神樹のお告げを神託として受け取ることができる《巫女》と呼ばれる存在。
艶やかに濡れ光る、明るめの黒い長髪が似合う美しい少女だった。
小柄な背丈でありながら女性らしく発育したカラダつきや、おっとりとした佇まいから滲む色香は、とても中学生のものとは思えない。
目の前に立つだけで男という生き物の理性を揺さぶり、瞬く間にその美貌で屈服させてしまうような、危うげで、強烈な魅力が彼女にはあった。
だからなのか。
ここが、土地神の集合体である神樹の内にある、特殊な世界だということ。
ひなたが西暦の時代からやってきた過去の人間であること。
いま神樹の中で神同士の抗争が起こっており、造反神と呼ばれる神を鎮めなければ、神樹が崩壊してしまうということ。
それを防ぐために神樹が、各時代の勇者と巫女を召喚したということ。
普通の人間なら、理解しがたい壮大な話だ。
しかし悠人はすでに『世界の隠された真実』を知っていた。
世界を滅ぼすバーテックスと呼ばれる異形の存在。
姉の友奈を含めた勇者部の少女たちは、神樹のチカラを借りてその怪物たちと戦っていた。
ひなたの話を聞いて混乱しなかったのは、事前にその知識があったおかげもあるだろう。
もはや自分を取り巻く世界が普通でないことは、悠人も承知の上だった。
だから今さら『別世界の召喚』が起こっても、不思議ではないと思えた。
……ただ、ひとつだけ悠人が解せないのは。
なぜ勇者でも巫女でもない、ただの一般人に過ぎない自分がこの世界に召喚されたのか、ということだった。
「悠人さん、お茶が入りましたよ」
「おう、ありがとう、ひなたさん」
家事が趣味であるひなたは、よく気が利く。
何気なく喉が渇いたなと思うと、まるでこちらの心を読んだかのように絶妙なタイミングで、お茶やお茶請けを用意してくれる。
将来は間違いなく『いいお嫁さん』になるだろう、と悠人はウマいお茶を飲みつつ思った。
「園子さんは……あらあら、寝てしまったようですね」
「スヤスヤァ……♪」
園子は何も無いところでもよく眠る。
見た目はいかにも良家のお嬢様と呼ぶにふさわしい華やかで愛らしい美少女なのだが、その中身は掴み所のない天然娘である。
邪気のカケラもない、のほほんとした顔で眠るその様子はまるで赤子のようだ。
「園子さん、風邪をひきますよ?」
眠る園子に、ひなたはにこやかな顔でミニのタオルケットをかけてあげた。
二人は一応同い年であるはずだが、ひなたが園子に向ける視線は、どこか我が子を慈しむ母親のような色合いがある。
やはり生まれた時代が異なるからなのか、またはひなたが中学生離れした情の深さを持つ淑女だからか。
園子が居眠りしたことで、ひなたと二人きり同然の状態になってしまい、悠人は落ち着かない気持ちになった。
女性としての魅力をこれでもかと練り固めたような、オスにとって理想の美少女であるひなたは、思春期まっただ中の男子学生には、いささか刺激が強すぎる。
本来ならば段階を踏んで実っていくはずの女の色香を、ひなたは数段越えて早熟に実らせてしまっている。
自制心の弱い男ならば、彼女を前にしただけで脳内を淫らな妄想でいっぱいにし、周りの目も忘れて股間を抑えてしまうかもしれない。
「あら悠人さん、お茶飲むのお早いですね。おかわりいかがですか?」
「あ、ああ。いただくよ」
日々武術で肉体と精神を鍛えている悠人ですら、ひなたと正面で向き合うには理性を総動員する必要があった。
ただでさえ、悠人は黒髪の似合う色白美人に弱いのだ。
お茶を汲むために、そっと傍によってきたひなたから、フワッと少女の甘い匂いが香ってくる。
フェロモンをふんだんに含んだ、オスを煽る芳香。
香水は付けていないらしい。
それでも、こんなにも良い匂いがするというのだから女の子のカラダとはつくづく不思議だ、と悠人は思う。
そういえば夜に友奈と交わるときも、こんな甘い香りがするなと悠人は感慨に耽り……
「悠人さん? お顔が赤いですけど……冷たいお茶のほうが良かったですか?」
「い、いや大丈夫! 最近は意図的に体温を上げて筋肉を燃やす鍛錬がマイブームなんだ!」
