ、無数の藩によって分割されてしまったこの国を統一することはできない。
しかし、帝はそれを望んではいなかった。帝による統一国家などを求めてはいなかった。ただ異国のケガレを払う、それだけが望みであった。
結局の所、我々は帝の気持ちなど汲んではいなかったのだ。帝の気持ちを理解して、帝の為に闘っていたわけではない。帝を奉じた己の理想国家を樹立したいと願っていただけなのだ。
今わの際に理解したその歪み―――あらゆるものを利用して、帝の為にと口にしておきながらも、なおも己のためでしかなかった歪んだ攘夷思想。
それこそが、帝に愛想をつかされた久坂玄瑞の愛国無き攘夷に他ならなかった。
「ああ、帝よ。私は貴方を見ていなかった。そして、貴方も私を見ていなかった。それこそが我らの過ち、それを見抜けなかった私の愚かさをどうか赦していただきたい」
もはや生き残るすべもなく、道理もない。久坂の命運はここに断たれた。ああ、口惜しきかな。されど、ここから逆転するための術はない。そんなものがあるとすれば、それこそやり直す以外に方法はないだろう。
「ああ、帝よ。もしも、もしも、もう一度、貴方を奉じ、貴方のために我が知略を使う時が来るとすれば、その時は―――我らが共に同じ願い、同じ理想を抱きましょうぞ」
そうだ、もしも、己と帝が全く同じ理想、同じ願いを抱いていれば、こんな無様な結末になることはなかった。帝に率いられた異国の汚れを討ち果たすための挙国一致の討伐軍。攘夷を願う誰もが一つになることが出来たとすれば、己は必ずこの国を変えることが出来たと言うのに。
願う、願う、心の底から、この末期の瞬間に祈る。どうか、この未練を晴らす機会を与えてくれ。その機会を与えてくれるのであれば……、己はあらゆる知略を振り絞って、必ずや天下をこの手に掴みとって見せよう。
「ああ、帝よ―――どうか、どうか、今度こそは久坂に真なる尽忠報国を!!」
まるで断末魔のような叫び声を上げながら、無人の鷹司邸の中で、久坂玄瑞はその短い生涯に幕を引いた。いずれ、再び目を覚ますその時に必ずやその末期の祈りを叶えることを誓って。
「どうして……、キャスターは斃したはずでしょう! なのに、どうして、キャスターの宝具として召喚されたはずの貴方がまだ此処に残っているのよ!」
「くっ、くく、くはははははははははははははは」
そして今、総てが現実に成ろうとしている。帝と己は完全な形で同じ道を歩んでいる。この覇業のためであれば、誰であろうと己の掌の上で転がして見せよう。油断も慢心もしない。総てを己が操って見せる。総てを使って天下を取るのだと、あの日に誓ったのだから。
「いやいや、すまないな。キミがあまりにも予想通りの反応をしてくれたことに笑いを隠しきることが出来なかったのだよ。キミたちは勘違いをしている。
いまだ、我らの陣営は負けてはいない。むしろ、我々は今尚、我らの勝利に向けてまい進しているのだからな」
――秋津市東側・住宅街エリア――
「なんだか、今でも自分の中で処理しきれないと言うかなんとかいうか、あたしたち勝った、んだよね……?」
「ええ、キャスターの魔力反応は完全に消失を確認しました。もはやあそこは何も残ってはいない。多くの嘆きを与えてしまったことだけが心残りですが……それでも、これ以上、彼ら彼女らが戦いに巻き込まれることはないでしょう」
唯一神理教における闘いは終わりを迎えた。あたしは直接、その決着を見ているわけではないけれど、キャスターのいる場所にまで辿り着いたマルテルさんとアーチャーの攻撃でキャスターは消滅。
そしてキャスター陣営を倒すために協力していた巫女服の女性、たぶんあたしたちと同じくらいの年齢の子から渡された書状を蓮司君のお父さんに渡せば、それですべてが終わりを迎える。
(もう一人の女の人、巫女服の子と同じ組織なのか。それとも、ライダー陣営の人なのかな。なんだか、どこかで見たことがあるような、ないような……)
うーん、なんだろう。なんていうか、ちょっと前に見たことがあるような、見たことが無いような、そんなどこか曖昧な記憶の中であったことがあるように思えるんだけど、うーん、あたし自身、そこまで記憶力がいいと言えるわけじゃないし、よくわからないなぁ。
「改めて、ありがとう、七星さん。今日のキャスター陣営を倒すための戦いを成功させることが出来たのは、七星さんとランサーがいてくれればこそだった。キミと一緒に戦えたことを心から誇りに思うよ」
