※この作品はR-18です。

闇を従えし魔王   作:ヴィヴィオ

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メルカルト

 

 

 

 

 静花

 

 

 

 私とお兄ちゃんは春休みにイタリアのサルデーニャ島を訪れた。目的の場所まで私が聞いて先導し、お兄ちゃんが荷物を持つ。ここに来た理由は簡単。おじいちゃんが民族学者で、若い頃から世界中を飛び回っていた。それで、世界各地から不思議な石版や壺を貰ってきていたんだよね。そのうちの一つであるプロメテウス秘笈と呼ばれる石版を返しに来たの。

 

「それで、これからどうするんだ? 電車に乗るのか?」

「んー電車は駄目だね。数時間おきにしかないし」

「そうなのか……」

「ここは田舎だからね。うん、やっぱりタクシーかな」

「お金は大丈夫なのか?」

「平気だよ。お兄ちゃんよりいっぱい持ってるし」

「うっ……」

「ちょっと買い物と車を拾ってくるから待ってて」

「わかった」

 

 お兄ちゃんを置いてスーパーに入る。そこで色々と購入していると電話がかかってきた。

 

「どうしたの?」

『そっちにウルスラグナとメルカルトが出てくるけど、手を出しちゃ駄目だよ』

「どういう事よ?」

『面白い展開になるからね』

「まあいいや。わかった」

『じゃあよろしく』

 

 アストとの電話を切った瞬間、瞬時に身体に力が入ってくる。どうやら早速みたい。お兄ちゃんが心配だから外に出てみる。

 

「って、なんで居ないのよっ!!」

 

 周りを見渡すと遠くの方に強大なイノシシの神獣が見える。そして、魔女の姿も。気配を探すとお兄ちゃんの近くに神の気配がある。

 

「ああ、もうっ!」

 

 急いでそちらに向かうと、私の前に一人の少年が現れた。そいつを見ると色々と不思議な神のようだ。

 

「ふふっ、ふはははははっ! 気配が読みづらくただの人間かと思ったが、神殺しのようじゃな」

「バレたなら仕方ないけど、まだ戦うつもりはないから」

「ふむ。そうなのか?」

「今回はお兄ちゃんの付き添いだからね」

「先程の者か」

「そうよ。どういうつもり?」

「我は敗北を求めておるだけじゃ」

「迷惑な神ね。まあいいわ」

「どうやら本当に戦う気はないみたいじゃな。メルカルトの次に相手をしてやろう」

 

 目の前から消えていく奴を無視してお兄ちゃんの元へと車を拾って向かう。面白い事ってこれ?

 アストめ、お兄ちゃんをカンピオーネにするつもりなの?

 

「まあ、別に構わないのだけど……」

 

 お兄ちゃんはさっきの魔女と一緒にいた。やっぱり女誑し?

 

「お兄ちゃん、やっと見つけた」

「お、静花」

「あら、知り合いかしら?」

 

 金髪の女をじっと見つめて、考える。コレをどうしようかと。

 

「兄がお世話になったようで……」

「ええ、そうね」

「おいっ!?」

「それは失礼しました。じゃあ、行くよお兄ちゃん」

 

 私はお兄ちゃんの手を掴んで引っ張って車に乗せる。

 

「まっ、待ちなさい!」

「出してください」

「しっ、静花?」

 

 運転手にお願いして車をだして貰う。

 

「くっ、アリアンナっ!」

「はいっ!」

 

 赤い車が追ってくる。やっぱり狙いはプロメテウス秘笈か。

 

「おい、どうしたんだよ静花?」

「お兄ちゃん、あの人の狙いっておじいちゃんの石版でしょ」

「あっ、ああ……」

「ならさっさと返さないと……って、それをちょっと見せて」

「わかったけど、どうしたんだよ」

「いいから!」

 

 お兄ちゃんから奪ったプロメテウス秘笈には確かにあの神の力が入っている。ペルシャの軍神、ウルスラグナの力が。

 

「あ~もう、お兄ちゃん、頑張ってね。どうしてもまずかったら助けてあげるから」

「何言ってるんだ?」

「そのうちわかるから」

 