「よくわかりませんが……うふふ。悠人さんは本当にトレーニングがお好きなんですね。私、運動が苦手だから尊敬しちゃいます」
「あはは、それほどでも……」
まさか実姉との性交を思い出していたなど、口が裂けても言えない。
否応なく淫欲を掻き立てるひなたの存在は、やはり年頃の男児には危険だ。
悠人は必死に煩悩を振り払って、屈託の無い笑顔を作る。
一応ひなたの前では、悠人は茶目っ気のある陽気な筋トレ好きで通っている。
その後は問題なく、ひなたと会話に花を咲かせることができた。
「悠人さん、異世界の暮らしにはもう慣れましたか?」
ふと、ひなたがそう尋ねてくる。
「う~ん、異世界って言っても、ほとんど俺が住んでいた世界そのものだしな。特に苦労はしてないよ」
「そうですか。それは何よりです」
「むしろ、300年前の時代から来たひなたさんのほうが苦労してるんじゃないか? 変わってるものが多くて戸惑ったりしてるんじゃ……」
「多少文化の違いは感じますけど、でもそんなに困ったことはありませんよ? 生活様式自体は西暦とほとんど同じですし」
「そうなのか。ひなたさんから見たら、もっとハイテクに進化しているものかと思ったぜ」
「きっと、四国という限られた土地で生きてきたからでしょうね。技術を発展させるよりも、維持をすることが精一杯だったのかもしれません」
「ふ~ん。そう考えると、神世紀初期の人たちは本当に必死だったんだろうな……」
数百年も昔の時代から来たひなたでも、すぐに馴染める神世紀。
進歩も衰退もない、神の守護で生きながらえている人類。
それまでは自分の住む世界になんの疑問もいだいていなかった悠人だが、改めて振り返ってみると、なんとも危うい均衡でこの社会は保たれているということを感じる。
そんな世界を守るため、こうしている今も、少女たちは戦いに赴いている。
「……ゆう姉たち、大丈夫かな?」
「やはり、心配ですか?」
「そりゃ、そうさ……できることなら、代わってやりたいよ」
「戦えないもどかしさは、私にもわかります。でも神樹様は、男性を勇者として選びませんからね……」
「だったら何で俺まで召喚したのかねえ、神樹様は」
「……ごめんなさい。一般人の悠人さんを、こちらの事情に巻き込んでしまって……」
「え? あ、いや、すまん。そういうつもりで言ったわけじゃ……」
出会った当初からどうも、ひなたは勇者でも巫女でもないただの一般人の悠人を、この戦いに関わらせてしまったことを気にしているようだった。
「悠人さんがなぜ召喚されたのか。いまだに神樹様は何も言ってこないので、結局わからないんです。こうして樹海化の影響も受けない理由も謎のままですし」
樹海とは、神樹がバーテックスとの戦闘時に展開するメタフィールドである。
この空間の中では勇者と巫女以外の時は止まり、一般人は樹海の一部として取り込まれる。
本来なら悠人は後者の対象であった。
この世界に来る以前も樹海化の影響をしっかり受けていた。
しかし現在ではこのとおり、時が止まった空間でありながら、彼は巫女であるひなたと会話をしている。
そのため、最初は悠人も戦力として神樹に召喚されたのではないかと予想されたのだが……。
「まさか召喚しておいて、何の役割も与えられないとはな……。てっきり俺もゆう姉たちみたいに変身できるのかと期待してたぜ」
「うふふ。最初の頃は、はしゃいでましたものね? 『きっとベルトで仮面の戦士とか、クリスタルがついたアイテムで光の巨人になったりするんだ!』って。本当に男の子って、そういうのお好きですよね?」
「うっ。そ、そのことは忘れてくれよ、ひなたさん……」
召喚されたその日、『異世界召喚』という言葉を聞いてテンションが上がった悠人は、自分も異能のチカラを得るに違いないと興奮した。
『ゆう姉! 俺、聞いたことあるぞ! 西暦の時代には、やたらと異世界モノのファンタジーが流行っていて、冴えない男の主人公が超絶チートになって召喚された異世界で大活躍するらしいんだ!』
