ムーララルー、リーザスの強大化に危惧を抱いて行動を開始する。
JAPANの巫女・玉籤風華、神獣オロチの生贄となる覚悟を決める。
11月17日 リーザス城
ランス、レィリィを自分の秘書にする。
リーザス帝国軍、ヘルマン帝国領ポーンを攻略。
11月18日 アラン
ランス、アランの街でフレイアを捕獲。金銭で調略し己の部下とする。
ランス、離れ宮島の存在を知る。
11月19日 リーザス城
ヘルマン第四軍、ポーン奪還に失敗。ランス、クリーム・ガノブレードの存在を知る。
ヘルマン第五軍、帝都の命令を無視し、出撃を遅延。
11月20日 リーザス城
ヘルマン帝国、AL教団の申し入れを受け入れる。
11月21日 リーザス城
ムーララルー、エリザベートへ手紙をしたためる。
11月22日 リーザス城
ヘルマン皇太后パメラ、使節団を率いて川中島へ出立。
11月23日 リーザス城
ランス、親衛隊を率いて川中島へ出立。
<LP3年11月16日>
ここ半年のリーザス帝国の急激な勢力拡大は、AL教団の法王であるムーララルーに強い危惧を抱かせていた。
リーザス帝国は難攻不落のシャングリラを陥落させてヘルマン南部に進出してしまった。
その事実はかなり大きなインパクトをムーララルーに与えていた。
ランスが東と南の二方面からヘルマン帝国の首都であるラング・バウを望む体制を整えたことにより、ムーララルーの不安は頂点に達する。
さらにセコナオットから不穏な報告が入っていた。
リーザス帝国軍の一部の将校が、ヘルマン帝国に反旗を翻したパットン軍と親密に連絡を取り合っているというのである。
このまま事態が推移すれば遠からずヘルマン帝国は滅びる。
広大なヘルマン地方までリーザス帝国に飲み込まれてしまうのは火を見るよりも明らかであった。
リーザス帝国は自由都市国家群を残らず併呑し、JAPANも実質的に支配下においている。
つまりはリーザス帝国はすでに人間界の半分を抑えてしまっているのである。
その上でヘルマンまでもが吸収されてしまうとなると、残存する勢力はAL教団の他はゼス王国とJAPAN北部同盟だけとなる。
JAPAN北部同盟は世界最大の金山である佐渡を抑えてはいるが、所詮はJAPANの地方勢力であった。
吹いて飛ぶような組織力しかなく、リーザスがJAPAN統治に本腰を入れれば、あっという間に潰されてしまうであろう。
高い魔法文明を誇るゼス王国でも、単独で世界の過半を抑えたリーザス帝国に立ち向かうのはいかにも厳しい。
AL教団の法王ムーララルーはこれらの世界情勢を分析していた。
AL教団としてはリーザス・ヘルマン・ゼスの超大国が三すくみとなっている状態が望ましい世界のあり方であった。
これまで通り世界最大の信徒数を巧みに利用して牽制し合う大国同士を手玉に取る。
それがAL教団の影響力を相対的に増加させ、最大限の利益をもたらすことの出来る一番良い方法であった。
リーザスとヘルマンが戦端を開いた当初、AL教団の影響力が大きくなると考えてムーララルーはほくそえんでいた。
しかし今はヘルマン帝国側の余りの弱さに対して悪態を吐くに至っている。
現在AL教団とリーザス帝国の両者はJAPANへの布教の方針を巡っての難しい交渉を継続している。
ムーララルーとしてはリーザス帝国の影響力がこれ以上増加することは好ましくなった。
最低でもヘルマン帝国には、現状の勢力を維持し続け貰わなければ話にならない。
そんなときに降臨の間で女神レダからランスの影響力を低下させろと命令されてしまう。
レダの指示を守り、AL教団の利益を増大するためにムーララルーは行動を起さなければならなかった。
女信徒に己の男根をしゃぶらせながらムーララルーは対応策を練る。
飽きてランスにくれてやったエリザベードの代わりに、性奴として仕込み始めた女信徒である。
全ての状況を鑑み、ムーララルーはリーザス帝国がこれ以上の勢力を拡大することを阻止する方向に動くことを決定する。
心を決めたムーララルーは清純な信徒の口に精を放った。
世界のパワーバランスを保つため、ムーララルーはリーザスの拡大政策に歯止めをかけようとする。
そのためにはリーザス帝国のヘルマン侵攻を何としても止めさせなければならない。
そこでムーララルーは人道的な立場を装って、ヘルマン・リーザスの両国に和平交渉を強要することを考えた。
しかしリーザス帝国の力は強大であり、決して侮れるものではない。
そしてAL教団の重要な資金源でもある。
リーザス帝国側に不信感を抱かれることは極力避けねばならなかった。
有利なリーザス帝国側は和平を受け入れたがらないであろうが、人道的な見地で話を展開すれば成功する可能性は高い。
冬将軍の訪れによって両軍の将兵がかなりの消耗をしているという情報が、ヘルマンの信徒から報告として上がってきている。
ヘルマンは寒冷地である。
政府の対応の遅れにより、ヘルマン側の都市において今冬の凍死者の数が激増する恐れがあるとの報告も上がっていた。
宗教家としては和平の斡旋はもっともな名目であった。
腹心のサルベナオット・コンタオット・パルオットの三名を呼び出したムーララルー。
