リーザス城にて、御前会議が開催。反乱軍への対応が協議される。
3月26日 リーザス城
ランス、リーザス城にて強制徴収を実施。反抗的な貴族達を残らず取り潰す。
3月27日 リーザス城
ランス、街角でアイドル・カパーラの存在を知る。
3月28日 リーザス城
ランス、レイラに夜伽を拒絶される。
3月29日 リーザス城
ランス、強制徴収で得た資金を活用し、魔法研究所の建設を指示。
3月30日 魔物の洞窟
ランス、緑の軍を率いて魔物の洞窟の探索を行い、「大魔王の壺」を入手する。
反乱軍、リーザス城攻略作戦発動。
3月31日 リーザス城
ペガサス、ノース攻略失敗。反乱軍の将ドッチ・エバンス討死。
エクス、ウェス攻略開始。
シィル・ソウル、ボルゴZ収監。
LP3年3月4週 ノース攻略
<LP3年3月25日>
混沌とした情勢が徐々に明確になり敵味方の区別がはっきりと見えてくる。
これは反乱軍側が正々堂々ランスを討つことを宣言してイースに軍勢を終結させ、ゲリラ戦を仕掛けなかったためであった。
反乱への対応を協議するためにリーザス城にて御前会議が実施される運びとなった。
主だった将軍たちがランスの御前に集まり侍女マリスから状況の報告が行われていく。
リーザス王国の軍隊は色の名前を冠した6つの軍で構成されている。
・リーザス軍の象徴たる主力の黒の軍
・攻撃を得意とする進撃部隊の赤の軍
・防衛戦に特化された青の軍
・情報戦に優れた遊撃部隊の白の軍
・魔法攻撃部隊の紫の軍
・親衛隊の金の軍
ランスの即位によって創設された緑の軍がこれに加わり、総計7色の軍団となる。
だがペガサスの巻き起こした反乱はその各軍に大きな影響を与えてしまっていた。
反乱軍の総帥であるエクスの率いる白の軍はもちろん全軍が反乱軍に属する形となる。
エクスはリーザス随一の天才用兵家として人望のある男であり、白の軍からの脱落者はほとんどいない。
兵たちに人気のある副将のハウレーンが率先して反乱に参加していたため白の軍の熱気は凄いものになっている。
主力であるはずの黒の軍では約2割がサボタージュを表明し、6割が三名の副将たちと共に反乱軍へ参加してしまった。
主将であるバレスの下に残ってランスに忠誠を誓った者は黒の軍全体の2割程度という体たらくである。
娘のハウレーンだけでなく腹心であった副将サカナク・テンカにまでも裏切られてしまったバレスは大いに憤激することになる。
さらに自分の後継者にと目をかけていた副将ドッチ・エバンズが反乱軍に参加してしまったこともバレスの怒りを深くしていた。
また紫の軍でも主将よりも人望のある副将メルフェイス・プロムナードがエクスの側についた。
そのため8割近くの将兵が反乱軍に参加してしまうことになる。
主将であるアスカ・カドミュウムが僅か4歳の幼児であったことを考えるとこれは仕方のない事態と言えた。
残った赤・青・金の各軍も定数を揃えられない状況である。
それぞれ約3割ほどのの数がサボタージュしてしまっていた。
つまりはリーザス軍は、緑・赤・青・金と、白・黒・紫に二分されることとなってしまったわけである。
ただしランス王派である赤・青・金の各軍の動員兵力は三割がた落ち込んでしまっている。
外から見る限りにおいてはエクス率いる反乱軍の方が圧倒的に有利な状況になっていた。
平時の半分以下にまで戦力が低下してしまったリーザス軍。
だがランスは一向に焦った様子は見せなかった。
兵力の面では反乱軍の方が多数であったが有力な将校の数では自軍の方が勝っていたからである。
各軍の主将のうち反乱に参加しているのは白の将エクスのみである。
バレス・プロヴァンスやリック・アディスン、コルドバ・バーンなど百戦練磨の武将たちはランスに対して忠誠を誓っていた。
特にバレスの思いは強かった。
