※この作品はR-18です。

Fate/Urban Crisis   作:ソクリ

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聖杯戦争NTRものの始まりだー


プロローグ6:ライダー陣営 ★

 その日は、私にとって忘れることのできない人生最悪の日だった。

 

「んっ……くっ、痛っ……そ、それ以上は―――」

 

「おいおい、まさか初めてかよ。こんだけの上玉をこれまでずっと放りっぱなしにしていたのかぁ? 俺様を召喚したマスターってのは、とんだクズ野郎じゃねぇか、それともお前の見る目がないのか? どっちでもいいか、破っちまったもんはもう戻らねぇンだから!」

 

 どうして、こんなことになってしまったのだろうと思う。今日は、私にとっても彼にとってもやっと訪れた約束を果たす日で、ささやかではあれども幸福に満たされるはずの日だったのに。

 

 なのに、どうして今の自分は―――先程出会ったばかりの相手に、名前すらもロクに知らない相手に対して、股を破瓜の血で濡らして、彼のために大事に取っておいたはずの証を明け渡してやらなければいけなかったのか。

 

「うぅ……ぐぅ、もう、やめ……あぁっ、あっ」

「何だ、もう気持ち良くなってんのか? さっき痛いって言い始めたばっかりじゃねぇか、それがもう気持ち良くて仕方ないってんなら、淫乱にも程があんだろ。

なぁ、お前もそうは思わないかよ、マスター殿。お前に愛を囁いた女の本性を見せられてどんな気持ちだ? 答えられないか、意識もないものな!」

 

「し、慎夜君の、ことは……か、関係ないで―――あぁっ!」

 

「ああ、関係ないぜ。俺様にとっちゃ俺様に極上の女を差しだしてくれた優秀な魔力袋程度でしかない。けどよぉ、お前、気付いてないのか?マスターのことを口にすると、正直に下の口の締りがよくなるんだよなァ」

 

「―――――ッ」

 

「いいぜ、身体で愛を表現する女ってのは俺様の好みだ。実に征服し甲斐がある!」

 

 ガッと、受け入れたくもないものが私の深い所に無遠慮に侵入してくる。誰も受け入れたことのないそこは、本来であればそう簡単に奥まで入るはずもないというのに、この男は言葉巧みに、そして私の身体の事なんて熟知しているとばかりに身体を動かして来る。

私の身体はこの男の思うままに操られている様に、侵入を許し、その汚らしいものを受け入れ始めてしまっている。

 

 悔しい、悔しい、悔しい。こんな状態になっているのはこの男が私のことを思っているからそうなっているんじゃない。ただ、この男の経験値が、未経験の私よりも遥かに高いからいいように扱われてしまっている。

きっと、他の女性に同じことをしたとしてもこの男はやはり難なく同じような状況を生み出すのだろう。

 

 だから、仕方がないなんて諦めを覚えてしまっている自分が嫌だった。心の中では必死に抵抗する。心までも明け渡してしまったら、もう二度と戻れなくなるほどに、既に身体は順応し始めていることを私が一番よく分かっている。

 

「くっ、あんたなんて慎夜君がこんなことにならなければぜった――――」

「そういえば、上の口はまだ味わっていなかったな」

「―――んぐっ」

 

 口答えをする私を黙らせるために、強引に唇を奪われる。むせ返るような男の獣臭が口の中から鼻の奥へと飛び込んできて、同時に蛇のように男の舌が口腔へと侵入してくる。

 

 歯で噛んでやろうと意識をするが、その行動に入ろうとするよりも早く、私の下半身に入りこんだものが再び蠢きだして、抵抗しようとする意思そのものを刈り取られ、口の中を蹂躙する自由を与えてしまう。

 

「あっ、ぐ、やめぇ…」

 

 私の身体なのに、自由に動かす権利の総てを相手に委ねてしまっているかのよう。純粋に怖い。これ以上されてしまったら、もうなすがままになってしまって、私自身を残しておくこともできなくなってしまうんじゃないかって涙ぐむ私の心を読んでいるかのように男は、絶妙な頃合に接触してた唇同士を離した。

 

「こっちも初めてか?」

「言うわけ、ないでしょ。あんたなんかに……」

「いいねぇ、その態度。そそるぜ、続きと行こうか」

 

