艦隊これくしょんのR-18な短編作品詰め合わせ 作:dn88k
真夜中だから当然なのだろうが、常夜灯だけが点灯しているその寝室は薄暗かった。
そんな中、ベッドの上で提督に組み敷かれて抱かれている艦娘が一人、矢矧であった。
「……ぁ。……ぁ」
突かれるたびに上がる、かすれるような小さな声。
両手を頭の上に持っていったままの彼女は苦痛を覚えている訳ではなさそうだが、その一方で興奮しきっているという訳でもなさそうだった。息こそ荒いものの、その表情は何か奇妙なものを見るかのような表情であり、提督の顔と、そんな彼と自分の結合部を全身を揺らしながらもゆっくりと交互に見つめていた。
やがて、そんな矢矧の目が大きく開かれ、顔を左右に振った。だが、何かを探しているわけではないようで、具体的に言えば困惑したかのような表情がその顔には浮かんでいた。
「……えっ? ……えっ?」
そんな声を発したその直後、彼女の身体は背を仰け反らせつつベッドの上で跳ねた。
「……はううっ! ふうっ! んううっ!」
身体の痙攣と共に声が出てしまう。一見苦しそうなその表情だが、口がだらしなさそうに開いていた。そして相変わらず、腰回りを中心に彼女の身体は跳ね続けている。
「んあぁ……ああぁぁ……」
身体の痙攣が収まっていき、矢矧の顔からは苦悶じみた表情は消えていくが、その代わりに不思議そうな表情が浮かぶ。しかし、それも束の間であり、
「うんっ!!」
という声が思わず出てきてしまい、彼女は目を強くつむる。提督が再び腰を振り始めたのである。
「俺も出すから、少し我慢してくれな?」
そう提督は言うが、再び目を開けた矢矧はそんな彼を荒い息を繰り返しながらただ見つめるだけだ。もしかしたら頷いたのかもしれないが、それは提督に肉道を突かれているせいで揺れている彼女の身体の動きに紛れ、判別はつかなかった。
「……っ。出る」
提督は腰を密着させた。そして、矢矧が感じ取ったのは自分の膣に埋まっている彼の肉棒が脈動する感覚と、下っ腹の奥底に何やら熱い物がジワリと広がっていく感覚であった。抱き付いてくる提督を矢矧は無言でそっと抱き返す。
やがて射精が収束したのか、ゆっくりと少しだけ上半身を起こした提督は矢矧の額にそっと口付けたが、彼女の表情にかすかに浮かぶ戸惑いのようなものが消える事はついになかった。
翌朝。室内には窓から新鮮な日の光が差し込んでいた。
矢矧は目を覚まし、ゆっくりと目を開けたものの、当初は視界に入ってくる情報に違和感があるだけで、そこが自分の部屋ではない事に気付くまでに、ほんの少しばかり時間を要した。
何故、自分がこんな所で寝ているのかなどと、寝起きでボンヤリとした頭を使って考えたが、それについてはすぐに回答を得た。昨晩、提督に抱かれた事を思い出したのである。
自分に被さっているタオルケットを掴みながら、そっと上半身を起こす。
すると、得体の知れない痺れが矢矧の全身を襲った。
「……ん」
次の瞬間、彼女はその片手で慌てながら自分の口をふさぐ。その口を突いて出た声が、自分でも信じられない程甘ったるいものであったからだ。だからなのか、心拍数も一気に引き上げられた。更に言えば、全身にも蕩けるような心地良い疼きが残っている気がする。
(何だったの、あれ……?)
もはや今の矢矧の思考を占めているのはそんな疑問であった。
とにかく、これまでの記憶に無かったような、正体不明の感覚を与えられ続けて、ひたすら困惑していた事だけはよく覚えている。一度、深呼吸をしてどうにか気持ちを少しばかり落ち着けた。その後、
(提督の部屋、のはずだけど……)
そう考えつつ、周囲を見回した。が、その動きも自分の横斜め下を見て止まってしまう。そこには未だに寝たままの提督がいた。
ただでさえ心拍数が安定していない状態なのに、彼の顔を見てそんな心臓がドクン、と跳ねる。
矢矧を動揺に陥れている張本人は、まだ静かに寝息を立てていた。対照的に息が荒いのは矢矧である。提督の顔を凝視しつつ、タオルケットを掴む手に力が入る。
(私、昨日、この人と……!)
もはや矢矧の心拍数は下がる事を忘れてしまったかのようだ。深呼吸する事すら忘れ、彼女は提督の顔を見ながら、ゴクリ、と生唾を飲む。
すると、しばらくして提督がもぞりと動き出した。そしてそのまぶたがゆっくりと開き、その瞳が矢矧を捉えると、彼は、
「ああ矢矧、おはよう」
とだけ、言った。
「……お、おはよう」
提督を凝視したままの矢矧はかすれた声でそう答えるのが精一杯であった。
「お、すまんな、起きるのが遅れて。朝飯だけ用意するわ」
そう言って提督は体を起こし、ベッドから抜け出した。矢矧は緊張したかのような奇妙な表情でそんな彼の背中をひたすら見つめ続けていた。
「あれ? もしかしてかなり不味いか、それ?」
提督がそんな事を聞いてきた。すると矢矧は慌てたように顔を上げて、
「い、いいえ! 普通に美味しいけど?」
と答える。
「ん、まあ、それなら良かったけど……何か考え込んでるみたいだったから」
と、心配そうに提督は言った。彼らの目の前にあるのは提督の用意した朝食。矢矧の食が進んでいないように見えた事が気になって提督が声をかけたのだろう。
(本当、美味しいのに、悪い事したわね……)
ひとまず矢矧は食事に専念する事にした。
やがて朝食を食べ終えて、食器類の片付けも終わった。もう上着だけ着ればいつでも出る事が出来る状態ではあるものの、矢矧がそばに居るからなのか、後は自分の始業時間になるまで提督はこの部屋で一息付くつもりでいるらしい。だが、当の矢矧の様子が不自然な事については触れようとしない。
「ねえ、何も聞かないの?」
矢矧の方から不安げに聞いてきた。
「言ってくれれば聞くけどさ。俺の方からあれこれ聞こうとするのは、な……」
そんな提督の発言を聞いた矢矧は斜め下に視線を下ろして何やら考え込んでいたが、やがて意を決したように、
「下世話な話になって悪いんだけど……」
と切り出した。
「うん」
提督は真っ直ぐに矢矧を見つめ直しながら相槌を打った。
「これを男の人に聞くのはおかしいのかも知れないとは思ってるの。……ええと、昨日ああいう事してたじゃない? あれって女も気持ち良くなるものなのかしら?」
そう聞いてくる矢矧の顔はすっかり赤面していた。提督は眉をひそめながら、
「もしかして、痛かったりとかそういうのあったか?」
と聞く。
「そんな事ない! 全然ない、んだけど……」
首を横に振りながらそう言う矢矧。どうやら彼女の中でも思考の整理が出来ている訳ではないようだ。
「んー、痛くなかったんなら一安心だけどな」
と、提督は言って一瞬だけ視線を逸らした後、更にこう続けた。
「悪いけど、今から俺が言うのはほとんど答えにはなっとらんよ? 女の感覚は流石に知りようが無いしな。ただ、あくまでも俺の場合はなんだけど、せっかく相手がああいう事に付き合ってくれてるんだから、きちんと相手にも良くなって欲しいってのはあるな。それで出来るだけ相手を気持ちよく出来るようにって気を遣ってはいるつもりだけど。ま、これはあくまで俺自身の中ではっていう自己満足的な話だし、流石に相手がそこをどう思ってるのかまでは知らんけどさ」
と言い、
「とりあえず自分だけ一方的に出して、『ハイ、お終い』ってのは俺も嫌だしよ」
と付け加えた。矢矧はこの一言が気になったらしい、先程の赤面した表情は影を潜め、代わりに彼女の顔に現れたのは若干の憂鬱さであった。
「……そういえば、提督は一方的ではなかったわね」
そう呟いた矢矧に対して怪訝そうな顔つきをした提督は、
「聞いちゃマズイかも知れん事あえて聞くけど」
と、前置きをした上で、こんな質問を投げかけた。
「俺の前の連中はそうじゃなかったって事か?」
それに対して矢矧はコクンと頷き、こう答えた。
「もう、出して終わり、だったかも。結構痛かったり、したし……」
「それはちょっと、な。別に矢矧は物なんかじゃねえのによ……」
提督はそう言いながら、痛ましげに矢矧から目を逸らした。
(そりゃあ気乗りなんかしない訳だ……)