「あ、えっと、あたし、そんなの凄いコトしていないと思うけれど……」
「一瞬とはいえ、桜色の髪の剣士の気を引いたのは十分な活躍であったと思います。その後も防御前提とはいえ、剣士たち相手に場を持たせていました。たった2日程度であるとはいえ、貴女の成長を見れたことは私としても嬉しいですよ、桜子」
「あ、あはは、みんなに褒められると恥ずかしくなってきちゃうな……」
今まで、お世辞にも自分自身が活躍できたと言えるほどの事が無かったからこそ、自分の努力をしっかりと認めてもらう事が出来たみたいで嬉しかった。
あたしのやっていることは真面目に魔術を学んでいる人たちからすれば、邪道もいいところだし、剣の修行だって我流でまだまだなところがあるのは認めるけれど、それでも我武者羅にマルテルさんとぶつかってきた甲斐があったと認めてもらえるのが嬉しかった。
「ランサー、あたし、もっと強くなるよ。もっと力になれるように、ね!」
「本当のことを言えば、あなたにはあまり前線に出てほしいとは思っていないのですが、まぁ、今更でしょうね」
「うんうん、今更今更。あたしは最後までやるよ」
果たして、今日、あたしがやったことが正しいことだったのかはわからない。街の中は騒然としている。ライダー陣営が陽動を果たすためにキャスター陣営と大規模に激突をしたらしい。その余波でこの住宅街の方も騒がしい。繁華街や南の郊外の方も同じ。
聖杯戦争が続く限り、街の平和は脅かされる。兄さんたちが引き起こしている動画騒動だって兄さんたちを逃がしてしまった以上、変わることなく続いていく可能性は非常に高い。今回のキャスター陣営を倒したことで聖杯戦争は間違いなく更に戦いを加速させていくだろうけれど、あの物騒な剣士たちがこの街の中を歩いている状態を終わらせることだけは出来た。
(あたしには叶えたい強い願いがあるワケじゃないけど、聖杯戦争を終わらせることができるのならそれでいい。蓮司君やセレスさんたちと協力していけばきっと、それができるはずだから……)
「それにしても、七星さんは凄いな。もしかしたら、本当に抜かされる日が来てしまうかもしれないな」
ポツリと蓮司君がそう呟く。その言葉の意味が分からないほど、あたしも鈍感じゃない。2日前にいきなり魔術が使えるようになったあたしと子供の頃からずっと魔術を学び続けてきた自分、聖杯戦争を戦い抜く中で蓮司君から見ればあたしの方が活躍していると捉えているのかもしれない。
「そんなことはないよ、今日だって蓮司君がサポートしてくれたからあたしは山門を越えてから戦えていたようなものだよ。っていうか、いまだに剣を具現化するくらいの事しかできないし、蓮司君の方が全然すごいじゃん!」
「だけど、僕はまだ――――」
蓮司君の腕を掴む。何か考えていたわけじゃないけど、たぶんそうするべきだって思ったから!
「蓮司君、蓮司君の家、行ってもイイ?」
「へ、えぇ……!? ど、どうして……?」
「蓮司君のお父さんに今日の蓮司君すっごく頑張っていたって言う。めっちゃ助けてもらって頑張っていたって伝える!」
「そんなことをしなくても、使い魔で見ているだろうし……、それにそれならアーチャーが言えば……」
「ふむ、私が言えば、煉殿はマスターの息子をひいきにしているだけだと思うかもしれない。であれば、七星嬢の口から言った方が理解が得られるかもしれないな」
「ちょっと、アーチャーまで……!」
「そう怒らないでくれ。私としても、キミはもっと煉殿に対して主張をしてもいいと思っているよ。年長者、生みの親を敬うのは人としての道義ではあるが、煉殿は自身の固定観念にとらわれ過ぎているきらいが見える。客観的な情報を得れば、誇らしくも感じるだろう。自信を持ちたまえ、キミは私と共にこれまでの聖杯戦争を戦ってきたのだから」
アーチャーの言葉に蓮司はしばし黙った。桜子の献身的な言葉とアーチャーの言葉に何処か煉との関係性に新たな切り口を入れようとしていることを自分が恐れていることに気付いた。
今でも自分は信頼されている。きっといつか認めてくれる。だから今はこれでいい。そんな思いは全て今の現状を変えたくないという思いから生まれたものであることに他ならない。
