花嫁を選ぶつもりが(性的に)五等分される風太郎の話 作:エロティック大魔神
風太郎による文化祭の告白から一週間あまりが経過した。
風太郎の告白は「誰も傷つけることなく一人を選ぶ」という当初の思惑を大きく外れ、「五人全員と付き合う」という失敗なのか成功なのか分からない結果に終わってしまった。
風太郎も一度五人全員と距離を置いた方がお互いの為ではないかとも考えた。しかし卒業と進学が掛かった大事な時期であると共に、五人の勉強が軌道に乗り始めている。ここで風太郎が家庭教師を降りて、五月あたりが志望校に落ち、四葉あたりが卒業を逃せば一生後悔することになりかねない。そのため、風太郎は家庭教師を続けることを決めた。
ただし、問題は山積みである。
まず、五月があの日の告白を勘違いしたまま全く風太郎と話さなくなってしまった。姉妹の中で、センター試験を利用するのは五月だけであるため、半分以上は五月のために家庭教師をしている状況である。
にもかかわらずせっかく風太郎が五月達のマンションを訪ねても、全く自分の部屋から出てこようとしない。それだけならまだ家庭教師を始めた頃と同じような環境であるといえるが、最近では風太郎だけでなく、四葉以外とは姉妹の誰ともろくに話さないらしい。
普段なら乱暴に部屋をこじ開けてでも五月に勉強を教えていたであろう風太郎だが、今回ばかりは自分が当事者であるという自責の念から五月にどう話しかければいいのか思案していた。
次に四葉だ。風太郎が訪ねたときでも表面上は普通に接している四葉だが、やはりどこかよそよそしい。途中で教室を飛び出した五月と違い、あの日三人の姉と風太郎が深いキスを交わすのを最後までそばで見ていた四葉。やはりかなり思うところがあるのか、時折その表情に影が差すのを風太郎は感じ取っていた。
無理もない。仮に風太郎の妹らいはが、四葉と同じように五人相手に同時に告白していると誤解し、そのうえ三人と立て続けにキスする所を目撃していれば、よそよそしくなる所の騒ぎではない。その日のうちに縁を切られ、二度と話すことを許されないだろう。
ただ、五月に比べて会話ができる分、四葉に対して弁解する余地はまだあるはずだ。風太郎は卒業試験に向けて勉強を教えつつ、あの日のことの謝罪をするチャンスを伺っていた。
そして現在風太郎が抱えている最大の問題があった。それが残りの三人、一花・二乃・三玖についてである。
三人ともあの日以来、タガが外れたように隙を伺っては風太郎と接触するチャンスを持とうとする。文化祭の告白前にも、この三人からの好意は鈍感な風太郎さえ気づくほどであった。しかし、文化祭以前と決定的に違うことは、最近の彼女達が狙っているのが、風太郎と物理的にお近づきになろうとしていることだ。
二乃は学校でも休み時間になれば、理由をつけては屋上や誰も居ない空き教室に呼び出し、潤んだ瞳でハグやキスをしてくる。三玖はよりスリリングな状況が好きなのか、廊下や昇降口でふと周囲の視線が自分達から外れているのを確かめると、キスをしてきたり、ぐりぐりと風太郎の身体に頭を押し付けてくる。
放課後になり、家庭教師のために彼女たちの家へと向かうとそのスキンシップはなお過激になっていく。風太郎が玄関に入るや否や、二人が競うように熱を帯びた身体を寄せてくる。背中に手を回され、柔らかい胸の感触と甘い体臭が風太郎の理性を削り取っていく。
風太郎も年頃の男子高校生であるために、ズボンの中の愚息はみるみる硬さを増し、ズボン越しでもハッキリとその形が分かるまでに膨張する。はじめの方は指先が触れると恥ずかしがり、パッと風太郎から離れていた二乃と三玖だったが、最近は顔を赤らめるだけで風太郎から離れようとはせず、熱っぽい瞳を風太郎のズボンへと注ぐようになっていた。
彼女達をなだめた風太郎は今にも暴れだしそうなズボンの中を何とか鎮めると、すでに帰宅しているらしい五月の部屋の前へと向かう。ドア越しに彼女の名前を呼ぶが返事がない。ドアノブに手をかけ鍵がかけられているのを確認した風太郎は、小さく溜め息をつきながら部屋の前に五月のためにまとめた問題集を置く。前回の分が無くなっているということは、一応は解いているのだろうと風太郎は推察する。
リビングに戻ると、風太郎を待ちわびていたように二乃と三玖が出迎える。三人がゆったりと座れるソファーに腰をかけると即座に二人が両隣に座ってくる。
「フータロー、五月どうだった?」
「いや……今日も返事がなかった」
「あの子も頑固なとこあるからね、一度フー君に頼らないって決めたら中々出てこないでしょうね」
