※この作品はR-18です。

ランス皆中伝(アーカイブ)   作:夜叉五郎

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3月15日 リーザス城
 ランス、リーザス城にて覚醒。リアとの結婚を決意。

3月16日 リーザス城
 リアの突然の結婚に宮廷は大騒ぎとなる。

3月17日 リーザス城
 リアの結婚が正式に発表される。

3月18日 リーザス城
 貴族たちが密かに会合を開く。

3月19日 リーザス城
 ランス、使い魔フェリスを召還。

3月20日 リーザス城
 ランス、フェリスをリーザス城地下に保護。

3月21日 リーザス城
 リーザスにて緑の軍が創設される。

3月22日 リーザス城
 ランス、リーザス城にてリアと盛大な結婚式を挙げ、リーザス王に即位。

3月23日 リーザス城
 ランス、所信演説にて国民総奴隷化を宣言。

3月24日 リーザス城
 「エクスの乱」勃発。


LP3年3月3週 戴冠 & 反乱勃発

<LP3年3月15日>

 

 ランスが起きるまでランスの側を離れようとしないリア。

 体力の限界までランスの側に付きっ切りであった。

 ランスの眠るベッドの側に座り、時折うつらうつらとしつつも常にランスの目覚めの時を待ち続けていた。

 

 だんだんと憔悴していくリア。

 その美しい容貌にも疲れが色濃く現れていた。

 リアの体調を慮ったメイドの加藤すずめが優しくリアに休息を勧めようとする。

 その間自分がランスの面倒を見ることを申し出るすずめであったがリアは反発する。

 

 すっかり余裕を無くしてしまっていたリアは普段の聡明さを見せることなく感情で行動する。

 すずめのことを自分とランスの間を引き裂こうとする泥棒猫と決め付け、その頬を思いっきり張ってしまった。

 すずめを一喝して追い払おうとするリア。

 そのリアの叫びがランスの意識を取り戻させることとなる。

 

 目覚めたランスは目の前にリアがいることに驚いた。

 リアの目覚めのキスを受け次第に現在の状態を飲み込んでいく。

 5日間飲まず喰わずだったランスはまずリアに飯を要求した。

 

 すぐに食事の用意が成され王女であるリア自身が甲斐甲斐しくランスに飯をよそった。

 まともに寝ていなかったリアであったが愛しい男の世話を焼くことに喜びを感じていた。

 リアのよそってくれたご飯を何杯もどんどんと平らげていくランス。

 その健啖家振りにリアもうっとりするくらいであった。

 

 

 

 

 5杯の大盛りのご飯を平らげやっと一息ついたランス。

 リアに問われるままにどうして自分がこんなことになってしまったかを答えていく。

 

 幾分誇張を含んだランスの言葉をリアは一言一言涙を零しながら受け止め、大変だったねとランスを慰めた。

 ランスの言い分ではランスが行っていた盗賊行為の全ては悪のヘルマン政府を転覆させるための正義の活動となる。

 そのため後に大陸正史となるリーザス帝国興国記にはしっかりとレジスタンス時代のランスの正義の行いが記載されることになった。

 

 リアと一緒にランスの話を聞いていたかなみは一番聞きたかったことをランスに質問する。

 それはランスの奴隷であるシィルの行方であった。

 ランス自身もかなみに聞かれるまでシィルの存在を忘れてしまっていた。

 

 こうしている今もシィルが囚われの身となっていることに気付き、自分が何のためにリーザスまで逃げてきたのかを思い出したランス。

 ランスはリアにリーザス王国の全兵力を自分に貸すように要求する。

 リーザス軍を指揮してヘルマンまで攻め入ってシィルを必ず取り戻す心算であった。

 ただしリアの手前シィルが目的であるとは断じて言えず、ヘルマンへの恨みを晴らすことが第一であることを強調していく。

 