バレスはリーザスの全軍を与る総大将の役職を拝命している。
そのため多数の将兵が反乱軍に靡いてしまった事実にかなり責任を感じてしまっていた。
さらには自分の娘であるハウレーンまでもが敵方に回ってしまったため反乱鎮圧後には責任を取って自ら切腹する心算であった。
多数の騎士たちの離反についてはバレスを不問に付すランス。
反乱が全軍の半数に及ぶと聞いてもランスは動じず、逆に良い機会であると判断するに至っていた。
リーザス国内で自分に逆らう可能性がある者達は全て反乱軍側に行ってしまった。
つまりは反乱軍を壊滅させれば自分がリーザスを完全に掌握することになるのである。
ランスも何だかんだ言ってもバレスが有能な指揮官であることをちゃんと認識しており、バレスを罰するはずもなかった。
バレスの謝罪をあっさりと受け流してしまい、さっさとバレスを引き下がらせようとする。
しかし娘ハウレーンが反乱に加担した件に関しての自責の念が強いバレスはなかなか引き下がらない。
いい加減むさ苦しくて堪らなくなってくるランス。
仕方なく"成人した子が犯した罪により親が罰せられえる法はなくその逆も然りである"と適当に建前を述べてバレスを黙らせた。
ランスの度量の大きさに感動したバレスはランスのために尽力することを改めて誓うことになる。
これが後にバレスがハウレーンの身柄をランス個人に預けてしまう伏線となる。
会議では早期に反乱を終結させるためにも減じてしまった兵力の再配備を優先させることが決定される。
ランスとしては一刻も早くヘルマンに攻め入りたいところであったが何事にも順番がある。
反乱軍に対抗するために守備を固める上でコルドバが率いる青の軍の補充を行うことが取り決められた。
兵が整うまでの間ランスは反乱軍の出方を待つこととなったのである。
<LP3年3月26日>
リーザスの旧来の貴族たちは急激な情勢の変化に対応できずリーザス城下の自分の屋敷で右往左往するばかりであった。
ランスに恥をかかせるために演説の原稿を奪ったまでは良かったがランスの行動は誰にも予想できないものであった。
貴族たちが対応策を考える前に市民や軍部の一部が激発し、あれよあれよという間にリーザス建国以来最大規模の反乱が勃発してしまったのである。
貴族たちはエクス率いる反乱軍に参加すべきかをどうかで激論を交わすことになる。
だがエクスらの地盤は貴族の搾取対象である一般市民であり、言うなれば貴族ら特権階級を敵視する者たちなのである。
かといって今更ランスに取り入ることもできるはずもない。
貴族らは自分たちの権力を増大させるために今は王妃となったリアとこれまでずっと陰惨な陰謀合戦を繰り広げてきたのである。
貴族たちの対応は遅きに失した。
貴族たちが対応に迷っている間にランスが機先を制して一大攻勢に出る。
反乱勃発の直後に発令された王命によりリーザス王都での貴族や商人など富裕層に対する強制査察が行われたのである。
ランスは反乱による混乱に乗じて反乱軍との関係やあらゆる不正・癒着を摘発し、叩き潰そうとする。
反乱軍寄りの立場を取った貴族だけでなく中立を標榜した大部分の貴族たちもあれこれと難癖をつけられて片っ端から容赦無く取り潰された。
マリスはその莫大な資産と領地権を次々と取り上げていった。
戦う気概を持たず利だけを貪るだけの貴族たちの存在は百害あって一利無しであるというのがマリスとランスの共通の認識であった。
部外者のランスにとってみれば役に立たない奴等が無駄に富を蓄積しているだけであり、彼らを没落させるのになんら手加減の必要を感じなかった。
貴族たちはだまし討ちにされるような格好で抵抗することも出来ずに葬り去られることなる。
このリーザス城での強制徴収は貴族だけでなく役人や商人たちもターゲットとするものであった。