誰よりも父に認めてもらいたいと思うのと同時に父に拒絶される、あるいは自分が成果だと思っていることを否定されてしまったら、自分はきっと立ち直れないと言う弱い心が招いたこと。
遠坂蓮司は弱いのだ。信じられるはずのクラスメイトを疑いもするし、自分の踏み抜いてきた足跡を信じることもできない。だから、父から投げかけられる言葉次第では折れてしまうかもしれないと思っていたから、都合の理由をつけて、自分はそれでいいのだと言い続けてきた。
けれど、二人の言葉に背中を押された。自分が尊敬する相手と一目置く相手から掛けられた言葉は少しだけ、蓮司の自己肯定感を高めてくれた。
「いいのかな、僕が父さんに自慢をしても。凄い人たちと一緒に成果を上げて来たんだって声を上げても」
「勿論、だって、本当の事だもん! それを口にして、心から笑える蓮司君の方が、あたしは好きだよ!」
「好き……、あはは、そっか。そうか。七星さんはそう言ってくれるのか」
控えめな言葉でも、それは蓮司なりの変わろうとする想いの発露だった。そして、認めてほしいと思っていた相手はそんな彼が好きだと言った。
だったら、少しだけ勇気を出してみるのも悪くない。だって、言葉にはしないし、自覚が何処まであるのかも本人自身わからないが、七星桜子が好いてくれる遠坂蓮司がいるのなら、それは頑張ってみるだけの価値がある自分なのだと思う事が出来たのだ。
「自分でも何処までできるのかはわからないけれど、頑張ってみるよ。変わっていく七星さんに僕も置いていかれたくないから」
こんな自分にこうして手を差し伸べてくれる彼女を裏切りたくはないと思う。聖杯戦争がこの先、煉の思惑によって、どんな形に転んでいくとしても、桜子とだけはこの関係を続けていきたいと思うからこそ、自分も変わらなければいけないと思う事が出来たんだ。
・・・
「そうか、蓮司たちは成功したか。こちらの盤面自体は用意をしておいた手札が全て予定通りの行動をしてくれた結果として引き起こされた出来事であると言ってしまえばそれまでかもしれないが……ああ、よくやってくれたよ。心からそう思うとも」
自身の魔術工房にて、遠坂煉は今宵の戦いが幕を終えたことを理解した。唯一神理教総本山に存在していた巨大な魔力は消失し、マスターである唯一の死も使い魔によって観測された。街中では蜘蛛の子を散らすように志士たちが撤退を始めたことも確認されている。
「だが、妙でもある。キャスターが消滅したにもかかわらず、まだ完全にあの手下たちが消滅していないのは気がかりだ」
本命を倒したことは間違いないが、消滅の瞬間に発動する宝具の類が存在するのかもしれない。あるいは、キャスター自身の核が別にあり、まだ完全に倒しきれていないのかどうか。
「とはいえ、それでもマスターを失った時点で連中はもはや継続戦闘が可能な状態ではない。あれほどの配下を引き連れるには単独行動のサーヴァントでは魔力を賄いきることができない。儚い抵抗を続ける可能性は考えられるが、それでも大勢に影響はない」
「最悪の場合は、こちらの陣地も襲撃される可能性も見越していたが、そこはライダーが上手く隠れ蓑になってくれたな。正直なところ、彼が同盟を組み、囮になってくれると口にしてくれたときには胸を撫で下ろした気分だったよ」
キャスターの配下たちをどのように処理するのかはやはり、煉にとっても大きな問題であった。本来であれば、この屋敷そのものを迎撃用の術式で埋め尽くし、煉自身も前線に立つことを考慮に入れていたが、結局はそれも必要ない状態で終わったのだ。
文句のつけようもないだろう。煉は思い出したように引き出しを開く。そこには一つの短剣が収められていた。
「我が父より受け継いだアゾット剣だが、果たしてここから先にこれを使う時は来るのかな」
キャスター陣営が消滅した以上、もはや相手となるのは魔術師として煉に唯一、肉薄できるであろうロイ・エーデルフェルトだけだ。
ランサーやアサシンの協力を取り付けたうえでセイバーを倒すことは前提としても、ロイを御するには煉自身が戦場へと出る必要があるだろう。
(気がかりがあるとすれば……、勢至姆組か)
バーサーカー陣営には定時的な報告を課している。彼らを拘束しているのはあくまでも口約束に過ぎない。破ろうが破らまいが煉としてはどちらでもいいのだが、後者を選んでくれた方が聖杯戦争を勝ち抜く上では楽が出来る。
後者を選ばせるための誘導手段として、定期的に自分たちの状況を知らせるための連絡をさせていたのだが、それが先程、定時になっても連絡が送られてこなかった。