聖典の一文を読み上げ、ヘルマンの今冬の寒波による被害を嘆いてみせる。
そしてAL教団が両国の和平交渉を行うことがまるで神から与えられた使命のように語るのであった。
ムーララルーは和平に向けての両国の首脳会談を早急に執り行うように、幹部達に協力を求めた。
サルベナオットらはムーララルーの慈悲深さに感動し、ヘルマンの民衆や両国の兵士たちを救うために行動を開始する。
まず敗色の濃いヘルマン帝国側を説得するのが先であった。
ヘルマン帝国側が面子に拘って和平案を受け入れない恐れがあった。
だがムーララルーはAL教団の影響力を駆使して、是が非でも受け入れさせるつもりであった。
リーザス帝国に話を持っていくのはその後である。
パルオットがヘルマン帝国への勅使となる。
ムーララルーはパルオットに対して皇帝シーラ宛ての親書と宰相ステッセル宛ての私書の二通の手紙を渡す。
ステッセル宛ての手紙の方が今回の肝であった。
その手紙には和平案を受け入れた場合にヘルマン帝国が得られるメリットが長々と記載されていた。
手紙の中でそれとなく反攻のための体制を確立させることをほのめかすムーララルー。
さらに対リーザス戦線にゼス王国を巻き込むための策を講じることを誘導するような文面となっていた。
手紙の行間に、ヘルマン帝国の窮状を救うのはあくまでAL教団が自己の権益を守るためであるという思惑が露骨に潜んでいた。
パルオットがヘルマンに赴いている間、サルベナオットとコンタオットにはそれぞれの担当の仕事を進めることになる。
サルベナオットは和平案の作成と会談場所のセッティングを担当する。
会談を執り行う場所は、両国の警戒心を解くためにそれぞれの影響下にある都市は避けなければならない。
AL教団の総本山である川中島に両国の首脳を呼ぶことに相成った。
コンタオットはリーザス帝国側の担当である。
ヘルマン側の話が纏まるまでの間に、交渉のための下準備しておく必要があった。
リーザス帝国の政府内には数多くの信徒たちがいる。
信徒達を利用してランスが断りきれない状況にもっていこう画策する。
JAPANの長崎の街にある玉籤神社に二つの人影があった。
一人の巫女が神主である老人に神獣オロチの生贄となる覚悟を確かめられていた。
神獣オロチとは、四年に一度だけ目覚めてJAPANに災いをもたらすと遥かな古代から言い伝えられてきた存在である。
そしてLP4年がその年であったのである。
巫女の名を玉籤風華と言う。
神獣オロチへの生贄となるために、幼き頃から玉籤神社にて養女として育てられた特別な巫女である。
風華はこの年15歳であった。
JAPANの民は神獣オロチが目覚めるたびに清純な処女の生娘を供物として捧げていた。
生贄を捧げ、服従を誓い、再び眠りについてもらうという悪しきサイクルを繰り返してきたのである。
玉籤<神社は各地の神社から清純可憐な乙女に育ちそうな幼女を貰い受ける。
その娘をオロチへの生贄とするべく大事に育て上げていく。
四年に一度、オロチが目覚める度に一人の巫女の命が失われる。
その都度、将来の贄となる幼い娘が玉籤神社に連れてこられるのであった。
前回は千漣という名の巫女がオロチに捧げられた。
千漣は風華にとって優しい姉であった。
風華は立派に勤めを果たした千漣と同じようにオロチの生贄となる自分の運命を懸命に受け止めていた。
JAPANの民のために己の命を差し出すことを、その清い心で受け入れていたのである。
老人は心を痛めつつ、オロチへの生贄に相応しくなる様、精進潔斎をして身を清めることを風華に命じる。
風華は老人を悲しませないように震える手を抑えつつ、素直にその言葉を聞き入れたのであった。
リーザス帝国の皇帝であるランスが、オロチと風華を知るのはもう少し先の話となる。
<LP3年11月17日>
妊娠して以降のマリスは、ランスの個人的なオブザーバーの役割を担うことが多くなる。
これに伴って実際の政務のほとんどはマリスの部下達が行う形となった。
それは帝国のトップであるランスの負担が大幅に増えることを意味した。
これまでマリスのポジションで吸収していた様々な事項が、ランスのところまで上ってくるようになったためである。
仕事にキリキリ舞いになるランス。
これまでランスは、個人的なスケジュール管理に関しても全てマリスに任せていた。
だがマリスの負担を出来るだけ少なくするため、その仕事もマリスから取り上げてしまった。
早急にマリスに代わる人材を見つけなければならない。
適当な人材がいないか周囲を見回したとき、ランスは後宮にて暇を持て余しているレィリィを見つける。
レィリィはラジールの都市長の有能秘書だった女性である。
まさに適材適所な人事と言えた。
突然、秘書になるように要求されるレィリィ。
レィリィはランスのハーレムに属する今の自分の立場にうんざりしていた。
当然ランスに対しての心象も最悪である。
最初は断ろうかとも考えた。
しかし、それでは今の最低な生活を受け入れることになってしまう。
少し考えた後、レィリィはランスに対して取引を持ちかける。
つまり秘書の仕事を請け負う代わりに、夜伽の役目からの解放を要求したのである。
