花嫁を選ぶつもりが(性的に)五等分される風太郎の話 作:エロティック大魔神
「はぁ、間に合った」
時間ギリギリのところで、自動精算機から支払いを済ませた一花が、ホッとため息をつく。
「ホントに払わなくていいのか?」
「大丈夫だよ、私が誘ったんだから。でも危なかったね」
「お前が風呂場で最後にもう一回とか言うからだろ……」
風太郎は先程の光景を思い出しながら呆れた声で呟いた。あまり時間がないために、二人で一緒にシャワーを浴びていると一花が「お風呂場でするのもドキドキしそうじゃない?」とか言いながら胸を押し付けて誘ってきたのである。ボディーソープのついた乳房はヌルヌルと風太郎の背中に泡を広げていく。その感触に風太郎はムラっときてしまって結局最後までしてしまった。
おかげで、二人とも大慌てで退室することになったのである。ドライヤーする暇も無かった一花の髪はまだしっとりと湿り気を帯び、風呂上がりの彼女の身体からは女性らしい甘い香りが漂っていた。
「タクシー呼んだから風太郎くんの家まで送っていくね」
「……何から何まで悪いな」
「あはは、気にしないで。もう少し前だったら歩いて帰っても良かったんだけどね」
そう言って苦笑いを浮かべる一花に、風太郎は改めて目の前の彼女が、テレビの向こう側で活躍する女優であることを思い出した。
実は一花の方も事務所から釘を刺されていた。ちょっとした世間話から風太郎との関係を感ずかれてしまった一花。男と二人で歩いている所を見られれば、週刊誌に撮られ、仕事に支障をきたしてしまうかもしれない。だから移動する時は変装をした上で、できるだけタクシーを使うというのが事務所から出された指示であり風太郎と今後も穏やかに付き合っていくために必要なアドバイスでもあった。
そんな話をさらっと説明した一花は、鞄からマスクと帽子を取り出した。
「というわけでこれからも二人ででかける時はこんな変な格好になっちゃうけど、ごめんね」
「気にするな、なんなら俺もサングラス付けてやろうか?」
「あはは、似合わなさそー」
「そんなことない。さっき付けてたの貸してみろよ」
「夜にサングラスしてると逆に目立っちゃって変装にならないらしいよ」
二人でくだらない話をしていると、駐車場の入口の方からヘッドライトの眩い光が差し込んできた。
「あっ、多分タクシー来たよ」
そう言いながら一風太郎の正面へと回ぅた一花は、ちょこんとつま先を伸ばして背伸びをすると、風太郎の唇に触れ合うだけのキスをしてきた。
「な、なんだ急に」
「タクシー乗ったらもうキスも出来ないだろうから、最後にしたくて」
照れたようにはにかむ一花を可愛く思い、風太郎の方からも一花にキスを落とす。
「んっ……えへへ、ありがとう」
幸せそうに笑う一花。すぐに一花の言う通りタクシーが駐車場へと入ってきた。
「さっ、帰ろ」
乗り込んだ後は、二人は特に何も話すことはなかった。ただ、運転手に見られないよう繋ぎあったお互いの手からは、先程の行為の余韻が残ったような微熱を感じていた。
* * *
翌日、風太郎は眠い目を擦りながら学校へと向かっていた。
今日も一花は仕事らしいことは、昨日別れた後に交わしたメールで知っていた。
その中で、風太郎はセックスをしたことは他の姉妹には黙っていてほしいと頼んでおいた。一花が風太郎としたと分かれば、二乃や三玖は更に激しい攻勢を掛けてくるだろうし、四葉や五月との関係は更にギクシャクしてしまうだろうからだ。一花もそれは分かっていたのかすぐに了承してくれた。
普段よりずっと遅い時間に帰宅した一花が他の姉妹に何と説明したかは知らないが、二乃や三玖から鬼のようなメールや電話が来ないことから考えて一花は秘密を守ってくれたらしい。風太郎は少しホッとしていた。
ところが教室についた途端、先に登校していた一花以外の四人の視線が一斉に風太郎に集まる。五月と四葉はすぐに視線を逸らしたが、二乃と三玖は何やら鬼気迫る表情でじっと風太郎を見つめてくる。
