――秋津市東側・住宅街――
「なんや、随分と面倒なことになっとるな。こりゃ、観光目的だ何だと言ってられんで」
喧騒に包まれ、至る所で悲鳴が上がり、加速度的に恐怖が街を支配していく。正体不明、理解もできない暴力に晒された街の中で、香椎唯那率いる神祇省の一団は、ライダー陣営との約定を果たしつつ、次なる目的の相手の下へと足を進めていた。
唯那たちにとって、この秋津の街で行われている聖杯戦争は全く無関係の事だ。これが聖堂教会や魔術協会であれば、聖杯戦争に何らかの繋がりを得ることによって、旨みを手にしようと考えるのかもしれないが、神祇省としては得体のしれない魔術師たちのサバトに自ら首を突っ込む道理は全くない。
あくまでも彼女たちの目的は玉突き事故のように発生した神祇省にとって都合の悪い展開を抹消するために他ならない。他の用事に首を突っ込むのはミイラ取りがミイラになりかねないというところであろう。
よって、あとは秋津市と言う巷で話題になっている街の観光でもして、時間を潰そうと考えていたが、降りかかってくる火の粉を知らぬ存ぜぬをするつもりはない。
繁華街から住宅街へと向かっていく最中で、姿を現したのは黒色の獣、言うまでもなくバーサーカーであり、同時に勢至姆組の組員たちも姿を見せ、唯那は思わずため息を零した。
「一応、言うとくけど、うちらは外様や。別にあんたらに何かをするつもりはあらへん。そこ、通してくれへんか?」
「ハッ、知ったことかよ。こっちにはこいつがいるんだ。テメェらがいくら吼えたところで―――!」
「あっそ」
瞬間、牙を剥きだしにして喉を震わせていたバーサーカーの動きが硬直する。さながら金縛りにでもあったかのような反応は、目の前の唯那が何かをしたのであろうことは間違いないことであった。
「唯那様」
「ええで、やれ」
唯那が命令をした瞬間、バーサーカーと組員たち目掛けて後ろに控えていた護衛の者たちが一斉に襲い掛かる。戦闘訓練を受け、魔術絡みの荒事を解決するために用意された『本隊』である彼らに対して、いかに暴力団の組員であったとしても敵う道理はない。
同様に動きを封じられたバーサーカーもサーヴァントの分身体であることが嘘であるかのように蹂躙されていく。
徹底的に弱体化させられてしまい、そこらにいる野良犬か何かと変わらないようにあっさりと蹂躙される姿を見て、組員たちは自分たちが喧嘩を売ってはならない相手に出くわしてしまったことをこれでもかというほどに痛感させられた。
「ひぃぃ、た、助け……」
「せやから言うたやん、うちらは別にあんたらの邪魔をするためにここに来たわけやないっちゅうんに。誰彼構わずケンカ売るからそうなるんやで」
これでは、どちらが加害をする側なのかもわからない。速やかに鎮圧された組員たちは、拘束され無力化されると、唯那たちはもはや興味もないとばかりに脚を進めていく。
「ま、待ってくれ。せ、せめて解いてくれ。俺達、ただ命令されていただけなんだ!」
「ふーん。それで?」
「だ、だから、助けてくれ……!」
「襲った奴が同じことを言うたら、あんたら助けたんか? 助けへんやろ? なら、そういうことや。精々、他の善良な人間に見つかる前におっかない連中に見つからんことを祈っとくんやな」
それだけを告げると、もはや一瞥もすることなく神祇省の者たちは去っていく。もしも、先ほどまでの好き勝手に暴れまわっていた時に、襲っていた連中の生き残りがいたら……
今の自分たちが全く動けないことを知ったら……組員たちは背筋も凍るような思いだった。
しかし、それもまた恐怖、奉が心から願ってやまない感情を吐きだしてくれている時点で、彼らの敗北にも確かな意味があったことは間違いない。
『容赦ないやん』
「姫サマに比べりゃ、随分マシでしょうよ。なんで、九重円華の話し受け入れたんです?」
『言ったやん、気にいったからって』
「当主様にいらん迷惑かけんといてください。それで叱られるんはうちらなんですから」
『そうは言うても、うちもうちが納得する提案を出すことが出来たら、見逃してやるって言うてしまったしなぁ。それで感心させられたんなら、それはうちの負けってことちゃう?』
「綱渡りです。失敗すれば、神祇省は余計なもんまで背負わされます」
朔姫という次期当主の決定を撥ね付けるほどの権力を唯那は持ち得ない。現場に置いて臨機応変に神祇省にとって最も都合が良い展開を選ぶ権利を与えられてはいるが、それで『八代』の決定に逆らうことができるわけではない。
朔姫が問題ないと言うのならば、問題はないのだろう。彼女の人を見る目は確かだ、まだ十にも満たない年齢でありながら、式神を介してとはいえ、これだけの大見得を切れるのだから、幼少であろうともさすがは八代家稀代の天才陰陽師というのは決して過大評価ではないのだろう。
