二人で一人のリーゼロッテとリゼットが来てから数日、ボクは相変わらず魔導書で勉強し、リゼットとリーゼロッテの二人、リズと一緒に魔術を作成している。場所は何時ものスイートルーム。そこにある豪華なふかふかソファーに身体を預けながら直感の赴くままに作成しているのだ。
「……なんだかムカつくわね」
「リーゼロッテ、どうしたの?」
今日はリーゼロッテのようで、ボクが作った儀式魔術を見て睨みつけてくる。リーゼロッテとリゼットの見分け方なんて簡単だ。服の色で分かる。リーゼロッテは黒ロリでリゼットは白ロリなのだ。最初はごまかす為に黒を着ていたんだけど、今は偽る理由もないらそのままだ。ちなみにこの服は様々ま防御魔術が組み込まれて作られているらしく、色が変わるので入れ替わっても問題無いみたいだ。
とりあえず、小首を傾げながら聞いてみる。Fate/Apocryphaのアストルフォの姿をしているボクならば似合うし問題ない。
「……」
「うわっ!?」
無言で放たれた火炎球がボクに到着する前に空間を指定して大地を揺らす三叉の矛の権能で握り潰す。大地と海洋と空間圧縮が可能な権能なので火炎球を粉砕するのは容易い。しかし、おちょくったとはいえ、いきなり攻撃が飛んでくるとか流石はバビロンの魔女、炎の魔女とか言われるだけあるね。何処ぞのヒロちゃんみたいに炎の申し子とか名乗れるんじゃないかな?
「ちっ」
「舌打ちまでとか非道くない? ボクってリーゼロッテの主人だよ?」
「はいはい、悪かったわね。次はあてるわ」
「違うから! というか、ボクにMっけはないよ! Sっけはあるけどね!」
「私もそうよ。だから、そのムカつく綺麗な肌をこんがり丸焼きにしてあげるわ」
「逆はいいけど却下。だいたい熱くて死んじゃうって!」
「どうせ生き返るでしょ」
「それはリーゼロッテもだよ! というか、そっちがその気ならその肌を焼いてあげるよ」
「お断りね。それよりもいいのかしら?」
「ん?」
リーゼロッテの言葉に変な感覚がする。何かあったっけ?
「その調子なら気づいていないのかしら?」
「別になんとも無いし気にしてないよ。嫌な予感もしないし」
「そう……」
「それで、最初のムカつくって何さ? 悪い所があるなら気が向いたら治すよ?」
「……何、簡単な事よ。人が数百年かけて研鑽して覚えた魔術知識を見て覚えるのはまだ許せるのだけれど、ええ、私に才能が無かったという事だから。それでも、得た知識を利用して適当に無茶苦茶に感覚だけで組み上げた儀式魔術を完成させるその理不尽さにイラついただけよ。ええ、何なの? 私達魔術師の努力は無駄で無価値だって言いたいの? いっぺん、死んでみる?」
「そんな地獄少女みたいなのはお断りだね! まあ、概念すら捻じ曲げる幸運Aの上を持っているボクには容易いのだ!」
ゲイ・ボルグすら防げる幸運A+は伊達ではないのだよ。絶対命中、何それ美味しいの?