レィリィとしては完全にランスから自由になりたかった。
しかし過ぎた望みは身を滅ぼすことになる。
あまり受け入れられそうにない要求を突きつけても、秘書登用の話が白紙に戻ってしまうだけであった。
ランスが圧倒的に有利な立場にいることは変わりない。
今は躰を求められなくなるだけでも良しとすべきであると考え、レィリィはランスとの交渉に臨んだ。
ランスはレィリィの要求を生意気と感じる。
ラジールの併合時にランスは約束を守った。
その結果レィリィは自分の女になることを承知したはずである。
自分の女としてはあまりにも自覚に欠ける態度であった。
だがランスは断腸の思いでレィリィの要求を聞き入れることを決意することになる。
それほどまでにランスは有能な秘書を欲していたのである。
レィリィの躰には当然未練が残る。
だが、もともとレィリィとの性生活は全く上手くいっていないかった。
いずれヒィヒィ言わせてやるにしても、まずは隙を見せて油断を誘うことが肝心であった。
押してだめなら引いてみろである。
この取引の結果、レィリィは望みどおりに夜伽の義務から解放されることになった。
また、女性の将軍たちと同様にハーレムの外に自由に出られる権利がレィリィに与えられる。
ランスの秘書の役目を担うことになるのだから、当然であった。
晴れて秘書の立場を手に入れ、限定的とは言え自由を得ることになったレィリィ。
このまま逃げ出すこともできた。
しかし自由を得て初めてレィリィは自分が行く場所がどこにもないことに気づいてしまう。
故郷のラジールにはもう帰れない。
無血開城に協力した自分をラジールの人々が許すはずもない。
石持て追われるのは目に見えていた。
アムロには頼れるはずもなかった。
アムロには家族があり、迷惑はかけられない。
自分の思いはあの日で終わったのである。
レィリィはアムロへの思いに今だ心を揺らしながらも、必死に未練を断とうとしていた。
そのためアムロの新しい連絡先もあえて知ろうとはしなかった。
もしこの時点でアムロとの再会を果たしていたならば、また違った結末になっていたであろう。
どこにも行くところが無く特にしたい事ももう無かったレィリィ。
とりあえずランスと交わした約束通りに、与えられた秘書の仕事に大人しく従事することになる。
ある意味では仕事に逃避したと言っても間違いではない。
と言うようりも、のめり込まなければ到底やっていけない仕事量であった。
ランスは広大強大なリーザス帝国の皇帝である。
当然ランス個人のスケジュールはもう殺人的で滅茶苦茶な線表となっていた。
マリスはランスの秘書的な役割もこれまで破綻無くこなしてきた。
だがそれは完璧侍女のマリスだからである。
常人にはできない芸当であった。
レィリィはマリスの膨大な仕事量の内のランスのスケジュール管理の部分だけを引き継いだわけだが、それでも大変な量であった。
そうでなくとも破天荒過ぎるランスが、せっかくレィリィが組み上げたスケジュールを片っ端から壊していくのである。
一人では到底無理な仕事であり、レィリィは自分を補佐する人間を欲するようになる。
そのため全国各地からランス好みの有能な秘書たちが集められることになった。
ランスの好みそうな可憐な大企業の秘書。
ランスの好みそうな可愛い大企業の秘書。
ランスの好みそうな美しい大企業の秘書。
ランスの好みそうな清楚な大企業の秘書。
ランスの好みそうな処女の大企業の秘書。
当然のことながら皆が秘密部屋に属し、ランスに身も心も捧げて仕えることになる。
レィリィはこれらの美人秘書軍団を率いるシチーフとなり、ランスの日々の生活を管理することになる。
最初は冷淡に見放していたのだが、あまりにも酷すぎるランスの無茶苦茶振りに、次第に耐え切れなくなっていくレィリィ。
終いには己の抱いていた不満さえも忘れてランスを叱りつけ、スケジュールを厳守させるようとしてしまっていた。
ランスに対する態度は、マリスのそれと大分似てきてしまうことになる。
初戦の敗退に続けての大敗にヘルマン第四軍はボロボロの状態であった。
そんなヘルマン第四軍に対して、リーザス帝国軍は当初の予定通りに容赦無く次の手を打つ。
スードリ13を陥落させ、奪回に燃えるヘルマン第四軍を追い払ったリーザス帝国軍は、間髪入れずにポーン城塞に襲い掛かった。
赤の軍と紫の軍を中心としたスードリ13攻略部隊が、編成を崩さずにそのままポーンに駒を進めたのである。
ポーン城塞はヘルマン随一の堅牢さを誇る城塞都市であり、ヘルマン中域部の要と言える拠点である。
ポーンがリーザス帝国軍の手に渡ってしまった場合、ヘルマン帝国はその喉下に刃を突きつけられた形となる。
ヘルマン帝国軍全体の士気に関わるため、絶対に死守しなければならない拠点であった。
ポーンを失ってしまうこととスードリ13を失ってしまったことでは、その意味の大きさがまるで違った。
万が一にもポーン城塞を失陥してしまった場合、ネロの責任問題云々だけの話では到底収まらない事態になってしまう。
帝都ラング・バウの人々は、敵軍の帝都への進軍が何時開始されるかと怯え続けなければならなくなるのである。
しかし当のネロはポーン城塞の重要性を認識していないかのように振る舞っていた。
