時は過ぎ、昼頃。ギルドで遅めの昼食中である。
「なあ、聞きたいんだが、スキルの習得ってどうやるんだ?」
と、カズマが言う。…………知らないのか?因みに俺の隣には俺たちに会うまでろくな物を食べられなかったらしいめぐみんが、一心不乱に定食を食らったり、アクアは手近な店員を捕まえておかわりを注文していた。因みに食べ始めてからちょくちょくめぐみんに口移しで食べさせている。
食欲のある女の子…………別に悪くはない。
「んっ……ぷはっ。スキルの習得ですか?そんなもの、カードに出ている、現在習得可能なスキルってところから……。ああ、カズマの職業は冒険者でしたね。初期職業と言われている冒険者は、誰かにスキルを教えてもらうのです。まずは目で見て、そしてスキルの使用方法を教えてもらうのです。すると、カードに習得可能スキルという項目が現れるので、ポイントを使ってそれを選べば習得完了なのです。んむっ……んぅ……ぷはっ。んっ…………ユウジ、もっとください…………」
だそうだ。ほら、めぐみん。これもお食べ?因みに俺がめぐみんに口移ししていることは周囲の者は別に騒がない。まあ、特性なんでね。相手が嫌がらなければ問題ない。
その後、爆裂魔法は習得に必要なスキルポイントが多すぎるだのアクアに回復魔法を教えてもらおうとしたら、宴会芸スキルだったりとまあ…………頑張れ、カズマ。
と、そんなとき───。
「あはははは……!キミたち面白いね!ねぇ、キミたちがダクネスが入りたがってるパーティーの人?スキル教えてあげようか、盗賊スキルだけど」
机の横から突然の声がした。
そちらを、見れば隣の席に二人の女性が座っていた。
………………ていうかクリスだな。もう一人は…………先日、パーティーに入りたいと言ってきたあの女騎士だ。
「えっと、盗賊スキル?どんなのがあるんでしょう?」
カズマの質問にクリスは上機嫌で答える。
「盗賊スキルっていうのは、罠解除・敵感知・潜伏・窃盗って感じのスキルだよ。持ってるだけでも、お得なスキルばっかりだよ。それに、キミ冒険者でしょ?習得するスキルポイントも少ないから良いよ。ふふっ………」
そう言ってクリスは俺に近づくと───。
「ヤッホー、ユウジくん。またイチャイチャしよー♪」
そう言って俺の膝の上に対面で座りチュッ、とキスをしてきた。クリスの柔らかくて瑞々しい唇の感触が伝わってくる。
「ちょっと、ユウジに何してるんですか!?ユウジ、此方を…………!」
そう言って俺の顔を自分の方に向けると、めぐみんはクリスに対抗するかのように俺にキスをする。めぐみんの唇もプルン、としていて心地いいね。
「ユウジくーん、あたしとももっとチューしよー?」
今度はクリスが俺の顔を自分の方に向かせ、再びキスをする。ヌルリとした感触。クリスの舌が口内に侵入している。
「んっ……ちゅぷっ……ふぅっ………ねろ……れろ………」
クリスの舌が俺の上顎、下顎、歯茎の隅々まで這いまわる。
「んっ…………ぷはっ。どう?気持ちいい?」
「もちろん気持ちいいよ、クリス」
「良かった♪」
そう言って舌なめずりをしたクリス。…………そういえばさ、何となくわかるんだけど、クリスって別に魅了効いてないよね?実は。
~~クリスside~~
榊雄二さん…………あなたはこの世界で私と出会った時、自分の能力が使えるかを確認していましたが、そんなことをしていなくとも、私…………あなたに惹かれてるんですよ?
隠していても女神です。魅了の力、実は効いていないんです。ただ、私があなたを…………誰かの為に危険に飛び込めるあなたを…………想っているんです。
~~ユウジside~~
で、今改めての自己紹介中。場所は冒険者ギルドの裏手の広場だ。
「さて、まずは自己紹介しとこうか。あたしはクリス。見ての通りの盗賊だよ。で、この無愛想なのがダクネス。この子のクラスはクルセイダーだから、君達に有用なスキルは無いと思うよ」
「ウス!俺はカズマと言います。クリスさんよろしくお願いしやっす!」
因みにアクアとめぐみんはテーブルの方にいる。
「では、まずは《潜伏》と《敵感知》いってみよっか。《罠解除》とかはこんな街中に罠なんてないからまた今度ね。ダクネス、あっち向いてて?」
「…………ん?…………わかった」
ダクネスは、言われた通りに反対を向いた。
すると、クリスは、近くにあった樽の中に入って、上半身だけを出し、ダクネスに向かって何かを投げた。クリスは、直ぐに樽の中に隠れた。…………これが潜伏スキル、か?…………失敗な気もするが。ダクネス怒ってるし。石を投げられたダクネスは、無言で樽に向かって行く。
「敵感知……!ダクネスが怒ってるのがピリピリ伝わってきたよ!一応、ダクネス。コレはスキルを教えるためにやったんだからね。えっ、ちょっ!ダクネス!」
樽の中にいるクリスが何か言っていたけど、ダクネスが樽を横に倒しては、ゴロゴロ転がし始めた。
「いやぁぁぁぁぁぁ!やめて!ダクネスー!」
…………本当に大丈夫かな?