 リアとしては大好きなランスに兵を貸すのはやぶさかではない。

 しかし如何に救国の英雄とは言え、国家を運営する上で無償でランスに兵を貸すわけにはいくはずもない。

 だがリアは目障りな奴隷のいないこの絶好機を逃してはならないと考えるようになっていた。

 

 リアはシィルに差をつけさらにランスが合法的にリーザス王国の全軍を指揮することが可能となる方法を嬉々としてランスに提示する。

 その方法とはランスがリアと結婚してリーザス王となるという方法であった。

 

 

 

 ランスはかなり悩んだ末にリアの誘いに乗ることを決めてしまう。

 それしかシィルを救う方法はないと判断したのである。

 そして自分をこんな目に合わせたヘルマンへの復讐心をさらに滾らせることになる。

 

 リアは長年の夢が叶って大喜びする。

 ランスがまだシィルを気にかけていることにリアも気付いていた。

 だがリアは既成事実を作ってしまう重要さを良く認識していた。

 

 只一人冷静であったかなみはランスがこんな簡単にリーザスの王となってしまう事態にかなりの不条理さを感じていた。

 しかし頼みのマリスもリアが見事に夢を叶てしまったことを喜び、普段行っている止め役を放棄してしまっていた。

 かなみは孤立無援となってしまい、結局のところ誰もランスとリアの結婚に関して口を挟めない状態になってしまう。

 

 

 

 

 

<LP3年3月16日>

 

 リアに仕える侍女のマリスにとってリアは掛け替えの無い思い人である。

 マリスはリアの幸せを我が事のように喜んでいた。

 リアから結婚に関する事務処理を任されたマリスは的確なプランニングで一気呵成に手続きを推し進めていく。

 リアの晴れの日を邪魔するモノは何であろうと排除する覚悟であった。

 

 まず内内に向けてリアの結婚が発表された。

 リーザスの宮廷は大騒ぎとなる。

 

 リアは芳紀まさに18歳。

 その美しさと気品は神々しいばかりである。

 そろそろ宮廷内でも結婚を勧める声が大きくなっていた。

 

 貴族たちの中でも自分の子息をリアの夫にしようと画策する者も多かった。

 そこにきてこの結婚の発表である。

 騒然となるのは当然のことであった。

 

 

 

 相手が一介の冒険者と知らされると害のない宮廷雀は逆タマと嬉々として騒いた。

 ついで解放戦線の指導者であることが告げられどよめくことになる。

 つまりランスは皆の命の恩人であり救国の英雄なのである。

 ジルとの戦いで次元の割れ目に落ちてしまったため解放後のリーザス城にはランスの姿がなかった。

 そのためランスの存在はリーザス城の住民にとって伝説になってしまっていたのである。

 

 文官たちは皆マリスに首根っこを抑えられていることから反発する者は一人もいない。

 軍部もまたこの発表を歓迎する。

 バレスやリック、コルドバ、レイラなど軍部の主だった将校がランスと面識を持っていた。

 そしてランスのその人となりに心酔していたのである。

 ランスであればリアの夫に相応しいと皆が本気で考えていたのである。

 

 ただし貴族たちは違った。

 血筋と位に拘る貴族たちはこの知らせを聞いて眉をひそめるだけではすまなかった。

 下賎な血が王家に入ることを大いに嫌った。

 リアの夫の座を狙っていた貴族たちはバカにされたようなものであり余計に我慢ならなかった。

 歯軋りしてランスとマリスに対して敵意を燃やすことになる。

 

 

 

 

 

<LP3年3月17日>

 

 マリスの手配の良さで間髪入れずリアとランスの結婚の正式発表が行われリーザス国内外にて放送される形となる。

 これは国内の潜在的な敵対勢力対策としてだけはない。

 マリスは既成事実を作ることによって結婚の当事者であるランスの逃げ道を無くす心算であった。

 

