※この作品はR-18です。

ランス皆中伝(アーカイブ)   作:夜叉五郎

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4月22日 リーザス城
 AL教団、リーザスに特使を派遣。

4月23日 リーザス城
 小川健太郎、意識不明となる。

4月24日 リーザス城
 ランス、シャングリラに目をつけるも、マリスに諌められる。

4月25日 リーザス城
 ランス、大量の傭兵を雇い入れる。

4月26日 リーザス城
 ランス、メナドに剣術を手ほどき。

4月27日 リーザス城
 ランス、ジオに降伏を勧告。ジオ、兵力を増強し防備を固める。

4月28日 リーザス城
 リーザス軍、ジオを武力占領。リーザスの大陸全土への大侵攻が開始される。

4月29日 リーザス城
 ラ・サイゼル、リーザス城を襲撃。
 来水美樹、ランスに保護を求める。

4月30日 リーザス城
 カミーラ、バラオ山中に拠点を構える。


覇道邁進編(自由都市併合)
LP3年4月4週 ジオ攻略 & 魔人襲来


<LP3年4月22日>

 

 リーザスを巡検していた司教のセコナオットが、川中島のAL教団本部に帰還した。

 新たなリーザス王の即位と、その後に起こった内乱の顛末を法王ムーララルーに報告するセコナオット。

 超大国リーザスの動静は、AL教団にとっても重要な関心事であった。

 

 AL教団は、女神アリスを信仰するALICE教の団体である。

 その規模は世界最大であり、世界中の国々で国教と認められ、大陸のどこの街にも教会があった。

 ほとんどの国家の冠婚葬祭の形式は全てAL教団の教えに従ったものであり、ALICE教は民衆の実生活に完全に根付いていた。

 ランスとリアの結婚式も、AL教団の神父の立会いの下で行われていた。

 

 AL教団は、ただの宗教団体ではない。

 川中島と呼ばれる大陸中部にある島を本拠地としており、「テンプルナイツ」と呼ばれる独自の武装集団を持つ。

 川中島には、荘厳な宗教都市が築かれており、一つの国家ともいうべき存在であった。

 その影響力は大陸全土に及ぶため、実質的にはリーザスやヘルマンなどの超大国と肩を並べるくらいの力を持っていた。

 

 各国から多額の寄付金を受け取り、その有り余る財を信徒獲得に費やしていく。

 異教徒の治める土地には、テンプルナイツを派遣して、強引にでも教化に勤める。

 AL教団は、日々その力を伸張させていた。

 

 

 

 セコナオットの報告を受けた法王ムーララルーは、新生リーザスに対して特使サルベナオットの派遣を決定する。

 AL教団がランスのリーザス支配を認めた証拠であった。

 

 ムーララルーは、ランスの台頭を予見していた。

 代々の法王に伝わる門外不出の預言の書に、ランスについての記述があったことが、その理由とされる。

 

 

 

 

 

<LP3年4月23日>

 

 2年前、当時の魔王ガイの術によって、異世界からこの大陸に召還されてしまった美樹と健太郎。

 この大陸に来てからというもの、二人は激動の日々を過ごしてきた。

 

 二人は仲の良い幼馴染同士であった。

 美樹は強引に魔王の力を継承させられてしまう。

 健太郎は美樹を救う為に聖刀日光の主となった。

 

 健太郎は、先の魔王ガイと親衛隊長のバークスハムを倒して、美樹を取り戻すことに成功する。

 しかし、その時点ですでに儀式は終わってしまっており、美樹は魔王の力を継承してしまっていた。

 魔王になりたくなくて、覚醒を拒み続ける美樹。

 健太郎は、美樹を守りつつ、美樹が元の体に戻る方法と、元の世界への帰り方を探して旅を続けてきた。

 

 逃亡する美樹は常に危険と隣り合わせであった。

 魔王の力を望むケイブリスが、その身柄を押さえることを配下の魔人たちに命じていたのである。

 捕まったら確実に殺させる。

 ケイブリスと敵対するガイの娘のホーネットが保護を申し出るが、美樹はそれからも逃亡した。

 