ボクの前ではただの投擲、なう。
「概念を捻じ曲げるとか、巫山戯た珍獣ね」
「ひどっ!?」
「それよりもお客様よ」
「招かれざる客じゃないよね」
「そっちは……いえ、ある意味ではそっちも招いた客だから変わらないわね。どちらにしろ、帰ったのだけれど」
「って事は甘粕さんかなー」
「そうね。ついでだからルームサービスで色々と頼みましょうか」
「よろしく」
お金はトゥーレと日本政府から出てるし、気にせず頼む。人の金だよ、人の金。それを使いまくってるボクって悪い人だね。まあ、暗黒存在なんだけどさ。それよりも一応は完成したし、もう一つの方はヴォバン侯爵のやろうとしている儀式魔術を解析すれば大丈夫だ。
「リズ、そこの魔導書取って」
「これね」
「あと、膝枕して」
「いいわよ」
新しい魔導書を貰って、横に居るリーゼロッテの膝に頭を乗せて読んでいく。女の子特有の匂いがしていい気分になる。祐理が入れば即座に舐めさせたんだけど、今は居ないので仕方無い。そうしていると、遠くでエレベーターが止まる音がした。同時に足音が聞こえてくる。
「甘粕です。お待たせして申し訳ございません。日本から呼び寄せた巫女が到着しました。今よろしいでしょうか?」
「大丈夫だよ」
ボクはリーゼロッテの膝の上で頭の向きを変えて返事をすると、扉を開けてスーツ姿の男性、甘粕さんと祐理と同じくらいの女の子が入ってくる。長い黒髪に赤い瞳をした凛とした少女。身長は原作より低く、150から160くらいで、胸も少し膨らんで来たくらいだ。ちょうど食べ頃だろう。
「っ」
いやらしい目付きで嬲るように見ると、少女は手に竹刀の袋を持ったまま自分の身体を両手で抱いて嫌悪感を晒す。だが、どういう事をされるか事前に聞いてはいるんだろう。直ぐに持ち直した。カンピオーネの命令からは逃げられないから諦めたか。いや、彼女がおじいちゃまと読んでいるスサノオが出て来ると話は変わるんだけどね。それはそれで面白い。
「こちらが神降ろしの巫女です。ほら、挨拶をしてください」
「恵那は清秋院恵那です」
「こらっ、敬語を……」
「いいよ、その子はこれからボクの物になるんだから別に敬語じゃなくてもね」
「やった」
「ふふ、そうよね。別に身体さえ使えれば問題無いものね」
「まあね」
別に恵那の精神はそこまで必要ない。今居るのは神降ろしのできる巫女だ。彼女次第で可愛がってやるけれどね。成長しちゃうし、どうにかできないかな~?
「う、うん……頑張って祐理と一緒に王様に御奉仕するよ」
「よろしい。早速お願いしたい事がある」
「なっ、何? 流石に他の男性が居る所じゃ恵那は嫌だよ!」
「わかってるよ。神降ろしを見せてくれ」
「わ、わかった。でも、準備がいるからちょっと待っててね!」
「いいよ。何か必要な物は?」
「禊をしたいから、お風呂場かな」
「リーゼロッテ」
「わかったわ」
身体を起こして普通に座ると、リーゼロッテが立ち上がる。すると服が白色へと変わる。面倒だと思ってリゼットに任せやがったな。
「えっと、ご案内します。こちらです」
「う、うん」
恵那がリゼットに連れられて風呂場へと移動していく。それを見送った後、真剣な表情でボクを見詰めてくる甘粕さん。
「何? ボクにはホモの毛はないよ」
「違いますよ!?」
「えぇーそんな熱の篭った瞳で見詰められたからてっきりホモの人だと思ったのに」
「違いますって。っと、そんな事よりも祐理さんは何処ですか? こちらに不穏な情報が入ってきたのですが……」
「祐理? 祐理はヴォバンに攫われたね」
「ちょッ!?」
「にゃはは」
「……よろしいのですか?」
直ぐに落ち着いてこちらを真剣な表情で見詰めてくる。どうやら真面目に対応しないと駄目みたいだ。でも、ボクって理性が蒸発してるんだよ。
「いいよいいよ、攫ってくれた方が乗り込む理由ができるし、何よりボクの勘がそっちの方がいいと言っているからね。それにさ、囚われのお姫様を助けるのは王様の役目でしょ」
「そもそも、私がただの人間に遅れを取るとでも思っているのかしら? だったらそれは面白い冗談ね。指先からじわじわと焼き殺してあげたいくらいに」
「いえいえ、滅相もありません。ただ、日本では万里谷さんが王であると理解していない者達もおりまして、その、独断で動きまして……」
「祐理を攫ったのってそいつらか」
「はい。できましたら穏便に解決させて頂きたいと……」
「そうだね。そいつらの処遇は後で決めようかな。解決してからでいいよ。それと甘粕さんにお願いがあるんだ。サルバトーレ・ドニっていうカンピオーネがボクと同時に生まれてるからさ、その人に連絡とってよ。ひょっとしたら今ならサン・ジミニャーノか、ヴォバン侯爵の近くに居るかもよ」
「わかりました。直ぐに調べさせましょう。ヴェルクマイスター様、トゥーレの捜査網もお借りしてもよろしいでしょうか?」
「構わないわ。私の物はアストの物だから、アストの為になるなら好きに使いなさい」
「ありがとうございます。では、失礼致します」
甘粕さんがまじで消えた。凄い、流石はマスターニンジャ!