主将のネロのいつも通りの威厳を保った態度にいたく勇気付けられる第四軍の兵士達。
彼らはネロに指示されるままに意気揚々と迎撃の準備を進めていく。
クリームはその様子を冷めた目で見つめていた。
ネロの指示がまるで意味のないものであることは、クリームの目には明らかであったのである。
クリームから見れば、自軍の不利な状況をネロがちゃんと理解しているかどうかも非常に怪しいものであった。
先の戦いにおいてヘルマン第四軍は弓兵部隊を失ってしまっている。
その状態で篭城を行った場合にどうなるのかは火を見るよりも明らかであった。
面子に拘らずにラング・バウに対して救援を求めるべきであった。
ポーンの防衛力の高さを利用して攻め寄せてきたリーザス帝国軍の赤の軍の攻勢を防ぐネロ。
狭い戦闘域で叩き合う前衛部隊。
しかし防衛側には遠距離攻撃の手段が無く、攻撃側にはそれがあった。
リーザス帝国軍は容赦なく後方からの魔法攻撃を雨あられのようにポーンの守備隊に浴びせる。
守備隊はその攻撃を耐え忍ぶしかない。
戦力の不足を感じたネロは、初めてクリームの部隊に出撃を命じていた。
しかしクリームの部隊が配置されていた場所は、敵と交戦が可能な前衛ではなく後方部隊であった。
またもや飼い殺しの状態にされてしまっていた。
そんな状態から前線に出ろと言われても、他の部隊が邪魔をして前に出れないのである。
手も足も出せない状況のクリームの部隊は、リーザス帝国軍の魔法攻撃を浴びせ続けられる格好になる。
狭い戦闘域で戦う両陣営の前衛部隊は互いに致命的なダメージを与えられない。
この状況下においてリーザス帝国軍は後衛部隊による魔法攻撃を強めていく。
白色破壊光線や破邪覇王光等の極大魔法がポーンの城壁を揺らす。
クリームの部隊だけでなくネロの部隊にまで魔法攻撃が降りかかり、徐々に被害が増していくヘルマン第四軍。
このときネロは舌打ちを一つして全軍の撤退を決定する。
やはり篭城戦など騎士が取るべき戦ではないと吐き捨てながら、ポーンからの撤退を全軍に通達してしまったのである。
その命令を受けたクリームは唖然としてしまう。
現状の被害は現行の戦力にて篭城策を採った時点で予想できたものである。
ポーン城塞を頼りにリーザスの攻撃を耐え、これを守り抜くのではなかったのか。
敵の攻撃を堪えて防御に徹し続ければ、リーザス帝国軍はポーンの厚い城壁を攻めあぐねる形となる。
結果として被害は甚大になるが、ポーンの防衛はなんとか果たせることになるはずであった。
だがここで退いてしまってはそれも出来なくなる。
ポーン城塞はヘルマン帝国の生命線である。
ネロの余りにナンセンスな指揮振りにクリームは絶望を感じた。
ヘルマン第四軍が余力を残しつつも撤退してくれた御蔭で、リーザス帝国軍は労せずしてポーン城塞を陥落させることに成功する。
ランスが予測した以上の素晴らしい戦果であった。
リーザス帝国軍は、ラング・バウを攻略する上で絶好の橋頭堡をヘルマンの奥深くに築くことに成功した。
ランスはヘルマン帝国へのプレッシャーをさらに強めていくことになる。
<LP3年11月18日>
レィリィからアランの街に不審な人物が現れた旨の報告を受けたランスは、戯けた振りをし続けた。
どこにヘルマンの手の者の目があるかわかったものではなかったのである。
そして徐にコパンドンから購入した「忍者とりもち」を手にとって、スパイ狩りに出発した。
報告を受けたアランの街でフレイアを捕捉するランス。
自分の技量に絶対の自信があったフレイアは慢心していた。
いつもの様にランスをからかいながら逃亡しようとするフレイア。
しかしランスの投げた「忍者とりもち」が、フレイアの躰を絡め取る。
ランスは見事にフレイアを捕らえることに成功した。
とりもちに絡まったフレイアは、その見事なお尻を突き出した体勢で固まってしまっていた。
やっかいなノリマキも捕まってしまっており、邪魔は出来ない状況であった。
フレイアの見事なプロポーションに欲情したランスは、フレイアのタイツを引き裂いて強引に事に及んでしまう。
前の男と別れてから三年もセックスをしていなかったフレイア。
ランスの強引なセックスを不本意ながら楽しんでしまうことになる。
リーザスの皇帝とヘルマンの女スパイが路上で結合した姿を晒し、派手にセックスする。
信じられない光景が繰り広げられる。
ランスはタップリと中出しし、フレイアも絶頂に酔い痴れた。
ついうっかりいつもの癖で中出ししてしまったランス。
避妊魔法をしていたため、まあいいかというお気軽さであった。
偶然にも安全日であったフレイアは受精を回避することに成功する。
路上での情事の後、ランスはフレイアに対してリーザスに寝返るように交渉を持ちかける。
かなみに匹敵する腕前であり、なお且つフレイアはとてもいい躰をしている。
このままヘルマンに返すわけには絶対にいかなかった。
幾ばくかの条件交渉を行われた。
その後フレイアはヘルマンが約束していた額の二倍の報酬でリーザス帝国に雇われることが決定する。
こうしてフレイアは月収10万Gという破格の待遇でリーザスに迎え入れられることになる。