 リーザス王国の王女の結婚の知らせは瞬く間に世界に配信された。

 スポークスマンはジョンブル報道管理官である。

 結婚式の予定も五日後と定められ民衆は即位式後に行われるランスの所信演説を固唾を呑んで待つことになる。

 

 マリスの指示でランスのこれまでの華々しい経歴も徐々に民衆の間で広められていった。

 結果としてランス待望論がリーザス国内で巻き起こる事態となりマリスの手による地ならしは完璧な仕上がりを見せる。

 リーザスの国内は一気に祝賀ムードに包まれた。

 

 

 

 リーザスは超大国でありその影響力は大陸中の国家の中でも図抜けている。

 この報道に関して自由都市国家群の関心は特に大きかった。

 遠方のヘルマンや対外的な付き合いの悪いゼスに比べるとなんといってもリーザスは近隣の友好国である。

 リアの結婚は大きく報道されその結婚相手がアイスの冒険者であることが知らされると、俄然注目度が高くなる。

 

 カスタムの街にいるランスの女たちは結婚式の招待状が届くと五者五様の反応を示すことになる。

 マリアは失恋が確定してショックを受けるもシィルがどうなったか心配に思う。

 志津香はどうせろくな事にならないと諦観し、無関心を装う。

 ランはほっと安堵のため息をつき、ランスが落ち着いてくれればと願った。

 ミルはずるいと頬を膨らませ、自分も妃になると言い出してきかなかった。

 ミリは面白げに笑い、リーザスのハーレムの質の良さに舌なめずりする。

 

 尚ランスが所属していたキースギルドの支配人キースはこのニュースを聞き、至極納得したという。

 なんだかんだ言ってもランスは只の冒険者で納まる器の男ではないことをキースはしっかりと認識していたのであった。

 

 

 

 

 

<LP3年3月18日>

 

 リアの両親ははっきり言ってバカであり完全に貴族たちの操り人形であった。

 父王など自ら公爵を名乗り貴族の中に混じって遊びほうける程であった。

 調子に乗っていた貴族たちは後継者である王女リアをも傀儡にするべく策動する。

 

 その歪な生活環境は幼いときからリアに大いにストレスを与えてしまっていた。

 リアはそのストレスを発散するために侍女たちを虐めるようになる。

 マリスもそんな侍女たちの中の一人であった。

 

 マリスはリアの寂しさを理解し躰を攻められつつもリアを愛するようになる。

 マリスはリアを守る盾となることを誓う。

 躰を張ることを厭わず貴族たちの魔の手からリアを守り続けた。

 リアの政敵たちはマリスの仕掛けた罠により次第に排除されていく。

 いつの間にかマリスは名実共にリアの信頼厚い腹心になっていた。

 

 

 

 貴族たちのリアへの干渉はマリスの努力によって皆無となる。

 しかし貴族たちは決して諦めていたわけではない。

 あくまで一時的にリアに手を出すことを控えていただけであった。

 

 その後ヘルマン第三軍の奇襲によってリーザス城が制圧される。

 結果としてこのことがリアへと有利に働くことになる。

 貴族たちの半数が死にその影響力が激減してしまったのである。

 リアの即位はそのような状況下で行われたのである。

 

 数人の貴族がリアの即位を邪魔しようとして即位後に粛清されることになる。

 しかしまだ貴族たちの全てがいなくなったわけではない。

 そして権力欲が強い者ほど往々にして生き延びるのが上手い。

 貴族たちはまだ諦めておらずリアから権力を奪う機会をしぶとく狙い続けていた。

 

 リアへの結婚相手の押し付けもその一環である。

 ただし誰を押し付けるかで貴族たちの中で揉めており一向に話が前に進まなかった。

 これもまたマリスの策謀によるものであった。

 

 

 

 

 

 

<LP3年3月19日>

 

