正門前に駆けつけると、いつぶりかの魔王軍幹部のデュラハンが首の無い馬に騎乗している。デュラハンの後ろにはボロボロの鎧を纏い、腐敗した体が見え隠れしているアンデットナイトが整列している。カズマ達三人は最前列に、俺は中列にいる。ダクネスは重武装で遅いから後から追いかけてきている。
「なぜ城に来ないのだ、この人でなしどもがあああああっ!!」
デュラハンの怒りの叫びが轟く。カズマはめぐみんを庇うように前に出た。
「ええっと………。なぜ城に来ないって、何で行かなきゃいけないんだよ?後、人でなしって何だ。もう爆裂魔法を撃ち込んでもいないのに、なにをそんなに怒ってるんだよ」
前回のデュラハン襲来からカズマとめぐみんは爆裂魔法を撃ちに行っていないはず。めぐみん一人で行ったとしても、魔力を使い果たした状態のめぐみんだと一人で帰ってこれない。
「爆裂魔法を撃ち込んでもいない?撃ち込んでもいないだと!?何を抜かすか白々しいっ!そこの頭のおかしい紅魔の娘が、あれから毎日欠かさず通っておるわ!」
「えっ」
カズマが隣のめぐみんを見た。
「………お前、行ったのか。もう行くなって言ったのに、あれからまた行ったのか!」
「ひたたたたたた、いた、痛いです!違うのです、聞いてくださいカズマ!今までならば、何もない荒野に魔法を放つだけで我慢出来たのですが………!城への魔法攻撃の魅力を覚えて以来、大きくて硬いモノじゃないと我慢できない体に………!そう、ユウジのチンポのように………」
めぐみんがモジモジしながら、そんな事を言う。最後に小さな声でのエッチな発言……イイネ。いやいや、そうなるとめぐみんを連れて帰る人がいるわけだ。カズマは無し。ダクネスも実家で鍛練していたと言っていたし無し。俺も当然無し。そうなると………。
「お前かああああああああああっ!」
「わああああああーっ!だってだって、あのデュラハンにろくなクエスト請けられない腹いせがしたかったんだもの!私はあいつのせいで、毎日毎日店長に叱られるはめになったのよ!」
………やはりアクアか。しかも腹いせって………。
「この俺が真に頭に来ているのは何も爆裂魔法の件だけではない!貴様らには仲間を助けようという気は無いのか?不当な理由で処刑され、怨念によりこうしてモンスター化する前は、これでも真っ当な騎士のつもりだった。その俺から言わせれば、勇敢に仲間を庇って呪いを受けた、あの者を見捨てるなど………っ!」
ふむ……何だろう、そこまで評価されるとむず痒いと言いますか…………。
「むっ。ユウジ、こんな人混みの真ん中で何をしているのだ?こんな真ん中ではなく、最前列に行くぞ」
「あぁ、ダクネス…………って、ちょっとストップ!手を引っ張らないでくれるか!?」
ダクネスに引っ張られる形で真ん中から最前列に連れていかれた。
「うん…………なんか、ごめん」
デュラハンの頭部と目が合い、気まずい空気に耐えかねて謝ってしまった。
「………あ、あれえ―――――――――――――――っ!?」
俺たちを見たデュラハンがすっとんきょうな声を上げた。
「なになに?ユウジたちに呪いを掛けて一週間が経ったのに、ピンピンしてるから驚いてるの?このデュラハン、私達が呪いを解くために城に来るはずだと思って、ずっと私たちを待ち続けてたの?始めっから、呪いが掛かってないって知らずに?プークスクス!ちょーうけるんですけど!」
アクアがデュラハンに指を差して笑っている。…………前々から思ってたけど、アクアの煽りスキルは高すぎる気がする。今もデュラハンの体がプルプル震えている。
「…………おい貴様。俺がその気になれば、この街の冒険者を一人残らず斬り捨てて、街の住人を皆殺しにすることだって出来るのだ。いつまでも見逃して貰えると思うなよ?疲れを知らぬこの俺の不死の体。お前たちひよっ子冒険者どもでは傷もつけられぬわ!」
む、不穏なこと言い出したね。
「見逃してあげる理由が無いのはこっちの方よ!今回は逃がさないわよ。アンデットのくせにこんなに注目を集めて生意気よ!消えてなくなんなさいっ、ターンアンデット!」
アクアが突き出した手から光が放たれる。デュラハンは避けようともせず、余裕綽々と言った感じだ。デュラハンに白い光が迫る。