「待っ―――あぁん、ダメっ、そこ、それ以上、こ、こすっちゃだ、ダメぇぇぇ」

 

 言うが早いか腰の動きが再び始まり、もはやここまでで彼に徹底的に手籠めにされてしまっている私は、もはや口で必死に止めるように叫ぶくらいしか抵抗の方法を見出すことができない。

 

 でも、その叫びですらも徐々に叫びではなく、まったくの別物に変わり始めてきている。これは痛みを和らげるためにしていることのはずだと自分に言い聞かせようにも、それ以上に自分の中に走る快感が、自分にとって最も惨めで打ちひしがれる現実を叩きつけてくる。

 

 私は慎夜君を裏切って、こんな男に言いようにされてそれを喜んでいる。ゆっくりと、けれど、二人で一生懸命育んできた愛が、ほんのわずかな時間の暴力的な性衝動に塗りつぶされていく絶望が中を突かれるたびに身体中へと広がっていくように思える。

 

「ふっ、いい顔になって来たじゃねぇか。初めてならこんなものか。そろそろ終わりにしようか」

 

 お、終わるの。やっと、この悪夢のような時間が終わりを迎える。

さっきまで信用すらできていなかった男の言葉を当たり前のように受け入れ始めてしまっている自分に気づかないふりをしながら、安堵の思いを心の底から浮かべた途端に、下半身に中に入りこんでいるものがこれまで以上に膨張し始めていることに気付いた。・

 

「え……?」

「何、阿呆みたいな顔をしているんだ。中に入れたんだぞ? 出すだろ」

 

「だ、ダメよ、そんなことしたら」

「安心しろ、吐きだすのは所詮魔力だ。どうにもならねぇ、むしろ俺とお前の間にパスが繋がるんだからイイことづくめだろうが」

 

「そういう問題じゃ、な、ないでしょ。だ、出して、せめて、外にしてよぉ、あっ、んぎぃ、だ、ダメ、もう、ああっ」

「もう遅いっての……んっ」

「っ……くぅぅぅ……!」

 

 瞬間、自分の身体の中に侵入していたものから、熱い何かが身体の中に吐きだされるのがはっきりと感じ取れた。

まるでここは自分のモノであると印を刻んだかのようにそれは私の身体の中へと入りこみ、異物であるはずなのに、私の身体の中に浸透して、一つに同化していく。

塗り替えられていく、私だけの殻であったはずのモノが、明確に男の言う魔力のパスが通ったことで、私だけの身体ではなくなっていることを痛感させられる。

 

 それはここまでにされてきたどんな行為よりもなお酷い、心を穢す行為だった。

 

 でも、こんなの知らない。身体が熱くなって、自分の中の知らなかった一面がどんどん花開いていくようになっていく感覚、それに浸りながらも、私の中に侵入し続けてきたものが這い出ていくのが分かる。

 

「あぁっ……んくぅ……」

 

それと同時に、私の中から今起こったことが事実であることを見せつけるように、私の中に溜めこまれていたものがドロッと吐きだされていく。

 

(犯された……、私、慎夜君のために大切にしてたもの、全部奪われちゃった……)

 

「おい、何してんだ」

「え……?」

「さっさと掃除しろよ、お前に新しい世界を教えてくれた俺様のモノをこのままにしておくつもりか?」

 

 ドカッと椅子に座り、仕事を終えたにもかかわらずいまだに休息を必要とする様子もないソレを私に見せつけて、彼は続きを強要する。

 

「そ、掃除って……なに、させるつもりよ」

「あぁ? わからねぇのか、それともフリしてんのか? どっちでもいいか、教え込ませてやればいいだけか。ほら、いつまでも休んでねぇでこっちに来い!」

「きゃぁっ」

 

 そのまま、それが今度は私の口の中へと侵入してくる。悪夢はまだまだ終わらない、私の受難は始まったばかりなんだから。

 

・・・

 

 どうして、こんなことになってしまったのだろうか。振り返ってみても、運命の悪辣さに蹂躙を受ける彼女、九重円華(ここのえまどか)は怨みを抱くほかない。

 

