※この作品はR-18です。

ランス皆中伝(アーカイブ)   作:夜叉五郎

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10月15日 シャングリラ
 シャングリラ王ルチェ・デスココ387世、使者を送ってランスを月の宴に招待する。
 ランス、シャングリラでの月の宴に参加する。

10月16日 シャングリラ
 リーザスとヘルマンの両国、最前線に防衛陣地の構築を開始。

10月17日 シャングリラ
 メルフェイスの妊娠が魔法研究所と天才病院の検査で発覚。

10月18日 シャングリラ
 ランス、デスココと対立。
 ホーネット、シャングリラに赴いてランスに拝謁する。
 ランス、デスココを殺害。
 ランス、ランプの精への最後の願いで人形たちを人間に変える。
 ランス、千人の美女を千人の騎士達に分け与える。

10月19日 シャングリラ
 ランス、ホーネットを抱いて処女を奪う。

10月20日 シャングリラ
 美樹の妊娠が天才病院にて発覚。マリス、魔王が誰なのかを知る。

10月21日 シャングリラ
 ホーネット、ランスに愛されることに溺れ始める。★

10月22日 シャングリラ
 マリス、魔人信長について調査を開始し、JAPANへ向かう。★

10月23日 シャングリラ
 リア、ランスを心配して手紙を書くも、結局破り捨てる。★


LP3年10月3週 シャングリラ攻略

<LP3年10月15日>

 

 4年に一度、一ヶ月ほどハウセスナースが眠りについてしまう時期があった。

 その時期だけシャングリラはその生命線である砂の道を利用できなくなる。

 その間シャングリラでは、王の無聊を慰めるため月の宴という豪華な祭りが行われるのが慣例となっていた。

 月の宴は美女・美酒・ありとあらゆる世界の珍味・美食を取り揃えた豪華な宴である。

 

 最初は道が塞がれる為に来客も無くて暇なルチェが自分の無聊を慰めるために開催したものであった。

 しかし、自分一人で楽しむのにすぐに飽きたルチェはその月の宴に外界から客を招待するようになる。

 招待客はルチェが友達になれそうな男であった。

 

 月の宴で歓待して友好関係を気付き、自分の友達になってもらおうとしたのである。

 その実、シャングリラの凄さを見せびらかして同好の士への優越感に浸るのだ。

 

 招待された男は月の宴で夢のような世界を体験する。

 そして、月の宴が終わるころには帰りたくないとルチェに泣きつくことになり、ついには放り出されてしまうのである。

 シャングリラでの夢のような一月を体験した男たちは、日常に戻ってもあの日々を忘れられるはずもなかった。

 シャングリラの素晴らしさを喧伝し、ルチェと同じような生活をするために無茶な行動を取って結果として破滅していくのである。

 

 

 

 そして今回の月の宴に招待客としてルチェが選んだ人物は、リーザス帝国の皇帝であるランスであった。

 

 ちょうど月の宴に入る時期の少し前にリーザス帝国軍がシャングリラを攻め立てた。

 シャングリラが攻められることなど、ここ数十年滅多にないことである。

 そのときルチェは、リーザス帝国を率いるランスという男に対して初めて興味を持つ。

 絶対に逆らわない人形である砂漠案内人たちにランスのことを調べさせるルチェ。

 

 そしてルチェは、ランスが自分と同じで無類の女好きであると知る。

 女好きで鬼畜王とまで謳われたリーザス帝国の皇帝ならば、自分の友達になれそうな気がした。

 ルチェはランスを月の宴に招待するために、砂漠案内人NO36をリーザス城に派遣することにしたのである。

 

 

 

 ランスはルチェ・デスココ387世の使いである砂漠案内人NO36と謁見の間で会う。

 そして月の宴の説明を聞き、宴への参加を即決してしまう。

 摂政であるマリスは罠かもしれないとランスを止める。

 ついこの間、砂漠案内人に騙されて砂漠で酷い目にあったばかりなのである。

 

 しかし、一ヶ月間に渡る酒池肉林の宴と聞かされて、猛然と奮い立ってしまったランスは、そのマリスの諫言を聞かなかった。

 マリスを抑えて、ランスは直属の緑の軍を引き連れてシャングリラに赴くことを砂漠案内人に承諾させてしまう。

 月の宴へ招待される振りをしてランスがシャングリラを制圧しようとしていることを察し、マリスは押し黙ることになる。

 

 緑の軍・正騎士1000名に動員をかけ、ランスはシャングリラへ乗り込んでいく。

 

 

 

 前回と同じ様に砂漠の中をいつはてとなく続く行軍に、ランスはうんざりする。

 しかし、今回は違った。

 砂漠案内人NO36は、ランスの前でシャングリラの特異な秘術を明らかにする。

 砂漠案内人NO36が呪文を唱えると、砂漠の中に道路が浮かび上がったのである。

 道沿いに行軍を続けるランス一行。

 やがてランスは理想郷と名高いシャングリラにたどり着いた。

 

 シャングリラに入ったランスは目を見張ることになる。

 100人の娘たちが10年がかりで織り上げた絨毯。

 高名な彫刻家たちが金を練り込んだカンタ石を素材として作り上げた作品群。

 高名な建築家たちが金を練り込んだカンタ石を素材として作り上げた建造物。

 その他諸々に対してシャングリラの贅の尽くしようは異様であった。

 人界のほぼ半分を収めるリーザス皇帝の座にあるランスでさえ、シャングリラの豪華絢爛な環境に驚いてしまう。

 

 しかし一番ランスの気を引いたのは、シャングリラの宮殿にいる人たちの奇異な構成であった。

 案内に従い、連れてきた緑の軍の精兵を用意された宿舎に休ませ、日光一人を連れたってルチェの宮殿に赴くランス。

 そこでランスと日光は、廊下に溢れる美女たちの姿とルチェ・デスココ387世の怪異な容姿を目の当たりにする。

 男の姿は謎のフード姿の砂漠案内人たちばかりで、顔を見せているのはデブで醜すぎるシャングリラ王だけ。

 女の姿は目を見張るほどの美女ばかりで、妙齢の者以外はいっさい見当たらない。

 シャングリラの民の様子は何もかもが奇異であった。

 

 

 

 ランスに挨拶をし、ランスがリーザス王に即位したおりに出向かなかったことを詫びるルチェ。

 お詫びの印としてルチェは、すぐさまランスを歓迎する宴を始めてしまう。

 護衛役として紹介された日光に対しても、ルチェはその外見とは裏腹に愛想よく宴を楽しむようにと歓待する姿勢を見せた。

 

 砂漠でしか取る事の出来ない不思議の木の実。

 金の林檎。

 青い桃。

 きらきらとした味のこんぺいとう。

 匂いを嗅いだだけで幸せになれる砂糖菓子。

 

 ありとあらゆる珍味がランスの舌を楽しませる。

 用意された酒も、悪酔いを絶対にしないという幻酒であり、アルコールに弱いランスにとっても非常に飲みやすいものであった。

 そしてランスの側にお酌として現れたエキゾチックな衣装を着た美少女。

 その少女に対してランスは無意識のうちに95点という高い評点をつけてしまう。

 シャリエラ・アリエスという名のその少女は、ランスが滅多につけないSランクの美女に見事に認定されたのである。

 

 お尻を触っても、胸を揉んでも優しく微笑み逆らわないシャリエラ。

 ランスはシャリエラを気に入り、宴の間、常に側に置いておくことになる。

 シャリエラの方も姉たちやデスココ王とは違い、不出来な自分を蔑視せずに気に入ってくれたランスに対して純粋な好意を抱くことになる。

 ランスはシャングリラにやってきてから数日間、夜は毎晩シャングリラの美女たちと素敵な時間を過ごすことになる。

 そしてシャリエラは、シャングリラの美女たちの中で一番最初にランスの夜伽の相手を勤めることになるのである。

 

 どんな卑猥なことをしても許してくれる従順な美女たちと、目の前に並べる豪勢な宴のご馳走を前にして、ランスも心が躍り、宴に夢中になる。

 護衛についていた日光がそれとなくランスに注意を喚起させようとするが、全て無駄であった。

 ルチェを油断させるためだと囁かれて、日光も困り果てながらも宴を楽しむ振りをさせられる破目になる。

 シャリエラを右手に、日光を左手に抱いて、ランスは宴を楽しみまくったのである。

 

 その間、ルチェが鋭い目でランスの傍らに侍る日光の美麗な姿をずっと観察していることにランスは気づいていなかった。

 

 

 

 シャングリラでの月の宴の日々で、ランスが一番衝撃を受けたことはシャングリラの豪華なトイレであった。

 内装の豪華さにも驚嘆することはする。

 だがそれよりも、ランスがトイレに立つとかならず女の子が一人ついてくることの方が衝撃的なのである。

 

 ランスが用を足し終えると、着いて来た女の子がランスの前に跪く。

 そして顔を股間に寄せ、用を足し終えた跡を丹念に舐め清めてすっかり綺麗にしてしまうのである。

 さらには出し残しが無いように亀頭に唇を当て、しっかりと吸い出してくれる。

 大の場合はもっと凄くてカルチャーショックが大きすぎた。

 した後に舐め廻して綺麗にしてくれるのであるのだが、さすがのランスもこれには困った。

 

 最初はトイレに行くのにも日光を連れ添っていたランス。

 だがその奉仕を見た日光が顔を真っ赤にしてしまったため、日光を連れ添うのを止める。

 以降、女の子を連れてトイレから戻る度に日光が不機嫌になってしまうことになる。

 だが、ランスはリーザスに戻ったらこの気持ち良すぎる制度を絶対に導入しようと決意してしまっていた。

 世界を統べる皇帝として絶対的な権力を持つランスにとって、その程度の制度の確立は朝飯前であることは確かであった。

 

 

 

 

 

<LP3年10月16日>

 

 ランスのシャングリラ親征を受けて、リーザス帝国は対ヘルマン帝国の最前線であるローゼスグラードの防備を固めた。

 これは皇帝ランス不在を乗り切るための措置であった。

 先のヘルマン北東部域制圧作戦により、ローゼスグラード以東は全てリーザスの占領地となっている。

 ローゼスグラードさえ死守すればヘルマン帝国軍の進軍を完全に食い止めることが可能な状態となっていた。

 