 リアとの婚礼の準備を抜け出してランスは自分の使い魔である女悪魔フェリスを召還しようとする。

 リアとの婚儀が差し迫ったところでランスは本当に結婚していいものか悩んでいた。

 つまりマリッジブルーと言われる状態であった。

 追い詰められたランスは他の方法がないのか真剣に考える。

 そしてその極限状態の中でフェリスの力を用いてシィルの居場所を探し出す方法を思いついたのである。

 

 フェリスはもともとはカラーであったが22歳のとき不良となり悪魔として転生した。

 過去ランスに関わってしまったがために第6階級から第9階級まで降格させられてしまった女悪魔である。

 挙句の果てに「真の名」をランスに知られてしまい逆らうことが出来なくなって忠実なる下僕として仕えるはめになってしまっていた。

 

 ランスにとって玄武城の一件の以来の約3ヶ月振りのフェリスの召還となるが、フェリスを取り巻く環境は大幅に変わっていた。

 なんと召還されたフェリスがまるっきり妊婦でマタニティ姿だったのである。

 驚いて誰の子だと問いかけるランスをフェリスは恨みがましい目でランスを睨みつけた。

 フェリスのお腹の中にいる子供の父親は誰あろうランスその人であったのである。

 

 

 

 通常ならば女悪魔は人間の子を孕むことはできないはずである。

 また当時のランスはシィルに避妊魔法をかけてもらっていた。

 しかし玄武城にて召還されたときフェリスは悪魔特有のフセイの日であった。

 ランスがフセイの日で苦しむフェリスを犯してしまったことで特殊な条件が重なり妊娠してしまったのである。

 

 フェリスはランスに対して自分のお腹の中の子供の父親が誰なのかを教えて詰る。

 さらに現在の自分は人間の子を孕んでしまったために戒律を破ったことになり、上位悪魔に追われてしまっていることを告げたのである。

 フェリスは臨月の身重の躰を引き釣りながら厳しい追っ手の網を掻い潜り、なんとか逃げ回っているところなのだった。

 

 

 

 フェリスの話に大いにうろたえるランス。

 まだ3ヶ月しか経ておらず計算が合わないと反論しようとする。

 しかしフェリスは元カラーである。  カラーと人間が交わった場合の出産までの期間は人間に比べて極端に短い約12週。

 ランスも納得するしかなかった。

 子持ちになるという認識はリアと結婚するということよりも多大なプレッシャーをランスに与えることになる。

 

 ランスはシィル探索の命令を与えるためにフェリスを召還したわけだがそれどころではなくなってしまう。

 どうしようか迷うランスであったがフェリスを追跡する追っ手の魔の手はすぐそこまで追っていた。

 

 追っ手の接近を感知したフェリスは逃げ出そうとするが突如陣痛が始まってしまう。

 苦痛に脚を取られて動けなくなるフェリス。

 ランスはフェリスと自分の子を守るために已む無く剣を取るはめになる。

 

 

 

 

 

<LP3年3月20日>

 

 追跡者を撃退したランスはフェリスを安全な場所に匿うことにした。

 幸いなことにリーザス城には絶好の隠れ家が存在した。

 先々代の魔王ジルが封印されていた城の地下に存在する封印の間である。

 多重結界に遮られている封印の間ならば居場所を探知されることもない。

 

 と言っても今だリーザスの王ではないランスにはやれることも限られている。

 ランスはリアの侍女マリスにこの件を丸投げしてしまった。

 ランスから相談を受けたマリスはランスが子持ちとなってしまったことに驚愕することになる。

 

 リアとの婚礼を控えたこの時期にフェリスの存在が発覚するは非常にまずい。

 その相手が悪魔であるということも十分以上にスキャンダルである。

 マリスはリアにはこの事実を知らせず自分の胸のうちでこの件を処理しようと決意する。

 ランスが一向に悪びれたところがないのがマリスにとっては頭痛の種であった。

 

 

 