 少しして目的地に到着した。

 

「門は空いている。入っておいで」

「え?」

「連絡は入れておいたから」

「そうか」

「待ちなさいっ!!」

「はぁ~なんですか、ストーカーさん」

「誰がストーカーよっ! 侮辱だわっ!」

「じゃあ、強盗ですか」

「このっ!?」

 

 魔女とはいえ、私の気配隠蔽と情報隠匿を超えられる存在は滅多に居ない。それこそ権能クラスじゃないと無理なのだから気づかないのは仕方ない。でも、鬱陶しいし解体してやろうか……。

 

「し、静花?」

「っと、早く入ろ!」

「おいっ、引っ張るなって」

「だから待ちなさいっ!」

 

 魔女も一緒に入ってきたけど無視する。サルデーニャの魔女が招き入れたのだから、構わないのだろう。

 中に入るとソファーに寝転がっている金髪美人が居た。

 

「遠いところをわざわざすまなかったな。連絡を受けていたから歓待の用意はできているぞ。ん? どうした?」

「いっ、いやっ、爺ちゃんの知り合いといっていたので、その……」

「ふっ、まだまだ身体は衰えておらぬぞ? ほどなく夜じゃ、試してみるかっ、少年」

「ごくっ――いてぇえええええええぇぇぇぇぇぇっ!?」

「いやらしい」

「お兄ちゃん? いっぺん、解体されてみる?」

 

 お兄ちゃんの足をグリグリしながらメスを取り出してクルクル回す。

 

「かっ、勘弁してくれ!」

「まあまあ、勘弁してやってくれ。その年齢は色々と持て余しているものだ」

「知ってるわよ」

 

 そんなの、この身体でほぼ毎日されてるんだから。

 

「ちっ、命拾いしたねお兄ちゃん。変な女に引っかかったら殺すから」

「おいおい」

「怖い奴だな」

「野蛮ね」

 

 それからプロメテウス秘笈をお兄ちゃんが渡す。それから色々とあってお兄ちゃんがプロメテウス秘笈を持つ事になった。それから歓待を受けてお酒を飲んでいく皆。私はその間に外に出る。

 

「おやおや、こんな所で何をしているのかな?」

「夜空を見てる」

「普通の人間ではないお主がか」

「気づいてたの?」

「余りにも気配が無さ過ぎるの」

「なるほど。それで何か用?」

「神を倒すのかの?」

「手は出さない。お兄ちゃんが敗れるまではね。でも、その後は……私が狩る」

「それは安心できるの」

「それと少し出かけてくるから、お兄ちゃんの事をお願いね」

「ふむ。了解した」

 

 私は身体を霧に変えてその場から移動する。移動した先はサルデーニャから離れた場所。そこで身体を元に戻す。

 

「静花ママ」

「メディ、元気してた?」

「元気にしてました」

 

 メディを抱きしめる。メディは既に小学生低学年くらいの身長にはなっている。成長が早いのだ。小学生くらいで止まるそうなのだけど。

 

「そう。それで、お兄ちゃんの戦いに手出しは禁止なのよね」

「そうだよ。このまま行けば護堂はウルスラグナを倒すだろう。メルカルトは静花が倒せばいい」

「メルカルトはメディに喰らわせるのね」

「うん。ボクらが下手に介入して複数の神と死闘を繰り広げて殺すより、そっちの方がいいよ。被害も少ないし、カンピオーネが複数で神を殺すよりは幾分ましだ」

「従属神が呼ばれないだけましか。メルカルトの従属神とか嫌になるね。了解だよ。でも、お兄ちゃんが死にそうになったら介入するから」

「その時はボクも助けに入るから。それとリーゼロッテ」

「サポートよね? 分かっているわ」

「よろしくお願いしますね、リーゼロッテさん」

「ええ。夜にする簡単なお仕事だもの」

 

 これでメルカルトかウルスラグナ、どちらかは瞬殺できるだろう。女神ほどではないにしろ、成功法でも私は負けない。

 

「それじゃあ、ちょっと遊んで行こうよ。朝までは大丈夫だろうし」

「はぁ……いいわよ」

「ママ、楽しみましょ」

「そうね」

 