「……二乃の方が頑固」
「何よ、三玖。言いたいことがあるならちゃんと言いなさい?」
風太郎を挟んで睨み合う二人。だがその間も両腕はしっかりと風太郎の腕に巻き付けられ、少しでもくっつく面積を増やそうとする二人によってぎゅうぎゅうと無自覚に胸元に押し付けられる。
思えばこの胸の感触に何度思考力を奪われただろうか。風太郎は自分で自分が情けなく感じた。自他共に認める朴念仁で、今まで勉強とバイトにほとんどの時間を割いてきた風太郎。それゆえ五つ子に出会う前は女性と触れ合ったこともほとんどなかった彼にとって、彼女達の柔らかい身体や鼻腔をくすぐる甘い匂いは麻薬のように彼の理性を奪い続けていた。
「……二人とももう少し離れろ」
「……嫌」
「駄目よ、フー君ったら離れたらすぐどこかにいっちゃうじゃない」
風太郎の言葉を即座に拒否する二人。真っ直ぐに風太郎を見上げた彼女達は、彼の言葉が本気でないことを見透かしたように目を細めた。そしてゆっくりとした動きで風太郎の頬に唇をつける。
「フータロー……好き、好きぃ……」
「私の方がフー君のこと好きに決まってるじゃない……ねぇ、フー君」
チュッチュッと風太郎の頬から首筋に掛けてキスの雨を落としながら、彼女達は競い合うようにして風太郎への愛を囁く。その耳元をかすめる吐息と、柔らかい声色に風太郎は思わずゾクゾクと身を震わせた。
「三玖も二乃も……もうこんなことやめろ……!」
「どうして?私達のこと嫌いになった?」
「っ……そうじゃないが、こんなこと倫理的に駄目だろ」
「でもあの日、私達全員が好きだって言ってくれたのはフー君じゃない」
「だからそれはお前たちのかん───」
最後まで言い終わる前に風太郎の口が三玖の唇によって塞がれた。続いて押し込まれるようにして風太郎の咥内に入ってきた三玖の柔らかい舌が、あやすように咥内を這い回る。
しばらくして息が続かなくなったのか、ようやく三玖が口を離した。
「ぷはっ、はぁ、はぁ……風太郎が今どう思っててももう関係ないよ」
「そうね、あの日の告白がどういう意味だろうとフー君はもう私たちを好きになるしかないのよ。ううん、必ず好きにさせてあげる」
「それに私はもうフータローと離れられない」
「こんなに好きな人とのキスが気持ちいいなんて知らなかったしね、私も今更フー君以外と付き合うなんて考えられないわ」
そう言って風太郎を真っ直ぐに見つめてくる二人。真剣な視線の中にどこか拒否を恐れる不安の色が宿る三玖と、情熱的で勝利を確信しているような自信に溢れた二乃の瞳。
彼女たちはここまで真剣に自分のことを思ってくれている。風太郎はこの二週間、少なくともそのことは痛いほど実感していた。
二乃と三玖は毎日のように早起きして風太郎の分まで弁当を作り、家に行けば手作りのお菓子が待っている。女優業で忙しいはずの一花も、風太郎の前では一切の疲れを感じさせない笑顔で楽しそうに話しかけてくる。
そんな彼女たちの気持ちを無視してまで、一人を選ぼうとすることは本当に正しいことなのだろうか。風太郎の考えは変わりつつあった。
元々五人のことが好きだと言ったのも紛れもない風太郎の本心である。五人から一人を選ぶとしても、全員に対してある程度の恋愛感情を持っていなければ、放課後に5人全員を呼び出してあのような告白の仕方をするはずがない。
「……俺が五人全員と付き合っても、お前たちは本当に良いのか?」
頭の中でずっと抱いていた疑問。ぱちくりとまだたきする二乃と三玖を見てそれがふと口に出てしまったことに気づく。
「まぁ、理想を言えば私一人と付き合ってくれるなら一番だったかもね。フー君の愛を五等分しなくて済むし」
「でも、選ばれなかったらもっと辛いし、悲しい。それならみんなで幸せになった方がずっといい」
風太郎を独り占めしたときのことを考えニヤリと笑う二乃と、振られたときのことを考えて表情を曇らせる三玖。だが、二人とも想いは同じようで、ぎゅっと風太郎の手を握ってきた。
「だからフー君は余計なこと考えないで、今はただ私達のことを好きになってくれれば良いわ」
「私も時々フータローを独り占めできたら、それでいい。だからちゃんと私達のこと好きになって」
気づけば風太郎の手を握る二人の手は小さく震えていた。それに気づいた瞬間、風太郎は思わずその手を握り返していた。一瞬の驚きのあと、二人の顔が輝く。
その表情を見たとき、風太郎は思った──────どれだけ倫理的におかしくとも、世間から認められなくとも、彼女たちを幸せにしたいと。