 ヘルマン帝国軍がローゼスグラードへ全将兵を集中させてくることも十分に考えられる。

 実際のところはヘルマン西部域においてパットン王子の反乱軍が活発に動いているため、その可能性は限りなく低い。

 だが油断は大敵である。

 リーザス帝国軍の大将軍バレスの手で、ローゼスグラードの守備体制は完璧に整えられることになる。

 

 もともとローゼスグラードはレリューコフ率いるヘルマン第一軍の拠点である。

 そのためヘルマン帝国領の他の都市と比べると守りが比較的堅かった。

 リーザス帝国軍の上層部は現在は味方となっているレリューコフ将軍の意見を取り入れ、強固な防衛体制の確立されることになる。

 

 

 

 一方のローゼスグラード以東を完全にリーザスに制圧されたヘルマン帝国。

 ステッセルを初めとするヘルマン帝国の首脳陣は、その現状を苦々しく受け止めていた。

 

 ステッセルとしては大規模な反攻に踏み切りたいところであった。

 帝都防衛のヘルマン第三軍は別として、第二・第四・第五軍の足並みを揃えて進撃すれば、東部域の奪還は容易いと思われた。

 しかし、肝心要の第二軍が、パットン王子率いる反乱軍の鎮圧に手間取っていることを理由に動こうとしない。

 そのため、なかなか反撃に踏み出せなかった。

 

 第二軍を率いるアリストレスは、帝国宰相たるステッセルの政敵である。

 全く持ってステッセルの思い通りにならない存在であった。

 アリストレスに、パットンを殺す気は毛頭無い。

 片手間にパットン軍の相手をしつつ、帝都ラング・バウに間諜を放ち、ステッセルの暗部を探っていた。

 

 アリストレスが、もう少し大局的に物事を見ることが出来たのなら、歴史は違った方向に動いていたはずである。

 しかし、アリストレスの両の目は、シーラへの絶対の思慕の情と、ステッセルへの敵対心によって曇っていた。

 仮にランス不在のこの時期に、ヘルマン帝国軍が三軍揃えて襲い掛かれば、ローゼスグラードを奪還できた可能性が高い。

 そのまま、ヘルマン東部域全域をリーザスから取り戻すことも不可能ではなかった。

 

 成功していれば、その後の戦局が一気に変わり、攻守の立場が入れ替っていたであろう事に疑いは無かった。

 しかし逆に言えば、ランス不在と言うこの好機を活かせなければ、ヘルマン帝国に勝機はなかったと言えよう。

 アリストレスの存在は、ステッセルを大いに苛立たせることになる。

 

 この場合は、ステッセルの考え方のほうが正しかった。

 もうすぐ冬が来るとなれば、戦どころではなくなるのである。

 しかし、悲しいことに、ステッセルは、あくまで文官の長たる宰相の地位にあった。

 ステッセルには、軍部の長である将軍たちに命令を強制する権限は無いのである。

 

 

 

 リーザス軍がローゼスグラードに大規模な軍事拠点を構築中である情報は、ステッセルの耳にも入っていた。

 これ以上のリーザス軍による侵攻は絶対に食い止めなければならなかった。

 しかたなくステッセルはヘルマン第二軍がパットンを殺すまでの時間を稼ぐための行動にでる。

 ヘルマン第五軍に対してスードリ10の防衛を強化させるように命じたのである。

 

 特別に予算を計上し、スードリ10の防衛力を二倍に引き上げるように指示するステッセル。

 ヘルマン第五軍はもともとヘルマン帝国軍随一の規模を誇っている。

 この処置によって、リーザス帝国軍の攻撃が開始されても簡単に撃退できるはずであった。

 全ての指示は机上の数字に基づいて進められていく。

 

 しかしスードリ10の現場の実情は全然違った。

 ヘルマン第五軍に巣くう二人の毒婦が、帝都からの命令を握りつぶしたのである。

 計上された予算も着服され、私腹を肥やすために使用されてしまった。

 つまりステッセルという人物は、机上の計算と女の操縦しかできない所詮は二流の人物だったと言える。

 

 ローゼスグラードに駐屯しているリーザス帝国軍から見ると、スードリ10のヘルマン帝国軍には全く動く気配がなかった。

 しかしヘルマン第五軍の異様なまでの静けさは不気味であった。

 剣豪ロレックス・ガドラスの武名の高さもあいまって、リーザス帝国軍を非常に警戒させることになる。

 

 

 

 

 

<LP3年10月17日>

 

 ランスがシャングリラで月の宴で現を抜かしているとき、リーザスの天才病院でメルフェイスの妊娠が確認される。

 メルフェイスにとってはこれが初めての妊娠であった。

 

 メルフェイスが遠征から帰還したのは、ランスがシャングリラに出発した後であり、すれ違いであった。

 そのためメルフェイスは、ランスに自分の躰の異変を相談する事が出来なかった。

 一人思い悩み、魔法研究所の扉を叩くことになる。

 

 魔力が大幅に低下し、躰が楽になった。

 この事実だけ見ればリヴの効果から解放されたかのように思われる。

 本来ならば宿願であったリヴからの解放が果たされたことを大いに喜ぶべきである。

 しかし解放される原因が全く不明であることから、メルフェイスには困惑する気持ちの方が強かった。

 長年付き合ってきたことから、リヴの強力な効果からは逃れられるはずがないという強烈な固定観念がメルフェイスの心に刻まれている。

 リヴの効果で限界まで追い詰められ、躰が崩壊を始める兆候ではないかと、不安を募らせてしまっていたのである。

 

 

 

 魔法研究所の初代所長のカーチス・アベレンは、その女顔から想像も出来ないほど天才である。

 魔力は少ないが、こと魔法に関しての知識は魔法王国と名高いゼスの研究者も裸足で逃げ出すほど突き抜けていた。

 

 メルフェイスからリヴという薬の情報を聞いたカーチスは、リヴの魔力増強の原理を認識する。

 そしてメルフェイスに天才病院で身体検査をするように告げる。

 この時点で、カーチスはメルフェイスがもしかして妊娠しているのではないかという予測を立てたのである。

 メルフェイスがランスの愛人であることは、世事に疎いカーチスでさえも知っている周知の事実であった。

 

 カーチスの紹介状を持って天才病院に赴いたメルフェイスは、言われるがままに妊娠検査を受けることになる。

 メルフェイス自身は何の検査をしているのかよくわかっていなかった。

 そのため天才病院の院長であるアーヤ・藤ノ宮が祝福の言葉を送ってきたのにも、すぐには反応できなかった。

 

 アーヤからバッチリ妊娠していることを保証されてしまったメルフェイスは、まず驚愕して次いで呆然となる。

 リヴの効果に囚われている間、自分が妊娠してしまうなんてことは有り得ないはずであった。

 そのためランスの御子を宿す可能性は全く考えていなかったのである。

 呆然としながらも、検査結果を持って魔法研究所に戻るメルフェイス。

 検査結果を見たカーチスはリヴの効果が完璧無くなったことを保証し、元気な御子を産んでくださいねとメルフェイスを励ました。

 

 リヴの効果から解放されたことよりも、ランスの御子を宿してしまったことの方がメルフェイスにとって断然衝撃的な事実であった。

 メルフェイスは下腹部に手を当てながら、ゆっくりと自分が妊娠してしまったという事実を受け入れていく。

 溢れてくる自分の感情が何色なのかも分からなくて、ただ無性にランスに会いたいと思うメルフェイスであった。

 

 

 

 メルフェイスの妊娠が天才病院で確認されると、その報告はマリスの定めた規則に基づいて速やかに宮廷に届けられる。

 五十六に続いてメルフェイスが妊娠したとの噂は、瞬く間に宮殿に広まっていった。

 マリスの耳にもすぐに入り、マリスは困った顔をしてしまうことになる。

 また皇妃であるリアが荒れてしまうのは確実であった。

 

 メルフェイスを孕ませた当の本人であるランスは、リーザスで起こった騒動を知らない。

 シャングリラでの月の宴に夢中になっていた。

 ランスがリーザス城に帰還するのは、まだまだ先であった。

 

 

 

 

 

 

<LP3年10月18日>

 

 ランスとルチェ・デスココ387世の関係が、両者の対立にまで深刻に悪化した切欠は日光の美麗な容姿であった。

 

 もともとランスサイドのルチェへの心象はまるっきり良くなかった。

 単なる醜いデブという認識であったので、ルチェに対しての遠慮は全くなかった。

 ルチェ側は自分がランスと対等の存在であると考えていたため、両者の認識の食い違いは甚だしい。

 両者に意見の相違が見られたとき、あっという間に偽りの友好関係は崩れることになる。

 

 

 

 護衛役も兼ねる立場の日光は、ランスが際限なくシャングリラの美女たちとの享楽に現を抜かすのを側で見続けることになる。

 月の宴を過ごす間、ランスの相手を務めるシャングリラの美女たちに対して、日光は言いようの無い違和感を感じ続けていた。

 タイミングを見計らってランスに小言を言い続ける日光であったが、一向にランスは聞き入れようとはしない。

 

 日光はランスの護衛のために常にその側から離れることはなかった。

 そのため初日からランスの夜の相手をする面子の中には、本人の意思も関係なく必ず日光が入ってしまうことになる。

 

 夜のベッドの上でも同様であった。

 ランスがシャングリラの美女たちに日光への愛撫を命じたために、日光はランスに貫かれつつ複数の愛撫に晒されることになる。

 毎晩ランスの激しさにすぐにノックアウトされ、快楽に朦朧としながらベッドにその身を横たえてしまうことになる日光。

 かすんだ瞳でランスがシャングリラの美女たちと合体しまくる様を眺めることになるのである。

 

 日光のJAPAN女性特有の肌の白さは、シャングリラの美女たちの間でも特別目立っていた。

 朝に目覚めたランスは、日光がベッドから抜け出し、いつもの白い着物を付けようとしているのを寝ぼけ眼で見る。

 その女性らしい優美な着替え姿をぼんやりと眺めつつ、ランスはふと素晴らしいアイデアを思いついてしまう。

 ランスはシャリエラを初めとするシャングリラの美女たちに日光の衣装を変えるのを手伝うように命じた。

 

