14週間ハーメルンに投稿するエレボス 作:えっちゃんエレボス大邪神
今週はTS娘の話です。短いです。
TS娘の話
私は黒岩渚。 女みたいな名前だがれっきとした男
過去形なのは間違いなどではない。何故なら現在の黒岩渚はその中身は置いておいて肉体は間違いなく女性のものだからだ。
年の頃は二十代手前頃、猫科の動物を思わせるすらりとした手脚に、線は細いが引き締まり無駄のない肉体。
胸は小振りで掌に収まる程のサイズだが、尻はツンと上を向いて健康的な肉体美を感じさせる。
男の頃千円と少しの金額の理髪店でざっくばらんに切り捨てていた癖のある黒髪は腰まで伸びた艶のあるストレートになっている。
【TS病】。
同人誌等で散々使い古された様な名前の奇病が現代日本を襲っていた。
現状感染経路は不明、空気感染とも粘膜感染とも言われているが定かではない。
ただ、これまで仕事一辺倒で女性との接触が殆ど無かった私が「こう」なっているという事から、
私自身は空気感染の線を疑っている。
感染後の症状は非常にシンプルだ。男性は女性に、女性は男性に肉体が変質する。
それも時間を掛けてではなく睡眠中一晩で急速に変わるというのだから驚きだ。
そこまで肉体に急速な変化が起きれば激痛でどうにかなってしまいそうなものだが、
事実として目が覚めた時に自分の身体がそうなってしまっていたのだから否定のしようがない。
――現在、TS病の患者は原因不明の奇病という事もあり病気の調査に協力することを条件に、
政府から多くの支援を受ける事が可能となっている。勿論自分も協力し、支援を受けている状態にある。
というのも世間はTS病への理解が薄く、風当たりは強い。
ある日突然部下から「女性になりました」と聞かされて驚かない上司はいないだろう。
当然ながら自分が務めていた会社もそうであり、報告の翌日には退職の運びとなった。
そういった人間が多くいるため困窮することのないよう政府が支援している――という訳だ。
……前置きはここまでだ。
先に述べた様に私の肉体は現在女性のそれだが、精神自体は黒岩渚のまま。
つまり女性の肉体に男性の精神が入っている状態である。
諸兄は「もしも女性になったら」を妄想したことはないだろうか?
少なくとも私はあった、そして退屈な日常の中TS病の存在を知った私は、
「もしも女性になったらしてみたい事」なんかも考えてしまっていた。
多くの人は倫理観や道徳を無視して実行しようと考えるだろうか。
あるいはそんな事を考える余裕も無く戸惑ってしまうだろうか。
私は前者だった、考えていて機会が訪れた以上は「やる」以外無いと思った。
……コンクリートの壁の間にある木製のドアを前に熱い吐息を吐き出す。
まだ何も始まっていないというのに背徳感と興奮でどうにかなってしまいそうだった。
ぎい、とドアが開かれ小さく会釈した私は中に踏み入る。
高そうな撮影機材に囲まれた中に黄緑のポップなソファと見た目だけは高級そうなベッドが配置されている。
機材の周辺に立つ男達のにやにやとした視線がバスローブ越しに私の身体を舐め回す。
気持ち悪い、という感情よりも先にぞくぞくとした昏い興奮が背を走り抜けた。
「は~い、渚ちゃん入りま~す♪さささ、こっちに座って♪」
「……は、い」
自然に返したつもりがとぎれとぎれの妙な発生になり、羞恥に頬が赤らんだ。
――促されてソファに腰掛けると、正面に立つカメラマンと目が合った気がした。
「じゃ、カメラに向かって自己紹介とこれから何されるのか説明してもらえる?」
ごくり、と生唾を飲み込む。今ならまだ全部無かった事にできるかもしれない。
ここで促された言葉を紡いでしまえば後戻りはできないとなけなしの理性が警告してくる。
「わた、しは……」
「……私、黒岩渚は、TS病に罹って女の子に、なってしまいました」
「も、もし女の子になったら……男の人に滅茶苦茶にされたいって考えてました……❤」
「そんな事考えて、街を歩いてたらAVさつえーのお兄さん達にナンパされて、ホイホイついてきてしまいました……♪」
「どうしようもない元男の処女ビッチですっ……❤❤ 今日は、渚にいっぱいお仕置きしてください……っ❤」
ああ――言ってしまった、終わってしまった。
TS病に罹患した者の多くは名前を変えるが、私は変えていない。
もし治療の方法がみつかって男に戻ったとしてもド変態のレッテルが一生付き纏うのだ。
私の人生は終わってしまった。――その絶望感に先日まで無かったクレヴァスから蜜が溢れて下着を濡らす。
「いいね~!じゃあ今日は変体娘の渚ちゃんにたっぷり仕込んであげるからね~❤」
「は、はい――よろしく、お願いします……♪」
背が高く筋肉質な男優の手が私に伸びる。
そうして、私の人生で最高の時間が始まった。
続きはないです。