『え!? じゃあ、まさかユウちゃんもバーテックスと戦えるように!?』
『ああ。じゃなきゃ、勇者でも巫女でもねえ俺がこの世界に召喚されるワケがない! それが意味することはひとつ! 俺も戦力として神樹様に認められたってことなんだよ!』
『な、なんだってー!?』
『ついにこの鍛え抜かれた筋肉を活躍させる機会が訪れたんだぜ! 待っていろ造反神! 世界の平和は俺が守る!』
と思いきや、実際は悠人専用の変身アイテムなど特に何も用意されていないという、赤面もののオチだった。
悠人としては忘れたい過去である。
結局、戦力でもない悠人がなぜこの世界に召喚されたのか、いまも謎のままだ。
「たしか風さんがいくつか仮説を立てていましたね。悠人さんが召喚された理由を」
「ああ、風先輩らしい、ざっくりした仮説だったけどね……」
①勇者とバーテックス等、世界の真実を知っているから。
②実は勇者、巫女以外の何らかの役割がある。
③単に部室に一緒に居たからついでに召喚された。
『もし③だったら、さすがに雑すぎるでしょ神樹様……』
『でも神様なんて気まぐれなもんだからね~』
『そんな気まぐれで異世界召喚に巻き込まれたら、たまったもんじゃないですよ』
『まあ、悠人の場合「ゆう姉が心配だから俺も行くぜ!」って無意識に友奈にくっついてきたって可能性のほうが高いわね』
『くっつき虫かよ。俺を何だと思ってるんすか風先輩は』
『超シスコン?』
『アンタが言うな!』
仮説はあくまで仮説止まり。
真相は文字通り『神のみぞ知る』である。
「悠人さんは、勇者のことも、バーテックスのことも、すべて聞いているんですよね? 神世紀では、一般人にそのことは秘密にしていると聞きましたが……」
「話してもらったのは、つい最近なんだ。それまでは内緒にされてたよ。皆が何か隠し事してるのは気づいてたけどさ……まあ、話せるワケないよな。いまなら風先輩なりの優しさだったってわかるよ。
……でも、あのときは、俺だけ除け者にされているようで悲しかった。同じ勇者部なのに、俺はそんなに信用されてないのかってさ……」
「悠人さん……」
「一度そのことで衝突しちゃったことあるんだよね……。だってさ、皆いきなりカラダに障害抱え始めたんだぜ? なのに何も説明してくれないし、しかもその原因になったかもしれない件にまた関わろうとしてた。心配するだろ、そりゃ。
それでも何も話してくれないから、ついカッとなってな……」
「あまり想像できません。悠人さんが本気で怒るところなんて」
「ほぼ、八つ当たりだったよ。新入りの夏凜がいつのまにか古参の俺より皆と打ち解けてることに、嫉妬もしてたんだと思う。
……ああ~思い出したら自分が情けなくなってきた。べつに夏凜は悪くねえのに。本当に酷いこと言っちまったなアイツには……」
「夏凜さんは気にしていらっしゃらないと思いますよ? だって、とっても仲良しじゃないですか、悠人さんと夏凜さん」
「え、そうか~? 勝負事で競い合って喧嘩ばっかしてるぜ?」
「だからこそじゃないですか。ふふ。いまはこうして勇者部にいるということは、皆さんとちゃんと仲直りできたんですね?」
「ん、まあね……。ちょっと時間はかかったけどな」
少女たちが抱えているものを知って、悠人は心を入れ替えた。
そして彼女たちと約束をした。
どんな形でもいい。
今度は皆のチカラになると。
「ひなたさんは気にしているようだけどさ、俺べつに今回の件に巻き込まれて迷惑と思ってはいないんだ。むしろ、嬉しいくらいだよ」
「嬉しい、ですか?」
「だって、やっと勇者部の皆と同じ境遇に置かれたんだからな。今度は仲間はずれじゃないんだ。
……まあ、いまだに戦えないし、ひなたさんみたく神託を受け取れるワケじゃないけど……俺なりに皆の役に立てることがあるかもしれない。無くたって、皆を支えてみせる。
秘密を明かしてもらった日から、そう決めてたからさ。だから、また除け者にされなくて安心したよ」
「ユッティは除け者じゃないんよ~……大事な仲間なんよ~♪」
「園ちゃん!? 起きてたのか!?」
