お待たせしました。お楽しみくださいませ。
「ドナドナドーナドーナー………」
アクア檻の中で謎の歌を歌っている。うーん、目立つから止めてほしいけど…………。
「………お、おいアクア、もう街中なんだからその歌を止めてくれ。ボロボロの檻に入って膝抱えた女運んでる時点で、ただでさえ街の住人の注目を集めてるんだからな?というか、もう安全な街の中なんだから、いい加減出て来いよ」
そんな風にカズマがアクアを諭す。確かに悪目立ちしてるね……しかし………。
「嫌。この中こそが私の聖域よ。外の世界は怖いからしばらく出ないわ」
そう、アクアは先程のトラウマのおかげ?でクエストから帰る際に檻から出ようしなかったので、仕方なく馬に檻を引かせている状態だ。………もう少し時間が経ったら、キスなり胸を揉むなりしてイチャイチャすれば立ち直るかな?
少々長い間、ブルータルアリゲーターに襲われたからね……。
そんなアクアのトラウマ……それ以外には被害らしい被害はない。
「おいユウジ、なんとかしてくれ。このままじゃ余計周りの目がキツくなる」
カズマにそうお願いされる。ふむ、確かにね。
「アクア、出てきたらたっぷりエッチなことしてあげるからさ、出よう?」
「………………………ホントにしてくれる?」
お、これはイケるかな?
「もちろん、アクアが今より俺に欲情するくらいには、ね?」
「…………わかった、出る」
うん、ヨシヨシ。アクアは偉い偉ーい。と、そこへ
───。
「め、女神様っ!?女神様じゃないですかっ!何をしているのですか、そんな所で!」
突然叫んで、アクアの入った檻に駆け寄り、鉄格子を掴む爽やか系のイケメン。
あろう事か、ブルータルアリゲーターの顎をも耐え切った檻の鉄格子を、なんとも容易くグニャリと捻じ曲げ、中のアクアに手を差し伸べた。
…………誰?いや、女神さまって言う時点で日本からの転生者だろうけど。その男はオリの中に座っているアクアの手を取ろうとするが。
「おい、私の仲間に馴れ馴れしく触るな。貴様、何者だ。知り合いにしては、アクアがお前に反応していないのだが」
横からダクネスが男の手を掴んで、睨み付ける。………何だろう。今のダクネスはとても頼りになるクルセイダーみたいだ。男はダクネスを見るとため息を吐いて首を振った。
「………おい、あれお前の知り合いなんだろ?女神様とか言ってたし。お前があの男を何とかしろよ」
「………ああっ!女神!そう、そうよ、女神よ私は。それで?女神の私にこの状況をどうにかして欲しいわけね?しょうがないわね!」
「アクア…………今の今まで自分が女神だって忘れてたの?」
何かを話していたカズマとアクアに近づいたら、アクアがとんでもない物を忘れていた。
「…………あんた誰?」
オリからもぞもぞと出てきたアクアの一言にずっこけそうになった。
「何いってるんですか女神様!僕です、御剣響夜ですよ!あなたに、魔剣グラムを頂いた!」
やはり転生者だった。魔剣グラムねぇ…………。
「ああっ!いたわね、そういえばそんな人も!ごめんね、すっかり忘れてたわ。だって結構な数の人を送ったし、忘れてたってしょうがないわよね!」
御剣響夜なる人物の事を忘れていた事をアクアは開き直った。アクアぇ……。
「ええっと、お久しぶりですアクア様。あなたに選ばれた勇者として、日々頑張ってますよ。職業はソードマスター。レベルは37にまで上がりました。………ところで、アクア様はなぜここに?というか、どうしてオリの中に閉じ込められていたんですか?」
ミツルギは俺とカズマをチラチラ見てくる。どうやら彼には俺とカズマがアクアを閉じ込めたように見えたらしい。………見えないことも無いか。御剣は一人で話を進めていき、あまつさえアクアとめぐみん、ダクネスを引き抜こうとしている。