「さ、さて。次に教えるのは、あたしのイチオシのスキルの窃盗だよ!対象の相手から持ち物をランダムで奪い取るスキルだよ。相手が使ってる武器、鞄の中のサイフだろうが奪い取るんだ。奪い取る物は使い手の運次第。色々と使い勝手がいいスキルだよ」
やっと盗賊らしいスキルだね。
しかし、奪えるものは指定ではなくランダムか。
使い手の運次第というのもあるが、本当に使えるものを盗れるかも分からないな。
「とりあえず、2人に使って見せてあげるから。まずはキミからだよ。''スティール''」
クリスが、手を前に突き出した瞬間に淡い光が発生すると共に、その手には奪ったであろう物が握られていた。それは……。
「あっ!それオレのサイフ!」
カズマはサイフを奪われたみたいだ。
「次はユウジくんだよ。準備はいい?」
「オーケー、ドンとこい」
クリスはもう一度手を前に突き出す。淡い光が発生し、クリスの手に握られていた物は────。
「うん?布?」
クリスの手には布が握られていた。
「…………」
クリスは、手に持っていた布を広げた。
股間がスースーする。なんでだろうね。ズボンの生地が直に当たってるような。というか、クリスが持ってる布、今朝見たな。
俺は、ゆっくりとズボンの中を確認した。うん、やっぱり……。
「それ、俺のパンツだよ」
「そ、そっかぁ…………」
クリスは頬を赤く染める。…………で、俺にどうしろと?
で、何やらカズマが窃盗スキルを覚えて財布を取り返せるか、という話になった。財布でなくても、取れた物はくれるらしい。目玉は40万エリスするダガーだとか。
「…………俺は窃盗スキル覚えられないんだけど。まあ、別にパンツはあげるけど?」
「そ、そう?じゃあ、その、もらっちゃうね?」
もじもじしているクリス…………何か自慰に使われそうな気が…………良いけどさ。
「っしゃー!覚えたぞー!そして、その勝負乗った!オレに何を盗られようが文句を言うなよ!」
「いいね!君!そういうノリ好きだよ。だけど、あたしが持ってるダガーは40万は下らないから残念賞もなきゃね」
クリスは、 おもむろにポケットから結構な数の石ころを取り出し始めた。
にしても、さっきダクネスに投げた物って石か。
「おい!きったねぇにも程があるだろ!」
「コレは授業料だよ。どんなスキルも万能ではないってことさ。1つ勉強になったね」
カズマ~、頑張れ~。
「やってやる!いくぞ!''スティール''」
カズマが突き出した手の平にはガッチリと何かを掴んだいた。カズマはゆっくりと掴んだ物を広げた。
「なんだ、これ?」
それは、三角形の白い布だった。…………コラ、ちょっと待て。
「ヒャッハーー!当たりも当たり、大当たりだーー!」
白いレース生地の女性用パン…………もとい女性用下着片手に腕をブンブン振り回すカズマ。
「いやぁぁぁぁぁぁ!あたしのパンツ返してぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
クリスは、短パンを抑えながら涙目で絶叫した。とりあえず…………。
「やめなさい」
「ぐふぉぉっ!?」
飛び蹴り、パンチ、頭突きのコンボを食らわせる。呻き声を出しながら腹を押さえて踞るカズマから下着を奪い取って、クリスに返す。
「ほら、クリス」
「うぅ、ありがと………」
……………さて、と。後は…………。
「はぁはぁ…………!公衆の面前で下着を剥ぎ取るとはっ……!んぅっ!」
…………この鼻息が荒い女騎士はどうしようか?