「魔王の幹部が、プリースト対策も無しに戦場に立つとでも思っているのか?残念だったな。この俺を筆頭に、俺様率いる、このアンデットナイトの軍団は、魔王様の加護により神聖魔法に対して強い抵抗をぎゃあああああああああー!!」
魔法を受けたデュラハンは、鎧の隙間から黒い煙を吹き出しながら、なんとか持ち堪えた。
「ね、ねえカズマ、ユウジ!変よ、効いてないわ!」
「いや、効いてると思うよ?叫び声あげてたし」
かなりのダメージを与えたと思うけど。
「ク、ククク………。説明は最後まで聞くものだ。この俺はベルディア。魔王軍幹部が一人、デュラハンのベルディアだ!魔王様からの特別な加護を受けたこの鎧と、そして俺の力により、そこら辺のプリーストのターンアンデットなど全く効かぬわ!………効かぬのだが………。な、なあお前。お前は今何レベルなのだ?本当に駆け出しか?駆け出しが集まる所だろう、この街は?」
アクアの神聖魔法で成仏しかけたのがよっぽど堪えたのか、アクアのレベルを確認してきた。
「………まあいい。本来は、この街周辺に強い光が落ちて来ただのと、うちの占い師が騒ぐから調査に来たのだが………。面倒だ、いっそのこと街ごと無くしてしまえばいいか………」
どこぞの人類最古のジャイアニストみたいな事を言い出すベルディアは、右手を高く掲げた。
「フン、わざわざこの俺が相手をしてやるまでもない。………さあ、お前達!この俺をコケにしたこの連中に、地獄というものを見せてやるが良い!」
「あっ!あいつ、アクアの魔法が意外に効いてビビったんだぜきっと!自分だけ安全な所に逃げて、部下を使って襲うつもりだ!」
「なるほど、日和ったのか」
「ちちち、違うわ!逃げてもおらぬし日和ってもおらんわ!最初からそのつもりだったのだ!魔王の幹部がそんなヘタレな訳がなかろう!いきなりボスが戦ってどうする、まずは雑魚を片付けてからボスの前に立つ。これが昔からの伝統と………」
「セイクリッド・ターンアンデット!」
「ひああああああああああー!?」
アクアに魔法をかけられたベルディアは、悲鳴を上げながら体についた火を消すように地面を転げ回っている。
「………最後まで言わせてやろうよ」
「いやよ。アンデットのくせに女神の私を差し置いて目立つなんて許せないもの」
「アクア…………」
自分より目立つのが気に入らないからなんて理由で成仏させようとしないでほしい。ベルディアは大剣を杖の代わりにして立ち上がった。
「ど、どうしようカズマ、ユウジ!やっぱりおかしいわ!あいつ、私の魔法がちっとも効かないの!」
アークプリースト、特にアクアの神聖魔法で成仏できないとなると、奴が言った魔王の加護とやらがベルディアを護ってる可能性があるな。
「こ、この………っ!セリフはちゃんと言わせるものだ!ええい、もういい!おい、お前ら………!」
ベルディアは黒い煙を吹きながら、右手を掲げる。
「街の連中を。…………皆殺しにせよ!」
右手を振り下ろした。
「おわーっ!?プリーストを!プリーストを呼べー!」
「誰かエリス教の教会行って、聖水ありったけ貰ってきてくれえええ!」
ベルディアの部下のアンデットナイトに襲われ、切羽詰まった冒険者達の叫び響くなか、アンデットナイト達は街に侵入しようと進行する。アンデットナイトの進行を迎え撃つ冒険者達。
「クハハハハ、さあ、お前達の絶望の叫びをこの俺に………。………俺………に………?」
ベルディアの哄笑が途中で止まる。
「わ、わああああああーっ!なんで私ばっかり狙われるの!?私、女神なのに!神様だから、日頃の行いも良い筈なのに!」
いや、アクアの日頃の行いは結構酷いよ。酒を飲んで酔っぱらって暴れて、路地裏で吐いて、クエスト報酬を一夜で使いきったり。女神というには酷い行いだ。まあ、それでも可愛い俺の女だけどね。
「ああっ!?ずっ、ずるいっ!私は本当に日頃の行いは良い筈なのに、どうしてアクアの所にばかりアンデットナイトが………っ!」
「………ダクネスもアクア程とは言わないけど大概だよ?」
「!?」
だから………どうしてダクネスは自分を常識人枠だと思ってるんだろう?