ただ、今回ばかりはその判断が正しかったのかはわからない。今更、人道に基づいたなどと甘ったれたことを口にするつもりは毛頭ないが、それにしても、強引なやり方と言えばやり方だ。神祇省にとって都合が良いのかもしれないが、反動もまた間違いなく大きい。
下手をすれば総てが裏目に出てしまうかもしれないのだ。
『大丈夫やよ、九重円華なら必ずやって見せる。うちはそう踏んだから協力を約束したんやからな。それより、さっさと次に行こうか。もたもたしておるとほんまに時間に間に合わなくなるわ』
「ええ、承知していますよ」
住宅街の奥へとさらに足を進めていく。既に聖杯戦争のタガが外れかかっている街の中で暗躍は続く。各陣営が気づかぬままに、その裏で彼女たちは自分たちの目的を果たすために確実に行動を続けているのであった。
――秋津市西側・繁華街入り口――
獣の雄たけびは日中から轟き始め、今も尚終わりを迎えてはいない。空は白みがかり、夕日の色が見え始め、やがて夜を迎えるであろう時間へと至ろうとしている。
その間にも、あたしとマルテルさん、ノルンちゃんは街中を駆けまわってきた。住宅街にも想像以上にバーサーカーの爪痕は残されていて、住宅街を突破するまでの間にも数度、バーサーカーと戦闘をする羽目になった。
勿論、マルテルさんがいる以上、こちらが負けるなんてことはなかったけれど、進めば進んでいくほど、徐々にバーサーカーの分身体が手ごわくなってきているように思えた。
なにか、こちらの行動を学習でもしているんじゃないかと思えるような不気味さ、常に出会うたびに、日を追うごとに強さが変動し続けているバーサーカーはもはや瞬間瞬間ごとに強さを変化させるほどにまで及び始めているのかもしれない。
けれど、それを怖れて足を止めるわけにはいかない。いくらあたしたちが必死にバーサーカーを倒し続けているとしても、それはこの秋津の街の中で氷山の一角を崩しているだけに過ぎない。
中央、駅前はおそらくロイやセイバーが対処してくれているはずだと言う確信を前提にして動いている。それでも、きっと悲劇を止めきれなかった場所だってあるだろう。根本を抑えない限り、秋津の街を解放することはできない。
だから、今、あたしたちはバーサーカー陣営の根城である西側繁華街エリアへと足を運んだ。案の定と言うべきか、それとも幸運であったと言うべきか、その入り口部分にそれはいた。
「これだけの時間が経過したんだ。そりゃ、馬鹿でも近づいてくるってもんだ。待っていたぜ、七星桜子、ランサー」
「間違いありません、マスターの隣に立つバーサーカー、あれは本体です。此処までに倒してきた分身体とは圧が全く違います」
「だろうね、素人のあたしでも、あいつがヤバいのは十分よくわかるよ……」
むしろ、息をのむほどだった。数日前に遭遇したバーサーカーもサーヴァントとして十分な強さを持っていたけれど、ここまでではなかった。
対峙をするだけで全身に牙を衝きたてられるような感覚、どのように動いても自分が捕食されてしまうんじゃないかと思ってしまう。
その威圧は、さながら、あのセイバーと対峙した時と同じほどに、自分とは隔絶した強さを持つ存在であるのだと、あたしの中の魔力が警鐘を上げているようだった。
「ん? ああ、アサシンんとこのガキもいるじゃねぇか。なんだ、お仲間殺されて、ランサーの所に鞍替えしたのかよ!」
「―――――――」
「そりゃそうか。俺はお前からしたらお仲間の仇も同然だもんな。けどよ、敵討ちをするってのに、それはちょっと不格好じゃねぇか? アサシンとマスターは最後まで必死に闘って、喰われたってのに、お前はただ逃げただけじゃねぇか。むしろ、マスターはお前を庇ったから死んだようなもんだけどな。そんなザマを見せておいて、今更敵討ちか?」
「何が、悪いと言うのですか?」
「いや、別に。随分と、尻が軽いと思っただけさ」
「――――黙りなさい」
身体を震わせ、怒りに打ち震えるノルンちゃんや、今にも飛び出しそうなあたしを制する形でマルテルさんが場前へと飛び込んだ。
巨大なランスを振り下ろす形で放たれた攻撃は、しかし、バーサーカーが真正面からランスに激突し、体当たり一つを以て、ランスの一撃を受け止め、払った。
「んっ……!」
「GRUUUUUUUUUUUUUU」
「挑発の一つもすれば、怒り狂って勝手に飛びこんでくるんじゃねぇかと思ったが、気が利くじゃないか、ランサー。マスター潰せばそれで終わりだと思っていたんだがな」
「でしょうね。随分と多弁になった。前回は、バーサーカーを生かすために有利になるかもしれない状況でも逃げを選んだ相手が、こうも変わりますか」