 ホーネットは、美樹が魔王となることを望んでいる。

 しかし、ホーネットが望むように魔王となってこの世界に残り続ける気は、美樹には毛頭なかった。

 美樹にしてみれば、ケイブリスもホーネットも、共に自分に害を成す存在でしかなかった。

 

 

 

 ケイブリス派の魔人たちにしつこく付狙われつつ、旅から旅を続ける二人。

 魔人たちの魔の手から逃れるために、基本的に東へ向けて移動していく。

 ゼスから砂漠を越えて、ヘルマンに逃げ込み、さらにリーザスへ行こうとしていた。

 

 なんとか魔軍の追撃を避けてきた一行であったが、行く先々で疫病神扱いされ正直消耗していた。

 ヘルマンからリーザスへ行くためには、バラオ山脈を越えなければならない。

 その山道で、ついに魔物の追っ手に追いつかれてしまう。

 

 美樹を守るために、必死に戦う健太郎。

 しかし、追っ手の魔人ラ・サイゼルとの戦闘で、健太郎は痛恨のミスを犯してしまう。

 サイゼルの使徒ユキのカチンコチン作戦に気を取られて、サイゼルの攻撃を回避しきれなかった。

 健太郎は、深手を負って意識不明の重体となってしまった。

 

 健太郎の帯刀となっていた日光が人の姿に戻って、美樹と重体の健太郎を助け、何とかその場から脱することは出来た。

 しかし、健太郎は目覚めず、美樹は途方にくれてしまう。

 日光の導きによって、リーザス国内に身を隠すことにするが、彼らの先行きはまったくわからなくなってしまった。

 

 

 

 

 

<LP3年4月24日>

 

 ランスは、大陸中部のキナニ砂漠一帯を支配する、オアシス都市シャングリラの攻略を目論む。

 シャングリラは世界の中心に位置し、ここを抑えることが出来たならば、ヘルマンやゼスを簡単に攻めることが可能となる。

 リーザスは戦略上の地理的優位性を確立し、ヘルマン・ゼス両国に対して圧倒的に優位な立場を得ることになるのである。

 

 GI816年にヘルマンとゼスの争いにおいて、ゼス側が使用した禁断魔法によって作り出されたキナニ砂漠。

 砂漠の出現によって、ゼスの目論見通り、軍隊の移動は大幅に制限され、物資の輸送も大変困難な状態となる。

 しかし、これは新たなビジネスチャンスの到来を意味していた。

 砂漠を越えることによって、今までとは比べ物にならない利益が発生するため、多くの商魂逞しい者達がキナニ砂漠に挑むことになる。

 多くの商人がキャラバンを組んでキナニ砂漠を越えた。

 

 幾ばくかの時を経て、砂漠商人の中の一人が、旅の途中で偶然にもオアシスを発見した。

 その男は、オアシスを拠点として一つの王国を設立し、初代の王となる。

 その国は、砂漠の中に道を作る不思議な術を用いて、商人たちを統括し、莫大な富を得て繁栄していくことになる。

 対立を続ける大国間を商人たちが行き来するためには、事実上その国に砂漠の交通の手引きをして貰うしかない状態となったのである。

 

 そして、その王国は、60年ほど前に突如即位した現国王ルチェ・デスココ387世の手により、理想郷シャングリラとして生まれ変わる。

 シャングリラは、砂漠の真ん中に存在する美しいオアシスの畔に佇む、大陸一美しい都として、その名を轟かせていく。

 即位と同時に、砂漠案内人の斡旋を、ルチェが独占的に行うようになった。

 そのため、シャングリラの王宮には、今も、莫大な富が蓄えられ続けられているとされる。

 

 建国当初から、その地位的優位さを狙い、リーザス・ヘルマン・ゼスの三大国が相次いでシャングリラを手中に収めようとした。

 しかし、シャングリラは広い砂漠に囲まれているため、攻め込むには、広大な砂漠を渡る必要がある。

 道案内無しには、シャングリラの位置を掴むことはほぼ不可能であった。

 