 四人で夜の街で買い物や食事をしてからホテルのスイートルームに泊まってセックスをする。変態なアストは娘のメディの身体も開発している。親子丼がしたいとか言っているので、快楽を覚えさせているのよね。精液の味も。

 

 

 

 

 朝、起きたら目覚めのキスをして皆で食事を取り、メディを連れてリーゼロッテさんと共にサルデーニャに戻る。すると楽しそうな戦いが起こっていた。

 

「おおっ、お兄ちゃんが凄い」

「護堂叔父様、格好良いですね」

「ウルスラグナの黄金の剣を盗んだようね」

 

 お兄ちゃんが見事にウルスラグナを打倒した。次は私の番だ。

 

「リーゼロッテさん」

「任せてよ幻燈結界(ファンタズマゴリア)」

 

 世界は赤い夜となり、取り込まれたのはメルカルトのみ。

 

「行ってくるね」

「頑張ってください、静花ママ」

「うん」

「気を付けてね」

「平気だよ」

 

 暗黒霧都(ザ・ミスト)を発動させて世界を霧で包む。

 

「この気配、来たか神殺しよ」

 

 巨人を相手にどう戦うかというと簡単だ。私の攻撃は夜なら問答無用の先制攻撃。ならば、やるだけだ。でも、相手はイナゴを大量にだしてくる。

 

「私の前に立ち塞がる愚かな獲物を串刺し刑に処す。串刺城塞(カズィクル・ベイ)」

 

 周囲の地面と空から無数の槍を生やしたり召喚し、迫り来る城壁のような密度で敵を串刺しにして処断する。この対象が、『逃走』『不道徳』『暴力』を犯している相手ほど破壊力を増していく効果がある。それに加えて魔槍から放たれる呪いには解体聖母の効力も上乗せするので、夜と霧の発生条件も加わり、効力は絶大だ。

 

「ぬぉおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!?」

 

 串刺し公。ヴラド・ツェペシュより奪った権能は充分に使える。これは死ぬまで永遠に発射される。解除は私が解くか死ぬか、別の権能を使うかまでしかない。

 

「さて、流石にまだ死なないよね」

 

 大量のいなごの群れが串刺しにされる中、駆け抜けてメルカルトに接近する。メルカルトも棍棒を振り回しながらダメージを受けていく。パワーがあれど、この霧を加えて呪いにより着実に弱っていく。気配隠蔽により近づいて、振るわれた棍棒を避けてそこに飛び乗ってメルカルトの眼にナイフを突き刺す。そして、飛び降りながらナイフやメスを投擲して突き刺していく。突き刺された魔槍に加えて今回新たに追加したのは神剣の類いであり、魔剣だ。呪いを集めて体内に増幅して送り込むというものだ。

 

「卑怯なっ、姿を表せぇぇぇぇぇッ!!」

「卑怯で結構。勝てばいいのよ」

 

 だいだい暗殺者に何を望んでいるのか。

 

「内側から呪いに喰らわれて解体されなさい」

「許さんっ、許さんぞぉおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

 背後で身体が膨れ上がって爆発するメルカルトを放置し、ナイフを仕舞う。同時に権能が手に入る。そして、大半のメルカルトの神力がリーゼロッテの術式によって集まり、結晶体となる。それを持ってメディの元に向かう。

 

「メディ、あ~ん」

「あ~ん。はむ。もきゅもきゅ……ん~」

「美味しい?」

「美味しいです」

「そう、よかった。さて、お兄ちゃんを回収して帰ろうかな」

「別にいいんじゃないかしら? あの魔女に預けても大丈夫でしょう」

「そうね。どうせドニさんに教えてあげたら鍛えてくれるでしょうし。利用させてもらおうか」

 

 少し楽しくなってきた。お兄ちゃんを鍛え直すのに協力してもらおう。早速連絡を取ると二つ返事で了承してくれた。それから、お兄ちゃんが起きる前にエリカさんにお兄ちゃんを託して帰った。カンピオーネとなったお兄ちゃんをどうこうできるはずもないし、何よりドニさんが直ぐにいくしね。

 

 

 

 

 

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