矢矧が昨夜の事前にどんな様子だったかを思い出しながら、提督は心の中でそう呟いた。恐らく、矢矧が今まで付き合ってきた男達は、いざ行為に及ぶ段階になると自己中心的になってしまう輩ばかりだったのだろう。それ以外のシーンで彼らがどう矢矧と接していたかなど提督には知りようがないが、ことセックスに関しては彼女に対してトラウマ、もしくはそれに近いものを植え付けてしまっていた事だけは確かである。
(てか、よくヤらせてくれたよなコイツ)
提督はそんな事を考える。昨晩、自分の部屋に相手を誘ったのは提督だし、セックスのきっかけを作ったのも提督である。そんな自分の事だって怖かったろうにというのが矢矧に対する今の彼の正直な思いだ。
聡い矢矧の事。男の部屋に上がり込んだ時点でそんな行為も起こり得るであろうとは思っていたはずである。雰囲気的に断固として拒否しても構わなかったはずだし、仮にそうなったとしても提督からすれば悪く言うつもりなどない。事情を聞いた今ならなおさらそうである。
にも関わらず、矢矧は提督の事を受け入れてくれたのである。よくよく考えれば不思議な話ではあった。
そして提督自身、自分が矢矧に対してそんな仕打ちを全くやっていなかったなどと言い切れる自信など無いのだ。最中も何やら困っているかのような様子をうかがわせていたのも彼の中で引っかかっている点である。だから彼女に対してこう言う。
「辛いって時は本当にちゃんと言ってくれよな? まあ、元々無理にって話じゃないし、お前に嫌な思いさせるのは趣味じゃねえしよ。嫌なら嫌ってはっきり言ってくれると俺も助かる」
途端、矢矧は慌てたように、
「辛いとか嫌だなんて、そんな事は……!」
と言ってきた。提督との行為に悪印象が無かったようで彼としては安堵しているが、その時の矢矧には戸惑いもあるように見えた。しかし、その原因が何なのかについては流石に提督も分かりようがなかったのである。
それから数日が経った。表面的にはいつも通りに見える矢矧だが、その内面では自分の変化に対する困惑がずっと続いていた。
(どうしよう……)
何やら自分が浮ついているような気がして仕方がないのである。それは心だけではない、身体もであった。
提督に抱かれたあの日の事を思い出すという事も頻繁にあった。今までのセックスとはまったく異なった類のものであった上、それが以前は覚えていた不快さとは程遠かった事は彼女を混乱させた。提督が行為の最中も矢矧の事を丁寧に扱ってくれた結果だった事は辛うじて分かるものの、何故かそれで自分の肉体面にも変化が生じているような気がして仕方がない。
自分の内面に生まれたはっきりとしない霧のような感覚と感情を疑問に思いながら、矢矧は鎮守府の敷地内を歩いていて何となく顔を別方向へと向け、そしてドキリとした。
その視線の先にいるのは提督だった。彼は歩きながら時々書類に目を通しつつ、周囲の艦娘に指示を出していた。
そして、そんな提督がふと矢矧の方へと顔を向け、視線が合う。矢矧は思わず硬直してしまった。
しかし、彼は速やかにそんな彼女から視線を外し、そのままその場から立ち去ってしまった。
(なんで……)
と、矢矧は思った。これまでの経緯を承知した上で、自分に気を遣ってくれているのは分かる。だが、彼女は今までにない寂寥感を覚えるようになっていた。
そして、そんな寂寥感にとうとう耐え切れなくなったのだろうか、ある日矢矧は、
「ねえ」
と、後ろから提督に声をかけた。
「うん?」
提督はのんきに返答しつつ、振り返る。矢矧は少しだけ躊躇した後、
「その、ええと……今からあなたの部屋、良いかしら……?」
視線を逸らし、実に恥ずかしそうな表情を浮かべながらそう言う。一瞬、意外そうな表情を浮かべた提督は、
「あ、ああ……」
とだけ言って、不思議そうに矢矧の事を見つめるのであった。
「結構久しぶりね、この部屋」
矢矧は提督の私室を見渡しながら、言った。
「そういや、そうだな」
矢矧の後に入室した提督は後ろ手にドアを閉めつつそう答え、
「まあ、あの時一回来る前はそんなにここ来る事もなかったろ?」
と続ける。矢矧はしばらく黙っていたが、やがて、
「それでも、寂しくなる、みたい……」
とだけ、消え入りそうな声で言った。俯いているその顔もすっかり赤面しきっていた。
「あのさ、前のって嫌だったりしなかったのか?」
怪訝そうに提督はそう聞くものの、それに対して矢矧はゆっくりと首を振り、
「最初が怖かったのは確かよ。でも、全然嫌じゃなかったの。それで、今は無いとその、すごく、切ないような、そんな感じがするようになってて……」
と言って黙ってしまう。片手でもう片方の腕の肘を掴み、俯いたまま矢矧はそう言った。彼女は提督と二人きりで過ごす時間、もっと言えば、セックスする機会が欲しくて仕方がなくなっているらしい。それまでは嫌々相手の男の要望に応じていただけのはずなのだが、提督相手だとそうでもなくなっているようで、それはそれで不可解な現象ではある。
「そう、か……」
いまいち釈然とはしないものの、提督は矢矧が本気で性交を望んでいるらしいと分かり、それ以上の質問を打ち切った。
提督の勧めでシャワーを浴びた矢矧は、今同じくシャワーを浴びている提督の事を待っていた。バスタオルを体に巻き、ベッドに座って提督の事を待ち構える矢矧は緊張しきっていた。これからまたあの人に抱かれるのだ、そんな意識が彼女をそうさせた。しかし、彼女の内心ではその実、期待が大半を占めていた。心拍数が普段より高いのも前回と同じだが、今回は主に気分の高揚感がそれをもたらしているという点に違いがある。
(あの人、抱いてくれるのよね、私を……)
今思えば、あの時提督が自分に与えてくれた感覚は決して苦痛などではない。その対極に位置するものであるとも言えるのだが、残念ながら矢矧の身体はそれをはっきりと認識出来る程に感覚が育っている訳ではなかった。ただし、提督にもう一度抱かれる事で自分はそれまでのセックスでは感じ取れないような悦楽を覚える事が出来る。そんな確信が何となくあった。
「悪い、待たせた」
そんな声が聞こえたから、矢矧はその方角へとほっとしたような顔を向けた。そこにはタオルを腰に巻いているだけ姿の提督がいた。よくよく見てみると、そのタオルはテントを張ってしまっている。おそらくは矢矧との行為に期待して早くも興奮し、勃起してしまっているのだろう。
(私で、興奮してくれてるんだ……)
何故か、矢矧はそれだけでやたらと嬉しくなってしまった。
「良いんだよな……?」
「ええ……」
提督の問いかけに対しそう答え、顔を少しだけ上げてそっと目をつむる。そんな彼女の唇に提督のそれがふわりと重なった。その感触にうっとりとしかけた途端、にゅるりと生暖かい感触が唇を突破し、口腔内に何やら柔らかいものが侵入してきた。
(えっ……、これってもしかして……)
もしかしなくても、それはいわゆるディープキスと呼ばれるものであった。前回は提督が控えめな態度に終始していたから、経験出来なかったのである。矢矧は思わず混乱するが、相手の舌によってかき回される感触は予想外に心地良く、それだけで蕩けそうになってしまう。「んん、ふうう……」という声が思わず漏れる。やがて提督の舌の動きは矢矧の舌を誘うような動きへと変化してきたので、その動きに思い切って応じてみた。そして、ぎこちないながらも彼と舌を絡め合わせ、相手のザラザラとした感触を味わう。
(ああこれ、すごく素敵かも)
そう考える矢矧の心の中では、興奮と安寧とが両立している。いつの間にか、ごく自然に彼女の両腕が提督の背中に回されていた。
その後、矢矧は提督のリードの元、そっとベッドへと寝かしつけられる。そして、全身に愛撫を受け始めた、ここは前回とほぼ同じ流れである。違いとしては矢矧が柔らかい微笑みを浮かべていた事くらいだろうか。提督は彼女の愛らしさに耐えかねたのか、早速彼女の身体をその手でいじり回し始めた。
提督は意外とねちっこい前戯をするタイプなのかもしれない。乳房を片手で優しく揉みつつ、うつ伏せになった彼女の背中をもう片方の手で柔らかく撫で回す。その手練手管のせいで、矢矧にゾクゾクとした感触が走る。
「はあー……はあー……」
(これ、気持ち良くなって、る……?)