「あの時は余裕が無かったのさ。覚悟が決まっていなかったと言ってもいいかもしれない。けどよ、今はこの通りだ。覚悟を決めるしかねぇ。こっちもほとほと必死だ。なりふり構わずにやらなきゃ奴らに、セイバーとあのマスターに勝利することはできない」
「セイバーに、ロイに勝つために、ここまでのことをしたっていうの……!?」
「あいつに勝つためだけに? はッ、七星妹は随分と甘いことを言っているな」
ゾクリと背筋に寒い感覚が奔る、兄さんが傍にいるのだから、あたしの素性が判明していることは今更言うまでもないことだけど、自分止まったく違う世界、まったく理解できない行動を取っている相手に、自分の素性を口にされるだけでここまで悍ましいと感じるの初めてだった。
「やるに決まってるだろ、こっちは命を、人生を懸けているんだよ。櫻一郎が姿を消して、何も知らずにのうのうと生きて、聖杯戦争に選ばれてから才能が開花しているお前に、俺の心が理解できるはずもないな、シンデレラみたいに二段上がりに階段を駆け上がっている気分はどうだ? さぞかし気持ちがイイだろうなぁ!」
でも、その悍ましさの中に潜んでいるのは、ジリジリとあたしの肌に突き刺さるような敵意、殺意とかじゃなくてもっと根本的な憎しみのような感情だ。
聖杯戦争の相手は競う相手であり、特定個人に向ける敵意のような感情を向けることなんてないと思っていた。だって、知らない相手に強い感情を向けるなんてことは出来ない。
でも、バーサーカーのマスターはそれをしている。口にしなくたって分かる。あたしのことが憎くて憎くて仕方がない、突然魔術に目覚めて、今日まで聖杯戦争を生き残ってくることが出来た、私の事が憎くてたまらないと言う様子だった。
その感情を目の当たりにするのは決して初めてという訳じゃない。少し前に蓮司君にも同じような想いをぶつけられた。だから、あたし自身の自覚がどうであれ、そうした感情をぶつけられること自体には驚きはない。
ただ……、蓮司君があたしに向けてきたのは、嫉妬のような感情だ。どうにもできない自分の現状とあたしの現状を比較して我慢が出来なくなって噴き出したものだったけど、目の前の相手のそれはもっとなんていうかどす黒い。
まるですべてを憎み切っていて、世界そのものに呪詛を吐いているかのような、あたしのことを深く知っているわけでもないのに、許せない。そんなよくわからない八つ当たりめいた何かを感じてしまう。
「あたしは別に自分の境遇を良いだなんて思ったことはない。ただ、あたしに出来ることを必死に果たそうとしているだけ。あんたのように自分の持っている力を誰かを傷つけることにしか使えないような奴を倒すためなら、あたしは自分の力を使うことを何にも惜しみはしないわ」
「持っている力、ね……。結局、誰も俺のことなど理解できない。理解してもらおうとすれば、拒絶され、虚勢を張れば、真理を衝かれ……ままならないな。本当にままならない。別にいいけどな、聖杯戦争に勝てば総てがチャラだ。俺は俺の人生をやり直す」
マスターの言葉に呼応するようにして、バーサーカーが再び咆哮を上げて、ランサーへと飛びかかる。ランスによって受け止めるが、防御態勢に入っているにもかかわらず、ランサーが力負けをしているように見えるのは、ある意味恐ろしいと言う他ない。
「やれ、バーサーカー!! 溜めこまれた恐怖の力を存分に振え! まずはランサーを血祭りに上げて、その後はセイバーをぶち殺す!!」
「そんなことはさせるかッ!! 聖杯戦争を勝ち進むのはあたしたちなんだから!!」
バーサーカーが強化されているのは間違いなく、恐怖が今もこの街の中で膨れ上がり続けているからで間違いない。マルテルさんのことを信用していないわけではないけれど、あたしに出来ることがあるのなら、勝つために全力を尽くしたい。
狙うのならばマスターだ。バーサーカーがいかに強かったとしても、マスターを喪えば、無力化することだってできないはずじゃないかと、ノルンちゃんとも戦闘前に確認している。
『バーサーカーのマスターは決して、戦闘面においては脅威になりえません。今のサクラコであれば征圧も用意であると考えられます』
ランサーとバーサーカーの戦いに目をくれている間に速攻で相手を制圧する。それを卑怯なやり方であるなんてことは言わせない。これまでに今日一日だけでも何度も煮え湯を飲まされたに等しいのだから、このまま制圧をしてやれば――――
「そう簡単に済むはずもないだろう」
けれど、魔術によって練り上げたあたしの刃は同様に不可視であり、あたしよりも遥かに長いリーチによって形成された一刀によって、呆気なく防がれた。