 フェリスは封印の間に隠れ住むことになり、そこでランスの子を出産した。

 生まれてきた男の子の真の名はランスにも教えられず、ランスはその子供を便宜的にダークランスと呼ぶことした。

 ダークランスはフェリスの元で成長を続けることになる。

 カラーの子供ということだけあって成長は早くすぐに大きくなっていた。

 

 ランスはリアとの結婚を控えて女悪魔の愛人と隠し子を抱えることになったのである。

 フェリスとダークランスの存在は秘密とされ、その存在を知る者はマリスのみとなる。

 この日以降ランスはときたま密かに封印の間を訪ねてフェリスやダークランスの相手をすることになる。

 

 

 

 フェリスの力を借りることができなくなったランス。  最初の考えどおりリーザス王国の力を掌握してシィル奪還を遂げなくてはならなくなった。

 さらに愛人フェリスと隠し子ダークランスが魔界の悪魔たちに追われなくて済むように何らかの対処をすることも必要となってしまった。

 全てはランスの自業自得であったが、ランスはヘルマンを逆恨みしてより怒りを募らせた。

 

 ランスは出産した直後のフェリスを気遣いながらもリアとの結婚式の準備を進めていくことになる。

 こうしてランスの前途には山積みの課題が立ちふさがることになる。

 

 

 

 

 

<LP3年3月21日>

 

 新王ランスの誕生に向けてリーザスにてランス直属の部隊"緑の軍"が創設されることとなる。

 これまでのリーザスでは玉座にある者が軍を率いて戦闘に臨むことは慣習として存在しなかった。

 士気を鼓舞するために前線に出たとしてもお飾りの美麗な女子ばかりの親衛隊を率いての顔見せ程度である。

 

 だが、新王となる予定のランスはこれまでの歴代のリーザス王とは異なり、生粋の武人であった。

 そもそもランスがリーザス王となろうとしているのは憎きヘルマンを叩き潰すためである。

 ランスが自分の思うがままに操ることの出来る直属部隊を欲しがるのは、当然の流れである。

 

 天才万能侍女のマリスはランスの命令に従い、婚礼の準備と共に新たな軍の創設をも実行してしまう。

 マリスはリーザスの大将軍であるバレスに新たな軍の構成員の選抜を任せ、バレスは見事にその任を果たした。

 バレスは先のリーザス解放戦線のときにランスの指揮振りにいたく感動し、熱烈なランス派になってしまっていた。

 

 新たな軍はこれまでのリーザス軍の慣例に習い色付けされ、新たな色として"緑の軍"と称されることになる。

 ダークグリーンがランスの一番好む色(パーソナルカラー)であったためである。

 貴族や騎士たちの次男坊など継ぐ家のない者達が集められて創設された命知らずな部隊であった。

 

 緑の軍はこれからのランスの圧倒的なまでの活躍により、リーザス軍の代名詞となるほどその名を大陸全土に轟かすことになる。

 緑の軍に属する騎士たちはリーザスのスーパーエリートとして子供達の憧れとなっていくのである。

 

 

 

 尚、緑の軍の発足と同時に国王の親衛隊である金の軍はリーザス城の王宮の警護と王妃リアの護衛を主な任務とするようになる。

 その結果大陸の大半を征した後に行われた軍部の再編により親衛隊の規模は大幅に縮小されることになってしまう。

 

 逆に緑の軍はその活躍と共に拡張を続けていく。

 そして天才アールコート・マリウスなど有能な指揮官を輩出し続けることになる。

 

 

 

 

 

<LP3年3月22日>

 

 ランスとリア・パラパラ・リーザスの結婚式はリーザス城の大聖堂で華々しく行われることになる。

 式にはリーザス国内の重鎮や各国の要人が参列し、さらにランスの個人的な冒険者仲間たちも数多く招待されていた。

 マリア・カスタードや魔想志津香を始めとするカスタムの街のランスの女達も全員顔を見せていた。

 