 秋津市だけではなく、日本全国にその名を知らぬ者はいないと言われるほどの有名人、世代トップ女優と世間で噂される彼女にとって、今日は特別な日であり同時に自分の人生を変えるかもしれないと思われる一日だった。

 

 彼女にはと呼ばれる幼馴染であり、恋人が存在していた。無論、世代トップの人気を誇る円華にとって、恋人という存在は彼女の躍進の上では邪魔な要素でしかなく、数年間の付き合いを重ねてきた二人は交際を秘密にし続ける必要が続いてきた。

 

『こっちのことは気にしないで。円華にとって今は大切な時期じゃないか。俺が足を引っ張って、円華に迷惑を掛けたくないんだ』

 

『大丈夫、我慢することには慣れているから。間桐の家も俺になんか何の期待も寄せていない。好きに生きろなんて言われているくらいだから、待つのはなんてことないんだ。むしろ、誇らしいよ。キミが有名になればなるほど愛されているのは俺だけだって思えて』

 

 彼の家が普通とは異なる魔術師と呼ばれる家系であり、地元の有力者たちと根強い関係を持ち続けていることは知っていた。

二人の交際が噂程度は流れていたとしても、決定的な証拠を掴ませられることがなかったのも、間桐の協力があればこそだ。その協力を無碍にしないためにも、いつか訪れる誰に恥じることもない幸福の瞬間を夢見て、二人はその時を待ち続けた。

 

 そして運命の時は別に訪れる。そう、聖杯戦争という戦いに慎夜が巻き込まれる時が。

 

とはいえ、魔術回路を持ち、刻印を受け継いだものの、慎夜には魔術師としての才能は可哀相なほどに存在していなかった。間桐にとっては、早々に婚姻を果たし、次世代を生むための繋ぎとしての機能しか期待されていなかった慎夜であるがゆえに、彼は円華との時間を続けることを許されていたに他ならない。

 

当初、間桐は此度の聖杯戦争を回避するつもりでいた。慎夜を投入したところで勝てる見込みなど一切ない。運よく生き残ることが出来たとしても、遠坂に勝てる流れは一切存在しないだろうと、そんなことのために間桐の血筋を消費するかもしれない選択肢を取ることは愚か極まりないことであると考えたのだ。

 

この点に関して言えば、間桐は遠坂よりもアインツベルン寄りの発想だったのかもしれない。15年越しのこの聖杯戦争はどこか得体が知れない。慎夜の存在を言い訳に状況を俯瞰してみるのもいいかもしれないと考えたこと、歴史に連綿と受け継がれてきた家であればこその判断だったかもしれない。

 

しかし、当の慎夜だけは違った。万能の願望機である聖杯、それを掴むことが出来れば、耐え続けるだけの日々を終わらせることができるのではないかと彼は考えた。九重円華と誰に恥じることもなく愛を語り合える日を手にすることができるのではないかと。

 

凡人の愚かな夢と笑うことなかれ、彼にとってはもはや万能の願望機に願う他ないことだった。年を経れば経るほどに円華は女優としての才能を花開かせ、成功を収めていく。

 

その様子をスクリーンの中にしか見ることができない歯がゆさ、

 

彼女が遠い世界に羽ばたいてしまうのではないかという焦り、

 

自分を捨てて彼女が相応しい相手を見つけてしまうのではないかという嫉妬

 

凡人であり、魔術師としての夢を追いかけることもできない落ちこぼれは、当然のように自分と彼女が釣り合わないことを自覚し、奇跡の到来を待ち望んでいた。

 

故に後の流れは言うまでもなく、慎夜は独断による聖杯戦争への参戦を決定し、間桐の家から飛び出した。間桐はそれを咎めなかった。どちらに転んだとしても、慎夜が子を為す事の出来る状態にいればいいし、最悪死体であっても手の打ちようは幾らでもある。

 

嫌がる魔術師を無理やり参戦させて自殺される流れよりはまぁいいだろうとどこまでも大事にされていないがために、彼は奇跡の扉に手を届かせることが出来てしまった。

 

『円華、俺を信じてほしい。何もかもが上手く行く方法を見つけたんだ。あと数日間でその奇跡が起こる。俺の所に来てほしい』

 