「無策が過ぎるな、桜子。奉さんがただ1人でお前の前に出てくるなどと考えていたか。俺はいるとも。奉さんを勝たせることこそが、俺の聖杯戦争の目的であると告げたはずだ」
悠々と、あたしたちの戦闘の遥か先から、あたしには絶対に届かせることができない距離より放った一刀の主が姿を見せる。
今更誰かなんて言うまでもないだろう。七星櫻一郎。あたしの兄にして、もう一人の七星の魔術師。あたしの一刀など自分には全く歯もたたないとそれを理解させるために放たれた一刀は、思惑通りにあたしの攻撃を無力化して見せた。
「あたしだって、何の考えも無しに飛び込んだわけじゃないよ。こうすれば、兄さんは確実に迎撃して来ると思っていた。姿を見せない兄さんに奇襲をされることこそが、あたしにとっては最悪だもん。だったら、その可能性を潰しきることが出来ただけでも、あたしには悪くない展開だよ」
「ふっ、精一杯の強がりだな」
「櫻一郎、わかっているな!」
「ええ、元より桜子が再び俺の前に姿を見せれば、俺が斬ると決めていました。身内であるからこそ、処断をしなければならない。七星の血が覚醒したお前が災禍を生み出す前に、身内としてここで処断してやろう」
「あたしは、聖杯戦争に勝って、七星の血の呪いを無くす。兄さんにもそう言ったよね!? だから、戦いを止めるわけにはいかない。あたしは兄さんだって助けたいんだから!」
「殺すためではなく、救うために戦うと?」
「悪い!!?」
「良い悪いの話しではない。度し難いと言うだけの話しだ。ほとほと理解に苦しむ。ロイ・エーデルフェルトは何故、このような夢物語ばかりを語る妹に期待を持っているのか……」
兄さんの口からロイの名前が出たことに、少なからずの困惑を覚える。セイバーとバーサーカーが何度か戦っていたことは知っている。当然、兄さんとロイが激突したことも想像はできるけれど……
「桜子、お前は七星の血の恐ろしさを何も理解できていない。お前が今日までその血に呑まれてこなかったのは、単純に運が良かったからなだけだ。七星の血はお前の願いを都合よく後押ししてくれるような力ではない。
1人の人間を殺人衝動へと至るためだけに用意されたものだ。遠からずの未来にお前もそれを理解する。その前に、終わらせてやるのがせめてもの優しさと言うものだろう」
兄さんが構える。マルテルさんは既にバーサーカーの猛攻を受け止めている最中であり、あたしに加勢は間違いなく無理だ。
あたしが自分の力で兄さんに勝つしかない。種は割れている。兄さんの刃はリーチなど関係なく届く、刀身延長能力。ただ刃を伸ばすと言うだけの能力であるけれど、達人が使えば圧倒的な力で相手を制圧できる能力……
(無傷での勝利は初めから無理だって考えろ。ボロボロになってもイイ、それでも、兄さんはあたしが止める……!)
兄さんを乗り越えなければ、バーサーカー陣営に刃を届かせることはできない。今のあたしにできることは兄さんと戦い、倒す事だけ。それだけに腐心することを決めて、他の様子をバッサリと切り捨てる。パートナーは絶対に良い結果を齎してくれるんだって強く信じて。
「七星流剣術―――」
「七星流剣術―――」
互いに同じ流派の型を組みだした瞬間、あたしたちの激突は始まった。初手は共に基本技、けれど、それが鏡合わせのように真っ向から激突して終わるなんて、当たり前の結果では終わらない。
「――――ッ」
「防いだか」
「種が割れていることを対策もしないで飛び込んだりはしない!」
放った一刀とは全く違う場所から生じた一刀を以て、兄さんの刃を堰き止める。あたしの一刀が届くかどうかギリギリの距離を既に先の一線で見極めていたのか、届かないことを前提に最初からあたしを斬り伏せるために腐心した一刀は、隠しておいた不可視の刃によって弾かれる。
強がりを言葉にして放つけれども、内心では初手から完全にギリギリだったことに焦りを覚える。複数の刃を放出すると言う魔術を使いこなすことが出来ていなければ、あたしの身体の反応だけではこの一瞬で勝負がついていたかもしれない。
その内心の焦りを悟らせないようにと、一歩を踏み出す。どれだけの距離にいたところで刃を防ぐことができない以上は、遠くにいるだけあたしが不利になることは間違いない。
だったら、近づく。脚を一歩踏み出すたびに降りそそいでくる刃をあたしの魔術で受け止めながら、少しずつ少しずつでも近づいていくけれども、攻撃の質が激しくなっていくようなことはない。
「なるほど、俺を斬ると口にするだけの実力は持ち合わせるようになったか。恐るべき学習速度だな」
兄さんは一つ一つ、あたしに対して刃を放っていくことによって、あたしが何をしているのかを図っているような態度だった。手の内を見せてはいけないことは十分に理解している。