ヘルマンでの報酬は成功報酬であったことを考えると驚くべき待遇の良さであった。
ノリマキが危惧するように、普通ならば報酬の多寡によってクライアントを変えるスパイなど信用されるはずもない。
しかし逆にフレイアへの他勢力からの引き抜きは一切発生せず、ランスは安心してフレイアを使うことになる。
リーザス帝国の財力に敵う者など既に存在しないからである。
フレイアのような信頼の置けないスパイを信用して飼っているランスのような男は珍しい。
つまりはランスとフレイアの心身ともにフィーリングが合ったということであろう。
リーザスに鞍替えしたことにより、フレイアが担当していた破壊工作の仕掛けも、全て撤去されることになる。
さらにフレイアは、ヘルマン情報部(通称カーゲーベー)の内部情報を躊躇することなく漏らしてしまう。
この情報を得たことによって、リーザス忍者部隊のヘルマン国内での暗躍がかなり活発になる。
ヘルマン側のかなりの諜報員が、リーザス側に引き抜かれるか始末されることになるのである。
フレイアは後にランスの配下のまま、ヘルマン王家の元帥となるヒューバード・リプトンの妻となる。
フレイアはリーザスとヘルマンの二重スパイの役目を堂々と果たすことになる。
フレイアを捕らえるためにアランの街に赴いたランスは、首尾良くフレイアを捕縛して調略することに成功する。
リーザス城に帰還しようとするランスであったが、アランの街の北にある「離れ宮島」に興味を抱く。
ランスは同行していた秘書のレィリィに説明を求めた。
リーザスの地理に詳しくないレィリィは、大急ぎで「離れ宮島」について現地の役人から情報を収集することになる。
「離れ宮島」は、文字通り離島であり、通常は渡ることができない。
しかし不思議なことに、毎月はじめの週の晩にだけ不思議な光の橋が現れるという。
その光の橋によって大陸と宮島が結ばれ、島へ渡ることが可能となる。
そして宮島には一つのダンジョンが存在すると言う。
ダイナマイツな美女やメガトン美少女が潜んでいるのではないかと邪推するランス。
だが結構強力なモンスターが跋扈しているらしく、帰ってこない者も多かった。
そしてダンジョンから帰還した者は、ダンジョンの中での出来事について一様に口を噤んでしまうらしい。
実際のところ宮島のダンジョンの中に何が潜んでいるのかは明らかになっていなかった。
謎のダンジョンということで、ランスの冒険心に火が付く。
さっそく宮島に渡ろうとするランス。
しかしこの日は月の初めの週ではなかった。
残念なことに光の橋は現れておらず、島へ渡ることは不可能であった。
いかに天下のランスといえど空は飛べず、ここは引き下がるしかなかった。
「今度来るときまで橋をかけておけ!」と捨て台詞を残すランス。
公共事業での橋梁建設を命じるランスであったが、宮島は遠い。
現在の人の技術では到底無理な話であった。
レィリィはランスの無茶振りを呆れるしかなかった。
間近で秘書として仕えるようになって、レィリィは頭が痛くなってしまう日々を送ることになる。
<LP3年11月19日>
態勢を立て直したヘルマン第四軍がポーンを奪還すべく行動を開始する。
だがヘルマン第四軍の戦法は、相も変わらず突撃の一手だけであった。
リーザス軍にとってみればヘルマン第四軍ほど戦いやすい相手はいなかった。
突撃を足止めし、遠めから足の止まった軍勢に遠距離攻撃で集中砲火を加えればよいのである。
ポーン城塞に篭ったリーザス軍は、厚い城壁によってヘルマン第四軍の攻撃を防ぎ続ける。
そして効果的な魔法攻撃で堅実に攻撃軍の損耗を強いていく。
先のポーン奪取戦と同じ状況が、攻守の場所だけを変えて繰り広げられることになった。
第四軍の突撃が終わった後の戦場は前と同じように見るも悲惨な状態となっていた。
ヘルマン第四軍の主将であるネロはポーンに篭って出てこようとしないリーザス軍の卑怯さに勇み立つ。
攻勢を強めるネロ。
しかし結局は狭い戦闘域での攻防となってしまう。
ネロの考えるような華々しい騎士道に溢れた戦を展開することなど、一向に出来そうに無かった。
前回の戦いと同様に、敵軍の魔法攻撃によって打ち減らされていくヘルマン第四軍。
自軍の惨状にネロは不本意さで怒りを爆発しそうになる。
副将であるクリームはそんなネロを白い目で見つめていた。
そして懸命に自軍の崩壊を防ごうと報われない努力を続けることになる。
結局ヘルマン第四軍は何一つ戦果を挙げることなく、撤退に追い込まれてしまう。
リーザス軍の魔法攻撃により、後方に控えていたクリームの部隊は見るも無残な状況になっていた。
ヘルマン第四軍の実働兵数は、開戦前の半分近くにまで落ち込んでしまっていた。
後にランスは、この戦いの詳細な報告を受けることになるのだが、最初は全く興味を持たなかった。
だが報告の中で敵将の一人が美しい女性であることが述べられており、その点だけに目を引かれてしまう。
報告書には第四軍に所属する将軍たちの詳細なプロフィールや、得意とする戦法などの傾向まで記載されている。
そこまでカバーするほどリーザス軍の諜報能力は秀でたものとなっていたのである。