その後、俺達4人が冒険者ギルドに戻ると一際、賑わっていた。
「アクア様!もう一度、もう一度だけ!花鳥風月を見してくれ!」
「馬鹿野郎!アクア様の花鳥風月を見るんであれば、金かシュワシュワ渡さなきゃダメだろうが!」
「そ、それもそうだな!アクア様ー!」
めんどそうな様子のアクアの周りに、おっさん達が群れていた。
「あんた達!芸っていうものを分かってないわね!芸って物はね、求められてやる物ではないの!それに答えて同じ芸をやる人は、3流よ!3流!分かる?それに、私は芸人じゃないから、お金とかを目的でやってる訳じゃない!分かった!?」
「「「はい!」」」
「ならば、良し!ほら、解散解散!」
男達は、アクアの一言で解散していった。そして、こちらに気づいたアクアがテンションの低いクリスにどうしたのかと聞いて、俺がカズマにパンツを剥がれたからだと説明すると冷たい視線を向けるアクアとめぐみん。
その後、クリスとはギルドの入り口で別れた。なんでも稼ぎがいいダンジョンに参加するらしい。今度、ダンジョン探索に二人で行こうと誘われた。去り際にまたディープキスをされる。因みにカズマはパンツを剥いだことを大きな声で暴露され、周囲からさらに冷たい視線を向けられる。
「ところで…………クリスについて行かなくて良かったのかな?」
カズマがアクアを回収しに行くのを見ながら、同じテーブルに座っているダクネスに尋ねる。
「…………うむ。私は前衛職だからな。前衛職なんて、どこにでも有り余っている。でも、盗賊はダンジョン探索に必須な割りに、地味だから成り手があまり多くない職業だ。クリスの需要なら幾らでもある」
確かにギルド内を見回しても前衛職とおぼしき冒険者が半分。あとはウィザードにプリーストといった後衛職が半分といったところだ。クリスのような軽装な冒険者は見当たらない。
冒険者に囲まれていたアクアを回収したカズマが戻ってきた。二人の後ろを歩いていためぐみんがカズマの服を引っ張る。
「カズマカズマ。スキルは無事に覚えられたのですか?」
「ふふ、まあ見てろよ?いくぜ、スティール!」
カズマがめぐみんに向かって右手を突き出し、スキルが発動する。カズマの右手には白い布が握られている。それに対してめぐみんの顔が赤くなって、涙目でスカートを押さえている。
「…………なんですか?レベルが上がってステータスが上がったから、冒険者から変態にジョブチェンジしたんですか?…………あの、スースーするのでパンツ返してください…………」
………………。
「あ、あれっ!?お、おかしーな、こんなはずじゃ…………。ランダムで何かを奪い取るってスキルのはずなのにぶほおぉぉっ!」
思い切り後頭部を蹴り飛ばす。油断していたカズマは思い切り倒れこんだ。…………全く。
「…………カズマ?いい加減にしよう?」
「いや、俺は「ん?」…………はい」
やれやれ…………ん?
「やはり。やはり私の目に狂いは無かった!こんな幼気な少女の下着を公衆の面前で剥ぎ取るなんて、なんと言う鬼畜…………っ!それに先程から全く容赦のない仕置き……………!是非とも…………!是非とも私を、このパーティーに入れて欲しい!」
椅子を倒しながら立ち上がったダクネスがそんな事を口走った。
「いらない」
「……………黙れ牝豚」
「んんぅっ…………!?く………っ!」
カズマの即答、俺の罵倒にダクネスが頬を赤くして体を震わせた。…………本当に変態だなぁ。それも一級品だよ。
「ねえカズマ、この人だれ?昨日言ってた、報酬貰いにいってる時に絡まれた人?」
「ちょっと、この方クルセイダーではないですか。断る理由なんて無いのではないですか?」
カズマが断りたいのも分かるけど、前衛職が欲しいのも事実。悩みどころだね。まあ、このパーティーのリーダーはカズマだから、カズマが決める事なんだけど。
「…………実はなダクネス。俺とアクアとユウジは、こう見えて、ガチで魔王を倒したいと考えている」
……なるほど。魔王に挑む事をダクネスに言って、パーティーに加入させないつもりか。
「丁度いい機会だ。めぐみんも聞いてくれ。俺とアクアとユウジはどうあっても魔王を倒したい。俺達はそのために冒険者になったんだ」
ダクネスを加入させない様にしつつ、初耳であろうめぐみんをパーティーから追い出すつもりだな…………姑息にも程があるぞ、カズマ。
「特にダクネス、女騎士のお前なんて、魔王に捕まったりしたら、それはもうとんでもない目に遭わされる役どころだ」
「ああ、全くその通りだ!昔から、魔王にエロい目に遭わされるのは女騎士の仕事と相場が決まっているからな!それだけでも行く価値がある!」
「えっ!?………………あれっ!?」
ダクネスの力強い肯定の言葉に思わずカズマと一緒に俺まで声を出してしまうところだった。…………あのさぁ。
「えっ?…………なんだ?私は何か、おかしな事を言ったか?」
しかも本人は至って真面目なようだ。カズマはダクネスの説得を諦めてめぐみんの方を見る。
「めぐみんも聞いてくれ。相手は魔王。この世で最強の存在に喧嘩を売ろうってんだよ、俺たちは。そんなパーティーに無理して残る必要は…………」
椅子を蹴り倒しためぐみんが立ち上がって、マントを翻す。
「我が名はめぐみん!紅魔族随一の魔法の使い手にして爆裂魔法を操りし者!我を差し置き最強を名乗る魔王!そんな存在は我が最強魔法で消し飛ばしてみせましょう!」
勇ましいねぇ…………。自信満々に宣言するあたり、爆裂魔法にそれだけ自信があるのか。確かに凄い威力だし。
(…………まあ、でもこのメンバーなら何故か出来そうな気もするけど)
今もカズマが二人を必死に説得しているのを見ながら小さく笑う。
『緊急クエスト!緊急クエスト!街の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください!繰り返します。街の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください!』
…………ふむ、仕事の時間かな。
クリスの魅了について実は効いていないということにしました。ただただ、ユウジが惚れられやすいだけです。
ご感想、評価、よろしくお願いいたします。