 そして、悲劇の最後の引き金は、円華もまたその祝福の日が来ることを待ち望んでいたということ。

慎夜の不安など杞憂でしかなく、彼女はその日を迎えることを心から待ち望んでいたに過ぎない。だからこそ、余計なことをしなければ彼ら二人は時間が掛かってもその結末に至ることが出来たはずなのだ。

 

 一発の銃弾が放たれる音が響く。その音は二人で夜の街へと駆け落ちし、聖杯戦争を戦い抜くための準備を進めようとしていた慎夜の予定の総てを狂わせた。

 

「ったく、面倒なことをさせるんじゃねぇよ。こっちは間桐の連中とつるんで、その嬢ちゃんを売り込むためのスポンサーをしていたってのに。他の街で駆け落ちするならまだしも、うちのシマでやるんじゃねぇよ。せっかく大手と繋いで得ていた信用が丸つぶれになっちまうじゃねぇか。オヤジも随分ご立腹だ」

 

 彼らは知らない。円華と慎夜の行動は常に監視され、間桐の権力がなければ簡単に白日の下に晒されてしまう程度であったことを。そして円華の才能を花開かせるための用意された脚本家が勢至姆組に慎夜の排除を依頼していたことを。

 

 何もかもが叶う万能の願望機を手にする始まりの扉に手を掛けた少年は、奇跡などよりも肥しを求める現実の支配者たちによって、その願いを踏みにじられた。

 

「慎夜君……慎夜君!?」

「まど……か、ごめん……でも、君だけは……」

 

 その時、周囲に光が浮かび上がった。それは慎夜が直前まで行っていた聖杯戦争における英霊召喚の儀式だった。不完全ではあれども、正式に行われた儀式は英霊を召喚するためのプロセスを問題なく発揮し―――

 

「問おう。お前が俺様を召喚したマスターか?」

「そう、まど、かをたすけ……」

「ほう……」

 

 召喚された黒髪の男は、獲物を定めた獣のような視線を円華に向ける。円華の全身を品定めするような視線で確認し、

 

「いいだろう。俺様が戦うには相応の報酬と見た」

 

 後は言うまでもなく、勢至姆組の組員たちは乱雑に、サーヴァントという圧倒的な力の前に命を落とす以外の結末はなかった。

 

・・・

 

「おげぇ……げほっ、ごほっ……」

「まあ初めてならこんなもんか。あまり使い過ぎて壊れてしまったら、元の子もない。いいぜ、マスター。お前の願いどおり、この女は俺様が守ってやるし、聖杯戦争も戦ってやるよ。俺様のやり方で、だけどな」

 

「ど、どういう……つもりよ。わ、私の提案を受け入れてくれるの……?」

「おいおい、最初に約束を迫ったのはお前の方だろ、円華。死にかけのマスターを前にして、彼の命を救いたいから、協力しろと言ってきたのはお前じゃないか」

 

 確かにその通りだった。勢至姆組が迫る最中、放たれた銃弾によって血を流す慎夜は円華から見ても死に体だった。病院に連れていく間もなく死んでしまうであろうことは目に見えていて、縋ることができるのは目の前の悪魔だけだった。

 

「それに対して、俺様は言ったよな? 対価が必要だ、俺様の奴隷、愛人になる覚悟があるのならその提案を呑んでやると。

 下手くそだったが、お前の態度は実にそそった。だから、受け入れた。

よかったなぁ、もしもお前の顔が醜悪だったか、締りの緩い奴隷女と一緒なら、殺しちまうところだった。

自分の女の武器に感謝しろ、男に傅き、媚び諂うのは時代を問わず、女の武器なんだからな、かっははははははははははは!!」

 

 口の中に残っている生臭いものへの嫌悪感だけでは果てしないというのに、目の前の男は行為中と変わることなく、言葉で私という女の尊厳を軽々しく踏みにじってくる。

 

 この男の口にしている言葉は何も私を挑発するためとかそういうものじゃないのだろう、本気でそう思っている。女は男のために生きる奴隷、男の求めた時にその身を差しだすのが当たり前だと考えているから、あんなひどいことを平然とやってのける。

 

 そして、コイツの言う通り、それを受け入れたのは私だ。慎夜君を生かすためなら、何でもやってやると決意したのは本気で、それにこいつは応えた。それだけのこと。

 