前回も似たような事をされたが、その時にはこの感覚の正体が快感であるとは分からなかった。どうやら彼女の肉体は性に関わる感覚を理解し始めているようだ。それだけではなかった。性感の中枢とも言えるその股間には刺激を求めるかのような感覚が宿り始めていた。直接触られた訳でもないのに、彼女の陰裂は粘液質の体液を分泌し始め、ショーツを汚し始めていた。
「これ脱がす、な?」
提督がそう言うと、矢矧のショーツがその体から引き剥がされてしまった。そして、曝け出されたのは愛液にまみれた彼女の女性器だ。ショーツにもべっとりと液体が染み込んでいるあたり、矢矧は矢矧で興奮しきってしまっていたらしい。
そんな彼女を見て、提督はそっと片手を彼女の股間へとあてがう。そして、ゆっくりとその中指をすっかり潤った矢矧の淫裂へと差し込み、丁寧にその内部をこねくり回し始めた。
「うああ、あ、あっ……!」
矢矧は声をあげる。その声は苦痛とは程遠い、とても甘ったるいもので、その表情も苦痛とは程遠いものであった。自らの胎内に潜り込んできているそれは、不快なものなどでは全く無く、自分自身の身体を内部からとろけさせてしまうような、そんな優しい動きであった。
「はああっ!!」
ベッドに置いてあった枕にしがみつき、その感触に耐える矢矧。極めて甘ったるく、刺激的であるものの、そこから退けば覚えるのは切なさだけであろう事が分かるだけに、彼女は提督の愛撫に必死に耐えた。更には、
(提督は、辛くないの……? アソコ、私に使ってくれても……)
と、そんな事を思い始めたところ、コロンと体をひっくり返され、仰向けにされた。彼女の視界に収まるのはいかにも余裕の無さそうな表情をした提督の姿であった。
「悪い。そろそろ、いいか?」
提督は切なそうに自分の陰茎を握りつつ、矢矧に問いかけた。矢矧にしても断る理由が無い。むしろ、これを再び味わいたいからこそ、この場にいると言っていい。
「ん、来て」
昂る心臓の鼓動を感じながら、矢矧はそっと足を広げた。あの時、提督が自身の内部に入っていた感覚の正体をもう一度知りたい。それは悪質なものでは決して無いはずだ。むしろ、自分を下らないくびきから開放してしまうような、そんなものであると予感させた。
提督はよだれを垂れ流し続ける矢矧の淫裂にそっと自身の先端を当てがう。クチュ、という音が静かに鳴った。提督を見上げる矢矧は不安そうな表情である。もしかしたら挿れてくれないのではないか、自身の内側は結局空虚なまま放ったらかしにされてしまうのではないか、そんな風にその目は訴えかけているようにも思えた。
が、矢矧の不安は杞憂であった。すぐさま提督の太く熱い肉棒が彼女の蜜肉をかき分けて侵入してきたからだ。
「あ……ああー……」
目を細めつつも、あまりの心地よさから思わずそんな声が出てしまう。目の前にいる男は提督だが、彼は今までの男とはあらゆる面で異なっているという事だけは断言出来る。そんな男の欲望の塊が自分の生殖器官を優しく押し広げながら侵入してくる感覚はある種の安心感さえ感じさせた。痛さを含め、苦痛のたぐいは全く無い。むしろ、心地よい圧迫感が矢矧の身体の内側で発生していた。
そして、彼女の腹部の最奥部に圧力が加わった。
「最後まで、挿った、な……」
提督は優しそうな表情で矢矧に向かって語りかける。深呼吸を繰り返している矢矧も何やら嬉しそうな表情を浮かべていた。
「ちゃんとしてると、こういうのってこんなに温かいのね……」
彼女はそう言う。変わった表現ではあるが、恐らくそれまでの苦痛を伴ったセックスと全く異なっている事を言いたいのであろう。
「動かしてもいいか?」
提督は矢矧にそう聞いた。彼女の膣内はなかなかに刺激的で、提督としてももっと味わいたかったのである。その事を知った訳ではあるまいが、矢矧は濡れた瞳と共に微笑んでコクリとうなずき、
「動いて? 私は大丈夫だから、最後までして、出して……?」
と言った。
そんな彼女をみた提督はゆっくりと腰を振り始めた。すっかり蕩けた彼女の蜜肉は提督の剛直を刺激してやまないものであったが、その一方で、提督の剛直もまた矢矧の蜜肉を刺激してやまないものであった。自身の肉壁を逞しく、優しく、揉み解すように擦り付けてくる提督の肉棒。奥にぶつかってくるその感触もまた甘美としか言いようのないものであった。
「はあっ……! はあっ……!」
その感覚に耐える矢矧は、
(何これ……!? 変っ……!)
などと考えていたが、これが性感、女が覚える快楽である事はうっすらと分かり始めていた。それに、目の前の提督の表情を含め、その動きを見ていると、自分がとても大切に扱われているという事を自覚すると共に、そのような形態の性行為であるからこそ、苦痛どころかそれとは程遠い感触を、今現在の自分は受け止めていられるという事を、彼女はようやく理解した。
だからなのだろうか、彼女の性感は急激に高ぶっていった。相変わらず膣内を擦り続ける提督のピストン運動。これが矢矧の肉壁を大いに刺激し、小刻みに痙攣さえも起こし始めていた。
「ああっ! あああっ……!!」
前回と異なり、悲鳴のような声を上げて悶える矢矧。そこに苦痛などは一切なく、提督のピストンをひたすら受け止め続けている。
これが快感であるという認識を持った今、そのままではいられなかった。とにかく身体を悶えさせるが、それだけでは足りず、ベッドのシーツを掴み、更には身体をのけ反らせて溢れ出んばかりの感覚を逃そうとする。
「はああああっ!!」
想定外の甘美な感覚にもはや彼女はポロポロと涙を流し始めていた。こんな経験など初めてである。しかし、提督のピストン運動はそれでも止まる事無く、更には以前少しだけ感じたような不気味で、そして甘美な感覚が自分の内側から湧き上がってきている事を自覚した。
「え、え? また、きちゃうっ!!」
すっかり冷静さを失ったかのような矢矧がそう叫んだ。前回の提督とのセックスで経験した、全身が痙攣してしまう現象が起こる予感を再び覚え始めたのだ。つまりは、オーガズムの予兆を捉えたのだが、今回は遥かに強烈なようで、高所から落下するかのような恐怖感が一瞬ながら伴った。
「あああっ! ねえ、怖いっ!! 来ちゃうのおっ!!」
矢矧は相変わらず涙を流し続けながら提督に訴えかける。だが、提督は矢矧の身体に何が起こっているのか分かっているらしく、
「大丈夫だからな。このままで、良いからな」
と言い、ピストン運動を続行した。
「ねえ、本当に良いの!? 良いの!? ……ああ、来る、来る、来るうううぅーっ!!」
そう叫んで矢矧はシーツを強く握ったまま思い切り背を退け反らせ、全身を激しく痙攣させた。全身の痺れだけではなく、まるで脳髄を叩くかのような感覚が矢矧を襲う。今までに覚えた事のない気持ちの高ぶりがそこにはあった。
「ああああっ!! あっ! あああああああっ!!」
矢矧はひたすらに、いつもならありえないような嬌声を上げ続けるだけである。そして提督は、
「……っ!」
堪えるように目をつむり、矢矧を力強く抱きしめて一気に精液を放出した。彼女のオーガズムによる強烈な締め付けに耐えきれなかったのである。
自身に覆いかぶさって荒い息を繰り返し、硬直しきった陰茎を自身の胎内で脈動させる提督。腹の奥底でジワリと広がる熱い感覚と、自分の膣を埋める肉塊が痙攣している事と併せて、矢矧は提督もが絶頂した事を知った。
(私が気持ち良くなって……この人が気持ち良くなって……)
そう考える彼女はかつてない多幸感に包まれながら、提督の体を抱き返した。