「お、おはよう……何だ?」
「フータロー、ちょっと来て」
「私もフー君に聞きたいことあるから」
そう言って風太郎の手を引き、二乃と三玖は教室から出ていった。鞄を置く間もなく教室から連れ出された風太郎を見送った四葉は苦笑いを浮かべ、五月はフン、と不機嫌そうな吐息を漏らすのだった。
一通りの少ない実習棟まで連れてこられた風太郎。二乃から言われた「聞きたいこと」には、流石の風太郎でも心当たりがあった。というか心当たりは一つしかない。一花とのことである。だが、一花は口外しないという秘密を守ってくれたようである。ならばなぜ二乃と三玖にこうして登校早々に拉致されているのか。風太郎は無言で先を歩く二人について行きながら、どう説明しようか思案していた。
階段の踊り場まで来たところで先を歩く二人が立ち止まった。
「ここならこの時間は誰も来ないわね」
「おい……もうすぐHR始まるぞ……」
「HRより大事なこと。それにフータローがちゃんと答えてくれたらすぐに終わるよ」
踊り場には朝の日差しが降り注ぎ、手すりに寄りかかる二人の顔を照らしていた。しかし、秋の穏やかな朝日とは裏腹に二人の顔には不機嫌を押し殺したような無表情が張り付いていた。
「フー君、単刀直入に聞くわ……一花とシたでしょ?」
「なっ……!?」
二乃の直球な質問に思わず固まる風太郎。沈黙は肯定と受け取ったのか、三玖が小さくため息を吐く。
「やっぱりしたんだ……」
「……一花から聞いたのか?」
「ううん。なんか昨日遅くに帰ってきたあといつになく嬉しそうだったから、一花は仕事だって言ってたけど」
「それにちょっと歩き方も普段と違ってたしね、何かぎこちない感じだったわ」
五つ子同士の察しの良さと女性特有の勘の鋭さに風太郎は恐怖すら覚えた。ゴクリと唾を飲み込んだあと、恐る恐る口を開いた。
「……その確認で連れてきたのか?」
「まさか。一応聞いてみたけど絶対フー君と何かあったのは分かってたし」
「じゃあどうして───」
風太郎が何か言おうとしたところで、三玖が風太郎に向かってにじり寄ってきた。それに合わせて1歩下がったところで壁に背中が当たってしまう。風太郎の顔の両脇を抜けて、三玖の両手がバンと勢いよく壁とぶつかる。いわゆる壁ドンの体勢になり、頬を膨らませた三玖が風太郎を見上げてくる。
「……私は怒ってる」
「……すまん、なんの相談もなく先にしてしまって」
「そうじゃない。私自身に怒ってるの」
「自分に……?」
「この前、フータローが家で告白してくれた時、二乃はフータローと最後までしようとしてた」
「ちょっ! 待ちなさい、最後までしようとなんかしてないわよ」
慌ててツッコミを入れる二乃を一瞥もせずに三玖が続ける。
「しようとしてた。でも私は止めた。二乃に先を越されるのが嫌だったのもあるけど、あのまま最後までする勇気がなかったから……」
「三玖……」
三玖の目にはいつの間にか涙が浮かんでいた。風太郎は慌てて彼女の頬に手をやり零れそうな涙を拭う。
「悔しい。せっかくフータローと一緒にいれるのに、私に勇気がないせいでどんどんフータローが離れていっちゃう気がする」
「そんなことはない。俺は三玖のこともちゃんと好きだ」
「……ありがとう。私もフータローが好き」
壁に風太郎を押し付けるような形で伸ばされていた三玖の両腕はいつの間にか風太郎の背中に回っていた。
「だから、私ももっと積極的になる。フータローにちゃんと好きって伝えれるように我慢したり、怖がったりしないようになりたい」
潤んだ瞳の三玖が風太郎を見上げてくる。そして少し躊躇うように視線を逡巡させたあと、頬を染めた三玖が真っ直ぐに風太郎を見つめ口を開いた。
「ねぇ、フータロー……私ともしよ?」
その仕草にドキッと胸が高鳴る風太郎。今更ながら三玖の押し付けられた胸の感触に気が付き、ドクドクと心拍数が高まる。
「三玖はいいのか? そんなすぐに……」
「……うん、フータローのこと好きになってから本当はいつかしたいなってずっと思ってたから」