 しかも、砂漠案内人たちは商業活動には手を貸すが、軍隊にはいっさい手を貸さない。

 そのため、攻略軍は砂漠を進むのに大変難儀することになる。

 そして、攻め込むたびに、砂漠の嵐に遭遇してしまい、ことごとく攻略を断念するしかなかった。

 LP3年の時点では、シャングリラは難攻不落の都市であり、絶対に手を出すなというのが国家運営上の通説となっていたのである。

 

 

 

 ランスは、シャングリラ攻略をマリスに相談するが、マリスは兵の損失を恐れ、消極的な姿勢を崩さなかった。

 そのため、ランスも一旦は大人しく引き下がった。

 だが、どうしても諦めきれない。

 ランスは是が非でもシャングリラを陥落させたかった。

 

 その後もマリスを閨房に呼び出す度に、シャングリラ攻略を持ちかけるランスであったが、マリスは反対の立場を維持し続ける。

 夜伽を勤めさせて散々に交わっても、マリスは一向に音を上げず、ランスの望んでいるような言葉は一切吐かない。

 一度、限界までよがらせてやるべく、しゃかりきになってマリスに挑んでいったことがあったが、そのときも決着はつかなかった。

 汗みどろになった躰をマリスに絡ませたまま共に眠りについてしまうランス。

 朝になって気が付いたら、マリスはすでにいなくなってしまっていた。

 

 少なくとも10発近くマリスの胎内に打ち込んだはずである。

 ランスの腰が崩壊寸前になっていたことを考えると、マリスの完全勝利だったと言えるであろう。

 神聖魔法の使い手であるマリスと違って、ランスは自力では回復できないのである。

 さしものランスも、正攻法でのシャングリラの攻略を諦めざると得なくなる。

 

 マリスの協力を得られない以上、何とか他の方法を探す必要に迫られてしまった。

 ランスは独自の伝手を使って、シャングリラに関する情報を収集し続けていく。

 

 

 

 

 

<LP3年4月25日>

 

 シャングリラ攻略を一旦諦め、大人しく自由都市国家群を制圧することを決めたランス。

 そのためには、兵力が必要である。

 反乱によって、リーザス王国の軍事力は、若干ながら減少してしまっている。

 失われた戦力を補うために、ランスは、一番手っ取り早い方法を選択した。

 傭兵の大量活用である。

 

 リーザスは超大国であり、これまでどんな場合でも傭兵を用いるようなことはなかった。

 自前の強力な軍隊が整備されており、傭兵を使う必要が全くなかったのである。

 そのため、傭兵を蔑む傾向がリーザス軍の中には存在していた。

 

 だが、ランスは躊躇なく、そのタブーに踏み込んでいく。

 御用商人のブルーペットに命じて、大量の傭兵を雇ってしまったのである。

 

 リーザス軍に所属する将校は、ランスが傭兵を雇うという噂を聞くと、下から上まで眉を顰めた。

 しかし、顰められた眉は、すぐに、驚きで跳ね上がってしまうことになった。

 ランスが雇った傭兵は、これまでの常識を打ち破るほどの数だったのである。

 

 ランスは総計6000名もの傭兵を、ブルーペットの斡旋で雇ってしまった。

 これは、リーザス王国に所属する騎士数の、過半以上に相当する。

 ここまで大規模に傭兵を活用しようとした王は、ランスが初めてであった。

 

 ランスにしてみれば、当たり前の決断を下したつもりだった。

 しかし、国家の体面をまるっきり無視した行為と言えた。

 国家レベルで、これまでの価値観を次々とぶち壊していくランス。

 この傭兵大量雇用も、その一つの例となる。

 

 

 

 傭兵たちの活躍するの場所は、主に小国が乱立する自由都市国家群である。

 リーザスもヘルマンも、自前の兵の整備に力を注いでいたため、傭兵が活躍する余地は無い。

 ゼスは、また違う意味で、傭兵という職業が成り立ち難い国家であった。

 つまり、自由都市国家群だけが、傭兵制度を育んでいたのである。

 

