今回はエロ無いです。健全100%です
彼女との出会いは、あっさりしたものだった
ブロッサムヒルの新設騎士団にて、騎士団長として任に着くこととなった
「・・・」
執務室に一人の少女。おそらく、彼女が副団長として配属された花騎士だろう
「・・・ん?もしかして、アンタがここの団長かしら」
いかにも今日からこの執務室を拠点にするよう拝命した者であるが、もし副団長であるならこちらも名前を聞かせてもらいたい
「ああ、ごめんなさい。アタシはアブラナ、今日からよろしく」
活動初期、騎士団は活動慣れや互いの実力把握を目的として、先輩騎士団に混ざっての鍛錬やフォス平原での簡単な警備・討伐任務を指示される
「アンタって、真面目よね」
そうだろうか?
自分の指揮には花騎士の命が、騎士団の行動には無力な一般市民の命がかかっている。経験不足からくる未熟さを差し引いて考えても、自分はあまり真面目な方とは言いがたいように思えるが
「そういうところよ。まあアタシは好きよ?それよりそろそろ今日の見回りの時間だし、準備してよね」
経験と実績を重ね、ガルデの裾野方面やミムイス湖といった少し街道から離れた場所や国境に近いスカネ周辺での任務も増えた頃
「ねえ、そういえばアンタってどういうのが好きなの?」
はて、どういうのとは、何についての話だろう
「何にっていうか・・・全体的に?食べものとか、服とか・・・彼女とか?」
か、彼女?自分の女性の好みを聞いて何の意味が?
「あら、案外ニブいのね。結構みんなアンタのこと狙ってるわよ?もちろんアタシもね」
今、何気ないような流れで告白されたような・・・
「そうね、告白ね。アタシでよかったら考えといてね」
こういうことを聞いてしまうと、否応なしに意識してしまう
「それでどうなの?アンタさえよければそろそろ夕食時だし、アタシが作ろうと思うんだけど」
急展開に回らない頭でつい頼んでしまった
おいしかったです
なし崩しのような気がするが、たまにアブラナに手料理を作ってもらうことになった
「ねえ、ちょっといいかしら」
朝の執務室にアブラナが訪ねてきた
今日はお互い非番のはずだが、何かあったのだろうか
「ん、別に何もないんだけどね。ほら、そろそろ夏だしアンタに水着選んでもらおうと思って」
そういうことならついて行くのは構わないが、自分が選んで本当にいいのだろうか
「この前言ったでしょ?アンタの好みで選んでほしいのよ」
用事もなかったため結局選びに行くことになった
「団長、アンタ最近けっこう評判になってるけど知ってる?」
評判?噂される心当たりはまったく無いのだが・・・
「安全な地域を担当する新規部隊とはいえ、負傷率がかなり低いって言われてたわ。それで遠方任務に出るのも早いとかもね」
ずいぶんと高く買ってもらえているようだが、うら若い乙女に自分の間違った判断で傷を付けるわけにはいかないだけだ
その成果が出たのなら嬉しい限りだが、自分のすべきことをした以上のものではない
「やっぱり真面目よね。アタシたちも戦いやすいと思ってるんだから、もうちょっとぐらい誇ったっていいのに」
こういう時こそ気を引き締めておかねば、自信過剰は慢心によるミスを呼ぶ
警戒は多少強くてちょうどいい
「またそんなこと言って。無理しすぎてアンタが倒れたりしないでよ?それよりほら、着いたわよ」
促されるまま服屋に入る
婦人用専門の店のようで店内はほぼ女性しかおらず、なんだか気恥ずかしい
「騎士団長やってて似たような環境なのに今更?」
それはそれ。所かわれば感じかたも違ってくるものだ
ともあれまずはアブラナの水着探しだ。アブラナ自身はたとえばどんなものがいいのか、参考までに聞いておきたい
「うーん、そうね・・・」
水着コーナーに移動し、いくつか手にとって見比べる
「これとか、これとか・・・こっちのも可愛いわね」
体に当てながらこちらに水着を見せる
自分でもいくつかよさそうなものを取り、どれがいいか思案する
「ちょっと待ってて、試着してくるわ」
水着を抱えたアブラナが試着室に入る
「お待たせ、見てもらえる?」
少しの間ごそごそと着替える音のした後、カーテンの奥から声をかけられる
カーテンが開き、頬を赤くしたアブラナが水着姿で出てくる
これはシンプルなワンピースタイプの、水色地に白ドットのデザインだ
「さすがにちょっと子供っぽすぎるかしら・・・」
そうでもないだろう。可愛くていいと思う
「そ、そう?それじゃ次いくわね」
2番目はライムグリーンのビキニで、フリルの縁取りと肩から斜めに入った3本のラインがワンポイントの彩りを加えている
パレオも巻くと落ち着いた印象になる
出てきたアブラナを見て、ついドキリとしてしまう
続いて、さらに小さい白のビキニ
「やっぱり、胸も大きくないし似合わないかしら?それにここまでくると露出が多すぎる気がするわね」
似合っていないということはないが・・・
「なんか歯切れが悪いわね。どうしたの?」
いや、あまり人前で、しかも交際しているわけでもない異性の前で着るにはふさわしくないなというか・・・
「それもそうね・・・じゃあこれは機会があってもアンタと二人の時限定ね」
最後に着替えたのは、セーラー服のようなデザインの水着
セパレートタイプだが裾が少し長めな、普通の衣服に近い見た目だ
細身で小柄なアブラナによく似合っており、妙にしっくりくる
「どれがよかったかしら」
正直に言うとどれも甲乙つけがたく眼福極まる
強いて言うなら・・・今着ているセーラー水着がシンプルとデザイン、出しすぎない程度の露出度でバランスが取れていて好ましい
「そっか、なるほど・・・ふぅん?おへそ出るぐらいのが好きなんだ」
否定は難しいが、決してそれで選んだわけではない
せっかくついて来たのだしプレゼントのつもりで代金は出すが、自分で気に入ったものにしなくて本当にいいのか?