行為を終えた二人はまったりとした雰囲気であった。すっかり柔らかい表情になった矢矧は提督に向かって言う。
「こんなに気持ち良いものだったなんて知らなかったわ。てっきり相手だけが良いものだとばっかり……」
それに対して提督はゆっくりと頷き、
「お前の場合、今までがキツかったみたいだしな」
矢矧と同じく寝転んだまま、そう言って彼女の頭を優しく撫でた。それが心地よいのか、矢矧は目を細める。
そのうち、矢矧は体を転がせて、提督の体に抱きつくような姿勢を取った。そして、彼に対してこんな要望を出す。
「これからも、してくれないかしら? もっと、知ってみたくなったの」
矢矧の顔面にはうっすらと赤みがさしていたが、その目には熱のこもった期待感だけがあった。元々、初回からして抱きたいと思ったせいで自分から誘った経緯があるから、提督にしてみれば断る理由が無い。
「俺で良ければ、な。むしろこっちからお願いしたいくらいだ」
それを聞いた矢矧は嬉しそうに、提督に回している腕に力を込め、より強く彼に体を密着させた。
提督は鎮守府の食堂で夕食を摂る事も多い。そして、大抵はその周囲にも艦娘が集まってきて下らない雑談に花を咲かせるのである。
ただし、最近のちょっとした変化として、夕食時の食堂においても、提督の周囲に矢矧がいる頻度が上がってきている事は述べておくべきだろう。そして、今日もそんな日であった事にも触れておかねばならない。
無邪気な会話を繰り広げる艦娘達と、そしてそれに対してウィットを効かせた冗談を混ぜつつ、彼女達の笑いを誘いながらその場を自然と盛り上げる提督。その近くでは矢矧が優しい微笑みを浮かべながらそんな賑やかな集団を見守っていた。
「ところでなんですけどお」
今日そんな雑談に参加していた艦娘の一人がこう切り出し、矢矧を指差した。
「何だかこの人、色気っていうか、そんな感じみたいな雰囲気が出てきたと思いません?」
「……え?」
矢矧は発言した艦娘に不思議そうな表情を向ける。
「何だその元々は色気がねえみてえな言い方は」
提督は苦笑しながらそう答える。矢矧は不思議そうな表情を改めず、今度はそれを提督に向けた。
結局、「色気が出た」と言い出した艦娘の発言を否定する声は一切出なかった。矢矧に関する話題自体がすぐに止まってしまい、そのまま別の話題に移行してしまったから当然なのかもしれないが、しかし、矢矧自身にとっては不可思議な事この上ない。
やがて、姦しい会話にも一区切りが着いたという事だろう。その場にいた艦娘達は夕食後の休憩を取るべく次第にその場を離れて食堂を出て行った。
散開した後、提督もまた食堂から出て一息ついた。そばにいたのは彼の後をついてきた矢矧であるから、今は二人きりである。
「えっと、さっきの話ってどういう意味かしら?」
矢矧は戸惑ったように提督に聞く。
「うん?」
提督は矢矧の方を向いて訳の分からなそうな表情をした。どの話かと改めて聞いたのち、矢矧の色気に関する話題であった事が分かった提督は改めて苦笑いした。
「別にあれは変な話じゃねえよ。最初からお前は良い女だったって事。まあ、アイツが言いたかったのは仕草とかその辺りに磨きがかかって来たとか、そういう事じゃねえかな」
軽く笑いながら提督がそう答えた後、矢矧はしばらく黙り込んでいたが、やがて照れたような微笑を浮かべて、
「クスッ。それって多分、提督のせいなんだけど?」
と言った。
「ところで、ね……」
周囲に誰もいないからか、矢矧はそっと提督に寄り添って来た。
(今までのコイツなら有り得んな……)
などと、内心で矢矧にとっては結構失礼な事を提督は考える。そんな彼女は実に艶やかな表情を浮かべ、言った。
「今日は私の部屋、来てくれない? 今まで無かったわよね?」
「ん、そう言えば、そうだな……」
そう答える提督は表面にこそ出さないものの、こんな発言をした矢矧に驚いていた。最初の頃の事を振り返って見る限り、こう変化するなどとは思えない大胆さだ。おそらくは、彼女の部屋に入室してきた提督を、何も無しで帰す気など微塵も無いであろう。
(「色気が出た」とかいう話、実はこれか?)
突如として淫靡な雰囲気さえ放ち出した矢矧を見て、つい提督はそう思ってしまった。
そして、矢矧に案内されて彼女の私室に入室した提督。
(ふうん……)
彼はそう心の中で呟いた。その表面的な性格と部屋の置物の構成についてはそれほどズレが無いようだ。すなわち、矢矧は艦娘の中でもやはり硬派と言える部類に属するのだろうし、それが彼女の部屋にも現れていると感じたのである。しかし、可愛らしさを思わせるグッズなども少しではあるが置かれており、むしろそこに提督は安心感を覚えた。
しかしながら、いつまでも部屋の観察を続ける訳にはいかなかった。矢矧が抱きついてきてしまったからだ。
力強く抱きしめてくる矢矧に対して、提督は聞く。
「焦るほどじゃないだろ?」
しかしながら、それは矢矧にとっては適切な問いではなかったらしい。顔をあげた彼女の表情は情婦のようでありつつも、不満そうでもあり、
「……意外と分かって無いのね」
と言った後、提督を自分のベッドの元へと引っ張って行く。
そしてそのまま提督に対して力を込め、ベッドへと押し倒してしまった。見上げた提督が視界に捉えたのは劣情を顔面に表しながら自分にまたがる矢矧の姿である。もはや欲求に圧迫されてすっかり余裕を失っているのだろう事だけは提督にも分かった。そんな矢矧の顔が提督のそれに迫ってきている。そしてそのまま彼女は提督の唇を奪い、彼の口内に舌を侵入させた。
提督に覆いかぶさったまま、何度もディープキスをする矢矧。
「んぷ……。ふぅ……」
彼女は懸命に提督の口を吸い取ろうとしていた。舌を絡め合わせるのは矢矧にとっても心地の良いものらしい。しかし、それだけではもはや彼女は物足りなくなっていたようだ。相手の唇を開放し、体を起こした彼女は、
「強引なのは謝るわ……」
と言いつつ、またがったままで服を脱ぎ始める。
「恥ずかしいんだけど、何だか抑えが効かなくて……」
元々、矢矧はごく稀に茶目っ気を発揮して提督に軽いボディタッチを仕掛けてくる事が以前からあった。その程度であれば抵抗は無かったのだろうし、その手の行為に対する関心自体もずっと失っていなかったのかもしれない。しかし、それまでの不快な体験の記憶が強引に縛り付けていたせいでそこから先へは進めず、結果として禁欲的な生活を続けていた可能性はある。それを意図せず提督が解き放った今、これまで密かに貯めこまれていた欲求が洪水のように溢れて止まらなくなっているのだろうか。あるいはこれまではつまらないものだと思っていただけに、その反動が大きいのか。とにかく、今や彼女は提督との交合にすっかりハマってしまっているといっていい。
そのうち、大ぶりな乳房までもがプルリと露出された。その息は荒く、震える手で彼女は自身のショーツをももどかしげに脱ぎ捨ててしまった。もはや彼女が身に纏っているのはスカートと、片足ガーターだけである。
(苦手意識があるよりは積極的な方が良いよな……)
それまでずっと見上げ続けるだけであった提督はそう思った。以前の矢矧も魅力的ではあったが、性に対してすっかり大らかになった今の彼女はより魅力的だ。積極的な姿を見せるのが自分の前でだけだというのも良い。そんな彼女は焦り気味に提督のズボンのベルトを外し、すっかり硬くなった陰茎を取り出そうとしていた。提督も体を動かし、ズボンとトランクスを脱いで矢矧の動きをサポートする。
そして提督の剛直が室内の空気に晒された後、矢矧は全く余裕を失ってしまったかのような表情で、その剛直を片手で掴み、彼を大きく開いた目で見つめつつ、