 ブルーペットが用意した傭兵たちも、大半が自由都市国家群の諸都市で活躍していた輩であった。

 ランスは、彼ら傭兵を一括でリーザスで雇ってしまった。

 つまりランスは、これから攻めるであろう自由都市国家群側が、対リーザスで傭兵を活用することを、先手を打って封じてしまったのである。

 傭兵たちの雇用に関して、それなりの支出が生まれることになるのだが、その費用対効果は抜群だったのである。

 

 ブルーペットは、傭兵たちを束ねる武将についても、ランスに斡旋した。

 "紅の天使"の異名を持つ美貌の女傭兵セシル・カーナと、ベテランの傭兵ルイス・キートワックである。

 どちらも自由都市国家群で名の通った高名な傭兵である。

 特にセシルは、剣の腕だけではなく、兵を率いる能力に秀でており、見目麗しいこともあって、ランスを大いに悦ばせることになる。

 

 

 

 

 

<LP3年4月26日>

 

 リーザス城にて、ランスは散歩中であった。

 偶然通りかかった兵舎付近で、ランスは、メナド率いる赤の軍の訓練風景を見ることになる。

 幼いとも言える年頃のメナドが、大の大人の騎士を子ども扱いして、訓練をつけてあげていた。

 

 メナドに声をかけ、その見事な剣捌きと、部下の扱い方を褒めるランス。

 突然現れたランスに、その場にいた兵士たちはみんな一斉に跪いた。

 そんな中、只一人メナドだけが、ランスに対して物怖じしていなかった。

 目をキラキラと輝かせながら、剣の稽古をお願いしてきたのである。

 

 ランスは、メナドを気に入っていたため、特別に相手をすること承知した。

 互いに模擬戦闘用の剣を手に取り、その場で対峙する両者。

 張り詰めた空気が周囲を支配する。

 

 しかし、勝負は一瞬でついてしまう。

 構えると同時に、ランスが必殺のランスアタックを放ってしまったのである。

 

 

 

 いきなりの奥義に、メナドは僅かも対応できず、手に持った模擬戦闘用の剣を弾き飛ばされてしまっていた。

 あまりのランスの強さに、メナドは感動し、興奮する。

 

 メナドに対していい格好を見せたランスは、もっと修行するようにと言い残して、さわやかにその場を立ち去っていく。

 メナドはランスに感謝し、その強さを味わったことによって、より一層尊敬の念を深めてしまう。

 負けたのにメナドの顔は明るかった。

 

 二人の稽古を見ていたメナド配下の騎士たちは、メナドがあっさりと負けてしまった光景を、皆ポカンと口を開けて見つめていた。

 現時点で赤の軍の中でメナドに勝てる者は、主将のリックしかいない状態であった。

 そのメナドが、軽い感じで一ひねりされてしまったのである。

 ランスの強さを感じてにこやかなメナドに反して、赤の軍の騎士たちは、その強さに畏怖の感情を抱いてしまう。

 

 未だに、正規軍の中でも、ランスのことをリアに取り入ることに成功しただけのただの女好きと見る向きがあった。

 伝え聞くランスの腕前は大分誇張されたものとして、侮る輩が多かったのである。

 しかし、メナドを文字通り子ども扱いしたこの一件が噂として伝わると、正規軍内でランスを侮る者は誰もいなくなる。

 

 

 

 

 

<LP3年4月27日>

 

 ジオは、リーザスの内乱時に反乱軍側のペガサスの要請を受けて、出兵の準備を進めていた。

 反乱軍の総帥であるエクスは、後々の害を考えて、国外の勢力を巻き込むのを極力嫌がる。

 だが、ペガサスが独断で事を進めてしまっていたのである。

 

 ジオは、かねてより親交の厚かったペガサスの威勢の良い言葉に踊らされてしまった。

 反乱軍の優位を確信してしまっていたジオ政府。

 反乱軍側に加担し、エクスらが政権を取ったら、それ相応の報酬は貰うつもりであった。

 