あの技術に憧れるよ。もち、コピーさせて貰ったけどね。
「もう一人カンピオーネが生まれていたなんて……いえ、確かローマに神が現れていたわね」
「多分それかな。それより膝枕してよ。気持よくて好きなんだよね」
「ふぅ、わかったわ。って、ちょっと何してるのよ!」
ソファーに座ったリーゼロッテのスカートを捲くり上げてガーダーベルトが取り付けられた柔らかい太ももに直接頭を乗せる。
「こっちの方が気持ちいい。いっそ裸でしてもらおうかな?」
「嫌よ」
話しながら、太ももにスリスリしながら足を撫でていく。上から底冷えした視線がするけど気にしない。ボクは欲望のままに突き進む。理性なんていらない。望むままに欲望のままに行動する。そう、気分次第でやりたい事をやるのだよ、ワトソン君。
「ワトソンって誰よ」
「え? ホームズ知らない?」
「知ってるわよ。ジャック・ザ・リッパーとの戦いを生で見たわ」
「マジで!?」
「伊達に長生きしてないわ。彼らにまつわる品もあるし、なんならまつろわぬ神として呼び出して見る?」
「面白そうだね」
そんな会話をしていると、風呂場へ通じる廊下の扉が開いて恵那が出て来た。恵那は私服から巫女服に着替えていた。原作では滅多にない格好だ。確か大祓いぐらいじゃなかったかな?
「あ、あの、王様が巫女服が好きだって聞いたんだけど、よかった? まあ、恵那はまだ未熟で他の服じゃできないんだけど……」
「ああ、いいよ」
まだ原作四年前だし、仕方無いよね。しかし、巫女服姿も似合ってるね。
「じゃあ、始めるね」
「ああ」
「楽しみね」
恵那は竹刀袋から天叢雲劍を取り出して祝詞を唱え出す。それと同時に周りの雰囲気が代わり、自然と身体が戦う為の準備をしだす。
「天叢雲劍よ。願わくば我が身を贄とし、荒ぶる御霊を鎮めたまえ」
言霊が恵那の口から紡がれて行くと、どんどん雰囲気が変わって瞳に狂気と凶暴な殺気を放つ獰猛な鬼へと変わっていく。
「ちはやぶる神の斎垣も越えぬべし……」
「恵那、そこまででいいよ」
ボクが止めに入るが、恵那はそのまま言霊を紡ごうとする。すると瞬時にリーゼロッテが恵那に火炎弾を放つ。
「っ!?」
恵那は天叢雲劍で火炎弾を叩き切って、その呪力を吸収する。
「恵那に何するの!?」
「制止の声が聞こえてなかったでしょう」
「え?」
「もういいんだよ。やり方はわかったしね」
「えっと……」
「さっきのままだったらボクと戦う事になっただろうね」
「戦うのは構わないのだけれど、スイートルームの弁償代、貴女に払えるのかしら?」
「えっ、えっと……恵那には無理だから、夫になる王様に……」
「やだよ。制止の声が聞こえなかった恵那が悪い」
「はぅ!?」
「まあ、だから止めたのだけれど……何か文句があるかしら?」
「ないよ! ありがとうございました!」
「よろしい」
しかし、これで大体完成かな。神降ろしの方法もわかったし、楽しいゲームの準備はできた。後はどうするかだね。いや、決まってるか。
「んじゃ、恵那は帰っていいよ」
「え? 恵那ってこれだけの為に呼び出されてギリシャまで来たの!?」
「そうだよ。日本でまた会おう。ボクはこれからバルカン半島に祐理を取り返しに殴り込むから」