勢至姆典嗣という人物は約束は必ず守る。仁義に基づいた古臭い流儀に囚われている彼であれば約束を取り違えることは流石にないだろうと考えていたのだが……、
「さすがに何もかもが自分の思い通りになるわけではない、というところか。私もどうやらまだまだ修行が足りないと見える」
何にしても、キャスター陣営を事実上壊滅にまで追いこんだことは喜ばしい。アーチャー陣営単独でことを為すことが出来なかったためにライダーやランサーに借りを作る羽目になったが、煉自身、そちらは平和的に解決したいものだと思うばかりだった。
「それにしても……、七星桜子か。彼女がマスターになった以上、七星桜の願いは叶えられなかったわけだ。馬鹿な女だな、聖杯を目の前にしておきながら聖杯を掴むことを認めなかったとは。所詮は、魔術師を狩ることによってしか名声を高めることが出来なかった一族か」
遠坂煉は七星家を好意的な目では見ていない。あれはイレギュラーだ。聖杯戦争に入り込んできた外来の魔術師がまかり間違って聖杯を掴みかけていたなどと、御三家として恥もいい所であったはずだ。
「蓮司が彼女と友好的であったことは実に都合がよかった。蓮司を通して彼女には聖杯を諦めてもらうべきだ。セイバーやバーサーカーとの決着がついた後でならば、彼女も交渉に応じる可能性は高い、そもそも、この秋津に住んでいる時点で、私に逆らうことは出来ん。平和的に彼女には聖杯を譲ってもらう形にしてもらおうじゃないか」
そう呟いた折だった。屋敷の入り口が開かれ、蓮司たちが戻ってきたことを魔力の反応で探知する。数は四つ、おそらく七星桜子たちもいることだろう。
「ふむ、キャスター討伐を成功させたことは紛れもない事実だ。蓮司にもその対価は賞賛として与えてやらねばなるまい。無論、七星桜子にもな。今はまだ、彼女の機嫌を取っておくべき時だ」
遠坂煉はどこまでも合理的に動く。人の感情というものを彼は信用していない。
どこまでも合理的な話しの流れと、世における関係性を以て相手を見据える。どこまでもリアリストであるが故に、肯定的な反応を浮かべるとしてもそれは計算された先の反応である。
足音が工房へと近づいてくる。警戒的な足音ではなく、あくまでも報告をするための足音、アーチャーは上手く彼らの関係性を制御してくれているらしい。
「父様、ただ今戻りました」
「ご苦労だったね蓮司。首尾はどうだったかな?」
「はい。キャスターはアーチャーとランサーが、マスターである鷹司唯一は一宮梓沙さんが倒しました。キャスター陣営の聖杯戦争からの脱落は間違いないと思われます」
「結構。素晴らしい対応だ蓮司。流石は私の後継者だ。お前とアーチャーならば必ずやり遂げてくれると信じていた」
「あ、ありがとうございます……」
決意を固めて入ってきた蓮司は、煉が想像以上にあっさりと蓮司のことを認める言葉を口にした。
「蓮司君、頑張ってました。もっと褒めてあげてください」
「使い魔で状況は確認していたとも。蓮司は遠坂の後継者として自分が発揮できる最大のパフォーマンスを発揮した。結果として大きな懸念であったキャスター陣営を崩壊に導いたのだ。称賛は受けて然るべきだろう」
「父様……」
「蓮司、お前がここまで成長してくれたことを私は誇らしく思う。私は人の親として不出来かもしれないが、私が父に学んだように、お前が一歩ずつ成長してくれていることを嬉しく思うよ」
蓮司の身体が震える。そのような言葉を掛けてもらえるとは思ってもいなかったからであろうか、決意を固めたからこそ、受けた言葉は彼にとって望んでいた言葉であった。
「魔術師の家系に生まれたことで辛いこともあるだろう。しかし、お前ならば必ず大成する。この聖杯戦争に生き残り、そして次代の遠坂の後継者として、私以上に遠坂を発展させてくれ。今日のお前の働きを見て、私はその想いを確信した」
蓮司の表情がパッと明るくなる。煉にとってその言葉は蓮司を奮起させるために告げた言葉に過ぎないのだが、それでも彼はそれを受けとり喜びの表情を浮かべていた。
であれば、それでいいではないか。結果として蓮司はこれから先も奮起を続けていくだろう。理想的な親子関係というものがどんなものであるかは知らないが、少なくとも遠坂の親子関係はこれで成立を続けてきた。ならば、これでいい。変化は必要ない。