 エクスの方針は、リーザス城の包囲後に交渉によってランスを退位に追い込むというものであった。

 しかし、エクスの立てた方針を生ぬるいと感じたペガサスが、ジオ側と事前に話をつけていたのである。

 ジオとしては、反乱軍がリーザス城を包囲することを前提に、リーザス城包囲戦から参戦する計画で兵力の増強を図っていた。

 

 ジオは、ペガサスと約定まで取り交わして、反乱軍への協力を約束していた。

 しかし、エクスの乱が短時日に鎮圧されてしまったため、出兵のタイミングを逸したことになる。

 元々、ジオへの援軍要請はペガサスの独断で行われたことである。

 そのため、ペガサスがイースで討ち取られた後、反乱軍とジオとの繋ぎが断たれたのである。

 

 エクスとしては、オークスに引いた時点で、これ以上の抵抗はリーザスのために良くないと判断し、反乱の終結への落とし所を探っていた。

 他国の介入により反乱が長引くことはその意に反していたため、エクス側からジオへ援軍を要請することはなかった。

 

 

 

 ジオ側としては、反乱軍が劣勢になった時点で、方針の転換をするべきであった。

 しかし、ランスが余りにも鮮やかに反乱軍を追い詰めていってしまう。

 情勢の急変に判断が追いつかず、気がついてみたら反乱軍が鎮圧されてしまっていた。

 

 結局、エクスの乱において、ジオがリーザスへ出兵することはなかった。

 しかし、オークス陥落時に、ジオと反乱軍のペガサスが繋がっているという証拠の手紙を、ランスが入手してしまう。

 ランスは、ジオを許さず、ジオを制圧する心算で、ジオに対して降伏勧告の使者を送る。

 

 内乱によってリーザス軍が疲弊していると考えてしまうジオ。

 すぐに兵を向けてくるはずがないという甘い観測の元で、ランスの降伏勧告を撥ねつけてしまう。

 リーザスへの出兵のために整備された軍隊を解散させず、そのまま保持し続けた。

 大軍を交渉の道具として、和平交渉において、より有利な条件を引き出す目論見であった。

 

 だが、ジオ側のその予想は大いに間違っていた。

 ただ一度の降伏勧告を拒絶されただけで、ランスはジオとのあらゆる交渉の断絶を宣言し、即座に軍を発してしまうことになる。

 

 

 

 

 

<LP3年4月28日>

 

 ジオは、一年前のヘルマン軍のリーザス侵攻時に、ジオ大会戦が行われた地である。

 

 ジオへの降伏を勧告する使者を送ったランスは、ジオに拒絶されたと知ると、即座に兵を発した。

 リーザス軍は、赤の軍と紫の軍を主体とした構成で、ジオに攻め寄せることになる。

 ジオ側は、総勢6300名もの騎士を揃えて、大兵力でリーザス軍を迎え撃とうとしていた。

 

 数だけ見ると、エクスが率いた反乱軍よりも兵力は多い。

 それだけの兵力が、ジオに篭っているのである。

 攻め寄せたリーザス軍の騎士の数は、2400名。

 リーザス軍はジオの攻略に失敗するであろうというのが、大方の予想であった。

 

 しかし、数で大きく勝っているジオ軍であったが、それは無理をして兵を集めた結果であった。

 そのため、鍛え上げられた赤の軍の精兵に比べると、個々の能力はかなり劣っていた。

 集団戦の練度に関しても、リーザス軍の完成度の高さに対して、大きく見劣りしていた。

 超大国と小国の差が出てしまった。

 

 この戦いで、赤の軍主将リック・アディスンは、必殺技バイ・ラ・ウェイで、ジオ軍の二将を切って捨てた。

 将を討たれたジオ軍はただの雑兵の集まりとなってしまい、赤の軍の猛攻の前に打ちのめされていく。

 リックは、赤い死神の異名を改めにて天下に知らしめたのである。

 

 こうしてジオは、あっけなくリーザスの軍門に降ることになる。

 

 

 

 

 

<LP3年4月29日>

 