ランスはクリームの華々しい経歴自体には興味がなかった。
ランスの興味は添付されていた写真に映し出されていたクリームの美貌にのみ集中していた。
クリームの美麗な容姿は写真でもわかるほど際立っていたのである。
ランスはしっかりとクリームという美女の名前を記憶してしまう。
この戦い以降、ヘルマン第四軍に関してランスはネロよりもクリームの動向に注意を注ぐようになる。
帝都ラング・バウから出撃命令を受けても第五軍は全くに動こうとしなかった。
最初の出撃命令が下ってからすでに10日以上経過してしまっていた。
動こうとしないロレックスに対して帝都から何度も使者が派遣される。
その都度出撃体制が整っていないため、と追い返されてしまっていた。
少なくとも帝都からはロレックスは確たる理由も無しに出撃を拒んでいるように見えてしまっていた。
その第五軍の命令無視の態度は、帝都の首脳陣たちに疑心暗鬼を巻き起こしてしまうことになる。
ロレックス将軍は謀反を起こそうとしているという噂が流れ、実しやかに語られるようになる。
ロレックスがステッセルをよく思っていないことは明らかであり、噂の信憑性を高めていた。
全然命令に従う様子を見せない第五軍に対して、ヘルマン首脳部の対応も段々とヒステリックになっていく。
ヘルマン第四軍が予想外の敗退を続け、頼みのポーン要塞までもリーザス帝国軍に奪取されてしまっていた。
リーザス帝国軍が、帝都ラング・バウのすぐ側まで迫っているのである。
第五軍はヘルマン帝国軍の要である。
現状の戦況を考えれば、リーザス帝国軍と戦う上で決して失うべからざる存在であった。
その第五軍のロレックスが帝都の命令を一向に聞こうとしない。
もし第五軍の精鋭がそっくりリーザス帝国に鞍替えしてしまったならば、ヘルマン帝国は深刻な事態に陥ってしまう。
マイクログラードに配置されている第三軍は東と南から挟撃される形となり、敗退は確実であった。
この時点でラング・バウの首脳陣にとって、もっとも脅威を与える敵は味方のはずの第五軍がとなっていた。
すでにヘルマン首脳部はロレックスが謀反を起こそうとしているという点で認識が一致してしまっていた。
会議の席上でロレックスを排除する案も堂々と提案されるようになる。
しかし二刀流の剣豪として名高いロレックスを生半可な罠や刺客では倒せそうもなく、論議は堂々巡りを続けてしまう。
ステッセルはロレックスに対して激怒しながら、一向に進もうとしないその会議を苦々しく見つめていた。
実際のところ、第五軍が戦闘のための準備も何も全くしていなかっただけの話であった。
帝都の連中は皆が第五軍を精鋭と考えていたが、その評判は全くのでたらめだったのである。
第五軍は兵を集めるのにも苦労していたのである。
ただし整備の遅れに関しては、会計係のカチューシャの手腕で意図的に遅らされていた。
カチューシャとソルニアにしてみれば、リーザス帝国軍と戦うなどやりたくはなかったのである。
出撃すれば横領すべき軍資金が無くなってしまうからだ。
今日もまたカチューシャとソルニアは、その悪魔的な手管によってロレックスを快楽の淵に沈め、調教に余念がなかった。
ロレックスはカチューシャとソルニアが与えてくれる快感に溺れて、見す見す出撃の機会を逃していたのである。
<LP3年11月20日>
AL教団の使者パルオットが、ムーララルーの親書を携えて訪れたとき、ヘルマン帝国はその和平案を断ろうとした。
皇妃パメラが反発したからである。
パメラ自身、ヘルマン帝国がヘルマン東部域を失い窮地に立たされていることは、良く理解していた。
それでも誇り高きヘルマン帝国の皇妃として、負けを認めることはできなかったのである。
ましてや皇帝シーラ自らが交渉の席に着くなどもってのほかであった。
すぐに断ろうとするパメラに代わって宰相のステッセルは柔軟な対応をとる。
選択の幅を減らさないためにも協議のための時間が必要として、回答の引き延ばしを行ったのである。
ムーララルーの手紙が効いていた。
一旦は引き下がったパルオットであったがラング・バウに留まり、ヘルマン政府首脳部への説得と続けていた。
そしてここ数日でヘルマン側の対応が大きく変化していた。
ポーンを失ってしまったことがヘルマン首脳部に多大な衝撃を与えたのである。
ヘルマン帝国は建国以来最大のピンチを迎えていた。
砂漠から攻め寄せてきたリーザス帝国軍に一気にポーン要塞まで突破されてしまったのである。
そしてポーン城塞を占領されてしまったことにより、第四軍がコサックで孤立してしまっていた。
補給を断たれて増援も無い状態で戦いを強いられ、第四軍は急速に弱体化しつつあった。
ポーンはヘルマン随一の防御度を誇る城塞都市であり、さらにリーザス帝国軍の主力がいる。
現状では帝都からは手も足も出せない状況にあった。
また現状唯一動員可能であるはずの第五軍が、帝都の命令を聞かずに沈黙を続けていたことも影響が大きかった。
ヘルマン帝国は第四軍を救う為に、早急にしかも実効性のある手を打たなければならない。
しかし第五軍の主将ロレックスは宰相ステッセルの命令を無視し続け、離反の可能性まで噂されていた。