 ランスは日光とシャリエラを連れ添って朝風呂に行く。

 日光がランスの躰を自分の躰を使って洗っている間に、日光の衣装はシャングリラ風の肌が露な踊り子の衣装に取り替えられてしまう。

 風呂から上がった日光は衣装が取り替えられていることに気づき、ランスに対して抗議する。

 だがランスは絶対にこの衣装を着るようにと命じた。

 

 日光は途方に暮れてしまう。

 服が無いとランスの護衛もできない。

 仕方なくその露出が多すぎる衣装を着ることをしぶしぶ承諾するしかなかった。

 ランスの命で日光はシャリエラに引き連れられて、化粧室に押し込められてしまった。

 

 

 

 朝から宴に興じるランス。

 その前にシャリエラに案内された日光が現れる。

 

 日光に用意されたシャングリラ風の踊り子の衣装は、布地がほとんど無いタイプのものであった。

 当然下着も着用するようなものではない。

 透き通るような日光の肌が強調され、非常にセクシーな格好であった。

 

 胸元は伸縮性のある布地のビキニである。

 そのビキニで持ち上げられるように抑えつけけられているため、豊満な日光の乳房は今にも零れ落ちそうになっていた。

 日光の乳房が豊満すぎるために布地は限界まで伸びきっており、なお且つ光の加減で透けて見えるため、乳首の位置も一目瞭然である。

 腰もシースルーの膝丈の直垂が細い金属の飾りで前面に留められているだけで、お尻が丸出しである。

 後から見ると裸のそのものの格好であった。

 

 長くしなやかな黒髪はポニーテイルで結わえられている。

 普段はあまり化粧をしないその美顔も、踊り子風に化粧が施されていた。

 目元が挑発的な色気を放つ。

 

 驚嘆するランスを前にして日光は己の身を恥じらい、身じろぎしてしまう。

 このようなふしだらな格好をさせられたのは生まれて初めてであった。

 日光の踊り子姿のひどく気に入ったランスは、側に日光を引き寄せ、胸をもみつつ酌をさせる。

 

 ちょうどそのときデスココが宴の席に現れた。

 ランスの側に侍る日光のその卑猥な踊り子姿を見たデスココは、その巨体をブルリと震わせて固まってしまう。

 食い入るように日光の透き通るような肌を凝視するデスココ。

 その眼光には隠しようも無い好色さが満ち溢れていた。

 

 デスココの視線に気がついた日光は、肌も露な自分の躰を両手で隠しつつ、デスココをキッと睨み返した。

 日光はデスココに対し、怪異な巨体は関係なく生理的に強い嫌悪を抱いていた。

 直感的にデスココが歪んだ精神の持ち主であることを見抜いていたのである。

 

 日光の様子から自分の女の肌を断りも無く無粋に見つめるデスココに気づき、文句を言うランス。

 デスココは慌てて視線を柔和なものに代え、日光の美しさを賛美した。

 自分の女を絶賛されていくうちに、ランスも上機嫌となっていく。

 そして、デスココはリーザスとシャングリラの友好関係のためという題目で、ランスに対して日光の舞を所望した。

 

 

 

 無言でランスに対して拒絶の意思を示す日光。

 殿方を楽しませるために舞を舞うなど、根が基本的に武人である日光にとって耐え難い屈辱であった。

 ましてや現在の主人であるランスにだけならまだしも、デスココに対して珠の肌を晒すことになるのである。

 

 しかし肝心のランスの方は、日光がその踊り子の衣装で舞う様を見てみたい気持ちがかなり強かった。

 自分だけのものである日光の艶姿をデブに見せるのは癪である。

 だが、こうでもしないと日光がその衣装で踊るなんてことはないだろうと考える。

 見られるだけならいいかと割り切り、日光に対してほがらかに舞を舞うように命じるランスであった。

 

 日光はあまりの展開に卒倒しそうになるが、何とか持ちこたえる。

 額に怒りマークをつけてランスに詰め寄る日光。

 しかしランスは月の宴の招待のお礼として、日光に対して舞を一指しシャングリラ王へ与えるように命じる。

 公務であると言いくるめられ、日光は泣く泣く宴の席の真ん中に立つことになる。

 

 日光が舞ったのはJAPAN舞踊であった。

 シャングリラ風の楽曲にあわせて巧みに舞い踊る日光。

 次第に興が乗ってきて、日光の表情は敵と渡り合うときのように真剣なものになる。

 その卑猥な格好とは対照的な、日光の凛としたその表情と優雅に舞い踊る物腰は、非常にアンバランスな魅力を振りまく。

 その姿はデスココの心を強く打つことになる。

 一方ランスは、舞い踊る日光のめくれ上がる腰の直垂や、揺れる乳房や尻の動きに夢中になっていた。

 

 舞い終わり、デスココに対して跪き、礼を述べる日光。

 舞を終えた日光の、裸同然の格好でその透き通るような肌に汗を滴らせた姿は、ひどく官能的であった。

 ランスはやんやと拍手するが、デスココは固まったままであった。

 

 

 

 舞い踊る日光を見て、デスココは初めて真実の美に出会ってしまった。

 JAPAN女性の日光の美麗な容姿は、デスココにとって自分の世界が壊されるほどに衝撃的であり、魅力的であった。

 

 シャングリラの美女たちはデスココがランプの精に願って作り出した人形たちである。

 当然、デスココが理想とする女性像が反映されている。

 だが元が砂漠の商人であるデスココは、JAPANの女性と知り合う機会がほとんど無かった。

 そのためJAPANの女性はデスココの理想の範疇になかった。

 シャングリラの美女たちの中には、日光のようなタイプは存在しなかったのである。

 

 自分が今まで囲ってきた人形たちの容姿など、日光に比べれば屑のようなものだと認識してしまうデスココ。

 日光の舞を見て急に落ち着かなくなったデスココは、内密な話があると言ってランスに対して側に来るように頼んだ。

 汗臭いデブに近寄るのは嫌だったが、一応は友好関係にある。

 仕方なくランスはデスココの側に心持ち近寄る。

 

 近寄ってきたランスに対して、デスココは日光を譲ってくれるようにお願いする。

 デスココは月の宴にランスを招待してあげたお礼として、日光を所望したのである。

 十分な移籍金を用意し、さらにはシャングリラの美女たちの半分をトレードでリーザスに譲り渡すとまで言い出したデスココ。

 ランスはデブが何を突然言い出しやがると唖然とする。

 

 

 

 ランスが日光をデスココにくれてやるなんてことはありえない。

 ランスは当然のように拒絶する。

 自分の女に横恋慕されて、それを聞き流すほどランスは人間が出来ていない。

 お前のようなデブが日光さんを抱こうなんて神をも恐れぬ所業だ、と轟然と言い放つランス。

 このデブというキーワードが二人の溝を決定的なものとする。

 

 デスココは他人にデブと言われることが一番嫌いであった。

 さらに自分が理想の女性であると目をつけた日光は、そのランスが所有しているのである。

 日光を思いのままにすることのできる立場にいるランスに対して、妬みの感情が爆発してしまう。

 

 一気にリーザス帝国皇帝ランスとシャングリラ王ルチェ・デスココ387世の友好関係は崩れ去る。

 一触即発の空気が宴の場を支配することになる。

 

 

 

 

 

 互いに敵意を剥き出して対峙する二人の王。

 緊迫したその場面に一筋の涼しげな風が流れた。

 気がつくと一人の美しい女性が広く開放的なバルコニーに浮かんでいた。

 

 

 

 唐突なその登場の仕方と、その女性の発する存在感の大きさにその場にいた皆の動きが止まってしまう。

 女性を守るように、五つの美しい宝玉が女性の優美な肢体の周りを取り巻いていた。

 その光景はこの世のものとも思えない幻想的な美しさであった。

 

 皆の注目を一身に集める中、その女性は優美な仕草でフワリとバルコニーに降り立つ。

 そして、その女性の美しい金色の瞳はゆっくりとランスに向けられたのであった。

 

 その女性と視線を合わせたランスは激しく動揺してしまう。

 自分は幻を見ているのではないかと己の目を疑ってしまったランス。

 それほどまでにその女性の容姿は、絶世の美女と称するに相応しいほど突き抜けていたのである。

 

 ランスのことを確認したその女性は、ランスに向かって優雅に歩を進める。

 歩くたびに煌く光の粉が辺りに振りまかれるような、その女性の絶世の美貌。

 そして、その極限まで洗練された物腰の前に皆は沈黙を余儀なくされてしまう。

 

 

 

 メガラスの報告を受け、リトルプリンセスの保持していた魔王の力がランスなる人物に移行してしまったことを知ったホーネット。

 メガラスからランスがルドラサウムと敵対していることを聞き、ホーネットは魔王城の書庫に篭って真実を知る。

 ホーネットはラ・ハウゼルに後事を託し、ランスに会うために東へ向かった。

 

 出発に先立ち、ホーネットはランスがシャングリラにいることを突き止めていた。

 ホーネットは魔王の居場所を探知する魔法を習得していた。

 この魔法は聖魔教団が編み出した秘術の一つであり、魔人の中でも使用できるのはホーネットただ一人であった。

 ホーネットはこの魔法を用いてリトルプリンセスの避難した先を探知し、サテラたちを派遣したのである。

 

 シャングリラに降り立ったホーネットは、リーザス帝国軍の緑の軍の騎士たちがバカンスを楽しんでいる場面に直面する。

 ホーネットは、その緑の軍の騎士たちに対して、ランスという方が今どこにおられるのかを尋ねる。

 ホーネットのあまりの美貌に舞い上がってしまった騎士たち。

 問われるままに、ランスがシャングリラの宮殿にいると答えてしまう。

 礼を述べてフワリと飛び去ったそのホーネットを、騎士たちは呆然と見送ることになる。

 

 宮殿を外から観察し、謁見の間と思しき部屋にランスらしき人物を確認するホーネット。

 開け放たれたバルコニーに優雅に降り立ったホーネットは、昂ぶる心をその鉄壁の精神で押さえつけ、その一歩を踏み出したのであった。

 

 

 