「アンタを喜ばせるのが目的なんだから、それじゃ何の意味もないじゃない」
断言されるとむず痒いが、再三確認しても本人がこう言っているのだからこれ以上言うことは無い
会計を済ませ、店を出る
「ふふ・・・団長からのプレゼントねぇ・・・♡」
隣を歩くアブラナが嬉しそうに袋を見る
というか来た時より気持ち近くを歩いている気がする
「団長、アンタもなんだかんだ言ってアタシに言い寄られるの嫌じゃないんでしょ♪」
それはまあ、男としては美少女からラブコールを受けるのは嬉しいものだ
さて、思ったよりも時間がかかってしまったことだし昼食はこのまま街の飲食店へ行こう
「だったらこの間できたばっかりのレストランがあるんだけど行ってみない?」
行きたい店があるならぜひ付き合おう
「たしかちょうどこの近くだったと思うんだけど・・・」
もしかして、あの店がそうだろうか
「あ、そうそうあそこよ。さ、行きましょ」
店内に入ると、明るく洒落た内装と胃袋をくすぐる匂いに出迎えられる
開店直後という話題性のためか若干早めの時間の割に席はそこそこ埋まっている
店員の案内で自分達も席に着き、メニューを眺める
「どれもおいしそうで悩めるわね・・・」
他の客のもとへ運ばれた料理を見ても、どれも食欲をそそられて仕方ない
おかげで注文を決めるのにかなり迷ってしまった
「こうやって、二人で出かけて、服買って、レストランで食事して、なんて完全にデートね」
デートと言われ、危うく飲んでいた水をむせ返しそうになる
「少なくとも、周りから見たら完全にカップルでしょうね」
あ、あまりからかわないでもらいたい・・・
「あ、耳真っ赤」
そこへアブラナが注文していたデザートのパフェが運ばれてきた
デザートにしてはやや大きいような気もする
「はい団長、あーん」
スプーンに乗ったクリームが突き出される
・・・いやいや、アブラナのぶんが減るし間接キスになるだろう
「そのために頼んだんだから当然でしょ」
左手で頬杖をついたアブラナが少し紅潮した頬を緩めまっすぐに見つめている
「ほら、溶けちゃうわよ?」
逃げることは許されないらしい
腹をくくり、差し出されたスプーンを口に入れる。あまい
「ふふ♡あーん」
次が来た
仕方ないので食べる
その次はスプーンが来た。つまりやれと?
「そ、あーんして?」
パフェをすくい取り、アブラナの口へと運ぶ
「はむっ、ん、甘くておいしい」
どうしよう、むずむずする。すごく恥ずかしい
実際に行動に移すと変に意識し過ぎてしまう
心臓がバクバク高鳴る。顔が熱を持っている
「顔すっごい真っ赤じゃない、可愛い♪」
パフェがなくなるまで終始この調子だった
精神的にどっと疲れた・・・
「カップル割をご利用ですねー♪」
「お願いします」
・・・えっ?カップル、割?