この親子の在り方こそが遠坂の伝統なのだから。
「さて、梓沙嬢から何か受け取ってはいないか?」
「そ、そうでした、ごめんなさい、父様。梓沙さんからこの書状を」
「ああ、ありがとう」
書状を受けとる。一宮梓沙の立場は極めて危険な位置にある。彼女はキャスター陣営との戦いの中で命を落とす可能性が非常に高い。あるいは、他の陣営に利用される可能性もあるだろう。それを見越してこの書状をもって証明の形とする。提案を受けた際には煉も二つ返事でそれを了承した。
秋津の街の管理者として必要な行動であったとはいえ、こちらもリソースを割いて戦っているのだ。神祇省の協力が得られなかったなどという展開は求めていない。
「それで、父様。七星さんとのことなんだけど……」
「ああ」
「できることなら、七星さんとはちゃんと決着をつけたいんだ」
「そうか」
煉は書状の封を開く。中に何が書かれているのかを確認しなければ土壇場で寝首をかかれかねない。その作業に意識が向いているからか、既に蓮司の言葉は話半分で聞く様子に変わっていた。
「だから、他の陣営を倒すまで、七星さんとは争わないでほしいんだ」
「…………」
書状の中へと目を通す。蓮司の言葉に反応すらしていなかった。
「勿論、決着はつける。だけど、その決定は僕に――――」
「蓮司よ」
「は、はい……」
突然、声を掛けられたことに蓮司はビクリとする。煉の手が先程閉じた引き出しの取っ手へと向き、中のアゾット剣を取り出した。
「話は変わるが、天皇陛下は素晴らしい存在であるとは思わんか?」
「え―――――?」
偽 勅 到 達 第 三 宝 具 権 能 解 放
『攘夷親征 大和行幸ノ詔』
「我ら日本国民にとって、天皇陛下に尽くす事こそが誉れ。それはこの聖杯戦争に置いても変わりはない。私は遠坂の魔術師である以前に日本人であるのだから」
煉がアゾット剣を握る。その表情は平時の当主であり、父である時と変わらず、だが、その言葉はまるで煉の姿を借りた全くの別人が口にしている様にしか蓮司には思えなかった。
「そして、天皇陛下は勅を出された。神国統一の為に、この命を捧げよと。であれば、私は帝の臣として、それを実行するのみだ」
「煉殿、いかん!」
「アーチャー、令呪を以て命じる。邪魔をするな」
煉の腕に刻まれた令呪が光り、動き出そうとしたアーチャーの身体が止まる。異様な空気が漂う。ここがまるであの唯一神理教の本山にいる時のようで………
「蓮司君、煉殿を止めろ!! その書状に刻まれた魔力は―――キャスターの纏っていた魔力の質と同じだ!!」
「父様……」
だが、アーチャーの言葉を耳にしても蓮司は、目の前で起きている事態に身体が動かなかった。突然の出来事に彼の思考は真っ白となり、そして―――
「おお、天皇陛下万歳ィィィィィィィィィィィィィィ」
煉が自身の心臓目掛けて、アゾット剣を突き刺す。背中まで貫通した刃は、あらかじめ煉が敵を迎撃するために設定していた魔術によって構築された呪いが付与されており、突き刺した瞬間に、彼の心臓に致命的な損傷を与える。
「あぁ………」
ドサリと、その身体が先程まで煉が肘を置いていた工房の机に叩き付けられる。机にうつぶせの形で倒れ込んだ煉の顔に生気は一切見えない。
口元から流れてくる血が机に置かれた書状へと流れていく。
誰もが目を見開いているほかなかった。それほどまでにあまりにもあっさりと、あまりにも呆気なく、アーチャーのマスター、遠坂煉は二度に渡る聖杯戦争の宿願を何ら叶えることなく、その命を絶たれた。
もしも、そこに幸福があったとすれば、彼はその最後の瞬間に、自分が敗北者になったことを知ることなく逝くことが出来たことだけなのかもしれない。
何せ彼は、己が組み上げた策謀の数々の総てを成功させながら、その上でその策謀の上を行かれたのだから。
――秋津市北側・唯一神理教総本山――
「いつから、キミの正体を知っていたのか。そう問われたのであれば、私は当然にこう答えるよ。キミが本山に登ってきたその時から知っていたと。キミとて、常々から感じていたのではないかな? 私がキミを監視しているような視線を向けていると」
「最初から、ずっとわかっていて、ずっと泳がせていたって事……? でも、私の素性を知らない筈でしょ。それなのに、どうして……」
「キミは秋津の街に、我々の信者がどれ程の数いるのか、正確な数を知っているかね?」