だからといって、あたしの持てる力を振り絞らないで戦えるほど楽な相手じゃない。結果として誘い込まれるようにして兄さんを捉えることができる間合いにまで飛び込んだあたしに対して、兄さんの構えがその瞬間に変わった。
「理解した、斬撃同時展開能力、それがお前の魔術か」
袈裟切りに放たれた一閃は先ほどまでの横一閃、縦一閃に放たれる攻撃とは全く異なり、複数の剣閃を自分の中で展開するけれども、それらが一気に刃としての形成を裁断されると、直撃こそ避けられたものの、あたしはその剣閃の余波だけで吹き飛ばされてしまう。
「がっ、ぐぅ………」
「七星としては特に利点のある魔術だ。いかなる魔術であろうとも一閃にして斬ることのできる七星の力を最大限に利用するのであれば、手数を増やすと言うのは一つの到達点だ。此処までにお前の対応を見てきたが、使いこなせてきてはいる。このまま順調に研鑽を続けていけば、いずれは多人数相手を容易にこなすことができるほどに成長するだろう」
あたしの刃そのものを七星の刃を以て斬られた。以前の戦いでも同じことをされた経験はあったけれど、ここまではずっとそうした状況に置かれなかった。あたし自身が強くなったからだって良い方向に考えようとしていたけれど、これは違う。
その逆だ、兄さんはあえて、してこなかった。あたしの魔術の質を、範囲を、能力を知るために、あえて、誘い込む形であたしに魔術を何度も何度も使わせてきた。
総ては自分が勝つための行動、あたしが兄さんとの戦いの間に培ってきた総てが、この瞬間に丸裸にさせられてしまった、隠し玉として隠しておきたかったものをあっさりと看破された。
「やはり才能なのかもしれないな、桜子。お前の学習速度、そして七星として適した戦い方を発揮することができる。どれもこれもが優秀だ。母の才能を受け継いだのは俺ではなくお前だったのかもしれない。だが、それが実ることはない。
不格好であったとしても、この街の七星は俺だけでいい」
「……兄さんッ」
一閃―――兄さんが放った刃が吹き飛ばされて、距離を離されたあたしの身体目掛けて放たれる。距離など一切関係なく放たれるそれは、実体を結んだ刀のリーチを無視して、吹き飛んだあたしへの追撃として完全に機能した。
「七星流剣術――肆ノ型『葉桜』!及び一ノ型併せ三ノ型『乱れ山桜』」
よって、兄さんの攻撃が成立すれば、あたしはその時点で戦闘不能に追い込まれる。嫌だと思う気持ちに呼応する形で、あたしの身体に流れている七星の血が一気に沸騰する。魔術回路は励起し、これまで同様にあたしが打開するための一手を放つための後押しをしてくれる。
放たれたのは、昨日の戦いでも見せた投擲用の刃、それらが三つ、兄さん目掛けて放たれ、攻撃動作に入っていた兄さんはそれを迎撃することが出来ずに身体に刃が突き刺さった。
無論、そんなものは兄さんからすればかすり傷だ。無傷で終わることが無いと考え、最初からダメージ覚悟で攻撃を放っていたのであれば、どちらが致命傷を受けるのかは言うまでもない。
ただ、距離を無視して放たれた一刀がその瞬間に霧散する。まるで、最初からそんなものは存在していなかったかのようにして、兄さんの手に持つ実体ある刃よりも先は、最初からなかったかのように消え去った。
「兄さんほどの力はないけどさ、七星の刃は七星に魔術によって消し去ることができる。改めて教えてくれてありがとう、兄さん。これで、あたしも同じことができるってわかったよ」
「桜子、お前は……」
刃が突き刺さった箇所から、血が流れることも厭わずに兄さんはあたしを睨みつける。そうだ、臆することはない。兄さんの刃がどの距離にあっても届くとしても、あたしの魔術は兄さんの刃を斬ることができる。
リーチがあったところで触れなければ何もできない。打ち消すことができるのならば、実際に手に持っている刀以上のことはできない。
「それに、リーチの問題も解決、かな? だって、あたしは同時に二つの行動が出来ても、兄さんはその刀に依存しているモノ。どこにでも届かせることは出来ても、一つの事しかできないでしょ?」
「随分と口が回るようになってきたな」
「そうだね、ようやくギアが上がって来たってところかな……」
身体の中が沸騰しそうなほどに熱い。七星の血があたしに力を貸してくれている。目の前の相手に勝てと、お前の全霊を使って、兄を乗り越えろと告げてくれているかのようだった。臆するな、兄さんがこちらの動きを封殺できるように、あたしだって同じように兄さんを封殺することができる。
互いの持ち味を殺せる相手と対峙し、その上で自分の舞台へと引き摺りこめた方が勝つ。