 突然現れた魔物の軍勢に、リーザス城が襲撃されてしまう。

 ケイブリス派の魔人ラ・サイゼルの率いる魔軍が、リトルプリンセス一行を狩り出すために、リーザス城を襲撃したのである。

 リトルプリンセスとは、行方不明になっていた魔王の後継者である。

 ホーネット派とケイブリス派の魔軍の双方が、リトルプリンセスの身柄を確保するために、激しくぶつかり合っていた。

 

 サイゼルは、バラオ山脈で、リトルプリンセスの護衛である聖刀使いの小川健太郎を倒すことに成功する。

 しかし、その後の戦闘で、リトルプリンセスらの一行の行き先を見失ってしまっていた。

 なかなか見つからず、サイゼルの忍耐も限界を迎える。

 リーザス国内に逃げ込んだことはわかっていたため、直接的な手段に出てしまったのである。

 

 直接王宮に乗り込んできたサイゼルが、ランスに向かってリトルプリンセスの身柄を引き渡すように要求を突きつけた。

 サイゼルは、煩わしく叫ぶ王妃リアに向かって、無造作に魔法の一撃を加えてしまう。

 慌ててマリスが神魔法でバリアを張って事なきを得たものの、あまりに無礼な態度に激怒するランス。

 交渉とも言えない交渉が物別れに終わり、ランスはサイゼルが属するケイブリス派の魔軍と敵対関係になってしまった。

 

 

 

 リーザス建国当時から数えて500年が経つが、これほどまでの大規模な魔軍の襲撃は、初めての事態であった。

 対処方法が全く確立されておらず、守備兵たちは混乱してしまう。

 

 被害が拡大するかに思えたが、ランスが防衛軍を率いたことにより、動揺していたリーザス軍はその力を取り戻す。

 冒険者として数限りない場数を踏み、数多の魔物と戦ってきたランスの指示は的確であった。

 兵たちは、恐れることなく魔物たちに立ち向かっていき、次々と魔物たちを討ち取っていく。

 

 しかし、ランスには魔人を倒す術がなかった。

 そのため、ランスは、サイゼルとの対戦に苦労してしまう。

 だが、配下の魔物の軍勢を全滅させることにより、サイゼルを撤退に追い込むことに成功する。

 

 魔物の襲撃によって、国民に動揺が走るかに思えた。

 だが、対外戦争を始めたばかりの時期ということもあって、逆にリーザス軍の精強さをアピールすることになった。

 魔軍を簡単に退けたリーザス軍と、国王ランスの活躍に、国民は逆に沸き立ったのである。

 

 

 

 この戦い以降、リーザスは、ケイブリス派の魔人たちにリトルプリンセスを匿っていると目されことになる。

 そして、魔軍の散発的な襲撃を絶えず受け続けることになる。

 

 

 

 

 

 リーザス城への魔物の襲撃がランスの指揮の下に撃退された直後、リーザス城に保護を求める者達がいた。

 JAPAN出身と思われる美女・日光に率いられた来水美樹と小川健太郎の一行である。

 

 激しい魔人たちの追撃を受け、数日前、健太郎は意識不明となってしまうほどの深手を負ってしまっていた。

 その後、一行はリーザス国内に逃げ込み、リーザスの街々を転々としつつ、魔人の監視の目から隠れていたのである。

 しかし、健太郎が目覚める兆しは全く無く、このままではいずれ捕まってしまう。

 そんなとき、日光は街で新王ランスの評判を聞きつける。

 

 そして、先の戦いである。

 リーザス軍はよく組織されており、魔物の襲撃を見事追い払ってしまった。

 ランスの英雄性に惹かれた日光は、一縷の望みを抱いてリーザス城の門を叩くことを決意したのである。

 

 

 

 リーザス城に赴き、新王ランスの慈悲にすがって保護を求めようとする日光。

 ランスは、兵から訪ねてきたのが25歳くらいの美しい女性と15歳くらいの可憐な女の子と聞くと、無条件に面談を許してしまった。

 