 式の様子は魔法TVで国内全土に中継され、国民は固唾を呑んでTVの画面の前に釘付けとなる。

 世界でもっとも豊かな大国であるリーザスの主権者の結婚式である。

 式は後々まで語り草となるほど豪勢なものとなった。

 

 この式の中継によって国民は初めて自分たちの新たな王となるランスの素顔を拝むことになる。

 ヘルマン帝国軍を追い払った凄腕の剣士という経歴もあり、国民のほとんどはランスの事を強面の男性と想像していた。

 しかしランスは黙って口を閉じていれば端整な顔立ちの青年と言えなくもない。

 そのため国民の半数(女性達)は好意的にランスのことを受け止めるようになる。

 

 リアの美しさは前々から鳴り響いていたがこの日のリアはより一層光り輝いていた。

 ウエディングドレス姿のリアは美しかったが何よりもその表情が輝いていた。

 幸せいっぱいな笑顔を振りまくリアの様子にリアに心酔していた国民たちは涙を溢して我が事のように喜ぶことになる。

 リアの幸せそうな様子は国民のランスを支持する感情へと繋がっていく。

 

 

 

 AL教団の神父の前で永遠の愛を誓うランスとリア。

 しかしランスはこのとき自分の苗字を明かすことをしなかった。

 ただのランスとして誓約を押し切ってしまう。

 ランスの苗字に関しては諸説あるがリーザス帝国成立に纏わる最大の謎として後々まで語られていくことになる。

 

 誓約が終わり晴れてランスはリア・パラパラ・リーザスの夫となる。

 リアがランスの求めに応じてリーザス王国を率いる権限をランスに譲渡したため、ランスがリーザス王国の主権者となった。

 対外的にはランスはランス・パラパラ・リーザスということになる。

 ただしランス自身はあくまで自分は只のランスであるという認識でいたようである。

 

 式に参列したランスを知る者たちはそれぞれ複雑な思いでランスの晴れ姿を眺めることになる。

 皆一様にシィルがランスにとって重要な存在であることを知っていたからであった。

 特にマリア・カスタードは密かにランスを好いていたため失恋の痛みに耐えながら式を見つめていた。

 そのマリアが花嫁のブーケを受け取ってしまったのはなんとも皮肉なことであった。

 

 式を終えて初夜を迎えるランスとリア。

 ランスはウエディングドレス姿のままのリアを抱こうとする。

 このときリアは幸せの絶頂にあった。

 高価な純白のドレスの上にランスの熱い精がぶちまけられることになる。

 

 

 

 

 

<LP3年3月23日>

 

 新たにリーザス王となったランスの所信表明演説が行われることとなる。

 新国王即位時に必ず行われるリーザスの伝統行事である。

 結婚式の興奮そのままに熱狂的な10万人もの国民がリーザス城のバルコニー前に集まった。

 歴代の王の中でも断トツの人気振りであった。

 これらの様子はリーザス全土に生中継されていた。

 

 だがその人気も演説が始まってすぐにマイナス方向に反転してしまう。

 あろう事かランスはこの所信表明演説において、国民全てが己の奴隷であることを宣言してしまったのである。

 あまりに理不尽なランスの宣言に新王の言葉を聞いていたリーザスの全国民は我が耳を疑ってしまう。

 

 さらに美しい女性や可愛い女の子は全て自分の所有物であることまで言い放つランス。

 その証拠として傍らにいた美貌の侍女マリスを抱き寄せ、公衆の面前で無理矢理熱いキスまで交わしてしまう始末であった。

 

 結婚したばかりのリアの目の前でである。

 リーザスの最大のアイドルであるリアをあまりにないがしろにするランスの理不尽な態度に集まった国民の100%が反発することになる。

 