 ランスの前まで進み出たホーネットは、跪いて初めて拝謁する挨拶を行ったのち、自分の名を名乗る。

 ホーネットはその声までもが完璧であった。

 その白い喉から発せられた玲瓏な美声は、まるで天上の調べのようであった。

 

 耳に染み入るような心地よいその挨拶に聞きほれていたランスは、ホーネットの名を聞いて愕然としてしまう。

 サテラやサイゼルによって事前にインプットされていた、魔人ホーネットの容姿に関するデータは完全に嘘だったのである。

 謀られたと激しく動揺してしまっていた。

 

 新たな自分の主となるランスという人物がどのような男なのか把握すべく、ホーネットは心のセンサーを全開にして顔を上げた。

 じっとランスの瞳を見つめるホーネット。

 ランスの容姿に関して観察する余裕はホーネットには無かった。

 今のホーネットの最大の関心事は、ランスという人物が心を込めて仕えるべき主君であるのかどうか只その一点のみであった。

 

 その美しい面を上げたホーネットと至近で見詰め合うことになるランス。

 ランスはホーネットの美貌に圧倒されていた。

 これは、美女を目の前にしてランスがみせる反応にしては、非常に珍しいことであった。

 ホーネットと出会った瞬間から甘酸っぱい胸の高鳴りを抑えきれず、頬を赤らめてしまう。

 そして真摯に自分を見つめてくるホーネットの高貴な金色の瞳から、吸い寄せられるように目を離せなくなる。

 

 

 

 見詰め合うランスとホーネットの二人。

 こうして人類圏を統べる王であるランスと魔人領の主であるホーネットは、シャングリラの都で初めて出会うことになる。

 二人は運命の鐘がどこかで鳴り響くのを確かに感じていた。

 

 二人が出会ってしまったことにより、歴史の流れは急激に加速していくことになる。

 廻り始めた運命の輪はもう誰にも止められなかった。

 大陸全土に戦の炎は広がり、やがてその炎は、この大陸の創始者である創造神ルドラサムの意思さえも焼き尽くしてしまうことになる。

 

 

 

 

 

 デスココはホーネットを前にして呆然となる。

 ホーネットの美貌は、日光の容姿と同様にデスココの想像を超えていたのである。

 ランスを月の宴に呼んでからというもの驚かされることばかりであった。

 

 出会ってからずっと見詰め合ったままのランスとホーネットの二人。

 すでにそこには二人だけの世界が作られてしまっていた。

 雄雄しく立つ美男子とその側にたおやかに跪く美女が見詰め合う様は、まるで一服の絵画のようであった。

 すっかり無視される形となってしまったルチェ・デスココ387世。

 

 その巨体を揺らして無視しないでくださいと怒る。

 ランスはホーネットとの時間を邪魔されて、明らかに不機嫌になる。

 ホーネットはデスココに気づくと、スッとランスに一礼をして立ち上がると、デスココに対して向き直り、礼儀正しく挨拶を述べた。

 その所作はまさに完璧であった。

 

 魔人にとって人間とは単なる家畜のような存在である。

 しかし母親が人間のホーネットにとって、人間とは自分と対等の存在であった。

 そのためホーネットの人間の王に対する応じ方も礼儀を踏まえたものになる。

 

 ホーネットはシャングリラ王の容姿に対して一片の嫌悪感も抱くことはなかった。

 デスココ以上に醜い魔物たちがたくさんいる世界で生まれ育ったので、当然である。

 醜い容姿の魔物たちの中にも心優しい者たちはいる。

 ホーネットは人を判断する上で一番大切なのは、外見でなく内面であることをよく理解していた。

 

 シャングリラ王ルチェ・デスココ387世に対して、ホーネットは自分の名を名乗った。

 そしてランスとの会談を邪魔してしまったことを真摯に詫びる。

 さすがに自分が魔人であることはデスココに対して伏せる。

 

 デスココは自分の容姿に向けられる嫌悪感にひどく敏感である。

 しかし、目の前にいるホーネットからは、自分に対する嫌悪感が微塵も感じられないのである。

 それはデスココが人形以外の女性と対面する上で初めての出来事であった。

 その美貌と誠実な態度に、デスココは完全にノックアウトされてしまう。

 ランスと同様に、ホーネットに対して一目惚れしてしまったのである。

 

 

 

 ホーネットはまるでランスが己の主君であるかのような態度で、ランスに接していた。

 まさか日光だけでなくこの絶世の美女であるホーネットもランスに忠誠を誓っているのであろうか。

 ランスとホーネットの関係を邪推し、ランスに対して嫉妬する感情が溢れ、その贅肉をブルブルと震わすデスココ。

 デスココは震える声で、ランスとホーネットに対してその二人の関係がどういうものなのかと問いただした。

 

 言葉に詰まるランス。

 ホーネットが魔人であるならば、彼女もまた魔王であるはずの自分にとっては、奴隷のような存在であると言っても過言ではない。

 しかし、このときランスは、デスココのその問いに対してひどく困惑してしまったのであった。

 それだけランスはホーネットに対して運命的なモノを感じていたのである。

 

 逆にホーネットの方が、ある意味積極的であった。

 一瞬怪訝そうな表情を浮かべるホーネット。

 だが、ランスが答えようとしないため、デスココの問いに対してはっきりと自分の立場を答えてしまう。

 ランスのことを心を込めてお仕えしなければならない方であると、ホーネットは明言してしまったのである。

 

 ランスを自分にとって大切な存在であると表現したそのホーネットの言葉を聞いたデスココは、激怒してしまう。

 デスココにとって、日光とホーネットの容姿端麗さはその人形至上主義をあっさりと吹き飛ばしてしまうほど強烈であった。

 その日光といい、ホーネットといい、ランスは自分が決して手に入れることのできない生身の美女を手に入れている。

 デスココはランスによって人形の美女たちにしか愛されない我が身の情けなさをまざまざと見せ付けられたのである。

 

 ランスに対する妬みの心を爆発させたルチェ・デスココ387世は、怒りに任せて禁じ手を発動させてしまった。

 デスココは持っていたランプを<きゅきゅきゅきゅきゅ>と右の手のひらでせわしなく磨いた。

 「かもーんアラジーン」というデスココの掛け声と供に、その黄金のランプからモクモクと煙が生まれ、ランプの精がその場に現れた。

 ランスもホーネットも日光も、唖然としてその様子を見つめることになる。

 

 

 

 デスココは呼び出したアラジンに対して願いを告げた。

 その願いとは、日光とホーネットのランスに対する忠誠心を失わせ、彼女らを自分に隷属させなさい、というものであった。

 

 ランプの精はその持ち手の願いを10個叶える。

 デスココはずでにランプの精・アラジンに対して9個の願いを叶えさせていた。

 残された最後の1個の願いを叶える権利は、デスココのとっておきであった。

 

 さらにその黄金のランプは、持ち主が10個の願いを叶えるまで持ち主の老化を凍結する効果も持っていた。

 10個叶え終わると、デスココはランプの精の主人ではなくなり、ランプの精は100年の眠りにつくことになる。

 よって、デスココがその最後の望みを叶えてしまったならば、せっかく手に入れていた不老の特性を失うことになってしまうのである。

 それでもデスココは、そのとっておきの一つを日光とホーネットを手に入れるために使ってしまうことを決意してしまっていた。

 

 だがそのデスココの願いは、あっけなくアラジンによって却下されてしまう。

 焦って理由を問うデスココに対して、とにかく無理ですと言い張るアラジン。

 

 ランスという人物が生きている限り、その願いは聞き入れられません、というアラジンの言葉に、デスココは歯噛みする。

 そしてデスココはその願いを修正する。

 アラジンに対して、ランスを殺して二人を自分のモノにするようにお願いしたのである。

 

 

 

 シャングリラの宮殿の宴の間は一気に戦場と化した。

 煙に包まれながら向かってくるアラジンの青い巨体に対抗するために、踊り子姿の日光を抱き寄せて戦闘態勢を整えようとするランス。

 しかし、ランスが日光を聖刀化させる間もなく、アラジンが攻撃をしかけてきた。

 アラジンの攻撃を避けるランスであったが、アラジンの攻撃が激しく、なかなか聖刀日光をその手にすることができなかった。

 

 苦戦を強いられるランスであったが、その状況はホーネットがデスココをランスの敵と認識し、ランスの手助けを始めたことで一変する。

 五つの宝玉をゆっくりと旋回させながら、ホーネットはアラジンとランスの間にスッと割って入った。

 一種の魔神であるアラジンの攻撃は、魔人であるホーネットにも有効である。

 しかし両者の戦闘力は隔絶していた。

 もともとアラジンは戦闘タイプの精霊ではないのである。

 アラジンのランスへの攻撃は、ホーネットの完璧な防御の前に全てはじき返されることになる。

 

 ホーネットの強烈な反撃により、アラジンはボロボロにされてしまう。

 そしてようやくランスが日光を聖刀化させる儀式を終え、聖刀日光を掴んで戦闘に参加する。

 ランスの放った聖刀日光の一撃は、アラジンの具現化した躰をあっけなく両断するところとなる。

 アラジンは煙となってランプに逃げ込んでしまった。

 

 

 

 頼みのアラジンを打ち負かされてしまったデスココは、あひあひと悲鳴を上げて逃げ出そうとする。

 しかしあまりのランスに対する恐怖に腰が抜けてしまい、その巨体の贅肉をブルブルと醜く震わせることしかできなかった。

 

 ランプの精がいないと何も出来ないデスココの無能振りを目にしたランスは、デスココを面罵する。

 デスココはヒーヒーと怯えた声を出して震え続けるだけであった。

 完全にデスココに対する興味を失ったランスは、その煩わしい鳴き声を止めるために一刀の元にデスココを切り倒してしまう。

 

 こうしてシャングリラ王ルチェ・デスココ387世は、リーザス帝国皇帝ランスの手によって討ち取られた。

 デスココの死により、砂漠のオアシス都市シャングリラはリーザス帝国の占領下に置かれることとなる。

 それは大陸の中心に位置する広大な砂漠地帯をリーザス帝国が完全に抑えたということを意味した。

 