「こっ、こらっお前達!そんなプリースト一人にかまけてないで、他の冒険者や街の住人を血祭りに………!」
アンデットナイトは本能的に女神のアクアに救いを求めてるんだろう。
「おいめぐみん、あのアンデットナイトの群れに、爆裂魔法を撃ち込めないか!?」
「ええっ!?街中ですし、ああもまとまりがないと、撃ち漏らしてしまいますが………」
…………なら。
「まとまればアンデットナイトを一掃できるか?」
「もちろんです。紅魔族の名にかけて、必ずやアンデットナイトを一掃してみせましょう!」
めぐみんの自信に満ちた目で告げた。彼女の爆裂魔法にかける熱意は本物だ。
「カズマ。アクアは俺がどうにかするから、爆裂魔法を撃つタイミングは任せる」
「えっ!?あっ、ちょっ、待てよユウジ!?」
カズマに後を任せて、アンデットナイトに追いかけ回されているアクアを追いかける。
「大丈夫かな、アクア?」
「だずげでユウジぃぃぃぃぃっ!!アンデットが、アンデットが私を追いかけてくるのよおぉぉぉぉぉ!!」
アクアに追い付き横に並んで走ると、アクアの顔は涙と鼻水で少々酷いことになっている。…………前にジャイアントトードにしたように拳で吹き飛ばせばいいのに。
「アクア、まだ走れるか?」
「無理!!私女神なのよ!?なのにどーして私が追いかけ回されないといけないのよー!?」
アクアは泣き言を良いながらも走る。アンデットナイトとの距離も少しずつ縮まってきている。よし、ここは………。
「アクア。ちょっと失礼」
アクアの右手を俺の肩に回して、アクアを抱き寄せる。そして、そのままアクアを持ち上げる。いわゆるお姫様だっこと言うものだ。
「大丈夫だ、アクア。しっかり掴まって。アクアは俺が護るよ。アクアは大切な俺の女なんだから」
ズキューン! ユウジの微笑みにアクアは先程までビビりまくっていたことも忘れ、ユウジカッコよすぎ♥️子宮疼いちゃう!ユウジ王子さまと子宮口とオチンポでキスしたくなっちゃう♥️という具合に思考が濃厚なピンク色に染められていく。
「──────ユウジ、下の口でオチンポにキスしていい?」
「これが終わったらしてあげるよ」
アンデットナイトと付かず離れずの距離をとりながら街中を走り回りながら、街を出る。
「めぐみん、やれーっ!」
「何という絶好のシチュエーション!感謝します、深く感謝しますよカズマ、ユウジ!………我が名はめぐみん!紅魔族随一の魔法の使い手にして、爆裂魔法を操りし者!魔王の幹部、ベルディアよ!我が力、見るがいい!エクスプロージョン――――――ッ!!」
めぐみんの爆裂魔法が街から誘きだしたアンデットナイトの群れの中心に炸裂、土煙が晴れると地面にはクレーターが出来上がり、アンデットナイトの姿は無くなっていた。
「よっと…………」
抱えていたアクアを下ろすと、アクアは地面にぺたりと座り込む。
「………アクア?ここだと危ないからあっちに行こうよ」
「………腰が抜けて立てないから連れてって」
仕方ないね。アクアの顔を袖で拭き、再度お姫様だっこしてカズマ達の元に戻る。その際アクアに頬にチュッチュッ、とキスをされる。カズマ達の視線が少々痛いが、まあ問題はない。
「クハハハハ!面白い!面白いぞ!まさかこの駆け出しの街で、本当に配下を全滅させられるとは思わなかった!よし、では約束通り!」
デュラハンは地面に突き刺していた大剣を引き抜いた。
「この俺自ら、貴様らの相手をしてやろう!」
活動報告で少々意見を伺いたいことがございますのでよろしければご覧くださいませ。