「えっと、それだと恵那は足でまといになっちゃうね」
「そうよ。だから、大人しく日本で待ってなさい」
「おばさんも帰宅するし、甘粕さんには携帯に連絡するように言っておいて」
「わかったよ。気をつけてね」
「ああ。リーゼロッテ」
「それじゃあ、殴り込みをかけましょうか。んっ」
リーゼロッテが身に宿る膨大な呪力を使って空間転移を発動させる。ボクはリーゼロッテに抱きついてキスをして舌を絡めながら一緒に飛ぶ。普通の魔術じゃボクには効かないけど、リーゼロッテのはランクAを超えているのと粘膜接触しているので問題無い。
到着してから色々と準備を行う。大規模な魔術を行うからこっそりと隠れて準備する。甘粕さんの技術が生きるよー。
更に数日が経ち、遂に儀式の日がやって来た。そんな訳で、ボクとリーゼロッテはヴォバン侯爵が儀式を行う屋敷の近くに有る建物の屋上にいた。
「それじゃあ、始めようか。やっちゃえ、リーゼロッテ!」
「はいはい……幻燈結界(ファンタスマゴリア)」
時間や空間、平行世界に干渉する事が出来る世界改変魔術……いや、魔法を発動する。平行世界の可能性を重ね合わせて新たなる世界を作り出せるこの魔法はリーゼロッテの無限とも言える呪力が必要だ。
「カンピオーネが二人いるわね」
「甘粕さんから連絡来た通りだね。いいよ、取り込んじゃえ」
「それじゃあ、楽しい宴を始めましょうか」
「楽しみだねえ」
世界が赤く染まり、頭上に存在する黒き月が怪しく光る。さあ、乗り込むとしよう。
「リーゼロッテ、行くよ! ボク達が来た事を派手に教えてあげちゃえ!」
「派手にね。いいわ、やってあげる」
リーゼロッテは手を上げて巨大な炎の塊を作成する。それはもう巨大で、数キロを燃やし尽くせる程巨大だ。
「ふふ、行きなさい」
放たれたそれは瞬時に屋根を破壊し、下にいる者達ごと呑み込んで燃やし尽くす。そのはずだった。でも、炎は燃え広がらず、一つへと収束していく。そこに居たのは大きな狼さん。そして、周りに恐怖で引きつる沢山の半裸の女の子達。
「貴様、姦淫(ルクスリア)の魔女か。何用だ? 儀式を手伝いに来たのか?」
「私は付き添いよ、ヴォバン」
「そうそう、用があるのはボクだよ、先輩のおじいちゃん」
ボクとリーゼロッテは空いた穴から飛び降りて、儀式場に入る。周りを見ると、祐理と一緒に青い銀髪の少女が居た。あれがリリアナか。いいね、持ち帰りしよう。いや、ヤリ捨てでもいいけどね。
「貴様は……そうか、新しいカンピオーネか」
「ピンポンポンポン大正解~!!」
両手を上げて声をたからに宣言しつつ、ペンダントから槍を具現化させて地面た柄を叩く。
「巫山戯た奴だな」
「理性なんて蒸発してるからね! それよりさ、何人の物を勝手に持ち出してくれてんの? 人の物を借りる時にはちゃんと持ち主に断らないと駄目だって習わなかったのかな? かな?」
「はっ、そんなもの習っておらんわっ!」
「にゃははははは、流石だねおじいちゃん!」
ああ、楽しいな。もう一人の役者も到着したようだし、ここで王様達の会談と行こうかな。みんな仲良く遊ぶ為にちゃんと相談はしないとね。交渉(物理)になる事は多いだろうけどね。