「もう挿れちゃうっ!! 挿れちゃうからね!?」
と、叫ぶように言った。提督はと言えば、そんな彼女が相変わらず愛おしく、素直にうなずくだけである。
ふうふう、と荒い息をつきながら焦るように提督の剛直と自身の淫裂の位置を合わせ、彼女は一気に腰を沈み込ませた。
「はああああっ!!」
嬌声をあげ、腰をのけ反らせる矢矧。その内部も効果的に提督のペニスを刺激し、射精を積極的に促してくる。どうやら矢矧は、表面的には堅物に見えたが、一皮剥ければ男を搾り取るような、そんな子であったのかもしれない。
「本当、男好きのする身体してるよなお前って」
提督はついそんな事を言ってしまった。
「変な事言わないでっ!! 私、そんなつもりはっ……!!」
尻軽と思われたのかも知れないと不安になったのだろうか、彼女は悦楽にまみれた表情を崩す事が出来ないながらも、
「あなただけっ!! あなただけなのっ!!」
と、上下運動を繰り返しつつ、必死そうな声で提督にそう言っていた。
その上下運動は矢矧にとって初めてのものであったと同時に、非常に刺激の強いものであったようだ。ヒイヒイとうめく彼女は必死に体を上下に動かしていたが、すぐに限界が訪れたのであろう、突如として、
「ああーーーっ!!」
と叫び、背をのけ反らせてその身体を痙攣させ始めた。提督の剛直を包み込む肉壁もギュウギュウと不規則に締め付けていた。
「ああ……あー……ああ……」
焦点の合わない視線で宙を見つめている矢矧。やがて彼女は一息ついたのだろうか、ゆっくりと体を前に倒し、再び提督に対してディープキスをする。
「んぷ……ん、んうう……」
提督の唇を貪るように吸う。
やがてそっと顔を離し、提督を見つめるが、やはり矢矧の視線の熱さは全く衰えていない。ただし、無理やりしてしまったという後ろめたさはあったのかもしれない。
「ごめんなさい……無理矢理過ぎたわね……」
と、そう矢矧は言うが、別に提督にしてみれば気にするような事ではない。懸命に自分を求めてくれる相手に対して愛しさを覚えると共に、更に快感を与えたらどうなるかを試したくなった。
「気にしないでいい。相手が欲しくなるのは俺も同じだからな」
と言って、今度は提督が下から腰を振り始めた。矢矧はその衝撃のせいでパニックに陥る。
「いやああああっ!! いやああっ!! いいっ! これ、いいいっ!!」
矛盾した叫び声を上げる矢矧。今は提督が抱きしめてきているせいで上半身を起こすことが出来ない。
しかし、下半身を振る事は出来た。提督とリズムを合わせて腰をぶつけ合う。
提督の剛直と矢矧の蜜壺は息の合ったピストン運動を繰り返した、その度に甘美な信号をその神経は発信した。特に、既に一度絶頂を迎えて感度が上がってしまっている矢矧の神経が発するそれはより強力であったのだろう。
その間も矢矧は熱い視線を提督に送っていたが、それだけでは物足りないのか、頻繁に彼の唇に吸い付いていた。
「んっ……! んっ……! んっ……! んううっ……!」
顔を離せば足りなくなった酸素を補いたいのか、ぷはっ、という呼吸音が聞こえるが、彼女が提督に熱い眼差しを送り続けているのは変わらない。
「はっ……! はっ……!」
矢矧は懸命に腰を振っているが、その表情はすっかり蕩けてしまっており、甘い声さえも抑える事がままならなくなってしまっていた。それも当然なのかもしれない。以前とは異なり、矢矧の肉体は勃起したペニスを自らの陰唇に挿入される事が快感であると学習してしまったのである。単に挿入されるだけでなく、膣壁を擦られ、揉み解され、その奥を叩かれ、圧迫される事もまた同様であった。それら全てを網羅する提督の動きは、すっかり目覚めてしまった矢矧の性感をとことん刺激し、彼女自身を悦楽の極みへと追い込むのに十分であった。
「ねえっ! イキそうなのおっ!! 一緒にっ!! 一緒にいいっ!!」
突如として、提督にしがみつきながら矢矧は叫んだ。そして、矢矧のピストン運動が数往復した後で突然停止し、彼女の身体が激しく痙攣し始めた。
「ああああっ!! あああああああっ!!」
全身を強くひくつかせつつ、野太い嬌声を上げる矢矧。そしてその淫道も同様に強烈な収縮を繰り返し、提督の灼熱の棒を一気に解放へと導いた。提督もその誘いに従い、彼女の蜜壺奥深くに自身の肉棒を完全に差し込んで密着させ、あとはその生理に従うままとなった。
ドプリ、ドプリと矢矧の子宮へ濃い生殖液が流し込まれていく。彼女に粘液を放つ提督の息も乱れていた。
女としての矢矧を喜ばせる事が更に一つだけあった。それは相手の男、すなわち提督を射精させ、彼に快感をもたらした事である。呻きながらも自身の胎内に粘液を放出する提督の姿は彼女にとってとても可愛らしく感じられ、これまでに感じた事の無い充実感をもたらした。
上半身を起き上がらせた矢矧の顔には何故か一筋の涙がその頬を伝っていた。彼女自身もそれには気付いていたらしく、手でそっと涙を拭いながら、
「……情けないわね。気持ち良いせいで泣いちゃうなんて」
と、実に嬉しそうに言った。
その日の行為そのものは一度で終わったが、矢矧の昂った感情はすぐには冷めなかったようだ。行為が終わっても愛おしげに提督にキスの雨を降らせ、まるで甘えるように抱きつくという事を繰り返した。
その後ようやく提督を解放したが、彼は別に不快でなかったようで、矢矧の頭を手のひらでポンポンと軽く叩いた後で、「良かったらまた誘ってくれ。俺から誘うかもしれんけどな」と笑いながら言って部屋を去っていった。
振り返ると、そこにあったのは一連の激しい行為でシーツ類が乱れたベッドである。
取り替えないと、とは思って手をつけたものの、シーツを交換するのが少しだけためらわれた。そのシーツには提督の汗の匂いが染みついているはずだからである。
「ちょっとだけ」
ポスンと矢矧は自分のベッドに倒れこんだ。
(ああ、やっぱりこの匂いって……)
どうにも名残惜しいが、そのままだと興奮で眠れなくなる気がしてしまい、自分はそんなタイプだったかと矢矧は内心苦笑した。
その後の矢矧はごく当たり前のように提督の私室を訪れるようになっていた。
この日、窓の外を眺めながら、矢矧はけだるそうにこう言った。
「いい加減、雨もうっとおしいわね」
ここ数日は、雨天がダラダラと続いていた。そんな天候に嫌気がさしてしまうのは別に彼女だけではなかろう。
「まあ、な。前線がかぶったまんまらしいからな」
提督も矢矧の言葉につられて窓の外へと視線を向け、つまらなそうな表情を浮かべた。
「部屋干しだと臭い付くから嫌なんだけど……」
ボソっとそんな愚痴をこぼす矢矧。
「ああ、その手の消臭に使えるヤツがあるから持っていっていいぞ?」
提督はそんな台詞を口にした。矢矧は意外そうな顔で、
「え、本当?」
と聞いてくる。提督は部屋のクローゼットを指差し、
「そこの中に戸棚あんだろ。どっかの引き出しに入ってると思うけど」
と、目の前の雑誌に視線を落としたまま、そう言った。
「そう?」
矢矧はクローゼットを開けてその中の引き出しを次々に開けていく。と、ある引き出しを開けた途端、彼女は一瞬フリーズし、そしてゆっくりと閉めてしまった。
流石に異常を感じたらしい。提督は顔を上げ、矢矧に視線を向けてこう質問した。
「なんかあったか?」
それに対して矢矧はしばらく黙り込んでいたが、やがて、
「おもちゃみたいなのが、入ってたの。多分、エッチな事に、使うものだと思うんだけど……」
と、か細い声で答えた。それを聞いて提督は青ざめる。
(やっべ! 前の彼女と冗談で使ってたやつ……!)