七星を怖れるな、己もまた同じく七星なのだから。
「…………はぁ………はぁ、大丈夫、やれる、やれるに決まってる」
「桜子、やはり七星の血が覚醒しかけている。いや、実際にはもう覚醒しているのか。どちらにしても、それは今のお前に制御できる物ではない」
確かに七星櫻一郎の戦い方は、桜子の戦い方に比べれば、七星の血の力を完全に使いこなせているわけではないようにも映るだろう。
彼には彼なりの理由がある。七星の血に呑まれないためには必要なことだ。
(七星の血の衝動のままに戦いを続ける。それがどんな末路を迎えるのか、お前は知らずに戦っているのだろう。桜子、やはりこれ以上、お前を聖杯戦争で戦わせるわけにはいかない)
それが自分にとっても奉にとっても結果的に良い方向を齎すのだと信じているのだから。
己が桜子を倒せばそれで終わる。あるいは、バーサーカーがランサーを倒せばそれで終わる。そのどちらかであると考え、
「GIAAAAAAAAAAAAAAAAAAA」
獣の叫びじみた声を聴いた。それは襲い掛かると言うモノではなく、むしろ危機に晒されている時の雄たけびのようですらあり……、
「バーサーカー、その真名はジェヴォ―ダンの獣、纏っているのは都市伝説故に明かされなかった恐怖によって彩られた本質、それこそがお前の正体です。他の陣営であれば、その正体を知ることが出来なかったとしても、セレスさんより託された私たちは、それを知っている」
ランサーに果敢に攻め込んでいたバーサーカーの黒色たる靄のような衣がノルンの発した宣告によってはぎ取られていく。
黒色の装甲を剥がされた先にある獣の本質へと至らんとするために。恐怖とは何かもわからず、未知の存在であるからこそ、与えられるもの。バーサーカーと言う存在も、何であるのか全く分からないと言う捉え方と、真名を知っているかどうかによって大きく変わってくる。
「お前に何処か故郷の匂いを感じた理由がようやく理解できました。斯様な獣が己の故郷と同じ場所より端を発していたとは。我が子らが果たせなかった獣の討伐はこの私が果たしましょう!」
靄が払われていく過程でバーサーカーの動きが明らかに鈍った。ランサーはその隙を見逃すことなく、ランスを叩きつけ、絶叫を上げる獣などお構いなしに、自身の身の丈の二倍はあるだろうランスを掲げて、横薙ぎにバーサーカーを吹き飛ばし、空中へと飛ばす。
「聖槍―――限定解放!」
桜子の令呪を使う事無く、一気に決着をつけるため、ランサーは己の宝具の解放を口にする。巨大なランスである聖槍の中に隠された偽槍――王家の象徴たる黄金の偽槍の穂先が聖槍の中から姿を現し、黄金色の光が収束していく。
「恐怖と言う外装を奪われた今のバーサーカー相手であれば、できるはずです!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
空を切り裂くが如き声と共に放たれた黄金の光がバーサーカー目掛けて放たれる。空中にて受け身を取ることすらままならない獣がそれを避けることは叶わず、黄金色の光の中に総ては飲みこまれていき―――、
「GUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」
「なっ――――!」
すべてが終わると思えたその時に、咆哮轟き、黄金色の光を染め上げる様に、黒色の閃光が空中より地上へと流れ星が如く落下を果たし、弾丸のような速度で攻撃を放ったランサーへと飛び込んだ。
「ガッ、ぐがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「GOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!」
人語を語ることなど獣にはできないが、憎悪と怒りに塗れたように見える表情と鬼気迫る叫び声に相手が何を言いたいのか、ランサーは直感的に理解することが出来た。
―――舐めてくれるな、真名看破ごときで、負ける道理などありはしないと、バーサーカーはもはや生半可な対抗手段では己は斃せないと示しているかのようにすら見えた。
「くく、はは、なんだ、まさか、バーサーカーの真名を明らかにすれば勝てるだなんて、そんな夢を見ていたわけじゃないんだろ? 馬鹿にするんじゃねぇよ、そんな危機はアサシンとの戦いで乗り越えた。もはや今のバーサーカーは名前程度で怖れを奪われるほど柔な恐怖じゃないんだよ!!」
例え、名前を知ったところで何になると言うのか。日本全国をまたに掛けるようにして轟いた未知の恐怖、現在進行形で秋津に与えた視覚的、身体的な恐怖、例え、目の前のサーヴァント相手に正体が晒されたところで、成長し続けた今のバーサーカーを留める手段にはなりえない。