「いえ、寝言みたいですよ?」
「器用な真似を……実は起きてたりしてないか?」
「えへへ~♪ ユッティの筋肉カッチカチなんよ~♪ ピクピク動いてキモいんよ~♪」
「そんなに褒められると照れるぜ……」
「褒め言葉なんですか、いまの?」
ともあれ、悠人の言葉から、園子の寝言から、普段少年と少女たちがどれだけ互いを大事に思っているか。
そのことを、ひなたは改めて理解する。
そして、悠人という少年の人となりも。
「悠人さんは、強い人ですね」
「強い? 確かに筋肉には自信があるけど」
「い、いえ、そうではなく……心の話です。真実を知っても、皆さんのために何かできることを探されている。そういうのって、なかなかできることじゃありません」
「そうかな?」
「はい。……私は、たくさん見てきました。バーテックスに怯えて心が壊れていく人たちを。理不尽な運命に振り回されて、狂っていく人たちを」
「……」
「だから、悠人さんはもっと自分を誇っていいと思います。勇者じゃなくても、巫女じゃなくても、あなたには、あなたにしかない強さがあります」
「あると、いいな」
「ありますよ。現に、私は悠人さんのこと頼りにしていますよ? こうして悠人さんとお喋りしていると楽しいですし、励まされることもたくさんあるんですから」
「そ、そう? 光栄っす」
「私、いままで親しい男の子ができたことがありませんので、余計にそう思うのかもしれませんね。悠人さん相手だと、この間みたいに、ついつい弱音まで口にしちゃいます」
「『鍵反射』の話だっけ? あのときも言ったけど、気にするなよ。条件反射で人に優しくできるのは、ひなたさんが根っからの善人だからさ。ウチのゆう姉と同じだよ。それを『気味が悪い』って言うやつのほうが心が無いと思うね」
「悠人さん……」
ひなたは何かを眩しいものを見るように瞳を細めて、頬を赤くする。
「……もしかしたら私、いざというときに頼れる男の人を求めていたのかもしれませんね」
独り言のように、ひなたは静かにそんなことを口にする。
「頼れる男の人?」
「はい。実を言うと、前いた場所ではあまり信用できる男性がいなかったんです。だから私がしっかりして、周りを支えないといけませんでした。……でも、そこに悠人さんがいたら、きっと……」
「……ひなたさん?」
紅潮していたひなたの顔が、見る見る上気していく。
心なしか、呼吸も荒い。
「す、すみませんっ、お話の途中に。少々、お花を摘みに……」
そう言って、ひなたはとつぜん逃げるように部室を出て行った。
「……」
部室に残された悠人は、呆然と開いたままのドアを見つめる。
樹海化が解ける様子はまだない。
持て余した悠人は寝ている園子の柔らかいほっぺを抓ったりして時間を潰した。
「むにょ~ん……むにょむにょ~ん……」
「ふはは、モチモチだな園ちゃんのほっぺ。ゆう姉のお乳のようだ」
それにも飽きると、椅子の上でダラダラした。
ほっぺを真っ赤にした園子が起きる様子はない。
ひなたが帰ってくる様子もない。
「……遅いな」
さすがに遅すぎる。
何かあったのだろうか。
いま、この空間ではバーテックスとの戦闘が起こっている。
イヤな想像が浮かぶ。
まさか校内にバーテックスが入ってきたなんてことは……。
悠人は部室から駆け出した。
ひとまず部室から一番距離の近い女子トイレに向かう。
女子トイレの入り口前で、ひなたは倒れていた。
「ひなたさん!?」
駆け寄るなり、悠人はひなたを抱き起こす。
すごくカラダが熱い。
「あぁ……ハァ……ハァ……ハァ……」
艶っぽい表情でひなたは熱い吐息をこぼす。
「ひなたさん、しっかり! と、とりあえず保健室に……」
「ゆ、悠人さん……」
意識を取り戻したらしきひなたが、潤んだ瞳で悠人を見上げる。
「じっとしてろ。いま運んでやるから……」
ひなたを抱き上げようと、華奢で小柄なカラダに触れる。
いざ触れてみると、彼女のカラダは本当に華奢だった。
それでいて尚、弾力性に富んだ柔らかい感触が掌に広がる。
「……っ」
いまは非常時だ。
変なことを考えてはいけない。