 だから、負けちゃいけない。涙を流しても、それでも歯を食いしばらなければ、聖杯戦争に勝つ前に、こいつに負けてしまう……

 

「ほぉ、あれだけのことをされてまだそんな顔が出来るか。つくづく俺様好みの女だ。聖杯戦争もイイが、お前が俺に心の底から傅く瞬間を本気で手にしたくなってきた」

「そんな日が、来るわけないでしょ」

 

「来るさ。俺様はあらゆるものを征服し、手にしてきた。お前も聖杯も同じだ。この世の総ては俺様に征服されるために存在しているんだからな」

「随分な自信ね。自分が負けるかもしれないなんてことまったく考えないんだ」

 

「逆に聞くが、どこの世界に戦争を仕掛けて負けることを最初から考える奴がいる。それはただの引き際を考えているだけだ。この聖杯戦争での負けは自身の消滅。次はない。なら、勝つこと以外の何を考える。持てる限りの総てを使って勝つ以外の総ては些末事だ。

 勝てばいい、勝利者は全てが許される。侵略するっていうのはそういうことだ」

「………ッ」

 

 これまで私を弄んでばかりだった男の瞳と言葉に異なる色が浮かぶのが分かった。会話をしているだけでもわかる。

こいつはただの下衆なんかじゃない。言葉を口にするに足りるだけの実績を此処までに積み上げてきたんだろう。だから、その大口が叩ける。自分ならばできると本気で信じているのだ。

 

 寝首をかいてなんて考えはすぐに改めるべきだ。簡単にできることじゃないし、この男なら慎夜君の命を天秤にかけさせる程度の事は簡単にやってのける。

 

「フッ、そう怖い顔をするな。お前の魂胆は分かっている。聖杯を使ってあの小僧の命を救いたいんだろう。戦争をすると決めた以上、俺は聖杯を掴む気でいる。考えは一致しているんだ。手を組むには十分だろう」

 

「慎夜君は無事、なの……?」

 

「どういう原理か、まだかろうじて生きてはいる様子だからな。意識を失う間際で令呪を使って、お前に仮にマスター権限まで明け渡すとは怖れいった。俺様としてもこんな小僧に使われるくらいなら、戦争の役には立たずともお前を傍に侍らせておく方がよほどいい」

 

「そう、光栄ね……」

 

「それでいい。心の中でどう思っていようが聖杯戦争が終わるまでお前は俺の奴隷だ。精々俺を喜ばせておけ。多少のことは目を瞑ってやるし、願いは叶えさせてやるよ。

もっとも、勝った暁に我がマスター様が目を覚ましたところで、お前は奴と俺様、どちらを選ぶかね?」

 

「そんなの聞くまでもないでしょ。あんたなんかに……誰が靡くか」

 

 慎夜君より譲渡された刻印、それは私の背中に刻まれている。先ほど裸になっている時に見た、翼のような形をした刻印は中央の線が一つ消え、残る二つの対角に刻まれた羽の形をしたものが残っている。サーヴァント・ライダーの話しを聞く限り、これは命令をするための印、あと二回少なくともこいつに何らかの命令を刻むことができる。

 

(でも、これは安易に使えない。私だけで聖杯戦争に勝てない以上、こいつの力は必要不可欠。でも、コイツを勝たせるつもりはない。勝つと決まった最後の最後で必ず報いを受けさせてやる……!)

 

 そのためにはこの絶対命令権は最後まで守り抜かなくちゃいけない。聖杯を掴んだその時にコイツを殺すためには、最低でも一つはこの刻印を残しておかないと。

 

「さて、と。互いの意志は確認できた。ならば、ここからは勝つために動くとするか。おい、円華、街に出るぞ、準備をしろ」

「街にって、今から……?」

 

 既に時間は午後9時を過ぎ始めている。街に出たところで営業している場所も少なく、繁華街のこの場所では、よからぬ輩が跋扈し始めている頃合だ。あのヤクザたちが狙っているかもわからない。無策で飛び出すのは危険極まりないことに思えるけれど。

 

「当たり前だ。戦争を始める、ならば欲望を満たしている時以外に無駄にしていい時間など一秒もない。街を案内しろ。

まずは地形の把握だ。その次にこの街の情勢、手駒に出来る現地人の調達、資金源の確保も重要だな。各陣営に対して斥候を送り出すことができるのならば尚更良い。簡単に思いつくだけでもこれだけだ。何を呆けている時間がある?」