どうやら彼はセックストイの類を前カノと別れた後もまともに整理せずに、棚の中にしまってそのままにしていたらしい。そしてそれを矢矧が発見してしまったという訳である。
流石に気まずくなって矢矧から顔を背ける提督。もはや今の彼にとって、矢矧は一人の女の子として最優先すべき存在である。そんな彼女に軽蔑されるとなればそのショックは計り知れない。不安に満ちた状況の中、どう言い訳しようかと考えていると、矢矧はこんな事を言い出した。
「……ねえ、こういうのってどうやって使うの?」
提督は意外な面持ちで思わず振り返る。やらかしたという表情の提督とは対照的に、いかにも興味津々いった様子の矢矧。
「バカにしねえの?」
「ううん。それよりも、なんだか面白そうって思ってるわ」
期待感に満ちたような表情で矢矧はそれらの道具を手に取っていた。
「これがどうなるか分からないのだけど……」
「あ、ああ……」
矢矧が最初に関心を示したのはローターである。元々性知識があまり無いであろう彼女の事。そういった行為に使う事自体は予め推測がついていたのだろうが、コードに繋がれた楕円状の代物が具体的にどう使われるのかまでは把握していなかったのだろう。
「ええとお前、今は胸出せるか?」
提督は不安そうにそう言った。
「……? それは、構わないけど……」
既に何度も提督と体を重ねているとは言え、乳房を晒すのには流石に照れがあるようだ。ゆっくりと上着をたくし上げてブラのフロントホックを外し、その豊満なバストを露出させた。
「…………」
恥ずかしそうにしながら自身の乳房を丸ごと、自分に向けてさらけ出しつつも、ほのかな笑顔を浮かべてこちらを見つめてくる矢矧に気まずさを覚えつつ、提督はローターのスイッチを入れる。
振動音が静かに響くが、うるさいという程でもない。そんな物体を彼女の露出した乳房にそっと当てる。
「……っ!」
矢矧はピクンと反応する。乳房の辺縁部でさえこれである。その中枢に押し当てたらどうなるか。
「先の部分、当てるな?」
提督がそう矢矧に確かめると、彼女はコクリ、とうなずいた。そして、振動を続けるローターが矢矧の乳首に接触する。
「ひゃうっ!!」
思わず矢矧は声を漏らしてしまう。その振動は極めて刺激的であった。
その後はゆっくりと乳首の周りにローターをなぞらせる提督。矢矧の先端はすっかり硬く勃起して凝り固まってしまっていた。
「まあ、こんな感じだ。そういうもんだと思ってくれ」
提督は恥ずかしいのか、どこか投げやりな印象を与える口調でそう言った。しかし、矢矧の性的な知識欲はそれだけでは満足させられなかったのであろう。彼女は続いて、こんな事を言い出した。
「うん。ええと、それからもう一つなんだけど、これね。これは、どういったものなのかしら……?」
彼女の手にあるのは男性の陰茎を模した物体、俗に言うバイブであった。
「お前使い方、分かってないか?」
流石に提督は呆れ顔でそう言う。形状からして何かなど分かりそうなものである。
「ええ、なんとなくは。でも、二人で使う事だってあるのかなと思って。その使い方を教えて欲しいの」
この時ばかりは少々気まずそうな表情を浮かべていた矢矧だが、その目は相変わらず期待感で満たされていた。
「……いいのか?」
「ええ」
提督の問いに即答する矢矧。提督は矢矧の足に触れ、それをそっと開かせる。今日の彼女はミニスカートである。プライベートでもこんな服を着用するようになったのは最近になってからのことであった。スカートのみならず、最近の矢矧は提督の部屋を訪れる際、私服の場合でも露出の多いタイプの物を着用してくるケースが増えている。それが故意かどうかまでは提督には分からない。
開かれた足から覗くのは少しばかり派手なデザインのショーツ。ブラもそうだったが、普段の彼女はこんなものを着用しているのだろうか。ともあれ、提督はそのクロッチをずらして、バイブのスイッチを入れ、振動を開始したその先端をそっと彼女の蜜肉の入り口にあてがう。
「はああっ……!」
矢矧は実に心地良さそうに声を上げた。ゆっくりと目を開けた彼女は更にこう言った。
「これって、中に入れるものよね? その時の感触を知ってみたいのだけど……」
それに対して、提督は無言のまま、矢矧の膣内にバイブを挿入させた。この時点で、元々彼女の陰唇がすっかり潤ってしまっていた事もあり、提督も挿入に手間取る事は無かった。
バイブが矢矧の奥深くまで達する。
「はあ……みんな、こういうのを使っているのかしら?」
両足を両腕で抱え、M字開脚になっている矢矧は提督に問う。
「んー、まあ。追加の刺激として楽しんだりするのはいると思うぞ」
そう答え、「後は、相手の反応を眺めたい時とかな」と言いながら、提督はバイブの振動の強度を一気に最大にした。
「…………っ!!」
矢矧は声にならない悲鳴を上げてその背筋を思い切りのけ反らせる。
「気持ち良さそうだなあ」
提督は全身をひくつかせ、ひたすらにくねらせる矢矧の様子を見ながら、そんな感想を漏らす。確かにバイブによる刺激は極めて心地が良い。しかし、矢矧にとって、機械で与えられるその快感には、決定的な何かが欠けていたように思えた。
「はっ……! はっ……!」
バイブを引き抜かれた後も下腹部をうねらせながら荒い息を繰り返す矢矧。
「まあ、こういうもんだ。色々楽しみたいってタイプにはいいんじゃないか?」
そう言って提督はこれらの道具を再びしまい始める。あまり矢矧には使いたくないし、どうせだからこの際捨ててしまうか、などと提督は考えていた。
そんな時、彼の背中に柔らかくて温かい感触が伝わってきた。矢矧が提督に抱きついてきていたのである。
「気持ちいいのは、分かったわ……でも、足りない……」
矢矧は震えながらそう言う。提督が首を振り返らせたまま無言でいると、彼女はゆっくりと手を伸ばしてきて提督の股間に触れる。
「ねえ、硬くなってるじゃない。辛いと思うんだけど?」
提督は少しばかり緊張したように言う。
「いいのか?」
「ええ、オモチャも悪くなかったけど……」
矢矧にそう言われた提督はゆっくりとその服に手をかけ、脱がせ始めた。その最中の矢矧はその顔に赤みがさしていたが、それ以上にこの続きを待ち望んでいるような印象を提督に与えた。
提督自身も服を脱ぎ終わると、手を引っ張られ、矢矧に覆いかぶさる形になってしまう。
「お互いに準備出来てるんだし、ね?」
そう言って彼女は早速結合を促す。もはや完全なるおねだりと言ってもいい。提督は我慢しきれず、そのしとどに濡れている淫裂に自身の剛直を一気に叩き込んだ。途端、矢矧は実に嬉しそうな嬌声をあげる。
その日の交合はいつも以上に矢矧が甘えるようなものとなった。キスの回数も多く、下側から抱きついてきて、なかなか提督を開放してくれなかった。
結局、生身のセックスがやはり自分には一番合っているようだ。ようやく行為が終わった後にそう思いつつも、道具と組み合わせたらどうなるかと想像せずにはいられない矢矧であった。
それからしばらく経ったある日の夜、暗い室内で矢矧はベッドの上に一人寝転がっていたが、何やら様子がおかしい。
「ん、ん、んうぅ……」
そんな声がその口からは漏れ出している。そして、太ももは閉じられていたものの、何故かショーツが股間の下付近まで降ろされていて、足の付け根には両手が挟まっていた。更には上着がめくり上げられ、彼女の豊かな乳房が露出されている。
「は、あう、うう……」
太ももに挟まった両手が彼女の股間を撫でるかのように弄り回していた。やがて、
「はっ! はっ! はああっ!」
と、彼女の声が余裕の無いものに変化していき、そして突然、
「んうううううぅっ!!」
と背をのけ反らせた。ゆっくりと体をひくつかせる矢矧。それも収束すると、彼女はベッドに身を沈める。
「はあ……」
深くため息をついた後、ゆっくりと目を開ける。快楽の余韻に浸っているように見えるが、その一方でどこかつまらなそうにも見える。
「うーん……」
自分の左右の手を目の前に持ってきてそれを眺めながら、矢矧は小さく唸り、少しばかり不満そうに首をかしげた。
その翌日、艦隊が帰投して来た。各鎮守府が連携し、広域に渡って展開する深海棲艦を数日をかけて掃討するという作戦が実施されていたのである。この鎮守府が出撃させた編成もかなりの大規模であった。艦隊の規模が規模だけにその指揮は提督が直接採り、鎮守府を空けていた。反対に、矢矧は出撃前の哨戒活動において不覚を取ったのか、深海棲艦の砲撃で被弾してしまい、万全を期したい提督が残留を指示した為、結局作戦には参加出来なかった。従って、この二人はその間、全く顔を会わせていなかった。