「安心しろひなたさん。俺がついてるから……」
「悠人、さん……」
ひなたが夢見るような表情で、首元に細長い腕を回したかと思うと……
「んっ……」
唇を奪われた。
「っ!? っ~!?」
思考が真っ白に染まる。
「ん、ちゅ……んぅ……ちゅっ……」
熱いものが唇の隙間から入ってくる。
啄むように、ひなたは悠人の唇を吸う。
「んぅ……ちゅっ……ぱぁ……ハァ、ハァ、ハァ……」
唇を離すと、ひなたは今にも蕩けてしまいそうな顔で、うっとりと見つめてくる。
その表情には覚えがある。
この熱い口づけには覚えがある。
『ユウちゃん……ごめん、私、もう我慢できないよぉ……』
あの夜の友奈と、まったく同じ状態。
「ひなたさん……
「は、はい……」
恥じ入るように、ひなたは頷く。
「最初のうちは自分で慰めていれば、治まっていたんですが……最近は、どんどん過剰になってきて……もう、自分でやっても、治まらないんです……だから……」
震える手で、ひなたは悠人にすがりつく。
「ごめんなさい、悠人さん。私、もう我慢できません……初めてなんです、こんな気持ちになるの……若葉ちゃんに対するのとは、また違う……何なんですかコレ? コレがもしかして、そういう気持ちなんですか?」
譫言のように呟きながら、ひなたは密着を深める。
豊満な感触が、胸元に広がる。
小柄なカラダに似つかわしくない、魅惑的な曲線を描いた女の肢体。
オスならば誰もが涎を垂らして求めてしまう、若々しく早熟な女体が、腕の中にスッポリと収まる。
「ああ、悠人さん。はしたない娘だと思わないで……。わからない、わからないんです。自分も、どうしたらいいのか……だから……んっ」
弱々しい手で悠人の右手を掴むと……ひなたはその豊満な胸の膨らみに、オスの手を自ら導いた。
「あぁっ」
ひなたのカラダがビクンと跳ね上がる。
それに合わせて掌で波打つ、たわわな乳房。
なんて、なんて大きさだ。
こんな小さなカラダに付いているとは思えない、大きく膨らんだ乳房。
制服越しでも、その柔らかさは強烈なまでに掌に伝わり、指が呑み込まれるように沈んでいく。
「あぁっ、悠人、さん……あぁぁんッ」
片手でも掴みきれない大きさ。
オスの本能を否応なく引きずり出す凶悪な膨らみ。
気づけば、その巨峰を揉みしだいていた。
「あッ……悠人さん、ああン……やん……」
柔らかい。
揉んでも揉んでも飽きが来ない。
揉めば揉むほど、もっと揉みたくなる。
「あぅ、そんなに、されたら、私……あぁあぁッ!」
再び痙攣するひなたのカラダ。
栄養がすべて肉づくべき部位に向かったとしか思えない、情欲を煽る肢体。
くびれる所はくびれ、乳房やヒップや太ももには、ムチムチとした柔肉が育っている。
世の男性が喉から手が出るほどに欲し、どんな手を使ってでも手に入れようとする、欲望を形にしたようなボディ。
「ハァ、ハァ……」
そして艶めかしく息づくひなたの、なんという美しさ。
淫らに悶えても尚、彼女の清楚な美貌は乱れず、どころかさらにその魅力を引き立てている。
ゴクリ、と喉が鳴る。
乳房を揉むたび、ひなたの甘い体臭が香ってくる。
揉めば揉むほど、桃色のフェロモンが滲み出てくるかのようだ。
……いや、実際、そういうものが出ているのかもしれない。
いまの彼女は、普通の発情とは異なる『特殊な欲情』に振り回されているのだから。
「悠人さぁん……お願いします……私を……私を……」
意を決したような顔で、情欲に濡れた艶顔で、ひなたは懇願する。
「私のカラダを、好きにしてください……」
耳をくすぐるような甘い声色は、オスを従わせる魔力そのものだった。
自分が彼女たちにできること。
チカラになれること。
ずっと、それを求めてきた。
でも決して、こんな形を望んでいたわけではない。
望んでいたわけではないが……
『ユウちゃん、お願い……。私の初めて、貰って?』
(ごめん、ゆう姉……)
いったい何に対する謝罪なのか。
悠人自身もわからなかった。
ただ……。
彼の腕はひなたを抱き上げ、その足は保健室に向かっていた。