「ええ、だってこの店・・・『カップル・夫婦向けのレストランとして』人気急増中だから♪」
してやられた。最初からわかって連れ込んだのか
我ながら流行のリサーチが甘かった
割引価格で支払って出るとさらに距離が近く、いや腕に絡みついている
「海デートが今から楽しみね」
なぜか既にデートが前提になっている
「じゃなきゃアンタが見ること考えて選ぶ理由なんかないじゃない?それとも、相手がアタシじゃ嫌?」
嫌なわけではない。決して嫌ではない
「はい決定。あ、そういえば団長の水着も要るわね」
おかしい、とんとん拍子で話が進む
とっくに尻に敷かれたようなことになっている・・・
夏。強制連行されましたが私は元気です
泳ぎに移動する人が多い季節でもあるため、たまたまラカタンビーチの警備任務を指示された
つまり、断るとか休暇取得とかそんな以前に予定通りバナナオーシャンに来るしかなかったというわけだ
仕事なので警備と害虫退治、場所が場所のため追加でライフセーバーのサポートに走りまわってバカンス気分どころではなかった
連日の出動の後、ようやく増員の騎士団が到着し、非番の日ができた
その非番の当日、起き抜けからアブラナに連れ出された自分は今、二人きりで静かな岩場に居る
髪をポニーテールにまとめ直した水着姿がまぶしくて直視できない
「もっと見てもいいのに・・・」
頬を膨らませたアブラナに海水をかけられる
やられたら、やり返す
「きゃん!なによノリノリじゃない、それっ」
二人して水をかけあう。どう見てもバカップルのたわむれだ
しばらく遊んでいたらふとアブラナの水着が濡れて貼りついていることに気がついてしまった
「急にどうしたの・・・あ、濡れたの見て興奮したんだ」
いや興奮はしてない、いやしてないのでもなくてしそうというか・・・
「・・・押し倒しちゃう?」
いやいやいやいや、時間といい場所といい関係といいしかも押し倒すとかマズいにもほどがあるだろう
「さすがに冗談よ。優しくしてくれるならしても・・・アンタになら、いい、けどね」
赤くなりながら斜めを向かないで欲しい。色っぽすぎる・・・
「んむっ!」
一瞬脳味噌がフリーズした
いったい何が起きたのか理解ができない
なんかやわらかい、あとほんのりあたたかい
じんわりと意識が回復するにつれ状況が飲み込まれる
アブラナがこちらの首に腕を回し、キスしてきたらしい
「・・・しちゃったわね」
唇を押さえながら言うアブラナ。恥ずかしいならやめておけばよかったのに
「既成事実、じゃないけど、でもこれで断らせないわよ♪」
ああ、部下に海でキスされて交際がスタートしてしまった
とりあえずどうやって休暇が合うように調整するか考えねば・・・
こうして迎えたその年の秋
アブラナはというとすっかり執務室に居座るようになった
たまにベッドにももぐり込んでいる
その彼女が少し前にふらっと出かけ、戻ってくると何やら抱えていたことがあった
今、自分の目の前でその中身を広げ・・・何かをくりくりしている
「ん、何って・・・見ての通りマフラーだけど」
定番の
「セーターも欲しかった?」
それは・・・ペアルックとかにされそうなので遠慮しておく
「ぺっ、ペアルックはさすがに・・・」
二人用のマフラーは平気なのに?
「アンタもでしょ?いいの、最悪ここでつければいいんだから」
室内でマフラーというのも中々シュールだ
「えいっ」
編みかけ(といっても既にそこそこの長さである)のマフラーを首にかけられる
膝にちょこんと乗ったアブラナが何事もないように作業を再開する
あの、動けませんアブラナさん
「今日の事務は終わってるんだからいいじゃない」
居座られ身動きが封印された
仕方がないので肉付きの薄いお腹に手を伸ばす
「ひゃ、くふ、ちょっと、もう・・・くすぐったい、からぁ」
なでなで、さすさす・・・
「アタシのお腹じゃ細くて面白くないでしょ?」
確かに引き締まったアブラナの体ではこねたり揉んだりつまんだりできないが、女の子らしい柔らかさやすべすべした肌はなんとなくいけない気分になる
というようなことをやっていたらしっかり冬になるまで毎日のことになっていた
こたつに入って暖をとりながらアブラナ片手に書類仕事をこなす
終われば一緒に食事をして、寝るのも毎日一緒である
「団長さま、お二人はいつ結婚するんですか?」
「あら~、そういえばぁ、もうしてる気になってましたけど団長さんの結婚式に呼ばれた記憶がありませんねぇ~」
「断じて、熟年夫婦の空気?」
「せっかく団長さんを射止めたんですもの、逃がす手は無いですわよ?」
普段の様子を見ていた周囲から外堀が埋められていて・・・
「ねえお父さん、すんごい長いけどまだ続くよねそれ」
そうだな、折り返したかどうかぐらいだろうか
「うげー・・・馴れ初め聞きたいとは言ったけどこんな胸焼けしそうなバカップルののろけは聞きとうなかった・・・」
「だから言ったでしょ、手短にしてあげなさいって」
「お母さんが隙あらばお父さんにひっついてるのも昔からだったんだね・・・」
まあまあ娘よ、そうげんなりするものでもない
いつかお前もお母さんのようにアプローチをかける日が来るだろうし、お母さんのようにべったりできる人を見つけなさい
「お母さんとべたべたしながら言わないで」
「妬いてもお父さんは渡せないわよ?」
「なんでそうなるのよぉ・・・」
「くっついてるのが幸せだからよ?好きな人ができたらわかるわよ」
いつものようにみのむし2つぶら下げて布団をかぶる
娘が騎士学校に行ったり戦ったりするのは、ほんの少しあとのお話