膨れ上がった強化の値は弱体化によって無力化させられるはずの領域をあっさりと踏み越えていく。
もはやバーサーカーには単なる聖杯戦争での攻略方法で何とかできる領域ではないことが徹底的に示された瞬間だった。
「本当の名前も、本来の在り方も知ったことか。こいつはこの街を、この国を恐怖で支配する黒色の獣、誰も本当の名前なんてものは求めていない。本物になることが出来なかったとしても、誰に理解されなかったとしても、俺達は偽物のまま、お前たち本物に勝つんだよ!!」
「そんな、本来なら、真名を明かされただけでも、大幅なステータスの弱体化を引き起こすはずなのに……」
「あれは……もはや現象です。単一の強大なサーヴァントというだけではなく、恐怖そのものが獣の形を成して、顕現を果たしている。根本を断つと言うのならば、それこそ、あの獣の正体を誰にとっても明らかにするしかない」
すなわち、今戦っているランサーやノルン、桜子が恐怖をしていなかったというだけではダメなのだ。バーサーカーの強さの根幹たる、人々へと伝染していった恐怖と言う感情そのものに変化を与えなければ……もはや、日本全国に認知され、その名を轟かせ始めているこの獣に対処することはできない。
(でも、そんなことが現実的に出来るのですか……? 私達だけの認識を変えるだけであれば、方法は幾らでもあるかもしれない。でも、この場にいない人々に真実を伝えたところで、どうやって納得してもらえばいいと言うのか……)
ノルンは思う。例え、この瞬間に総ての人にバーサーカー陣営がこれまでに引き起こしてきた総てを伝えたところで、果たしてどれだけの人間がそれを信じてくれると言うのか。
聖杯戦争という自分たちの知らない世界の裏側を知ることもまた恐怖ではないだろうか。知らなければよかった真実を知らされたことによって、更なる恐怖へと晒されてしまうのだとすれば、真実を開示することは全く意味をなさない。むしろ、バーサーカー陣営を支援してしまうに等しいのではないだろうか。
(もしかしたら。目の前の相手はそこまでのことを理解しているのでしょうか。例え、どう転んだとしても、聖杯戦争そのものが人々にとっては恐怖と隣り合わせであると言うことを。結局、恐怖を振り払う方法なんてものはないと言うことを……)
だとすれば、これは完全な詰みに等しい状況かもしれない。唯一の打倒するための手段すらもバーサーカー陣営の強化に使われてしまうのだとすれば……すべてが、彼らにとって都合のいい方向にしか進んでいかないではないか。
(サクラコ、思っている以上に私達は無力なのかもしれない。いざという時には、今度は、私が命を捨てる番なのかもしれません……)
最悪の展開への想像が頭をよぎる。もしも、そうなってしまった時には、今度はセレスのように自分が命を懸けなければならないと、ノルンは密かに覚悟を決めていた。
――秋津市東側・住宅街・秋津学園――
「酷過ぎる……」
学園の中にあるテレビでは、秋津市の状況がテレビで放送されていた。次々と上がってくる情報は未確認のモノばかりであり、聖杯戦争が行われていることに言及されているものはなかった。
ただ、各所を襲っている集団の中に、勢至姆組組員の姿が見えることに気付いている者は既にいる様子であり、ニュース番組の中でもそれが騒がれている。
『では、これは集団テロの可能性もあると言うことでしょうか……? 秋津市は以前より謎の動画騒ぎのようなものも起こっていて、治安が荒れている様子に見えましたが』
『そういう状況だから、悪い連中も随分と流れて来てみたいですよ。もしかしたら、そういう連中の中に今回の騒ぎを唆したようなものがいるのかもしれない』
『ネットなんかでは、謎の生物兵器が暴れているなんてことも騒がれていますし、実際、あの動画なんて何が何だかわかりません。なんていうか、怖いですよね。繋がるような繋がらないような、不気味な感覚のまま、私達の知らないところで何かが進んでいるみたいで……』
『むしろ、これで何か我々の知らない出来事が進んでいたなんてことだったら、恐ろしい限りです。まだ集団テロの方がいいですよ!』
スクリーンの先にいる人間たちの誰もが真実を知らない。この秋津の街で起こっている騒ぎが何のために発生しているのかを知らない。知ったところで何になると言うのか。
学園が落ち着きを漸く取り戻そうとしたときには既に日は落ちてしまい、生徒たちは茫然自失とした様子で教師と共に学園に取り残されていた。
状況を理解し、自分から行動していた蓮司は教師と共に後処理に追われ、ようやく息を落ち着かせて、テレビの中で語られる的外れな言葉に耳を傾けていたのだ。