 

「………驚いた。もっと野蛮な方法でこの街を壊すとか言い始めるのかと思ってたわ」

 

「バカも休み休み言え。戦争をするんだ、征服が取り柄の男と魔術も使えない女の二人で何が出来る。資金も人員も武器も情報も今の俺様たちには何もかもが不足している。

 情報があれば、この地の弱みを見つけ出し、付け入ることができる。

 人員があれば、攪乱工作も人海戦術も思いのままだ。数は多ければ多い方がいい。

 資金があれば、大抵の問題は解決する。欲望がある限り人は金に目を晦ますものだ。

 それら全てを揃えることで、武器が手に入る。相手を制圧するための武器も無しに戦争も何もないだろう。侵略の橋頭保を繋ぎ続ける。我々、コンキスタドールはそうして世界を開いてきたのだ」

 

 真剣な表情で紡がれる言葉は先ほどまでの人を小馬鹿にした態度など一切ない純粋な未来展望だ。

馬鹿にしていた、その言葉の羅列につくづくそう思った。

この男は英霊だ、遥か過去にその野蛮な行為を認められることでこの世界に召喚された。言わば人から何かを奪うプロなんだ。だから、何が必要なのかを見極められる。

私の考えている戦争なんて所詮は絵面。この男の想定には何も及びはしないのだと、一言で思い知らされた。

 

「いいわ。ならばお手並み拝見とする。でもね、ライダー。一つだけ教えなさい。貴方は誰? 聖杯戦争はかつての英雄を呼び出すんでしょう?貴方の本当の名前は何?」

 

「―――翼ある者の帰還」

 

「え……?」

 

「サーヴァント・ライダー、我が真名は『エルナン・コルテス』、かつてアステカの愚か者どもより、白き翼の蛇『ケツァルコアトル』の再来と呼ばれし者。そして蒙昧なるアステカの民どもを征服し、この星より駆逐した者なり」

 

 アステカ文明を滅ぼした偉大なるコンキスタドール、世界の歴史に名高きクリストファー・コロンブスやフランシス・ドレイク同様に、侵略者として世界の文明を蹂躙することによって世界の地図を開拓した近代世界の立役者の一人。

 

「この地もアステカの蒙昧どもと同じだ。必ず俺様が制圧する。お前はそれを在りし日のマリンチェ同様に特等席で見せてやる。俺様という存在を召喚できたことの幸運に咽び泣くがいい」

 

 そう、これこそ正真正銘、真実の翼ある者の二度目の帰還だ。かつてのアステカ帝国侵略の際にも、マリンチェという愛妾の存在こそが、コルテスの征服の始まりだった。

 

 此度は九重円華という存在が聖杯戦争という侵略に己を誘った。ならばこれは白き翼の蛇の再来であり、歴史をなぞる行為に他ならない。

 

 もはや勝利は約束されたに等しく、数多の欲と幸運がコルテスを玉座へと誘うだろう。

 

ライダー陣営繁華街で活動開始―――聖杯戦争開幕まであと1日

 




【CLASS】ライダー
【真名】エルナン・コルテス
【性別】男性
【身長・体重】174cm・88kg
【属性】混沌・善
【ステータス】
筋力C
耐久D
敏捷C
魔力B
幸運EX
宝具A
 
【クラス別スキル】
対魔力:E
魔術に対する守り。無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。

騎乗:D
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み程度に乗りこなせる。

【固有スキル】
嵐の航海者:B
船と認識されるものを駆る才能。集団のリーダーとしての能力も必要となるため、軍略、カリスマの効果も兼ね備えた特殊スキル。

黄金律:A
人生において金銭がどれほどついて回るかの宿命ではなく、略奪による金銭の収集能力。
強引に大富豪となることも可能であるが、その手段には大きく問題が生じる。

コンキスタドール:A++
大航海時代、航海の果てに未開地を征服した者のスキル。未開の地への侵攻、支配、略奪、奴隷化などの手際を示す。アステカ文明を侵略し、世界から消滅させたコルテスは最高峰のコンキスタドールとして歴史に刻まれている。
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