「ちょっと、ヤバいんですけど。あの人本気で、ひくぐらいヤバいんですけど。ていうか勝手に話進めるしナルシストも入ってる系で、怖いんですけど」
「どうしよう、あの男は何だか生理的に受け付けない。攻めるより受けるのが好きな私だが、あいつだけは何だか無性に殴りたいのだが」
「撃っていいですか?あの苦労知らずの、スカしたエリート顔に、爆裂魔法を撃ってもいいですか?」
女性陣からの不評の声が聞こえてきた。気持ちはわからなくも無いけどね………。
「ねえカズマ、ユウジ。もうギルドに行こう?私が魔剣をあげといてなんだけど、あの人には関わらない方がいい気がするわ」
まあ、確かにある意味面倒な奴だろうけどね。
「えーと。俺の仲間は満場一致であなたのパーティーには行きたくないみたいです。俺達はクエストの完了報告があるから、これで………」
カズマが馬を引いてミツルギの横を通りすぎようとする。
「………どいてくれます?」
横を通りすぎようとしたカズマの前にミツルギが立ち塞がる。
「悪いが、僕に魔剣という力を与えてくれたアクア様を、こんな境遇の中に放ってはおけない。君にはこの世界を救えない。魔王を倒すのはこの僕だ。アクア様は、僕と一緒に来た方が絶対に良い。………君は、この世界に持ってこられるモノとして、アクア様を選んだという事だよね?」
「………そーだよ」
………何となくだけどこの先の展開が見えた。というか、こんな境遇って何だろうね?アクアをオリに閉じ込めたり、アクアがカエルに食べられたりの事か。うん、まあ確かにそう言われるとアレだけどね。
「なら、僕と勝負しないか?アクア様を、持ってこられる『者』として指定したんだろう?僕が勝ったらアクア様を譲ってくれ。君が勝ったら、何でも一つ、言う事を聞こうじゃないか」
「よし乗った!!じゃあ行くぞ!」
先程からこのイケメンに対する妬みもあって我慢の限界がきていたカズマは、一も二もなく襲い掛かる。右手で小剣を鞘ごと抜き取り殴りかかったのだ。
「えっ!? ちょっ! 待っ……!?」
だが、流石は高レベル冒険者というべきか、慌てながらもバックステップで避けたミツルギは咄嗟に腰の魔剣を抜く。
それを見たカズマは口元をにやけさせながら、空いていた左手を突き出して……!
「〈スティール〉ッッッッ!」
ふむ、流石は幸運がカンストレベルのカズマ。一発で魔剣を奪ったね。そして───。
「ほい」
「え……? ガッ!?」
魔剣の腹で頭を強打されたミツルギはマヌケそうな顔で気絶してしまった。
「卑怯者! 卑怯者卑怯者卑怯者ーっ!」
「あんた最低! 最低よ、この卑怯者! 正々堂々と勝負しなさいよ!」
今までミツルギのことを見守ってたハーレム要員?たちが突如として騒ぎ出す。
そんな彼女らを無視してカズマは一方的に宣言した。
「俺の方ってことで。こいつ、負けたら何でも一つ言うこと聞くって言ってたな? それじゃあ、この魔剣を貰っていきますね」
「なっ!? バ、バカ言ってんじゃないわよ! それに、その魔剣はキョウヤにしか使いこなせないわ。魔剣は持ち主を選ぶのよ。既にその剣は、キョウヤを持ち主と認めたのよ? あんたには、魔剣の加護の効果がないわ!」
それを聞いてカズマはアクアの方を振り向いた。
「……マジで? この戦利品、俺には使えないのか?」
「マジです。残念だけど、魔剣グラムはあの痛い人専用よ。装備すると人の限界を超えた膂力が手に入り、石だろうが鉄だろうがサックリ斬れる魔剣だけど。カズマが使ったって普通の剣よ」
ということはミストルティンも俺以外には使えないということかな?