「損害の大きいヤツからドックに入れ。入るヤツは報告書は後回しでいいぞ」
提督が指揮下の艦娘達に指示を飛ばしていた。その動きはかなり慌ただしく、とりあえず迎えに出た矢矧が出来るのはそれを遠くから眺める事だけである。
しばらくして、ドックへの入渠なり、報告書の作成や休憩なりでその場にいる人数も減っていった。幸いにして轟沈した者は出なかったようだ。元々提督は拙い戦いをする人間ではないので、この結果自体は当然ではあるのかもしれないが。しかし、そんな彼は怪訝そうな顔付きで旗艦の艦娘を含む複数人と話し合っていた。
「ああいうのってあの辺りいたっけか? あんま見ないタイプなんだよなあ……」
その後もしばらく議論が続いたが、提督は、
「ちょっと資料室行ってくるわ。お前らも休んどけ」
と言って歩き出した。訝しげな表情で見ていた矢矧は慌ててその後を追う。ただし、その距離は提督とは妙に開いていた。どうも彼が少々殺気立っているような気がして、いきなり話しかけるのがはばかられたというのもある。
提督が資料室に飛び込むように入室したのを確認した後、そのドアをコッソリと開け、左右を見る。姿は見当たらず、どうやら彼は室内のかなり奥の方へと移動しているのだろうと判断し、自身もそっと入室してドアを閉め、そして念の為に鍵をかけた。
足音を立てないよう、探るようにゆっくりと室内を歩いていると、とある書架の前で提督が何らかの資料を引っ張り出し、それを眉にシワを寄せながら読み込んでいる姿を見つける。少々その姿が怖かったが、何らかの衝動が自身の中に湧き上がり、それに耐えきれなくなった矢矧は思い切って提督の元へと近づき、声をかける。
「……ああ、矢矧か」
振り向いた瞬間、一瞬だけ険しい顔を見せた提督は、すぐにいつも自分に向けてくれている穏やかな表情に戻った。
「何か、作戦中に不味い事でも起こったの?」
矢矧は不安そうに言う。
「うん。このあたりじゃ見ないような深海棲艦見つけてよ。みんなも同じような事言ってるし、ひょっとしたら新型かなとも思ったんだがな。ただ、別の海域で似たようなヤツの目撃例があったの思い出したから、それで対策組めねえかなって今調べてるとこ」
「私にも手伝えるかしら?」
それを聞いて意外そうな表情をしたのは提督である。
「いいのか?」
「私の不手際のせいで艦隊のメンバーに穴が開いてしまったんだもの。これくらいは手伝わせて頂戴」
柔らかい微笑みで矢矧は言った。
「やっぱり、これが一番近いのかしら?」
矢矧がある資料を持ち寄って来て提督に見せる。提督はそれを睨むように見つめていたが、やがて、
「うん、武装的にもそれかもしれんな。後は撮影した写真とそれの内容を横展開して、上に報告上げれば一区切りだろ」
提督はほっとしたようにそう言った。そして、その場に置いたパイプ椅子に座り込む。
「今日は落ち着いて寝られそうだな。矢矧のおかげだ」
「別に私は少し手伝っただけよ?」
提督の隣のパイプ椅子にゆっくりと座った矢矧は穏やかにそう言い、提督からはもはや剣呑な雰囲気が消え去っている事が分かると、そっと彼の体にしなだれかかった。提督は一瞬ピクリとし、意外そうに矢矧の方を見る。
「ごめんなさい、数日離れただけなのにね……すごく寂しかったの」
そう言って矢矧は提督の片腕を自身の両手でそっと掴む。更に、彼女はその状態で提督によじ登るようにして、そっと耳打ちする。
「寂しくて辛かったわ。だから……」
そこで矢矧の言葉が途切れた。
「その、だから……」
だから何なのか、提督が次の言葉を待っていても、どうも矢矧から感じ取る事が出来るのは何らかの迷いである。なので、自分から聞こうかとも思ったその次の瞬間、彼女はこう言ったのである。
「だから、昨日初めて一人で、したの……」
少なくとも提督にとって、この矢矧の発言はかなりの衝撃であった。彼女は提督の事を想いながら自慰行為に及んだ事を白状したのである。大体、それまでの経緯から禁欲的な生活が長かった矢矧が自慰行為に及ぶ事自体驚くべき事だ。更に、こんなところでそんな事を提督に告白しているという事は、すなわち提督に性行為の相手をして欲しいと暗に言っている事を意味していると取られかねない。実際、彼女は提督とのセックスを欲していた。
「いきなりこんなこと言われても、困ると思うんだけど……」
ほんの少し提督から離れ、いかにも怯えた表情の矢矧。こんな所まで追いかけてきてセックスをおねだりしている自分に罪悪感を覚えているのかもしれない。俯いている矢矧に提督の手が伸びてくる。矢矧は縮こまっていたが、その手は彼女を害するものではなく、その頭を優しく撫でるものであった。
「……?」
顔を上げた矢矧の視界が捉えたのは、優しい表情で自分を見つめる提督の姿であった。
「すっかり可愛くなっちまったな、お前な」
「え? 可愛い……?」
暗い表情から一転して、意外そうな表情を浮かべる矢矧。自意識としては良く言えば武人肌、悪く言えば堅物で、とっつきづらい女、そんな風に捉えていたのだから意外という他あるまい。
「相変わらず自覚に乏しいな。お前は元々可愛いんだよ。じゃなきゃ俺が『抱かせてくれ』なんて言い出す訳ないだろ?」
提督は苦笑いしている。矢矧は一気に顔が熱くなったが、だからといってそれで引き下がる事などもはや心も体も許してくれそうになかった。
「だったら、証明して欲しいんだけど……」
矢矧はそう言うしかなかった。そんな彼女に提督は優しくキスをする。
チュッ、チュッ、と、唇を吸い合う音が二人きりの資料室の片隅に響く。服の上からではあるが、ギュッと胸を掴まれた。
「ふっ……!」
もはやこの時点で矢矧の身体が覚える感覚は甘美である。提督はそのまま手を下に降し、彼女のスカートの中へと侵入させ、更にはショーツのクロッチ部分をずらして潤んだ女陰に触れた。
「はうぅ!!」
すっかり敏感になってしまっていた自分の身体に驚く。もはや彼女は提督に飢えているとしか言いようがない。
そしてゆっくりと陰唇を撫でられ、そこから発生する快感にいよいよキスも覚束なくなる。続いてすっかり興奮して膨れ上がった肉豆を優しく掴まれた。
「〜〜〜〜っ!」
電流のような刺激が全身を走り、思わず腰が引いてしまい、座っているパイプ椅子がガタリと音を立てる。それでもどうにか提督にしがみつくようにしてキスを継続していると、今度は既に欲情しきって濡れてしまっている矢矧の淫道に指が侵入して来た。
「はああぁっ!」
とうとう矢矧は提督とのキスを放棄して背をのけ反らせてしまった。
劣情に駆られてすっかり淫靡な粘液を吐き出すばかりになってしまった矢矧の蜜壺。しかし、提督はそんな蜜壺を更に解きほぐすように指で丁寧にこねまわす。
「ふうぅ……! ふあっ……!」
矢矧はパイプ椅子の背もたれにだらしなくその背を預け、足を広げて提督の愛撫を受け入れるばかりになっていた。彼女の女性器に潜り込んでいる提督の指の動きは絶妙で、巧妙にその肉壁を刺激してまわり、前日のオナニーですら得られなかったような快感を発生させていた。そして、だらしなく開かれた彼女の足の内太腿の筋肉は時折痙攣を発生させている。
だが、矢矧もやられてばかりというわけにはいかない。快感に占められる意識の中、手を伸ばして提督の股間に触れる。そこはすっかり臨戦態勢を整え終えていた。
「…………っ!」
提督の行動が止まった。
「ね、え。もう、辛いん、じゃない?」
矢矧は提督の剛直を撫でながら言う。
「私に、使ってくれない、かしら? ううん、使って、欲しいの。はしたなくなった私を、使って……!」
苦しげに自分を見つめてくる矢矧のこの言葉がきっかけとなったのだろう、提督は立ち上がり、彼女もゆっくりと立たせた。快感を与えられ続けたせいだろうか、歩く際もフラフラとしてしまっている矢矧をエスコートし、書架に手をつかせる。
すっかりと劣情に駆られてしまった表情の矢矧が振り返ると、そこにはズボンのチャックを下ろし、力強く逞しいペニスを取り出す提督の姿がある。アレがまた、ようやく自分の中に入って来てくれるのだ。そんな期待感で矢矧の興奮は更に高まった。
提督が矢矧のショーツのクロッチ部分を再び横へとずらした。もはや脱がす事も無くそのまま挿入してしまうつもりだろう。
矢矧の陰唇に何らかの熱いものが触れる。おそらくは提督のペニスの亀頭だ。その亀頭が矢矧の敏感な割れ目をなぞるようにゆっくりと上下していたが、彼女にとってこの状態は実にもどかしいものである。
(酷い事しないで……! 早く……! 早くっ……!!)