「そんなのわかるわけが……」
「ああ、そうだ。わかるはずがないだろう。分かるはずがないからこそ、キミたちの身近に我らの信徒がいても何らおかしなことはない。私は唯一殿や帝と共にこの唯一神理教総本山に身を置きながら、我が同志たる志士たちと信徒たち、そして帝の言葉に共感を抱いてくれた者たちの目と耳を使って、召喚されてから今日まで常に秋津の情勢を掴み続けてきた。キミたちだけではない、他の陣営の素性もあらかたは知れている」
その言葉を聞いて、私は最悪の想像が頭をよぎる。先ほど、コルテスによってこの総本山の中に乗りこんできたと思っていたあの連中、私一人を入れこむことが肝要だと言っていたコルテスがどのようにして、彼らを送り込んだのか不思議で、でも、あいつならやってのけると信じていた。いや、そのように都合よく解釈してしまっていた。
でも、もしも……、もしも、最初からコルテスの配下たちの中に唯一神理教に内通している人間たちがいたとしたら、ただ、その連中が私たちの行動に連れ添う形でこの本山に戻って来ただけだとしたら……、
「もっとも、踏み込めたのは勢至姆組とキミたちの組織だけだがね。キミが自分からライダーのことを告げてくれたときにはありがたかったよ。キミをここに潜りこませるような相手だ。必ず、他の陣営と同調して今日という日を迎えるために動いてくれると信じていたからね。おかげで、私としても積年の願いの一つを果たすことが出来た」
「最初から、此処を襲わせることが狙いだったって言うの……? どうして、そんなことを……」
「そうするように仕向けていたからだよ。我々唯一神理教及びキャスター陣営としての最大の武器は何だと思う? サーヴァントに劣る程度の軍団を無数に呼び出せることか? 確固たる拠点を持ち、信徒の多くを魔力源として使える事か?
否、否、我らの最大の武器はその数を以て手に入れた情報力だ。志士たちや信徒に網を張らせ、逐一、情勢を知り、我らが本格的に動き出す前に撃破しようと動き出す勢力を呼び寄せる。その土壌を創り上げる。
よく覚えておくとイイ、九重円華。策とは、成功すれば勝利が決まるものではない。それを実現すれば総てが己の思うままとなる。それをして、策を為すと言うのだ」
久坂玄瑞、私の目の前でまるで種明かしをするように、今、私が置かれている状況を語ってくる。予感はあった、こいつには私の事がバレているんじゃないかって予感はこの3日間ずっと浮かんでいたことだった。
だから、驚きはしても、それが決定的な何かに繋がるわけではなかった。だって、キャスターは斃している。ランサーとアーチャーによってキャスターが倒された以上、キャスターによって呼び出されたコイツも一緒に消滅することは間違いない。
「……私達の事が知られていたのはいいわ。それでも鷹司唯一と貴方たちの主であった帝、キャスターは消滅した。久坂、それは最後の負け惜しみ? 自分たちの策は成功したけれど、帝を守りきれなかった時点で、もう貴方たちは消えるだけじゃない」
「ふむ、そうだな。その通りだ。そのように思っていてくれていなければ、今日という日にキミたちを誘い込んできた意味がない」
「え……?」
今度こそ嫌な予感が自分の中で明確になってきた。順調に進んでいるはずだった、私が唯一に手を下すことはできなくても、梓沙さんがやってくれた。だから、この戦いは私達の勝利で終わった。そのように思っていた。キャスターが消滅した時点でそれは間違いないことのはずなのに……こいつは私達を錯乱させようとしているだけのはずなのに。
どうして、背筋に寒気が奔るのか。
「我々の帝、後の世に言う孝明帝は、攘夷をこそ望んでいたとしても、幕府を滅ぼし、己が国を生み出すなどという願いを持ち合わせてはいなかった。帝はただ、異国人を排斥できればそれでよかった。国という概念など持ち合わせてはいなかったし、己の周りに蔓延るケガレを振り払う程度の認識しか持ち合わせていなかった」
「そして、我々攘夷志士と呼ばれる者たちも決して一枚岩で結束した者たちではなかった。攘夷を為し、異国人を排斥するという共通した意識は持ち合わせていたとしても、我らは所詮、寄せ集めの烏合の衆。それぞれがそれぞれの利権のままに動き、時に協調し、時に敵対した。あまつさえ、帝が願っているからという理由の下に京を騒乱の街へと変えた」
「何が……言いたいの……?」