「じゃあな。そいつが起きたら、これはお前が持ちかけた勝負なんだから恨みっこ無しだって言っといてくれ。……それじゃあアクア、ギルドに報告に行こうぜ」
それでも結局この剣を貰うことにしたカズマは、少女達にそれだけを言って踵を返す。
しかし、ミツルギのハーレム要因達は武器を構えた。
「ちょちょちょ、ちょっとあんた待ちなさいよっ!」
「キョウヤの魔剣、返して貰うわよ。こんな勝ち方、私達は認めない!」
ふむ…………と、俺がどうしようか考えているとカズマはゆっくりとミツルギの連れの美少女の方を向いた。なにやら手をわきわきさせながら。
「別にいいけど、真の男女平等の主義者のオレは、例え美少女でもドロップキックをかます男だ。手加減して貰えると思うなよ?というか女相手なら、この公衆の面前で俺のスティールが炸裂するぞ」
「「ひっ!」」
………カズマの最低な脅しに身の危険を感じたのだろう。二人して後ずさる。
「公衆の面前で、このスキルを使って動けなくてしてから、スティールを使って1枚……いぃぃちまぁい!ずつ身ぐるみを剥がしていく」
カズマは伸ばした右手の指を1本1本畳んでは、開いて、それはまるで魔女が誘惑する際に行う手招きのごとく。
「ほれ…ほれ…」
「「いっ……」」
「ほら、早く……、クククッ……」
「「いやああああ!!!!」」
ミツルギの連れの女の子たちは、走って逃げていった。
「さて、奪った剣は勝負で勝った報酬として貰って行くか。なぁ、アク……どうした、お前ら?」
アクア達の方をみると、とても引いている様子だった。
「……そこで倒れている人は、生理的に無理ですが……ここまでされるとどちらが悪なのか……。流石に気の毒です」
「…しかも、連れの女の子達にまで手を出そうとするとは……」
「うわぁ……カズマさん、うわぁ……」
うん、これはドン引きするよね………やりすぎだよ、カズマ。
「な、何でよおおおおおおっ!」
ギルド中にアクアの悲鳴が響き渡る。アクアは涙目になりながらギルドの職員に掴みかかっている。
「だから、借りたオリは私が壊したんじゃないって言ってるでしょ!?ミツルギって人がオリを捻じ曲げたんだってば!それを、何で私が弁償しなきゃいけないのよ!」
どうやら御剣が捻じ曲げたオリの修理費がアクアに請求されているらしい。
「………今回の報酬、壊したオリのお金を引いて十万エリスだって………。あのオリ、特別な金属と製法で作られてるから、二十万もするんだってさ………」
報酬を手に戻って来たアクアは鼻を啜りながら戻って来た。なんというか………ちょっと不憫だ。
「あの男、今度会ったら絶対ゴッドブローを食らわせてやるわっ!そしてオリの弁償代払わせてやるから!!」
アクアは歯軋りしながら席につく。俺はその隣に座り、アクアの肩に手を伸ばし抱き寄せる。
「……?ユウジ?」
戸惑うアクア。そんなアクアの顎をクイッ、と自分の方にやり唇を奪う。
「!んっ……ちゅっ……」
アクアの唇にチュッ、チュッ、と軽い啄むようなキスをしていき、瑞々しい唇を堪能していく。
「んっ、ユウ、ジ……んっ……ちゅっ、んぅ……ちゅっ、ちゅっ、んっ………」
唇を離しては重ね、より強く押し付けるという行為を繰り返す。アクアの唇の柔らかさを堪能しつつ、舌を口内に割り込ませる。
「んっ!んむぅっ……んぅ……ちゅっ、んぅ……っ」
口内に侵入してきた俺の舌に舌を絡み付かせ、段々濃厚なキスになっていく。
「んぅ……ユウジぃ……もっとぉ…………♡」
表情を蕩けさせたアクアがそう言って俺の舌を強く吸い、ジュルジュルと音を立てている。アクアの口内で舌をチロチロと舐められ、心地いい。
「んっ……アクア………」
俺はアクアの後頭部に手を伸ばし、より深く舌を入れ、アクアの口内を隅々まで舌で蹂躙していく。
「んっ、んむっ、んぅ~~~~っ!」
アクアが身体をビクッ、と震わせる。イったかな?