 1500年前に聖刀となった日光の容姿は、聖刀になる前の25歳のままであり、なおかつかなりの美人である。

 旅の仲間である同性の美樹も嫉妬するくらいのスレンダーかつグラマラスな体型をしているため、当然の如くランスのターゲットとなる。

 魔王となり成長が止まってしまったため、17歳のはずの美樹の外見は魔王となった当時の14歳のままである。

 だが、美樹の方も、ギリギリではあったがランスの守備範囲内に収まっていた。

 文句なしの美少女であることは確かなため、美樹もまたランスのターゲットになってしまうのは仕方のないことであった。

 

 首尾よくランスに目通りかなった日光であったが、当初は美樹が魔王継承者のリトルプリンセスであることを隠していた。

 ランスは、美樹の可憐さと日光の美しさに目が眩んで、日光の保護の要請を受け入れてしまう。

 これが転機となり、ランスの運命は激変していくことになる。

 

 

 

 

 

<LP3年4月30日>

 

 バラオ山脈のリーザス側の鬱蒼とした森の中の別荘に、ケイブリス派の魔人たちが集っていた。

 四天王の一人カミーラ、怒れる王レイ、エンジェルナイトの魔人ラ・サイゼルの三名である。

 ある有力貴族の別荘だったのだが、その貴族は先の反乱時にランスに潰されてしまっており、主がいない状態であった。

 当然、人は住んでいない。

 魔人たちは、勝手にその屋敷を自分たちのアジトとしてしまっていた。

 

 カミーラは、ケイブリスの傍を離れるために、リトルプリンセス捕獲にかこつけて、人間界にやってきていた。

 レイとラ・サイゼルの両名は、その護衛役だった。

 カミーラに夢中のケイブリスが、レイ(恋人有り)とラ・サイゼル(女)をカミーラのサポート役に選んだのである。

 

 

 

 リトルプリンセスを見失い、勝手にリーザス城を攻撃し、さらには撃退されて逃げ帰ってきたサイゼル。

 日光と健太郎を相手にして、健太郎を倒すことには成功していたため、レイはサイゼルをフォローしようとする。

 それでも、カミーラは、サイゼルを許そうとしなかった。

 サイゼルは、屈辱に震えながらも謝罪の言葉を吐くことになる。

 

 カミーラは、サイゼルの妹であるラ・ハウゼルの有能さを持ち出し、サイゼルを冷たく嬲った。

 サイゼルは顔を真っ赤にしながら、黙り込むしかなかった。

 しかし、サイゼルが失敗してくれたおかげで、カミーラは人間界に長く留まることができるようになる。

 魔人領に戻りたくないカミーラにとっては、悪くない流れであった。

 

 カミーラが魔人領に戻りたくない様子を見て取り、レイはあざ笑う。

 ケイブリスのカミーラに対する執着振りは、他の魔人から見てみれば、おもしろい見世物でしかなかった。

 しかしカミーラは、レイの抱えている秘密を知っており、そのことをほのめかしてレイの侮蔑の表情を凍らせてしまう。

 

 

 

 魔人たちは、リトルプリンセスを捕らえるという目的を果たすために、ここに集っていた。

 それ以外に共通の目的は何もなく、互いの間に馴れ合いはいっさいなかったのである。

 カミーラたちにとって、自分以外の魔人たちは単に利用すべき存在であり、心を許しあうことなどはなからありえなかった。

 

 彼女らの冷めた協力関係は、リトルプリンセス捕獲の作戦にも色濃く反映される。

 互いに協力し合うことはなく、それぞれが好き勝手にリトルプリンセスを捕らえるために活動を進めていく形となった。

 魔人たちは、バラオ山中にあるこの城館を拠点とすることを決めた。

 そして、リトルプリンセスを炙り出すために、リーザス国内の都市に対して攻撃を仕掛けることになる。

 

 ただし、レイとサイゼルは、各々の理由によってリトルプリンセスを追い求めていたが、カミーラ自身は特に熱心ではなかった。

 カミーラとしては、自分に恥をかかせたゼスを、まず最初に滅ぼそうと考えていたはずであった。

 しかし、リトルプリンセスがすでにゼスから他国に移動していることが判明し、已む無くそれを追ってきた経緯があった。

 やる気が殺がれること、この上なかったのである。

 

 

 

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