静花
赤ちゃん、メディが産まれてから数ヶ月。順調に育ってきている。私達は交代で面倒を見ているのだけど、私の番となった。それで久しぶりに家に帰る事にした。今はロンドン・ヒースロー空港でキャリーケースを持ち、メディを抱きながらお母さんを待っている。
というのも、お腹が膨らんで学校とかいけないので、お母さん達と相談して留学という事にして沖ノ鳥島に行っていた。ここはアストの権能で周りを巻き上げてそれなりに広さがある島としてリゾート開発を行った場所。自重せずに権能をフルで使って行われたので、宮殿やお城のようなホテルが存在し、海も調整されて青く綺麗な場所となっている。沖ノ鳥島の所有者として王の強権で買い取っているあたり、実際に販売を開始したら凄く利益が出そうな所だ。
そんなところでメディが生まれる前も含んで1年ちょっと過ごしていたのだけど、その生活はなんていうか、色々と酷い。祐理さん達から礼儀作法など習い事を教えられ、勉強も教えてもらう。驚いた事にアストも勉強はトップクラスなのだ。その辺はいいけど、アストの気が向いたら問答無用で犯されるのが大変だ。逃げ場のない島で毎日調教されるのだから。お陰で身体は敏感になっている。それ以外は海と美味しい料理で楽しんでいたんだけどね。
あと、たまに神様が顕現したりするからリーゼロッテさんと組んで女性だったら私が倒す。女神ならば解体聖母のある私の敵じゃない。リーゼロッテさんに赤い夜にしてもらい、霧を発生させて問答無用の不意打ちによる暗殺。蘇生の権能がない限りワンサイドゲームだ。それに私の所持しているナイフやメスはアストが権能で作った特別な奴で神剣の分類に入るから普通に戦える。実際にドニさんやヴォバンさんと戦った時もなんとか戦えるようになっていた。戦闘訓練は恥ずかしいけど成長が確信できるから助かる。なんど殺されたかわからないけど。いくら蘇生の権能があるとはいえ、やりすぎだと思うわよ。
「静花」
「あっ、お母さん」
「お待たせ。その子が私の孫娘かしら?」
「うん。名前はメディ。メディ、こっちがお……」
「静花」
「えっ、えっと……」
「まあ、仕方ないわね。もっと先になると思ってたのだけど。私がメディのお祖母ちゃんよ」
「あう~」
「可愛いわね」
お母さんがメディを抱き上げて可愛がってる。私はその間に背伸びをして荷物を確認する。ロンドンには少し前から何度か来ている。目的は飛び級と医師免許の習得。どちらも成功しているし、各国を連れ回されて色々な所で習得させられた。勉強は……その、簡単だった。観察眼の権能で教科書とか観察するだけで全て覚えられるし、人を観察するとどこが悪いかとかも簡単に推理できる。それを手術に使えばどうなるかなんて簡単だ。実際に何人かの手術も行って成功しているし。
「そういえば、カモフラージュ用のお土産は買ったの?」
「うん。でも、いっぱいあるから家に適当に送りつけてある」
「そう。なら行きましょう」
「うん」
日本に向かう飛行機に乗って移動する。
日本に着くと朝になっている。今日は平日なので人はそれほど多くない。
「やっほー、迎えに来たよー」
「いらないのに」
「そう言うんじゃないわよ。お父さんに紹介しないといけないじゃない」
「それもそっか」
アストが迎えに来ていた。それもリムジンで。運転手は日本の正史編纂委員会の甘粕さんだ。なんだか、面倒な予感がする。
「どうぞ」
「ありがと」
車に乗り込むと直ぐにアストが私に抱きついてメディを撫でてる。度重なるセックスで肉体の接触は気にならない。もう、諦めた。それにメディも喜んでいるし。
「それでは草薙家の方でいいですね?」
「そうね。お願い」
「畏まりました」
お母さんが助手席に乗って甘粕さんに行き先を教える。
「あっ、甘粕さんが静花にお願いがあるんだって」
「何よ?」
「静花さん、申し訳ないんですが、こちらの患者を執刀して貰いたいのです」
甘粕さんが渡して来た封筒に入っていたカルテには日本の大臣の名前があった。癌の摘出手術……確かに普通じゃ無理くさい。