「んっ、ぷはっ……!ねぇ、ユウジぃ♡まだ足りないわぁ、もっとぉ~ん♡ん~、チュッ♡チュッ♡」
唇を離すと、もっとしてほしいとねだるアクア。というか
普通にしてきているのだが。
「………そんなに言うなら仕方な「ここにいたのかっ! 探したぞ、佐藤和真!」………どうやらお預けかな?」
声のあった、ギルドの入り口を見ると、さっきカズマに倒されたはずのミツルギが、取り巻きの女の子を連れて立っていた。
………またですか。
「佐藤和真! 君の事は、ある盗賊の女の子に聞いたらすぐに教えてくれたよ。パンツ脱がせ魔だってね。他にも、女の子を粘液まみれにするのが趣味な男だとか、色々な人の噂になっていたよ。鬼畜のカズマだってね」
「ちょっと、おぉい!待ってぇい!誰がそれを広めたのか詳しく!」
入口から歩いてくるミツルギに、カズマがそう突っ込んだ。
……普通に歩いて来ればいいのにも関わらず噂話を大声で叫びながら来る必要あったのかな?パンツを脱がせたというのは否定できないけれども。しかも振り回してたし。
必死にカズマが弁解する横で、アクアがミツルギの前にゆらりと立ち塞がる。
その目は怒りに燃えていて…………。
「……アクア様。僕はこの男から魔剣を取り返し、必ず魔王を倒すと誓います。ですから……。ですからこの僕と、同じパーティー「ゴッドブロオオーッ!!」ぐぶえっ!?」
「「ああっ!? キョウヤ!」」
……あらら、やはりこうなるか。
アクアに全力でぶん殴られて、ぶっ飛んだミツルギの胸ぐらを更にアクアが掴む。
「ちょっとあんたオリ壊したお金払いなさいよ! おかげで私が弁償する事になったんだからね! 三十万よ三十万、あのオリ特別な金属と製法で出来てるから高いんだってさ! ほら、さっさと払いなさいよっ!」
増えてない?と、ミツルギは殴られたところを抑え、尻餅をついた体制で、アクアに気圧されながら素直に財布からお金を出す。
ミツルギからお金を受け取り、アクアはホクホクした顔で、運ばれてきたシュワシュワを片手にカエル肉の唐揚げを食べ始めた。
そんなアクアを気にしながら、カズマに悔しそうに言う。
「……あんなやり方でも、僕の負けは負けだ。そして何でも言う事を聞くと言った手前、こんな事を頼むのは虫がいいのも理解している。……だが、頼む! 魔剣を返してはくれないか? あれは君が持っていても役に立たない物だ。君が使っても、そこらの剣よりは斬れる、その程度の威力でしか出ない。……どうだろう? 剣が欲しいのなら、店で一番良い剣を買ってあげてもいい。……返してはくれないか?」
そう言うとアクアは自分を安く見ているんじゃないか、と怒り始める、というか………。そこでミツルギの肩を、ちょんちょんとつつくめぐみん。
「あの、この男が魔剣を持っていない件について」
えっ、そう言わんばかりにすぐに顔を上げて、カズマの姿を見た。
顔がだんだん真っ青になっていくミツルギ。
「……さ、佐藤和真?僕の魔剣はどこに?」
「売った」
「ちくしょうぅぅぅぅぅぅ!」
ミツルギは、すぐさまギルドを出ていった。
ふぅ、ようやく一段落ついたね。
「………ところで。先ほどから、アクアが女神だとか呼ばれていたが、一体何の話だ?」
あー、そう言えばそんなことをミツルギが口走ってたね。普段のアクアの姿を見てたら女神だとは思えないか。酒場で他の冒険者に酒をたかり、帰りは路地裏で吐き、カエルに食べられて泣いてたらまあ、女神だなんて誰も思わないね。
「今まで黙っていたけれど、あなた達には言っておくわ。………私はアクア。アクシズ教団が崇拝する、水を司る女神。…………そう、私こそがあの、女神アクアなのよ………!」
「「っていう、夢を見たのか」」
「違うわよ!何で二人ともハモってんのよ!」
二人ともまったく信じなかった。
『緊急!緊急!全冒険者の皆さんは、直ちに武装し、戦闘態勢で街の正門に集まってくださいっっ!』
「またかよ…………?最近多いな、緊急の呼び出し」
「確かに。もしかして、今回の緊急召集も魔王軍の幹部がまた来てたりして」
「やめろよな、そんな不吉なこと言うの」
冗談を口にしながら、椅子から立ち上がる。
『緊急!緊急!全冒険者の皆さんは、直ちに武装し、戦闘態勢で街の正門に集まってください!………特に、冒険者サトウカズマさんとその一行は、大至急でお願いします!』
「「…………えっ」」
思わずカズマとハモってしまった………えぇ~~。