 確かにすでにマリスは幾度もランスと肉体関係を持っており、ランスの女の一人であることは明らかである。

 事実マリスはリアの即位後リアの部屋に近い後宮内の一室を自室として使用しており、ランス戴冠後もその部屋を使い続ける心算でいた。

 言うなればマリスはランスにとって正妻のリア以外に初めて自分の後宮に置く女、つまり第一の妾妃という意味合いを持っていたのである。

 しかし正式な妾妃のお披露目も行っていないのにそんな込み入った事情を大衆が知るはずもない。

 その光景を見た者たちの目にはランスがただの女好きの傍若無人な人物に見えてしまったのである。

 

 民たちが思い描いていた善王としてのランスの幻想はランス自身の手によって打ち砕かれてしまった。

 大変な男が王となってしまったことに気付き、リーザスの国民の大半は不安な思いを抱くことになる。

 そして、あまりに勝手なランスの物言いに元気の良い一部の国民は怒り心頭の状態となる。

 反乱が勃発してしまうのは至極自然な流れであった。

 

 

 

 ランスが何故こうした国民の反発を買う言動を取ったのか後世において様々な説が唱えられることになる。

 だが結果的に見ると即位後に覇道を突き進むに当たってランスは最善のプロセスを選択したと言えた。

 

 どんなに美辞麗句を唱えても戦争を推し進めていくに当たって遅かれ早かれ民が反発してしまう局面が訪れるのは絶対避けられない。

 それならば一番最初に全ての膿を出し切り、自分に率いられる意味を国民に徹底的に認識させるのは有効な一手であった。

 そしてランスが推し進めようとしている聖域なき構造改革がスムーズに進むことになる。

 

 愚かな民衆はよく知りもしないのに王というだけで期待を膨らませ、そして勝手に失望していく。

 それならば最初から最悪な一面を見せておけば評価は下がりようもなく、後は上がっていくしかない。

 ランスは意図せぬとは言え長期政権を打ち立てる上で最高の船出をきったことになる。

 

 

 

 実際のところこのランスの驚天動地の演説はランスが思いつきで行っただけというような単純な問題ではなかった。

 ランスやリアの影響力を低下させようとする貴族達の思惑が絡んだ、傍目から見るよりも大分複雑なモノであったのである。

 

 スーパー侍女のマリスはばっちり国民受けする演説の原稿をランスのために用意していた。

 だが、その原稿が演説直前にいつの間にか無くなってしまっていた。

 ランスの所信演説を失敗させようとする貴族たちが暗躍し、ランスの控え室から盗み出してしまったのである。

 突然のハプニングによってランスが国民の前でぼろを出すことを貴族達は期待していたのである。

 

 だが原稿を失ったランスの行動は貴族達の予想よりも遥かに斜め上を行ってしまう。

 いきなりとんでもない事態に物事が展開してしまうことになる。

 策を弄した貴族達の方が慌ててしまうくらいであった。

 

 ランスは国民に対して建前を無視した自分の考えを自分の言葉で当たり前のように言い放った。

 その態度は発した言葉の全てがあたかも予定通りという風に思えるような、堂々たるものであった。

 

 

 

 ランスの宣言は王政という政治システムがどういうものなのかを国民達に対して忌憚無く示した。

 国民は搾取する立場にある国王の本音を己の耳で直に聞くことになる。

 ランスは国民が抱いていた為政者への幻想を剥ぎ取り、実の世界を敢然と見せ付けたのである。

 そしてその上で国民に対して超然と己に従うように求めたのである。

 こんなことはこれまでの人類の歴史を振り返っても全くもって初めてのことであった。

 

 どこまでも型破りな王であったがランスの行動の全てにきっちりとした筋が一本通っている。

 ランスが己の考えを国民に広く深く伝えることが出来たという一点においてこの演説は大成功であったといえる。

 ランスは全国民に対して過酷に生きることを堂々と求めたのである。

 凡百の愚鈍な君主達には決して出来ない芸当であった。

 

 

 

 

 

<LP3年3月24日>

 