「わからぬかね。我らがマスター、鷹司唯一は異国人を打ち払い、日本人だけの国家を生み出すと言う願いを触媒にして、我々を召喚した。
しかし、孝明帝はそのようなことを望んではいない。願いを触媒にしておきながらも、唯一殿にとって最も縁深い英霊であるはずの存在はその根底に至る部分でその願いに該当しない。だからこそ、帳尻合わせが行われた」
円華は知らない。鷹司唯一の召喚手法が彼が独自に研究し編み出した方法であったことを。神祇省の潜入者である梓沙でさえも召喚は不可能であると思わせるほどの強引な方法によってキャスター陣営は召喚されたと言うことを。
「万世一系の帝として攘夷志士たちという武力を纏め上げる力を持ちながら、明確な国家ビジョンを持ち合わせなかった孝明帝、そして武力を十全に機能させる才を持ちながらも、武力を纏め上げることが出来なかった者、それら2つを1つに繋ぎ合わせることによって、鷹司殿が思い描いた―――攘夷を実行するための帝の軍団は生み出された」
そして、円華は知らない。キャスターの宝具によって召喚された攘夷志士たち。あの日、強引な召喚手法によって召喚された帝が宝具を使用する前から、この久坂という男だけは現界していたと言う事実を。
キャスター陣営以外の6陣営が知りえない致命的なまでの情報齟齬、それはキャスター陣営という組織の正体を理解させるための決定的な事実を隠匿する上で絶好のアドバンテージとなっていた。
そう、遠坂煉や九重円華はその必要な情報を本来であれば知りえるはずだった。
「―――久坂様、令呪の移植、完全に終了しました。令呪を用い、帝と志士たちの再生を実行します」
「梓沙、さん……」
それこそが、今宵、キャスター陣営へと挑んだ者たちの最大の失策であった。大前提としてみなされていたモノ自体が、空虚な、生み出されたモノであったとすれば、それに基づいて計画されたすべてが水泡に帰すことは当たり前の帰結に他ならない。
「初めからすべて、といっただろう。それは何も君が唯一神理教に入りこんだ時からではない。私は遠坂と勢至姆組の協力関係も、キミたちと遠坂の同盟も、そしてどのようにここに攻め込んでくるのかも、その総てを知っていたよ。
何故か―――単純なことだ、一宮梓沙に同盟の提案をさせたのは、他ならぬこの私だからだ」
「そん、な、あ、梓沙さんっ」
ガッシリと腕を掴まれる。私の後ろにいた梓沙さんは、私の両腕を掴み上げると女性とは思えない腕力の強さで、まったく振りほどける気がしない。
「我らが帝は万世一系、日本人である限り、誰であろうとも帝の言葉から逃れることは敵わない。例え、訓練を積んだ神祇省の人間であったとしてもその大原則から逃れることはできない。不思議に思わなかったのかね、何故、彼女が我らの陣地の中でただ1人だけ正常を保つことが出来ているのかに」
「それは帝も、唯一も、梓沙さんの事に気づいていなくて―――」
「ああ、気付いていなかったな。私を除けば」
こと此処に至れば、私も全てに理解が行き着く。これは最初から仕組まれていたことだった。何のことはない、キャスターが召喚されたその日に、梓沙さんは既にキャスターによって支配下に置かれ、さも、支配下に置かれていないかのような思考をしていただけ。
行動も目的も全ては久坂が今日という日にこの総本山を攻めさせるためにあえて演出してきたこと。それがあまりにもキャスター陣営を害する行動であったから、違和感は覚えても誰も不思議に思うことはない。
何て浅はかさ、キャスター陣営という特性を知っていれば、迂闊に攻撃するなんてことはできないのに、自分たちはまんまと唯一と帝を倒せれば、戦いは終わる。それは可能なことなのだと誤認させられてきたのだ。
総ては目の前の男の掌の上。私達が立っていた足場の総てを崩し、遂に正体を晒した男は高らかに嗤う。今宵の勝者は、最後に笑ったのは己だったと。
「では、改めて自己紹介と行こうか。サーヴァント:キャスター、その真名は『孝明天皇』並びに久坂玄瑞。我らは共に個では英霊の座には届かぬ者、故に我らは2人で1つのサーヴァント。我らのどちらかが残る限り、キャスターの消滅は起こりえない」
「そして、キャスター陣営がマスター、一宮梓沙。これが私たち、キャスター陣営の、久坂様が望まれた体制です。いかがでしたか、円華さん。夢は見れましたか?」