最早ヘルマン帝国は如何ともし難いところまで追い詰められていたのである。
ヘルマン帝国にとってリーザス帝国軍を領内から駆逐しなければならないのは絶対である。
その上でリーザス帝国領に逆侵攻をかけるのが皆の悲願であった。
しかしそのためにはまず第一に自軍の体勢を立て直さなければならないことは明白であった。
第一軍はすでに消滅。
第二軍はパットン派の反乱軍と対峙しており、動くことができない。
第三軍は帝都の防衛。
第四軍はコサックにて孤立。
第五軍は出撃命令を無視し、スードリ10で沈黙。
つまり現状でヘルマン帝国が自由に動かせる兵力は、帝都防衛の任を帯びた第三軍だけであった。
ステッセルはこれまでの戦いでようやく兵力の分散させる愚かさに気づいていた。
第二~第五までの各軍の力を結集させなければ、リーザス帝国に打ち勝つことはできない。
AL教団の面子を立てるというスタンスで和議を結ぶのであれば、ヘルマン帝国の面子も保たれる。
実のところヘルマン帝国側としては、今回のAL教団の申し入れはまさに渡りに船であったのである。
口惜しいが偽りの和議を結び、その間に軍部の体制を一新させることをステッセルは決意したのである。
パメラの説得を開始するステッセル。
ステッセルに惚れているパメラは不満を口にするも、愛しいステッセルを強く責めることはできなかった。
沈痛な表情を浮かべながら、その説得を受け入れることになる。
ステッセルの前では厳格な為政者の仮面が外れ、パメラはただのか弱い女になってしまうのであった。
しかし愛しいわが子であるシーラを川中島に行かせることに関してだけは、パメラは強く反対する。
それはステッセルも同じであった。
相手は鬼畜王ランスであり、何をするかわからず、だまし討ちも十分に考えられた。
ステッセルが愛しい自分の分身であるシーラを見す見す危険な場所に送り込むはずはなかった。
ステッセルはシーラの代わりに川中島に行くようにパメラに要請する。
驚いたパメラはステッセルを詰るが、ステッセルの説明は理路整然としており、反論を封じられてしまった。
確かに皇族ではないステッセルが代役を務めても、AL教団やリーザス帝国が納得するはずがなかった。
この世でシーラの代役になれる者は、その母親であるパメラしかいなかった。
皇帝シーラの生母で先帝の后としての格を持つ者として、パメラは適任である。
また対外的にも、彼女がヘルマンの指揮を取っているように見られていたのが大きい。
パメラは自分達の子供のために一肌を脱いで欲しいというステッセルの言葉に折れ、川中島での会見に向かうことを決意する。
言葉巧みに丸め込まれたパメラは、シーラを守るためにステッセルがラング・バウに残ることに関しても納得してしまう。
シーラの代わりに和平会談に臨むことになったパメラは、心配するシーラとつかの間の触れ合いを行う。
シーラにだけはパメラもそのたおやかな性格を隠さない。
シーラにとってパメラは本当に優しい母親であった。
シーラが生き易い時代を作るために苦労を厭わないパメラの姿勢は、母親として可憐であった。
感極まってシーラを抱きしめるパメラ。
パメラが若く見えることもあって、母子というよりも仲の良い姉妹のように見えなくもない。
パメラの姿には母性愛に溢れ、心温まる光景であった。
だがステッセルだけは、一人邪な目でその光景を眺めていた。
<LP3年11月21日>
ヘルマンを説得するのに成功したパルオットの報告を受け、ムーララルーはほくそえむ。
すでにリーザスに赴いているコンタオットに対して、リーザスへの正式な交渉を開始するように指示を出す。
そして自分の構想を確実なものとするために、新たに一通の手紙をしたため始めた。
その手紙はリーザス皇帝ランスの側で仕えている信徒エリザベートに対してのものであった。
ランスは身の回りの整理をさせるメイドとして、エリザベートを付き添わせていた。
エリザベートがランスの世話をしていることは本人からの手紙でAL教団にしっかり把握されていた。
ムーララルーは和平交渉成功のためにエリザベートに対して指示を出した。
もっと情熱的に仕えてランスを説得するように手紙にしたためたのだ。
手紙を受け取ったエリザベートは、ムーララルーの言葉に胸を熱くする。
エリザベートはランスのことを神に選ばれし聖なる英雄と信じ込んでしまっている。
ムーララルーと清めの儀式をするよりもランスとする方が断然気持ち良かった。
つまりより天国に近づけるのである。
ムーララルーの手紙はそのエリザベートの確信をより後押しするものでった。
ランスがより気持ち良く清めの儀式を執り行えるように、より誠心誠意締め付けることになる。
<LP3年11月22日>
ステッセルはミネバ以外の将軍達には内密で、AL教団が主催する和平会談に向けての準備を開始する。
アリストレスが今回の決定を知れば反抗してくるのは目に見えていた。
ミネバはステッセルの本当の狙いを知り、その考えに同調していた。
宰相ステッセルの指示によってヘルマン帝国の使節団の構成が決められる。
当然ながら使節団の代表は元皇妃パメラとなる。