 しかしシャングリラのその戦略上の有利さをランスが完全に手中に収めることになるまで、もう少し時が必要であった。

 そして何よりも、魔人領から現れたホーネットとの会談がランスを待っていたのである。

 

 

 

 

 

 デスココの死と共にシャングリラの宮殿に異変が起こっていた。

 シャングリラの美女たちが、次々に力を失い倒れ臥していったのである。

 それはランスのお気に入りであったシャリエラも同様であった。

 

 

 

 持ち手であったデスココの死により、所有者の望みを叶えるランプの精であるアラジンはランスを新たな主人と認めた。

 ランスとホーネットの前に再度具現化したアラジンは、叶えて欲しい最後の願い事を尋ねる。

 ランスはよく事情を飲み込めてなかったため、一から説明を求めた。

 アラジンは自分が願いを叶えるランプの精であり、デスココに拾われてここにいる旨をランスに説明する。

 そしてランスやホーネットは、デスココがランプの精に何を願ったのかを知ってしまった。

 

 砂漠の商人であったデスココは砂漠の国の王となることを望んだ。

 王となった後、信頼する部下が存在しないことから国民全ての抹殺をアラジンに命じた。

 そして人形に魂を封入し、自分の意のままに動く奴隷を欲したのである。

 

 そのアラジンの言葉はランスに衝撃を与える。

 まずデスココのこれまでの愚行の数々に対して、唖然として言葉も出なかった。

 そして月の宴で自分の相手をしていた美女たちが、全て人形だったことを知ったランスは驚愕する。

 とても信じる気にはなれず、特にお気に入りであったシャリエラに対して事の真偽を確かめようとする。

 

 振り返ったランスが見たものは、力なく倒れ臥してしまっていたシャングリラの美女たちの姿であった。

 そしてシャリエラもまた、苦しげに床に崩れながらも悲しげな表情でランスを見つめていたのである。

 慌てたランスはシャリエラを抱き抱え、事情を聞く。

 そして、シャリエラはデスココが死により自分が人形に戻ってしまうことをランスに告げた。

 アラジンもまた、ランスに対して願いの効果は望んだ者の命に連結しており、人形に戻ってしまうのは避けられないことであると説明する。

 

 シャリエラは最後の力を振り絞って、ランスに対して優しくしてくれたお礼を言う。

 そして出来損ないである自分を人間として分け隔てなく扱ってくれたランスに対して、嬉しかったと告白した。

 シャリエラは最後にランスに会えて良かったと、幸せでしたと微笑み、ランスの腕の中でさよならを告げたのである。

 

 

 

 儚げに目を閉じるシャリエラ。

 ランスはシャリエラを呼び戻そうとするが叶わないことを知る。

 激情に駆られ、アラジンに対して己の願いを口走った。

 

 シャリエラを人間にしろ、というランスのその願いは、十分にアラジンの力の許容範囲であった。

 しかし、10の願いを叶えるアラジンにとって、これがその最後の10番目の願いとなる。

 アラジンは、ランスに対して、本当にその願いで良いのか確認を取る。

 ランスはシャリエラの命を助けるために最後の願いを行使することに、全く躊躇を見せなかった。

 

 しかし、アラジンに対して頷く直前、周囲で力を失っていく美女たちの姿を視界に入れてしまったランスはその願いを変えた。

 シャリエラだけでなくデスココの願いによって生み出された美女の人形全てを人間にすることを願ったのである。

 そしてその願いはアラジンに無事に受理されるところとなる。

 

 カウントを終えたアラジンは煙となってランプに戻り、100年の眠りについた。

 そしてランスの望みどおり、シャリエラは人として蘇った。

 シャリエラを安堵した表情で抱き寄せるランス。

 動転するシャリエラに対して、アラジンの魔力により人として蘇生できたことを説明した。

 

 ランスが自分たちを助けるために最後の願いを行使したことに感動し、シャリエラは涙する。

 嬉しさのあまりランスに抱きついたシャリエラは、一生ランスに仕えたいとお願いした。

 ランスは快くそのシャリエラの申し出を受け入れたのであった。

 

 

 

 ランスがシャリエラを救ったシーンを目の辺りにしたホーネット。

 そのやり取りの一部始終を側で見ていたホーネットは、シャリエラの生還を喜ぶランスの姿に深い感銘を受けることになる。

 あらゆる願いを叶える力、それも最後の機会を、己の欲望のためではなく惜しげもなく人形たちを救うために使用してしまったランス。

 そんなランスに対してホーネットは鳥肌が立つほどの衝撃を受けてしまっていた。

 驚愕しつつも、その聡明な頭脳でランスのあり方・思考パターンを認識することになる。

 

 ホーネットはランスとシャリエラの関係については全くあずかり知らぬところである。

 しかし、ほんの僅かながらも彼らのやり取りを耳にして、人形であるシャリエラの思いとその思いに報いたランスの熱い魂を感じ取った。

 震えるような感動に包まれつつも、魔王となったランスが心優しい男であるという認識を抱くに至る。

 ホーネットは安堵の気持ちでいっぱいになる。

 

 シャリエラが人間として蘇ったことを喜ぶランスの姿を見て、暖かい感情に満たされたホーネット。

 ランスを観察するホーネットの視線からは厳しさがすっかりと薄れてしまい、ランスを見つめるその瞳も和らいだ優しいものとなる。

 こうしてホーネットは、無意識の内にランスに対するガードを大いに緩めてしまうことになるのであった。

 

 

 

 

 

 ランスの願いにより、宴の間に崩れ落ちていた美女たちもまた人間に生まれ変わることになる。

 次第に意識を取り戻していく美女たち。

 

 シャリエラとは異なり、彼女たちは人として生まれ変わったことに途方に暮れてしまう。

 ほとんどの美女たちは、デスココを世界で一番美しく愛しい存在として崇めていた。

 そのためランスに対して愛憎反する感情を持つことになる。

 

 人に仕える生き方しか知らない美女達。

 そして生きる意欲に乏しい。

 彼女らが社会復帰するにはかなりの時間が必要そうであった。

 

 ランスが特別に己のハーレムに入れたいと思った女の子は、シャリエラのみだ。

 そのため、蘇らせたのはいいがランスは彼女らの処遇に困ることになる。

 ランスは迷った末に、シャングリラまで引き連れてきた緑の軍の騎士たちにシャングリラの宮殿にいた美女千名を分け与えることにする。

 

 

 

 主将であるランスの性格から、緑の軍はかなりの損耗率の高さが予想される。

 そのため若く腕の立つ騎士であり、さらには家を継ぐ必要のない騎士階級の家の次男や妾腹の子たちが配属されていた。

 彼らはいずれ自分の手で新たな家名を立てなければならない。

 しかしまだ分家する前の彼らは当然独り身であった。

 

 こうしてランスの深謀遠慮(気まぐれ)により、緑の軍の正騎士たちはそれぞれ一人一人余すことなく、美女一人を宛がわれることになる。

 恋人がいる者たちは、この突如の幸運に対しても辞退を申し出ようとする。

 だがいざ相手に引き合わされると、その考えを変えてしまうものがほとんどであった。

 

 ランスは配下の騎士たちに対し、宛がわれた美女を絶対に幸せにしろと厳命。

 騎士たちはランスから下賜された美女の容姿の素晴らしさに感激し、絶対に幸せにしてみせると堅く誓うことになる。

 この処置により軍部でのランスの人気はいよいよ高まり、特に緑の軍の将兵はランスに対して絶対的な忠誠を誓うことになるのである。

 

 

 

 

 

 

<LP3年10月19日>

 

 

 ホーネットは自分が仕える主として相応しいかどうかを見極めるために、魔王となったランスと納得がいくまで語り合う機会を欲していた。

 そのために魔人領から大急ぎで飛んできたのである。

 しかし、その矢先にデスココという思わぬ邪魔が入ってしまった。

 

 ランスと先に会談していたデスココが、ランスに対して突然攻撃を仕掛けた。

 客観的に見れば、ホーネットにとってはいい迷惑であった。

 けれどもそのデスココの死によって巻き起こった一連の騒動により、ランスの人柄を観察する機会を得た。

 そのことはホーネットにとって大いに有益であった。

 

 

 

 ホーネットは、シャリエラを抱きとめているランスに対して、柔らかく声をかけた。

 今後のことを話し合うために、是非とも私にお時間を頂けませんでしょうかと、真剣な瞳でランスに願い出たのである。

 

 ホーネットという絶世の美女の存在は、ランスにとって大いに気にかかるところである。

 しかし目まぐるしい事態の急変に気を取られてしまっていた。

 その存在を再度強く認識するところとなったランスは、顔を赤くしながらもホーネットのその申し出を承知する。

 

 ホーネットと話し合うために威厳を整えようとするランスであったが、ふとデスココの醜い死体が目に留まった。

 このような醜い死体のある場所で絶世の美女と語り合うなど、あってはならないことである。

 ランスはどこかいい場所はないかと考えを巡らそうとするが、そこである事実にハタと気づいてしまった。

 

 デスココを殺してしまったために、シャングリラに閉じ込められた状態になってしまった。

 デスココを見つつ憮然とした表情を浮かべてしまったランスに対して、ホーネットやシャリエラは怪訝な表情を浮かべる。

 

 リーザスへの道を閉ざされてしまったことに憂慮の言葉を述べるランスであったが、その心配はシャリエラによって簡単に振り払われる。

 偶然ながらもシャリエラは、シャングリラとリッチの道をつなぐ呪文を知っていたのである。

 だがシャリエラは、現在シャングリラは月の宴に入ったばかりであることを告げる。

 呪文が効く様になるのは早くとも一ヵ月後になるため、ランスはそれまでシャングリラにしばらく滞在を余儀なくされることを認識する。

 

 そうこうする間に、宮殿内の全ての美女たちが人間として蘇り、デスココを求めて大挙して宴の間に押しかけてくることになる。

 そのためランスもホーネットとじっくりと話し合うどころではなくなってしまった。

 

 デスココの死骸を見て泣き伏す千人もの美女たち。

 その光景を前にしたランスは、腰を据えての対応が必要となると認識し、気持ちを切り替えなければならなくなった。

 ランスはホーネットにしばらく待って貰うように頼み、本日中に話し合うための時間を作ることを約束する。

 ホーネットも状況が状況なだけに、素直にその申し出を了承した。

 そのためホーネットは、ランスの側に控えて一日中ランスの仕事振りを観察することになる。

 