「……ずっと迷ってすまなかった。これだけ想ってくれてることを知っていながら、俺はそれに応えていなかった」
風太郎は二人を真っ直ぐ見つめながら続ける。
「俺も二乃と三玖のことが好きだ。もし俺でいいなら……付き合ってくれ」
風太郎の告白に、驚きからか目を見開く二人。その目にみるみるうちに涙が溜まり、上気した頬を流れ落ちる。
言葉も出ず、こくこくと首を縦に振るだけの二人を風太郎はそっと抱き寄せる。そして、彼女たちに初めて自分から口付けをした。
ぎこちなく慣れない様子の風太郎からのキス。それでも彼女たちは初めて風太郎から返ってきた柔らかい想いを一身に受け止めた。
「やっとフー君からキスしてくれたわね」
勝ち誇ったようにニヤリと笑う二乃。
「すごい……自分からするのと全然違う……」
未だに目をつぶって余韻に浸っているらしい三玖。
反応は二人とも違えど、この先して欲しいことは同じらしかった。ぐいっと風太郎の方に顔を近づけ「おかわり」をねだるように、目をつぶる。
風太郎は今度は少しの躊躇いもなく、彼女たちと唇を交わす。
「んっ、ちゅっ、はぁ……フー君……」
「フータロー……次っ、私も、もう一回して、んっ……♡」
しばらくしても二人のおねだりは一向に止まる気配が無かった。二人の表情はとろんと蕩け、ささやくような甘え声でかわりばんこに風太郎とキスを交わす。息が続く限り唇をくっつけ、舌を絡め合う。風太郎からの愛を確かめるように彼の舌を咥内に迎え入れ、時折ぴちゃぴちゃと音を立てながら甘い唾液のついた自分の舌を押し付ける。
姉妹がくつろぐソファの上は、普段からは想像もできないような淫靡な雰囲気が漂っていた。
風太郎自身もその雰囲気に酔うように二人と舌を絡め合う。交代で息を整えられる二乃や三玖と違い、ほとんど息継ぎなくキスを続ける風太郎。酸欠でぼーっとする頭が、甘い刺激と酸素を求めてむさぼるように唇を押し付け、舌を突き入れる。
「はぁっ、はぁっ、フー君、好き……フー君♡」
やがて完全に発情したらしい二乃が荒い息をつきながら、うわ言のように風太郎の名前を呼ぶ。そして、風太郎の首元に両腕を回すと引き込むようにしてソファーに倒れ込んだ。
「二乃……大丈夫か?」
「うん、大丈夫……フー君、好き、好きよ……♡」
二乃の突然の行動に思わず冷静さを取り戻す風太郎。だが二乃はとろんとした表情のまま、風太郎を胸元に抱き寄せる。
「に、二乃、もしかしてここで最後までするつもり?」
姉の異変に気づいたのか、三玖が慌てたようにグイグイと風太郎の背を引いて二乃から引き離そうとする。
「そんなことしないわよ……ただ、フー君をぎゅってしたかっただけ」
「そ、そうか」
「なんだ、びっくりした……」
思わずほっとため息をつく風太郎と三玖。
付き合ってすぐに初体験まで行くのは早いと倫理的に心配していた風太郎と、風太郎の初めてを二乃に取られると心配していた三玖とではため息の理由が違っていたが、とりあえず二乃が暴走せずに止まってくれて良かったと安堵した。
何はともあれ、一度落ち着いた三人。気がつくと日も落ちて、夕食どきになっていたこともあり、風太郎はここで帰宅することになった。
「本当に帰るの?フー君の分のご飯も作るわよ?」
「らいはが夕飯作ってくれてるからな。次また呼んでくれ」
「それならしょうがない。フータロー、気をつけて帰ってね」
「そういえば、四葉がまだ帰ってないわね。何してるのかしら」
二人と別れ、マンションを後にするフータロー。玄関ホールまで降りたところで、ガラス扉の端に見覚えのあるリボンが動いたのが見えた。
「四葉か……?何してるんだこんな所で」
「あっ、うう上杉さん!こんばんは!」
植え込みの隅に腰掛けていた四葉に声を掛けた風太郎。振り返った四葉は思い切り狼狽した様子を見せる。
「何で中に入らないんだ?外は寒いだろ」
「え、えっと今帰ったばかりで少し休憩をしてたんです!学校で頼まれごとをしてまして!」
「そうか、二乃達も心配してたから早く帰れよ」
「ありがとうございます……」
そこで会話が途切れたため、風太郎は家へと足を向けようとする。四葉がしばらくの逡巡のあと、風太郎に向けて口を開いた。
「う、上杉さんは今日も家庭教師ですか?……ってそうですよね!私何を聞いてるんだろー!さ、さよなら!!」
質問なのか、確認なのか、自分で慌てて答えを出すと四葉は走ってマンションの中へと消えていった。
風太郎は四葉との間にあいた溝を感じ、小さくため息のような白い息を吐き出して、家路につくのであった。