そう言って恥ずかしそうに目を伏せる三玖。長い前髪に隠れそうなその表情を見逃したくなくて、風太郎は三玖の前髪をサラサラとかき分けた。目が合った三玖は、瞳をゆっくりと閉じ、小さく唇を開けた。自然と二人の顔が近づいていく。
「三玖……」
「フータロー……」
「……あの、私もいるんですけど」
二人の唇が重なり合う直前で、それまで黙っていた二乃が堪えきれずに口を開いた。自分を置いて二人だけの世界に入ろうとする風太郎達に呆れたような表情を浮かべる二乃。
「ごめん、居ること忘れてた」
「そんなに影薄くないわよ! というか、私だってフー君と、そ、その……シたいんだから!」
「……何を?」
「何って……! なんで私だけはっきり言わないといけないのよ!?」
視線が交差しバチバチとした雰囲気の漂う二人。話はそのままどちらが先にするのかという話題になり、お互いに一歩も引かずに膠着状態となった。
「フー君はどう思うの? 先に私としたいわよね!?」
「フータロー……私としよう?」
「……」
どちらを選んでも地雷を踏むこととなる二択に風太郎は黙秘以外の選択肢を選ぶことができない。ここで「なら三人で」とでも言おうものなら大いに二人の怒りを買うことは目に見えている。
「じゃ、ジャンケンで決めるか……?」
「フータロー……私を選んでくれないの……?」
「初めてを決めるのにジャンケンって……馬鹿じゃないの!?」
三玖からは悲しそうな視線と二乃からは怒鳴り声を頂いた風太郎は釈明に追われる。
「ち、違う! 二人ともとても魅力的で俺には選べない……だからいっそ天に委ねようと」
「魅力的……」
「ふ、ふーん……そういうことならまぁいいわ。しょうがないわね、ジャンケンでも私は大丈夫よ」
「私も……負けない」
メラメラと瞳に焔が見えるような二人の対決はたった一回でケリがついた。二乃がグーで三玖がパー。三玖の勝ちである。
思わず近くの風太郎に抱きついて喜ぶ三玖と、対照的にワナワナと握った拳を見つめる二乃。
「二乃────」
「分かってるわよ! 放課後四葉と五月を連れ出せばいいんでしょ!?」
「うん。終わったらメールするから」
「フー君! 次は絶対私だからね!」
プリプリと怒りながらもしっかり三玖の意図を汲んだ二乃は捨て台詞のようにそう言い放って先に教室の方へと戻って行った。
踊り場に残された二人。ジャンケンの結果によって今日初体験をすることが決まった三玖は、今更ながらその実感が湧いてきたのかみるみるうちに顔が赤くなる。
「フフフフフータロー……そういう事だから……今日の放課後うちに来てくれる?」
「あぁ……分かった。一緒には帰らないのか?」
「う、うん……部屋の片付けとかあるから、一時間くらい遅く来てほしい」
普段から片付いている三玖の部屋の掃除に一時間も掛かるだろうかと思った風太郎だったが、三玖の言葉に素直に頷いた。いくら朴念仁の風太郎でも、初めてを前にした女の子には心の準備やあれこれが必要だということは知っていたからである。
「じゃあ、教室戻るか……」
「うん……あ、待ってフータロー」
三玖の声に、先に階段を降り始めていた風太郎が振り返ると、彼女の唇が押し当てられた。そのまま舌が風太郎の咥内へと滑りこみ、ぎこちないながらもクチュクチュと舌が絡みついてくる。三玖の息の続く限りそれは続き、やがて三玖の唇が離れた。
「きゅ、急だな……」
いきなりのディープキスに風太郎も赤面して口元を押さえる。全く同じ仕草をしていた三玖が恥ずかしそうに頷く。
「こうしたら、放課後までフータローが私のことだけ考えてくれるかなって……」
三玖の思惑通り、風太郎の股間にはみるみるうちに血が集まり、思考力の落ちた脳内は三玖のことでいっぱいになっていた。そんな風太郎の様子はどうやら三玖にも伝わったらしく、彼女の口角が小さくつり上がる。
「ほら、フータロー。私達も教室戻ろ?」
こうして、風太郎は悶々としたまま、放課後までを過ごすのであった。