「助かったよ、遠坂君。君がいてくれたおかげで生徒たちも落ち着きを取り戻してくれた」
「いや、僕は、何もしていませんよ」
「我々、教師だけではどうしても反発する生徒もいる。こんな状況の中では特にだ。しかし、君がクッションになってくれたおかげで、耳を傾けてくれる生徒たちもいたんだ。そう自分を卑下することじゃないさ」
「………ありがとうございます」
ちょっとばかり面映ゆかった。元々優等生で通っていたものの、あくまでも当たり障りのない態度を取り続けていた蓮司にとって、ここまで積極的に動くのは初めての事だっただけに、どうにもどう感情を動かせばいいのかわからない。
「君はもう少し大人しい子だと思っていたけれど、勘違いをしていたかな」
「間違っていないです。ただ、自分でもちょっと変わって来たかなとは思っています」
この数日間で自分自身も大きく変わり始めてきていることを実感している。きっと、これから先も……
「遠坂君、こんな時に何だが、君に用事があると言う人が来た」
「僕に、ですか……?」
「ああ、それがどうにもワケありの様子でね……実はもう、すぐそこに」
「ご案内感謝します。ワケありもワケあり、何せ、政府直々のご命令で動いておりますんで。邪魔されると色々と面倒なことになりますんで」
教師を押しのけるようにして入ってきたのは、一様に同じ制服を着た集団だった。白いコートを羽織った、銀髪の女性は、この場のリーダーのように振る舞い、蓮司へと視線を向ける。
「君が、遠坂蓮司君?」
「……そう、ですけど」
「よかった。探す手間が大幅に省けたわ。うちらは神祇省のもんです。一宮梓沙のことでようがあると言えば、大体の察しはつきますでしょ?」
「………! ここじゃない場所に動いた方がよさそうですね」
神祇省の使者、そして一宮梓沙に関わること、それは聖杯戦争絡みの話しであり、事と次第によっては蓮司も自分を抑えられるかわからない。
学園を巻き込むべきではないと言う思いからの提案に、相手の女性は懐から携帯電話を取出し、どこかに電話を掛ける仕草を続けながら、蓮司へと近づいていく。
すると、蓮司の前に立ち、携帯電話を蓮司へと差し出した。
「うちらの本題よりも先に、伝言を預かっています。主からの命令でそちらを先に解決せよと」
「電話に出ろって事、ですか?」
コクリと彼女は頷く。拒否することも恐らくは出来ないのだろうと諦めて蓮司は携帯電話を手に取り、自分の耳へと翳す。
「もしもし……」
『よぉ、こうして会話をするのは初めてだな、遠坂のガキ。ライダー、エルナン・コルテスだ。話しはアーチャーの野郎から聞きかじっているだろう?』
「――――――!」
思わず僕は目を見張った。神祇省関連の誰かからの電話であると思っていたのに、まさか、ライダーからの電話なんて流石に考えてもいない。電話を渡してきた彼女も、我関せずと言う反応なだけに余計にわけがわからなかった。
『お前たちも時間がないだろう、単刀直入に言う。俺様たちに力を貸せ。貸してくれたのならば、バーサーカーを潰すための決定的な働きをしてやる。ランサーんとこのマスターを殺したくはないだろ』
「………見返りは? お前が何の見返りも無しに僕たちに力を貸すわけがないことくらいわかる」
口が震えているのが分かるが、それでも極力平生を装って言葉を続ける。
『くく、随分と肝が据わったな。前に顔を見た時とは大違いだ。見返りはランサーんとこのマスターにある頼みごとをしたいだけだ。別にお前たちに損をさせるつもりはない。むしろ、得と考えられるかもしれない』
「彼女にすぐに連絡をつけることはできない」
『報酬は後払いで構わないさ。先に恩だけは与えておく。どう判断するかはお前たち次第さ』
あくまでも自分がどんな提案を口にするのかは言うつもりがないのだろう。ここで蓮司が頷けば、先にバーサーカーへの対策だけは手を出してやると言う算段でいる様子だった。
どうする……? 正直に言って、喉から手が出るほどに協力が欲しい所なのは間違いない。
だけど、桜子さんに負担を強いることになるとしたら……、いや、桜子さんならどういうかなんて聞くまでもない。この街の状況を解決するためならばって無茶でも何でも飛びつくはずだ。
「………わかった。ライダー、お前の提案を呑む」
『いいねぇ、判断の早い奴は好きだぜ』
「それで僕は何をすればいい?」
『ああ、簡単なことさ。一つ確認をさせてくれ。お前の父親の事だ』
そして、僕はそれを耳にして、改めて驚かされた。それは僕のような魔術師では全く考えつかなかったバーサーカーへと打ちたてる大きな大きな楔の話しだった。
神祇省、円華との約定完了まで―――あと一時間