 

 

 シャングリラを接収するにあたって、ランスが行わなければならないことは実に多かった。

 月の宴の期間が終わるまでの、旗下の将兵たちの食料と宿舎の確保は必須であった。

 制圧したシャングリラの全ての施設はもとより、貯蓄されている食料や財産の把握を大急ぎで進めなければならなかった。

 ランスはシャングリラの宮殿の王の間に陣取り、バリバリと仕事を片付けていく。

 

 人間として蘇った千人の美女たちへの対処も必要であった。

 面倒になったランスは騎士一人につき美女一名を宛がい、互いに相手の面倒を見ることにさせた。

 デスココを失って悲しむ彼女らはどこか暗く見え、もともと覇気がなかったのが気になっていたこともあった。

 そして何よりも、シャリエラ以外に閨房に入れるべき人材が見当たらなかったのである。

 

 美女選びは、基本的に位階の高い騎士から選択権を行使していくことになる。

 しかし美女たちの美貌や性格は、デスココの欲望に沿ってかなり高い水準で平均化されている。

 そのため兵たちの中で不満は一切発生しなかった。

 美女たちも人間となった自分の今後にかなりの不安を抱えてしまっていたため、定められたパートナーへ完全に依存することになる。

 

 ランスはホーネットとの時間を作るためにも、大急ぎでこれらの処置を行おうとする。

 シャリエラと日光の手を借りつつ、ランスは陣頭に立って事に当たる。

 しかし仕事をこなしつつも、ときおりホーネットに気を取られて惚けてしまう回数が多かった。

 その都度、らしくない自分に焦ったランスは頭を振って仕事に戻ることになる。

 全ての調整を終えた頃には日はとっくの昔に暮れてしまっていた。

 

 疲れて眠ってしまったシャリエラの面倒を日光に任せて、二人を寝所に引き下がらせる。

 広い王の間にはランスとホーネットの二人だけが残った。

 

 

 

 やっとホーネットと語らう時間ができたランス。

 バルコニーに佇んで砂漠の風景を眺めていたホーネットの元に、歩み寄るランス。

 

 明るい月光の中に佇んでいるホーネットのなよやかな姿は、幻想的でさえあった。

 声をかけようとしても、その美しさに何故か気後れしてしまい、声の出ないランス。

 

 ランスに気がつき、振り返って少し微笑むホーネット。

 その仕草・気品・美しさにランスの思考は一瞬停止してしまう。

 

 ホーネットは気を引き締め、真剣な表情を浮かべてランスと対峙する。

 そしてホーネットはランスに対し、その躰に触れさせてください、と頼んだ。

 ホーネットはメガラスからランスの魔王としての強制力は接触でしか発揮されないことを聞いており、ランスが魔王であることを確信したかったのである。

 

 

 ランスもかまわないとうなずいたが、内心ドキドキであった。

 少し顔を赤くするランス。

 

 ランスの胸に手を当てるホーネット。

 触れるか否かの瞬間にビリッとするものを感じ、思わず手を引っ込めるホーネット。

 ランスは緊張してしまい、無意識の内にホーネットに触れられるのを避けてしまったのである。

 それが強制力としてホーネットの手を反発させることになった。

 

 触れた瞬間に拒絶を感じ、思わず手を引き接触を断ってしまったホーネット。

 ほんの一瞬だったためにそれがランスの強制力であったかを理解することはできなかった。

 

 ホーネットは困った顔をしてランスを見る。

 ホーネットは、信用いただけないかもしれませんが、もしあなたが真実に魔王であるならば従う覚悟はできていますと告げる。

 危害を加えることはしないと誓約し、ランスに自分を受け入れるようにお願いしたのである。

 

 ランスはこれではイカンと考え、ホーネットに対して強制力を働かすためにサイゼルやカミーラに対したときのことを強く意識した。

 ランスが覚悟を決めたことを察したホーネットは、改めてランスの躰に触れるために手を伸ばした。

 ランスはホーネットの伸ばしてきたそのほっそりとした手を自分から取りに行き、そのままホーネットの華奢な躰を引き寄せてしまう。

 

 ホーネットは手を取られた瞬間にランスの躰から放射される力に従わされることになる。

 吸い寄せられるようにランスの腕の中に己の躰を預けてしまった。

 

 あっという間に抱きしめ合う二人。

 ランスはホーネットの抱き心地の良さと、その甘い体臭にクラクラきてしまっていた。

 いつまでも抱きしめていたい気持ちになり、より躰を密着させることになる。

 

 突然抱きすくめられて取り乱しそうになるホーネット。

 だが持ち前の精神力の強さを発揮し、動揺を面に出すことを避けるのに成功する。

 ただし、ランスの躰から放射される強制力により、身動きはできなくなってしまう。

 ホーネットはただランスの逞しい躰にすがりつく格好を維持するしかなかった。

 

 ランスはホーネットを壊れ物を扱うように大事に抱きしめてしまう。

 そのためホーネットの感じていたランスからの強制力は、非常に居心地のよいものであった。

 しかし、しばらく抱きしめられているうちにホーネットは次第に冷静さを取り戻しつつあった。

 殿方に抱きしめられる経験がなかったので、違う意味で戸惑いを感じてしまう。

 

 ホーネットはランスに対して離してもらうようにお願いしようとする。

 だが、身じろぎしたホーネットの様子に反応したランスと至近で見詰め合ってしまう。

 そして、そのまま二人はしばらくそのままとなる。

 

 ホーネットは、ランスから放たれる自分の心身を完全に支配してしまう強力な波動を全身で感じ続けた。

 同時にランスのホーネットに対して抱いてしまった強烈な思慕の情が、強制力という形でホーネットに伝わっていく。

 

 ホーネットは、強制力というよりも、そのランスが自分に対して描いてしまっている鮮烈なイメージに対して中てられてしまった。

 伝わってきたランスの思いは、今まで他人がホーネットに向けてきた全ての感情のどれよりも強烈で鮮明過ぎた。

 ランスが自分に対して抱いてしまっていたイメージがあまりに美しすぎて、ホーネットは激しい羞恥心を抱いてしまうことになる。

 

 流れ込んでくるランスの感情を拒もうとするホーネット。

 しかし、如何せんその流れが魔王と魔人の間に宿命付けられた強制力という形をとっていた。

 そのためホーネットの側からその流れを切断することは不可能であった。

 ホーネットは次第に頬を上気させてしまうことになる。

 ランスの強い思いに意識を引き寄せられ、囚われてしまったホーネットは、その心をランスに瞬時に奪われてしまったのである。

 

 完璧な美貌を崩し、頬を染めて、少し困惑した表情を浮かべるホーネットの姿は、ランスの心をかなり高鳴らせることになる。

 ホーネットの完璧なまでの美貌を至近で見せ付けられたランスは、その桜色をした形の良い可憐な唇に視線が釘付けになる。

 無意識のうちにホーネットの美貌に対して顔を寄せていくランス。

 ホーネットもまた顔を寄せてしまったために、互いの唇が完全に重ね会うことになる。

 ランスが無意識に抱いたホーネットとキスしたいという願望が、強制力としてホーネットにも影響を与えてしまっていたのである。

 

 

 そのランスの強い感情に激しく戸惑うホーネット。

 強制力に抗うことも忘れ、その力に導かれるままにランスにその唇を捧げてしまうことになる。

 ホーネットが己がランスとキスをしている事実に気づいたのは、ランスとの甘いキスに浸ってしまってからしばらく経ってからであった。

 

 二人は月光の中で抱きしめあったまま、いつまでもキスを続けることになる。

 

 

 

 ランスはホーネットとのキスに夢中になっていた。

 ホーネットに対して自分のキスへ素直に反応してほしいと無意識のうちに考えてしまっていた。

 その思いが強制力として自然に発動されてしまっており、ホーネットはランスの唇や舌の動きに敏感に答えてしまう。

 ランスはホーネットが反応する点を感じ取り、ホーネットが心地よく感じる舌使いを急速に学んでいく。

 ホーネットはランスのキスが心地よすぎてクラクラとしてしまうほどであった。

 

 初めてのキスをランスに捧げていることにやっと気づいたホーネット。

 ホーネットはこんなことをしている場合ではないと冷静に考え、眉を顰めて不満をランスに伝えようとする。

 だがランスの甘いキス攻勢に屈してしまう。

 ホーネットが真に嫌がったならばランスを拒絶することもできたであろう。

 しかし、そのランスのキスは決してホーネットを不快にさせないように細心の注意が払われていた。

 とても自然な感じで、いつの間にかホーネットはランスと舌を絡ませ合う淫らなキスに溺れてしまっていた。

 粘膜を接触させたことにより、よりランスからの強制力が増加してしまっていたことも影響していたと思われる。

 

 何も言わず、しばらくじっくりとホーネットとのキスに興じるランス。

 ホーネットは麻薬のようなランスのキスに答え続けるはめになり、完全にその身をランスに預けた状態になってしまう。

 二人の甘くて熱烈なキスは、ホーネットがランスの舌使い完全に打ちのめされて、クタリと全身の力を抜いてしまうまで続いた。

 

 

 

 ランスとの熱烈なキスを終え、その黄金の瞳をトロンとさせて、唇から銀色の糸を垂らしつつ、荒く息をつくホーネット。

 ランスとの口付けに溺れてしまい、ほんの少しだけ淫らに崩れてしまったそのホーネットの完璧な美貌は、ランスの男心を激しく揺さぶった。

 

 腕の中で完全に力の抜けてしまたホーネットのたおやかな肢体を、ランスはお姫様抱っこする。

 抱かかえられてしまったホーネットは、無意識にランスにしがみつくことになる。

 やがて自分の使命に思い至ったホーネットは、慌ててきちんと話し合う機会を下さるようにお願いしようとする。

 

 しかしホーネットは何も言うことができなくなってしまった。

 自分を抱きたいというランスの狂おしいまでの情念が、ランスの躰から強制力という形でヒシヒシと伝わってきたからである。

 ホーネットはその純粋なまでに自分を求めるランスの感情に中てられてしまう。

 自分を見つめるランスの視線に頬を赤らめ、恥ずかしげに顔を背けてしまうのであった。

 何もかもが、ホーネットにとって生まれて初めての経験であった。

 