「これ、普通のじゃないわよね」
「ご明察の通りです。治癒の魔術も効かない呪いです」
「アストがやればいいじゃない」
「ボクがやると、人間じゃなくなっちゃう」
「……いくら用意するって?」
「3000万ですね」
「倍だしてよ」
「わかりました」
お小遣いゲットね。6000万がお小遣いっていうのも何か間違ってるんだけど。
「静花、お金の使い方には気を付けなさいよ?」
「うん、わかってる。ちゃんと経済回すようにばら撒くから」
「こないだ株で失敗してたよねー」
「うるさいっ。やろうと思ったら確実に成功させられるわよ!」
観察眼で会社を推理すればいいんだから。でも、それじゃあ面白くないからやらないけど。
「いやはや、景気のいい話ですね。お二人が稼いで使いまくってくれるので経済は順調ですよ」
「2人でどれだけ動かしてるのよ」
「数十億単位で動かしてますからね」
「静花と競争してるからね」
「どっちが多く稼いで多く使うかっていう無駄な勝負よ」
そんな事を話していると、家に着いた。時間はお昼前なので予定した時間だ。
「では、後日都合のいい日をご連絡ください」
「わかった」
「では」
甘粕さんが帰っていったので、私達は中に入る。
「ただいま~」
「おかえり」
「お父さん、久しぶり」
「元気そうで何よりだよ。それで、話したい事があるんだよね?そっちの子達が関係しているのかな?」
「ええ」
「初めまして、静花の婚約者をしている万里谷アストです。よろしくお願いします」
「ふむ。まあ、あがりなさい」
おじいちゃんと対面して座り、メディの事を話していく。
「つまり、その子が曾孫という事だね」
「うん」
「そうだよ」
「真世は認めてるんだね?」
「ええ、異存はないわ。それに二人共充分子供を育てるだけのお金を持ってるしね」
「まあ、2人が納得しているなら構わないさ。曾孫を見れるのは嬉しいからね。ただ、静花の事をどう思ってるんだい?」
「ん? ボクは愛してるよ。そうじゃないと子供なんて産ませないし」
一方的とはいえ、即答されると恥ずかしい。
「静花くんをちゃんと幸せにするなら構わないか。それで、護堂くんにはなんて伝えるんだい?」
「お兄ちゃんには……皆で拾った子で、一緒に育てるって説明するつもり」
「戸籍を見られない限りは大丈夫よ」
「護堂くんなら気にしないだろうし」
「そうだね。しかし、学校の方はどうするんだい?」
「学校は向こうで飛び級して卒業してきたけど、日本だと義務教育なのよね……」
「まあ、学校に行っている間はカレン……メイドの子もくるから大丈夫だよ」
「こちらで預かるのも問題ないよ」
色々と話していると、予約していたお寿司が届いたので皆で食べる。結局、学校は適当に行く事にした。カレンちゃんはあちらの大学を出ているし、日本国籍じゃないから義務教育も適応されないし、おじいちゃんと一緒に世話をしてくれる。お母さんも適度に寄るみたいだ。アストが帰った後、お兄ちゃんがやってきて色々とあったけど、まあそっちもお母さんとおじいちゃんの説得で事なきを得た。一ヶ月ほどメディと一緒に生活して、メディは次の母親の元へ行った。まあ、ほぼ毎日会ってるんだけどね。
数年後、私が帰ってくるとおじいちゃんとお兄ちゃんが何かを話していた。テーブルの上には不思議な石版がある。
「それくらいなんとかしてみるよ」
「どうしたの?」
「ああ、お帰り。ふむ。静花くんはイタリア語はできたかね?」
「ん? できるよ」
「護堂くん、静花くんを連れて行きなさい。静花くんもいいね?」
「私は別にいいけど」
「静花とか……まあ、静花一人で行かせるのも危険だしな。わかった」
「別に危険じゃないけど……」
プロメテウス秘笈は結構危険な魔導書だし、お兄ちゃんを守る方がいいかな。どちらにしろアスト達も女神を探す為に調査しているし、サルデーニャ方面を私が調査すればいいか。
「じゃあ、航空券を手配しておくからお兄ちゃんはパスポートを用意してね」
「ああ」
お兄ちゃんと旅行は久しぶりかな。色々と準備しないと。