 ランスの所信表明演説の翌日、リーザス国内で史上まれに見る大規模な反乱が勃発した。

 ランスの演説に憤慨した者の数は多い。

 その中の一人が敢然と剣をその手に取ったところからこの反乱は始まる。

 

 その漢の名はペガサス・フォードという。

 ペガサスはかつての白の将であり血気盛んな老骨であり正義感に溢れた漢である。

 すでに退役したとは言えその軍管区であるリーザス南東部に多大な影響力を持つ。

 彼の熱い弁舌に数多くの者達が賛同し、王党派が無視できぬほどの兵力が瞬く間に出来上がってしまう。

 

 退役将校のペガサスには直接は軍部に影響力はないが現在でも軍部内には彼を慕う者が多かった。

 特に彼が将軍まで勤めた白の軍においては数多くの将校たちがペガサスに賛同して剣を手に取ることになる。

 そして白の軍の副将であるハウレーン・プロヴァンスまでもが参加を表明してしまう。

 その結果白の軍のほとんどがペガサス色に染まってしまうのであった。

 

 ハウレーンの反乱軍参加表明はリーザス軍の全将兵の去就を惑わせる結果となる。

 ハウレーンはリーザス軍の総大将であるバレス・プロヴァンスの実娘であったからである。

 バレスもまた反乱軍に加担すると考えられ、リーザス軍の主力である黒の軍の大部分の兵士が反乱軍に靡いてしまった。

 ペガサスがハウレーンを誘った理由はそこにあった。

 言うなればハウレーンはペガサスに利用されてしまったのである。

 

 

 

 ハウレーンはこのとき23歳。

 ハウレーンもまたペガサスと同様に真面目な性格をしており、ランスのような男を王とは認めることが出来なかった。

 特にハウレーンの癇に障ったのはランスが美女は全員オレ様のモノと宣言したことであった。

 

 王とは聖人君子でなければならない。

 それなのに新たに王となったランスは王という尊い座にありながら好色振りを隠そうともしない。

 ランスの傍若無人な振る舞いがハウレーンには到底許せるものではなかった。

 そんな年若い娘にありがちなハウレーンの潔癖さが彼女をランス排斥に駆り立てたのである。

 

 ハウレーン自身は全く意識していないのだが客観的に見てハウレーンは十分に美しい容姿をしている。

 もし反乱に加わらなかったら間違いなく王とその部下という立場を利用されてすぐにランスに犯されることになったであろう。

 そのため、反乱を起こすという彼女の選択はある意味正しかったのかもしれない。

 ただしどちらの道を選んでも結局は同じ結末であろうから彼女の命運はランスの即位と同時に確定してしまっていたと言えるだろう。

 自分の躰がランスに狙われて終いにはその御子を孕んでしまうことになるなどハウレーンはこの時点では全く考えていなかった。

 

 

 

 外堀を固めたペガサスは弟子である白の軍の現将軍であるエクス・バンケットに対して反乱軍の大将となるよう要請する。

 

 エクス自身はランスの演説を聴き、ランスの新王就任に対して消極的な反対を述べるに留まるスタンスであった。

 しかしエクスの予想以上に集まってしまった反乱軍の勢力を前にしてペガサスの申し出を断るわけにもいかなくなる。

 このままでは反乱が成功しても失敗してもリーザスにとって被害が大きすぎる状況となってしまう。

 そうならないためには自分が反乱軍をまとめ迅速に反乱を成功させる必要があるとエクスは考えてしまったのである。

 

 エクスという明確な旗頭が出来た反乱軍は白の軍の駐屯基地であるオークスの街に集結することになった。

 白の軍ともつながりの深いリーザス国内の都市たちも反乱軍の趣旨に賛同し、リーザス城への反抗を明らかにしていく。

 こうして反乱軍はリーザス南東部に強固な基盤を持った一大勢力としてリーザス城への圧力を強めていく結果となった。

 

 この反乱は反乱軍の総帥エクスの名をとって「エクスの乱」と称されることになる。

 

 

 

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