しかしパメラは飾りであり、実際のリーザス帝国との折衝はステッセルの意を受けた文官たちが担当することになる。
そこに評議委員のオールハウンド・ドックトック(現ヘルマン十字軍将軍)が、副代表として使節団に急遽加わることになった。
オールハウンドは見届け役という触れ込みであった。
評議委員として帝国の政策の決定に関して一定の権限を持っているオールハウンド。
客観的な面から見れば副代表として妥当な人選であった。
オールハウンドは十字軍の将軍でもあり、評議委員の一員でもある。
だが実際のところ軍人としての誇りも祖国への忠誠心も持ち合わせていなかった。
ステッセルの要請に答えたのは、ラボへの膨大な予算の増額を提示されたからである。
そしてオールハウンドは、ステッセルから恐るべき密命を受けてこの使節団に参加していた。
それは会見の場でのリーザス皇帝ランスの暗殺であった。
ステッセルはムーララルーの手紙を読み、即座にこの計画を思いついた。
ステッセルにとって親切面するAL教団もただの利用物でしかなかった。
ムーララルーはステッセルの浅はかさを読み誤ったのである。
ステッセルにはランスさえ倒してしまえばリーザスは簡単に瓦解する、という冷静な判断があった。
暗殺計画を遂行する上でパメラは呈の良い餌でる。
ランスを殺せるのならばパメラが死んでしまってもステッセルには一向にかまわなかった。
ステッセルにとって、パメラは最早不要な存在だったのである。
パメラはこの人選に嫌悪感を示したが個人的な感性の問題であり、オールハウンドを外す決定的な理由にはなりえなかった。
結局はステッセルに説得され、ヘルマンとシーラのためと折れることになる。
哀れパメラは、愛人に見捨てられたことも知らず、悲劇のヒロインとして、ラング・バウを発つことになる。
<LP3年11月23日>
リーザス城にAL教団の司教コンタオットが訪れていた。
リーザスとヘルマンの和平を望む法王ムーララルーの使者であった。
リーザス帝国の官民の多くは一般的にAL教に帰依している。
政府内の文官たちの中にも熱烈なAL信徒が多く存在した。
そのような者達はランスがAL教団に理解があるものと信じ込んでおり、コンタオットを手厚く遇してしまう。
他の為政者たちとは異なり、ランスがこれまで川中島に何度も足を運んでいたため勘違いしていたのである。
ランスのところに話が持ち込まれるまでの間に、いつの間にか和平会談へ参加する方向で政府内が調整されてしまっていた。
秘書のレィリィに案内されてきたコンタオットは、開口一番にリーザスが和平会談への参加を決定したことについて謝意を表す。
ちょうど敬虔な信者のエリザベートが側におり、コンタオットに同調してランスに感謝の意を表してくる。
事情を把握していないランスは大いに困惑することになる。
だが自分を信じ切っているエリザベートの様子に、ランスも話を切り出すタイミングを失ってしまう。
ランスとしてはこのままヘルマン帝国を潰す予定であった。
そのためAL教団の申し入れはまさに無用な親切といったところであった。
だが今更180度態度を豹変させて和平話を断ることは難しかった。
リーザス帝国内でのAL教団の持つ影響力は大きく、AL教団を蔑ろにした場合の反動は予想がつかないのである。
マリスが政務のほとんどを担っていたならば、このような事態にはならなかったはずであった。
巧みな手腕で事前に断りを入れ、ランスのところまで話が上らずに立ち消えになっていたと思われる。
生憎とこの日のマリスは妊娠後の経過のチェックのために天才病院へ行っており、不在であった。
ランスはコンタオットに対して不本意ながらも承諾の返事を返すしかなかった。
だが会談を行うことになてしまった以上、マリスの力が絶対に必要であった。
ランスは秘書のレィリィに命じ、検査を終えて戻ってきたマリスを至急呼び寄せた。
そして本件に関して協議を行うことになる。
会談には決して乗り気ではないランス。
逆にマリスから、承諾してしまった以上は正式な理由も無く断ることはできないと諭されてしまう。
マリスはランスをその気にさせるために、ヘルマンの皇帝であるシーラが会談の席に現れる可能性を示唆する。
敵国の女皇帝であるシーラの可憐さはリーザスへも響き渡っていた。
シーラの容姿を見物出来ると聞いてランスは俄然やる気になった。
一転して意気揚々とリーザス城を出立するランス。
ランスはリーザス帝国の皇帝として、護衛の親衛隊を引き連れて川中島に向かった。
一行の中にはマリスの姿もあった。
ランスとしては妊娠初期のマリスに無理をさせたくなかった。
しかしランスとしてもマリスの交渉術は一番頼りにするところである。
ランスは桃源郷で4人抜きの賞品と入手した「専属看護婦さん」をマリスに与え、マリスの躰の安全に万全を期することにする。
さらにマリスの躰を守るために、普段はリア付きの親衛隊を連れていくことを決めたのである。
ランスとマリスは会談に臨むに当たって、事前に方針を決めていた。
あくまでAL教団に顔を立てて和平会談へ参加するだけである。
和平交渉自体はよほどの好条件でない限り受け入れない方針を固めていた。
AL教団の思惑を完全に読みきっての行動であった。