 

 月光の中、バルコニーから王の間にお姫様抱っこでホーネットを連れて行くランス。

 それはまるで御伽噺のような幻想的で美しい光景であった。

 

 

 

 ランスは先ほどまで自分が腰掛けて仕事をしていた、クッションが敷き詰められた広いソファにホーネットをそっと下ろした。

 

 何も言わず、その身をソファに横たえたままランスを見つめるホーネット。

 すでにホーネットはその明晰な頭脳で自分の置かれた状況を理解していた。

 ランスによってこれからもたらされるであろう自分の運命を受け入れてしまっていた。

 だが、実のところホーネットは、殿方に躰を求められることにかなり激しく戸惑ってしまっている。

 ホーネットは持ち前の精神力で冷静になるように努めて、取り乱すような醜態を晒すこと避けるのに必死であった。

 

 この時点で、聖刀日光を持たないランスとホーネットの戦闘力を鑑みると、明らかにホーネットの方が上である。

 ホーネットがランスに対抗する手段はいくらでもあった。

 

 しかし、蝶よ華よと育てられたホーネットは、魔人は魔王に逆らってはならないという強固な固定観念を持っていた。

 そのためランスが自分の躰を求めるならば、素直に受け入れてその求めに応じるしか彼女に選択肢はなかったのである。

 そしてホーネットの中にランスに対してのマイナスの感情は存在しておらず、どちらかと言えばプラスの感情を抱きつつあったのである。

 

 ホーネットに覆いかぶさり、再びキスをするランス。

 ランスにとってもホーネットにとっても、夢のような一時が過ぎていくことになる。

 

 

 

 ホーネットの美しさは脱いでも完璧であった。

 ホーネットの裸身はランスに時が止まったかのような衝撃を与えることになる。

 そして運命に導かれるまま、ランスはホーネットにその身を絡み合わせていった。

 

 さすがに最初はかなり緊張してしまい、躰を強張らせてしまうホーネット。

 しかしランスが導くように心身両面において最高の接し方をしてくれた。

 ランスのお蔭で、ホーネットにとっていつまでも心に暖かく思い止めることになる幸せな処女喪失のシーンとなる。

 

 ランスの逞しさはホーネットの想像を超えていた。

 ランスと肌を合わせる心地よさは、父ガイを失ってから孤独であったホーネットの心を癒すことになる。

 破瓜の痛みも、ランスの愛撫(+中出し効果)によって魔法のように瞬く間に鈍い疼痛へと変化していった。

 何度も身も心も溶けてしまうほどにランスに愛されて、ランスと結合するたびに喜悦の感覚を味わうようになってしまう。

 

 ランスと粘膜を密着させてしまった結果として、より強烈な強制力を受けてしまったホーネット。

 ランスの願望により、快楽に対して耐えることを許されなかった。

 ホーネットは快楽に翻弄されるごとに喘ぎ、絶頂を告げるためにヨガリ啼いて、ランスを悦ばせるようになる。

 ランスにとってもまた、ホーネットとの躰の相性は、これまで誰とも経験したことのないほど完璧であり、次元が違っていた。

 戦慄すべき一体感の中で、ホーネットの全てがランスの飢えた心を満たしていく。

 

 こうしてランスは飽くことなくホーネットを求め続けた。

 ホーネットもまたその完璧な美貌と容姿をもって、ランスの求めに粘り強く答えていく。

 いつしか二人は、浮世の全てを忘れて、体を重ねあう快楽に溺れてしまっていたのである。

 歓喜の中で、裸で抱きしめあったまま、二人は眠りについてしまうのであった。

 

 

 

 夜が明けてもランスはホーネットを離さなかった。

 お決まりの朝風呂もホーネットを伴って楽しむことになる。

 

 配下の軍隊を足止めされてしまっているランスは、これから一ヶ月近くの月日をこのシャングリラで過ごさなければならない。

 だが、ホーネットに夢中になっていると時間は飛ぶように過ぎていく。

 ホーネットと個人的な親睦を深めるには一月ではとても少なく感じられた。

 ランスはホーネットに対してときめいてしまう己の心に正直になり、いつまでもホーネットを求め続けた。

 ホーネットとの甘い蜜月の日々を出来るだけ濃密に過ごそうと心に決めてしまったのである。

 

 いけないと思いつつも、ランスとの情事に溺れていくホーネット。

 才能豊かで気品溢れる優等生のお嬢様が、ちょっと不良ぶった男性に恋焦がれてしまう。

 そして、ダメとわかっていても身を持ち崩してしまうパターンに陥ったのである。

 魔人領で頑張っているはずのシルキィたちに悪いと思いつつも、ホーネットは求められるがままにランスの要望に答えてしまうはめになる。

 

 

 こうしてランスがシャングリラに滞在する間、その傍らにはホーネットが常に侍り続けることになる。

 

 

 

 

 

 

<LP3年10月20日>

 

 美樹は天才病院に移り、健太郎の面倒を(友達として)見る日々を送っていた。

 しかし美樹の心は常に遠く離れたシャングリラにいるランスに向けられている。

 処女と魔王の力をランスに奪われてからというもの、ほれ薬の効果ですっかりランスにラブラブとなっていた美樹。

 その後もランスに抱かれ、すっかりランスとのセックスが好きになっていた。

 

 美樹は魔人領から逃げる道中、泊まったある宿場の女将から男女のあり方についてのレクチャーを受け、性的なことに強い興味を持っていた。

 あらゆる機会を利用して健太郎にせまる美樹。

 だが、そんな美樹の思いに反して肝心の健太郎の方は一向に美樹の躰に手を出してこなかった。

 健太郎は無事に日本に帰るまで美樹に手を出さない清い関係でいようと願掛けをしていたのである。

 しかし、端的に言えば、ロリと周囲から罵倒されるのに耐えられなかっただけであった。

 

 女将の話では男は好きな女の躰を求めるものであるのに、健太郎は自分の躰に一向に見向きもしてくれない。

 女将の話が正しいのならば、つまり健太郎は自分のことを好きではなかったということになり、形だけの恋愛だった。

 もうおままごとのような健太郎との嘘の恋は卒業し、心のままに本当に自分を好いてくれる人と恋をしよう。

 そう心の整理を終えた美樹は、自分のことを求めてくれるランスに喜んで躰を預けていくようになっていた。

 

 そんな純真無垢な美樹にランスは最高に気持ちよすぎるセックスをきっちりと教え込んでしまった。

 セックスに対しての憧れが大きかっただけに、美樹はランスとのセックスに夢中になる。

 ランスとのセックスの気持ち良さに溺れた美樹は、これまでHなことを避けてきた健太郎を恨んでしまうほどであった。

 

 魔王の力を失い、躰の成長が再開されたことも美樹にとっては大きかった。

 ランスといっぱいセックスすることでより躰の成長が促進されると思い込み、より貪欲に性に関する知識を貪欲に吸収しようとする。

 日に日にどんどん大人っぽくなっていく自分の躰を見て喜び、大きくなるようにランスに胸を揉んで欲しいと甘えるまでになっていた。

 

 

 

 ここ数日、美樹は体調の優れない日々を過ごしていた。

 実はこのときすでに、彼女の躰は妊娠二ヶ月目に突入していたのである。

 日光と一緒にランスに抱かれた日に、美樹はきっちりと受精してしまっていたのだ。

 

 美樹も自分の躰に起こっている出来事になんとなく気づいていた。

 成長期が再開したことによる急激な成長の反動かもしれなかったが、それだけではなさそうであった。

 異世界に飛ばされてからというもの幾多の艱難辛苦を味わってきたが、美樹が月経不順になることは絶対になかった。

 そのためランスに抱かれてから予定日を過ぎても来ないことに、美樹はもしかしたらという気持ちでいたのである。

 

 17歳の未熟な女の子が自分が妊娠してしまったことを知る。

 この世界の住人ではないため、身寄りは一切ない。

 普通であれば不安に苛まれてしまうところであろう。

 

 しかし美樹の心にあるのは眩い希望のみであった。

 むしろ彼女自身がランスの子供を妊娠していてほしいと強く望んでいたのである。

 なにしろ美樹はランスのことを思うだけで不安は瞬く間に消え去り、夢見るような陶然とした気分になるのである。

 

 美樹は体調が優れないにもかかわらず、院長のアーヤ自らが行う健太郎の診断に付き添う。

 いつもどおりアーヤにお礼をしようとする美樹であったが、堪えきれない吐き気を感じ、トイレに駆け込んでしまう。

 むーと少し考えたアーヤはこれはやっぱりあれでしょうね~と一人納得し、美樹の後を追うことになる。

 女子トイレの洗面器に嘔吐してしまっている美樹の背中を優しくさするアーヤ。

 

 苦しくてちょっぴり涙がこぼれてしまった美樹。

 アーヤは"お相手は誰でしょうか?"とのほほんと尋ねた。

 突然のことになんのことかわからなかった美樹に"今のは多分間違いなく悪阻ですよ~"と説明するアーヤ。

 そのアーヤの説明を聞いた美樹は、嬉しさを込みあがらせることになる。

 

 一転して顔を輝かせた美樹の様子に、安心したアーヤは"念のためちゃんと検査しましょうか~"と申し出た。

 美樹はその申し出に喜んで飛びつくことになる。

 

 

 

 美樹は両手を堅く膝の上において、一途にアーヤの検査結果を聞いていた。

 検査の結果はもちろんばっちり陽性であった。

 自分が妊娠していることをアーヤの口から知らされると、満面の笑みを浮かべて思わず拍手してしまう。

 一頻り喜びを爆発させた美樹は、頬を染めてうっとりとした表情を浮かべ、自分の下腹部を愛おしげに撫でさするのであった

 

 その美樹の幸せな様子にアーヤは祝福の言葉をかける。

 アーヤはずっと感じていた疑問を美樹に聞いた。

 "お腹の中の赤ちゃんのお父さんはどなたですか~"と尋ねたのである。

 