立ちバックの姿勢のまま提督の侵入を今か今かと待ち構える矢矧。
そして、次の瞬間、高い温度を伴った何かしらかが矢矧の肉壁をかき分けつつゆっくりと侵入して来た。その壁が擦られ、内側が広げられる甘美な感覚で彼女の身体はまた反応し、
「あああぁ……っ!」
と、思わず喜びの声が出てしまう。
「嬉しい……やっと来てくれた……」
静かに呟く矢矧。
「俺だって欲しかったんだからな。誘われて止まれる訳ないだろ」
そう言って提督は腰を振り始めた。
「あんんっ!! あんっ! あんっ!」
ピストン運動に応じて矢矧は声を上げ始める。
爪先立ちで尻の位置を上げ、提督の剛直を受け止める矢矧。彼の欲望を表す肉柱は彼女の濡れきってよだれを垂らす蜜穴を容赦無く蹂躙した。淫裂の内側にある壁を擦られ、奥を突かれて、自分の中をかき回され続けるその感覚はあまりにも強烈で甘美であった。久しぶりなせいだろうか、その感覚はいつもより鋭くなっているような気がして、だからこそますます気持ち良くて、それを全身で受け止める矢矧はむせび泣きそうになってしまう。
「ああーっ!! あっ! あっ!」
狂悦の中、矢矧は大きく口を開けて奥を突かれるたびに首を振り、甘い声を上げる。そこで一旦ピストン運動が止まった。
「うんん……?」
悩ましげなうめき声を上げて、後ろを振り返ろうとする矢矧。提督は手の位置を矢矧の腰からずらし、胴の辺りへと移動させて、彼女の身体を起こした。荒い息を繰り返す矢矧は一見すると苦しそうだが、提督が口を近づけてくると素直に口付けに応じた。しかも、ほんの少しだけ舌を伸ばして相手の唇を舐めとっている。今の矢矧は提督の感触一つ一つを懸命に感じ取ろうとしているのかもしれない。彼が腰の動きを止めてしまったのが物足りないのか、今度は矢矧が微妙に腰を動かしていた。
「うん……うん……」
矢矧の艶かしい声がその唇から漏れる。彼女のその表情はうっとりとしたものとなった。それから唇が離れ、二人の視線が合う。矢矧の潤んだ瞳はすっかり相手の虜になりきってしまった者のそれであった。
「続き、するな?」
そう提督が言うのに対し、矢矧は嬉しそうにコクリ、と頷いた。
提督のガイドに従い、再び矢矧が背面立位の姿勢を取ると、提督はゆっくりと腰を引き、そして一気に矢矧の最奥部にその剛直を叩き込んだ。
「ひっ!!」
思わず悲鳴を上げる矢矧。しかし、それは苦痛のせいではなく、快感のせいであった。提督は続けて、二撃目、三撃目と剛直の突入を繰り返す。
「ああっ!! 激しっ!!」
実際、そのピストン運動はいつもよりも力強かった。再び尻を上げた矢矧はその衝撃と、それによって発生する快感に耐え続ける。
両腕の手と肘を書架に当てて、襲い来る背後からの快楽に懸命に耐える矢矧。スカートをめくり上げた尻からは皮膚同士がぶつかるパチン、パチン、という音が小気味良くひびき、発情により完全に熱を帯びた陰唇はグジュグジュという音を立てながら白みを帯びた愛液を垂れ流し続けている。劣情を示す粘液は矢矧の内股だけでなく、床にもこぼれ落ちてそれらを汚した。
そして、背後から聞こえる提督の息づかい。荒い息を繰り返しているのは矢矧と同様だが、彼のその呼吸音にも快感による甘さがある気がして、それもまた矢矧に喜びと興奮を与え、更には快感をも増幅させた。
自分に突き刺さって暴れ回る凶暴なペニスは自身の胎内の至る所を刺激してまわり、そのことごとくが甘美で刺激的で、中毒性のある感覚を発生させている。その感触は彼女の内側のみならず、気怠く蕩けそうなものとなって下半身全体を侵食し、もはや自分の力で立っていられるかどうかですら自信が無くなって来てしまっていた。
と、そんな時、矢矧の中によく知った感覚が湧き上がってくる。そう、絶頂の直前に覚える、恐怖にも似た感覚。同時に、いつもの絶頂ではないかもしれない、そんな予感をも覚えた。
(ああ私、この人に出会えて良かった……)
心のどこかでそんな事を考えつつ、矢矧は背を大きくのけ反らせ、甲高く長い嬌声を発してエクスタシーに達した。
「ふう、ふう……」
その身体の痙攣はようやく落ち着きつつあった。陰唇には提督の力強い肉棒が突き刺さったままであり、膣肉と肉棒の隙間からは矢矧自身の濃厚な愛液と共に、提督の精液も染み出している。
書架につく手に力を込めて、繋がったまま、どうにか体を起こす。そして矢矧はゆっくりと振り返り、
「着たまま後ろからってのも悪くないわね」
と、蕩けながらも嬉しそうな表情で言い、提督の頬を撫でた。
「ずいぶん変わったよな……」
セックスの後、資料室での調べ物も終えた提督は、引き続き同行している矢矧に向かって言った。
「失望した?」
矢矧は不安が隠せないといった表情になりそう聞き返す。しかし、提督が軽く首を振り、
「いいや、ますます良い女になったよなあとは思うけどよ」
とアッサリ言った為、矢矧はその直前の表情をふわりと解いてクスリと笑い、
「だったら嬉しいわ。きっかけを与えてくれたのはあなただもの」
と微笑を浮かべる。その後はしばらく二人とも無言で歩いていたが、そのうち提督が困ったようにこんな事を言い出した。
「でだ、お前この後時間に余裕あるか? 実は俺も久々で……そのう、一回じゃ治んなくてよ……」
言われた方の矢矧は一瞬驚いたような表情を浮かべたが、次の瞬間には可憐な笑顔を浮かべて、
「ええ、いくらでも相手してあげるわ!」
と、実に楽しそうに言った。
その後、提督の側には矢矧が同行するケースが多くなった。別に仕事でまで一緒にいる事は無いと、それとなく提督は彼女に伝えているのだが、「側にいるだけで何だか気分が良いの」などと言ってくるので結局彼は断る機会を逸してしまっていた。
今日はとある倉庫の棚卸しである。その倉庫はもはや使用されなくなった装備など、優先度の低い物資を保管してある場所であり、流石にいつまでも放って置くわけにはいかないだろうという事で、まずは何がまだ必要で何が不要かを確かめに来たという訳である。
ちなみに、今この倉庫にいるのは提督と矢矧だけだ。
「結構沢山あるのね」
矢矧は倉庫を見回しながら言う。
「まあな、改良が進んで良い装備使うようになったから全然使わなくなったってのもあるんだけど、中にはたまに必要ってのもあるからな」
この倉庫に保管されているもののリスト自体はあるので、今日はその内容と一致するかどうかのチェックという事になる。
「いやしかしこれは俺のミスだなあ」
「どうかしたの?」
苦い顔をして反省の弁を述べる提督に不思議そうな表情で問う矢矧。
「棚卸しくらいもう少しこまめにやっておけば良かったんだよ。これ、このままじゃ何日かかかるぜ?」
「…………」
提督はそう言ったが、この瞬間、矢矧が妖しげに目を細めた事にまでは気付かなかった。
倉庫内で二人はチェックを始める。そして、ある棚に差し掛かった時の事であった。
「これがこの場所にあるはずなんだけど……あれ、無いか?」
棚卸しの最中、提督が倉庫の棚とリストを見比べながら言った。提督の視界からはリストが指し示す物資が該当の棚に見当たらないのである。
「奥の方にしまわれてるのかも。探してみるわ」
そう言った矢矧はリストの指定通りの棚を覗き込み始める。
しかし、その姿勢は少々不自然であったのかもしれない。そこまでする必要性など無さそうなのに、少しばかり尻を突き出したような姿勢を取っている矢矧。
そんな矢矧の事を違和感を覚えつつも眺めていると突然、彼女は片手を後ろに回し、自身のスカートをゆっくりとめくりあげ始めた。
「…………」
提督は息を飲んだまま何も言葉を発する事が出来ない。
スカートの下で矢矧が着用していたのは普通のショーツではなく、ハーネスのような形状の代物であり、それによってバイブレーターが彼女の膣に固定されていて、更には下着やバイブの隙間から既に粘液が染み出していた。
彼女は首だけをゆっくりと回して提督を横目で見た。その表情は明らかに発情しきったメスのそれである。更にはスカートをめくりあげている手とは反対の手の掌を提督の方に向けた。そこにあったのはバイブのリモコンであった。
(……もう、準備は出来てるんだけど?)
その目はそう訴えかけているようだ。口は笑っていたが、その息は熱を持っていて、少々荒かった。
提督は軽い頷きを繰り返しつつ、微妙に視線を横へと逸らした。
(俺、実はエライもんを目覚めさせちまったんじゃ……)
内心そう考え、流石に少しばかり頭を抱えたい気分になってしまった提督であった。