策謀の夜はこれにて終わる。勢至姆組は内部崩壊を起こし、コルテスは多くの手駒を失い、唯一神理教は壊滅。遠坂煉もまた命を落とした。
その総てを直接的、間接的に演出した久坂だけが今も高らかに嗤っている。
天高らかに、今宵の勝者が誰であったのかを宣言するかのように。
【CLASS】キャスター
【真名】『孝明天皇』&久坂玄瑞
【性別】男性
【身長・体重】180cm/60kg
【属性】混沌・中庸
【ステータス】
筋力E
耐久E
敏捷E
魔力B
幸運D
宝具A+
【クラス別スキル】
陣地作成:B
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。キャスターにとっての陣地である唯一神理教総本山一体を中心にキャスターのスキル効果範囲を影響力に応じて広げる。
道具作成:C+
キャスターの書き上げた文は志士たちにとって絶対服従の理を課す。
【固有スキル】
無辜の怪物:B
生前、人々の信仰によって生まれたイメージにより本質を捻じ曲げられ、在り方が変容したスキル。召喚者によって願われた理想たる激烈なまでの攘夷思想の持ち主。人々は彼の願いを叶えるために攘夷の実行を願ったという理想の象徴。
万世一系:EX
日本国開闢以来、常に国家の主であった帝の血族に与えられるスキル。日本人に対しての絶対的な命令行使権を与えられる。純粋な日本人である限り帝の命令を拒絶する、意思に背くことはできない。ただし、スキルの行使は帝の声を聴く、勅許を見るなど、スキルを持つ当人からの行動でなければ反映されない。
尊王攘夷:A
神たる帝を敬い、ケガレたる異国人を討ち払うという神国の思想。キャスターに従う志士たちへ、強力な「異国人」特攻を与える。ただし、中国人、朝鮮人、オランダ人には適用されない。
攘夷の意志:C
生前、共に肩を並べることが無かった2人の人物を繋ぎ合わせている絶対的な意思。この意思を共有する限りは、彼らは意思の顕現者として一体のサーヴァントとして、在り方、逸話などの総てを共有する存在となる。ただし、万世一系のみは久坂には反映されない。
【宝具】
第一宝具「草莽崛起義挙到来」
ランク:B
種別:対人宝具
レンジ:1〜50
最大捕捉:300人
久坂の師たる吉田松陰によって提唱された思想を基にした宝具。
かつて異国より日ノ本を守護するために尊王攘夷を掲げて立ち上がった帝の兵士―――草莽の志士たちを召喚する。
召喚された志士たちは一人一人が独立したサーヴァントとしての能力を持ち、生前に培った技能を使いこなすことができる。あくまでもキャスターより与えられる魔力によって活動するため、本来のサーヴァントよりも弱体化はしているが、魔力供給が潤沢であれば通常のサーヴァントにも引けを取らない活躍を果たすことができる。
彼らは生前の彼らの意志が色濃く反映されるため、一人一人が独立した思考を持って行動する。一見すればバラバラな行動になりがちではあるが、唯一つ、攘夷完遂という目論みだけは変わることなく一致し、帝の意向を果たすために行動する。
第二宝具『御国ノ御民』
ランク:D
種別:対人宝具
天皇は国家の主であり、日本国民すべては天皇の民であると言う復古神道に基づく思想。
国家の象徴である帝とその兵士たる存在達を一つの存在として認識し、彼らそのものを攘夷の意志として定める。孝明天皇と久坂は常時このスキルを発動し、どちらかが滅び去ったとしても、片方がいる限りサーヴァントとしての体を保ち続けることができる。この宝具を無力化するには、双方をほぼ同時に倒す必要がある。
第三宝具『攘夷親征 大和行幸ノ詔』
ランク:A
種別:対心宝具
孝明天皇に攘夷の決行を決断させるために久坂と貴族たちが天皇の意思を無視して勅許を偽造したことに由来する宝具。
本来、帝の意志を書き記したものである勅許を、偽勅という形で久坂だけの意志で生み出すことができる。
この偽勅は、帝の意志と同一であるため万世一系のスキルを帝自身を介さずして発動することができる。
条件としては勅許を相手が直接見ること及び相手が日本人であること。制約が厳しい宝具ではあるが、万世一系の最大の弱点である帝を直接介さなければならないという距離的な条件を無視することができるのが最大の強みである。
【マスター】一宮梓沙
【性別】女性
【年齢】17
【身長・体重】160cm/48kg
【所属等】神祇省退魔部門構成員