 "健太郎さんなわけないですよねー"と素直に思っていることを口に出すアーヤ。

 健太郎は昏睡状態のままのため、物理的に不可能であることは明らかである。

 美樹もさすがに後ろめたい気持ちがあるのか、一瞬黙ってしまう。

 "・・・違います。健太郎君はただの幼馴染です!"と自分に言い聞かせるように節目勝ちに答えた。

 

 "じゃあ、やっぱりランス陛下ですか~?"とド本命を口にするアーヤ。

 美樹はランスの名を聞いた途端に真っ赤になってしまい、バレバレであった。

 ランスが五十六とメルフェイスに続いて立て続けに美樹までも孕ませてしまったことを知って、アーヤは驚く。

 アーヤはあらあらと目を丸くしてしまうのであった。

 

 アーヤはもちろん美樹が異世界の住人でなお且つ魔王であったことなど知らない。

 ランスから美樹のことを紹介されたときは、JAPANから来た大切な客人という説明だったのである。

 美樹が急に大人っぽくなり始めていたのも、ランスのせいなのかと一人納得するアーヤ。

 これはやっぱりマリスさんに知らせなきゃいけないのでしょうね~と、宮廷に連絡を入れてしまう。

 それは、妾妃がランスの御子を妊娠した場合の取り決めに沿っての行動であった。

 

 天才病院からの知らせを受けたマリスは、しばらく茫然自失になってしまう。

 鉄血宰相と名高い彼女には、まず有り得ないことであった。

 常識の範囲を大きく逸脱した事態に、さすがのマリスも理解が追いつかなかったのである。

 しかし、マリスは事態に立ち向かうために無理矢理自分を納得させなければならなかった。

 血相を変えるほど急いで天才病院に向かった。

 

 

 

 マリスはアーヤに詳細な情報を求める。

 アーヤはマリスに問われるままに美樹の体調の変化について答えていく。

 一般の妊娠の経過と変わりがなかった。

 

 アーヤの報告を受けて美樹の魔王化を心配していたマリスは内心安堵する。

 だが、美樹の身体能力の数値が一般の少女と変わらないレベルにあることに気づき、逆に違和感を受ける。

 普通すぎるのが異常であった。

 美樹は魔王であり、人間と同じ数値が出るはずがない。

 

 不審に思って直接美樹に問い質すマリス。

 その結果、美樹が既に魔王ではないことが明らかになり、マリスは大いに困惑する。

 美樹の話ではランスに抱かれてから魔王の力が消え去ったとのことであった。

 初めてランスと結ばれたとき、全てを吸い取られる感覚に襲われたことを恥ずかしげにマリスに告げる美樹。

 

 では、いったい誰が現在魔王なのか。

 吸い取られるような感覚という美樹の言葉から考えると、自然とある答えに行き着く。

 ランスが魔王となってしまっていると考えるのが妥当であった。

 余りにも想定外の事態にさすがのマリスも頭が痛くなる。

 

 マリスの目から見ると、ランスに変わったところは無かった。

 最近の夜の生活が信じられないほど激しいという報告は、かなみから受けていた。

 シィルがいなくなった反動かと軽く考えていたマリスだったが、どうやら違う理由だったらしいと今更ながらに気づく。

 聖刀たる日光が魔王であるランスの荒ぶりを静めていたことが、結果としてマリスの目を欺くことになってしまっていた。

 

 

 

 ランスが魔王であると仮定した場合の対処を考えるマリスであったが、すぐに答えを見つけることを放棄する。

 頭の良いマリスは、見切りも早かった。

 ランスが本当に魔王になってしまっていたとしても、リアがランスの妻であることを止めようとしないのは明らかである。

 

 魔王の力は強大であり、人が太刀打ちすることは不可能である。

 しかし、魔王であろうとなかろうとランスを縛ることはこれまで誰もできなかった。

 結局のところ何も変わらない。

 

 ランスの性格が変わってしまったというような様子は全く無い。

 これまでの美樹と同様に未覚醒の状態にある確率がかなり高い。

 マリスはその予測に基づいて大量のヒラミレモンの買い付けを行う。

 

 魔王の覚醒はヒラミレモンを摂取することで抑えられる。

 美樹がリーザス城に来てからは、要請を受けたマリスがヒラミレモンを手配していた。

 もし美樹が魔王となってしまったら、世界に暗雲が立ち込めることになる。

 マリスは美樹へのヒラミレモンの補給を欠かさないために細心の注意を払っていた。

 

 とりあえずランスがシャングリラから帰ってきたら、毎日ヒラミレモンを食べさせようと考える。

 今のところマリスにもそれぐらいしか対策案を打ち出すことが出来なかった。

 

 そしてもう一つ重大な問題があった。

 五十六の影響を受けて、リアがランスの子供をものすごく欲しがっているのである。

 人間が魔王の子供を産むことは実際問題として果たして可能なのか。

 マリスは緊急性を要するその問題に関して、早急に調査に乗り出していく。

 

 

 

 

 

<LP3年10月21日>

 

 情を交わしつつ、睦言を囁くように情報を交換しあうランスとホーネット。

 ホーネットとしては真面目な雰囲気の中で対話を行いたかった。

 人類と魔人領のこれからを決める大事な話し合いのはずだった。

 

 しかしランスはそのホーネットの申し出に頷きつつも、反対にホーネットの躰を優しく抱き寄せてしまうのである。

 ランスの腕の中にすっぽりと納まってしまったホーネットは、もうどうすることも出来なくなる。

 

 ランスのことをもっとよく知りたいホーネットではあったが、同時に留守にしている魔人領のことも気がかりであった。

 いつ何時ケイブリスの軍がカスケード・バウに再び押し寄せてくるかわからない。

 ランスという魔王を迎えて自分たちがどのような行動をすればよいか、早く方針を確立したかった。

 

 けれどもランスにしてみれば、そんなことよりもホーネット自身の存在の方がより重要である。

 飽くことなくホーネットの美麗な肢体に溺れ、ホーネットの見せる艶やかな反応を楽しむランス。

 シャングリラで足止めされることを受け入れていたランスは、これをいい機会と捉えてホーネットとの逢瀬を楽しもうとしていたのである。

 

 

 

 ホーネットもランスに求められるがままに応じてしまう。

 真面目な性格のホーネットにしてみれば、本来ならば耐え難いことのはずである。

 しかし何故かランスの成すがままに不真面目な行為に耽ってしまう自分がいた。

 しなければならないことがたくさんあるはずなのに、ランスと肌を重ねることをホーネットは優先してしまっている。

 

 もし魔人領に何か異変が起こったら、ハウゼルが念波で教えてくれるはずである。

 そんな風に自分を納得させる材料を見つけ出し、それを理由にして少しづつ堕落していくホーネット。

 そして愛し合う間だけ、その選択が不思議と間違ってはいない気分になってしまうのである。

 気がついたときには完全にランスに対して身も心も依存しきってしまっていた。

 

 ランスのホーネットへの思いが暴走してしまい、ホーネットの全てを知ろうとして激しく扱ってしまうこともあった。

 しかしホーネットはどんなに乱暴にされても耐え忍び、ランスの全てを受け入れた。

 

 どんなに激しく犯されても、触れている肌からランスの自分に対する激しい思いが伝わってくる。

 その拘束力は甘くホーネットの心を縛ってしまう。

 すでにランスという存在を強く感じられるその強制力を受けることは、ホーネットにとって非常に心地よいものになってしまっていた。

 

 

 

 

 

 

<LP3年10月22日>

 

 魔王の生殖能力に関して独自に調査を進めるマリス。

 まず最初にリーザス城に長期滞在中のサテラから情報を収集する。

 

 マリスはサテラがランスにラブラブなのを利用した。

 ランスの好むモノを教えると語り、有用な情報を引き出していく。

 サテラもランスに関する情報を欲していたため、実りのある対話が行われる。

 

 サテラからの情報によって、マリスは魔王ガイが人間の女性との間に娘を一人もうけていたことを知る。

 その娘は言わずと知れた魔王軍の盟主ホーネットである。

 ホーネットはただの人間の娘として産まれたらしく、マリスも希望を持つ。

 よもやそのホーネットが現在進行形でランスと激しく愛し合っているとは、思いもよらないマリスであった。

 

 

 

 しかし魔人信長の娘である香姫に話を聞いたマリスは、そっとため息を漏らすことになってしまう。

 香姫が手袋を外してその奇形な左手を見せてくれたのである。

 香姫は自分は信長が88人孕ませてやっと無事に生まれてきた唯一の娘であることを明かす。

 

 香姫も信長の子を孕んだ者達がどうなったかについては良く知らなかった。

 信長が外に漏れぬように情報を秘匿し続けたからである。

 香姫がその者達と会う機会は二度と訪れなかった。

 

 香姫の話を聞いたマリスはJAPANに赴くことを決意する。

 魔人信長の子を孕んだ者達がいったいどんな末路を迎えたのかを調べる必要があった。

 おそらく信長は出産に立ち会った者達を全て処分しているはずである。

 しかしそれでもマリスは調べなければならなかった。

 

 

 

 シィルの暗殺を断ったために、リアとマリスの間には埋めがたい溝が出来てしまっている。

 五十六の妊娠がその溝をもっと深くしていた。

 五十六の件に関してはマリスが余計なことをしたからであると、リアが考えている節があった。

 

 マリスを避ける素振を見せるリア。

 マリスにとっては非常に悲しい状態である。

 それでもマリスはあくまでリア命だ。

 

 ランスの子を妊娠したいというリアの望みをなんとしても叶えてあげたいマリス。

 だがリアの身に不幸な出来事が起こるのは絶対に避けねばならない。

 ジレンマに駆られつつ、答えを出すためにもマリスは行動する。

 リアの面倒を一時的に見られなくなっても、絶対に果たさなければならないミッションである。

 

 ランス不在の大事な時期にも関わらず、マリスはJAPANへ向かうことを正式に決める。

 表向きは不穏な情勢が続くJAPANの支配体制を固めるための出張という名目であった。

 後のことをバレスら将軍達に任せ、かなみを連れて出立するマリス。

 

 ランスだけでなくマリスも側からいなくなり、リアは余計に拗ねてしまうことになる。

 

 

 

 

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