利権を巡り私腹を肥やすために商人たちの便宜を図っていた役人たちも残らず逮捕される。
不正な取引や貴族や役人たちと癒着して利を貪っていた大商人たちも残らず私財を没収された。
役人たちのボイコットも考えられた。
優秀だが下位に留まっていた役人や新たな人材を民間から発掘して適材適所を実現する良い機会である。
政府内の風通しを良くする必要もあり一石二鳥であった。
国内の物資の流通に阻害を来たす恐れもある。
しかし殿様商売に徹していた利に疎いリーザス国内の商人たちは豊かなリーザスの現状に胡坐し全く発展性がない。
マリスは利に敏い自由都市国家群の商人たちに市場を開くというプランを以前から検討しており、そのための準備も進めていた。
そのため既存の商人たちを一気に斬り捨ててもあまり問題にならなかった。
こうして建国当初から根深く巣くっていたリーザス王国の病巣と汚泥はエクスの乱を機にランスの手により全て排除されることとなる。
マリスが長年温めてきた改革プランがついに満を持して実行に移されたのであった。
平時ならば絶対に実行不可能な荒療治であった。
既得権益保持者たちの長年に渡り培われてきた特有のねばり腰によっていつのまにか失敗に終わっていたことだろう。
しかし今までリーザスにいなかった武断派の国王の登場とそれに続く反乱の勃発により国内は混乱してしまっている。
つまり何が起こっても不思議ではない状況が生み出されておりマリスにとって絶好の機会が訪れたのである。
宮廷の中では貴族たちの監視の目が残っているやも知れずマリスは事を内密に進める必要があった。
夜伽をしに行く振りをしつつマリスは深夜遅くにランスの閨房を尋ねた。
ランスの閨房はかなみを初めとするリア直属の忍者たちが寝ずの番をしているため安心である。
ランスはマリスの言葉をほとんど聞きもしないでGOサインを出し、マリスに伽を命じてしまう。
マリスは内心呆れつつもその命令に黙って従ってランスを満足させるべく服を脱いだ。
久しぶりのマリスとのセックスは非常に充実したものとなりランスは大いに満足することになる。
マリスは寝物語としてランスに今回の計画を説明する。
情事の後の気だるい雰囲気の中で貴族たちの傍若無人振りを聞くことになったランスは、ムカムカと怒り出して徹底的に叩き潰すように命じてしまう。
こうしてランスから実行の許可を取り付けたマリスはランスの怒りを静めるために今一度伽役を勤めた後ランスの部屋から退出していく。
自室に戻ったマリスはランスとの熱い情事の残り香を纏ったまま各所に指示を発し、夜明けと共に潜在的な不平分子の一斉検挙に乗り出す段取りを進めていったのである。
ランスはマリスの立案していた計画に乗っただけである。
しかし苛烈に追求するように命じたのはランス自身である。
このランスの英断は優れた王として評価されてしかるべきものであった。
情け容赦ない新国王ランス(実際はマリス)のやり方に既得権益を残らず失った旧勢力の怨嗟の声が満ち溢れた。
ランスが鬼畜王と呼ばれるようになったのもこの頃である。
マリスはランスの威名と武力を背景にしてランスの名の下で縦横無尽に改革を進めていった。
ある意味マリスのせいでランスが鬼畜王と呼ばれるようになったと言っても過言ではない。
女好きでハーレムを作り悦楽に浸る国王はこれまで数え切れないほど存在した。
その点に関していえばランスもその中の一人に過ぎずその程度では鬼畜と称されるに値しない。
事実ランスと同等以上の規模のハーレムを在位中に作った国王も数多く存在する。
ただしクオリティと多種多様さの面でランスのハーレムが他の追随を全く許さないほど隔絶していたことは確かである。
幾多の王が改革を志し、そして挫折し、目を瞑って折り合いをつけて国を運営してきたのである。
しかし権威というものを無視し、保守勢力を残らず叩き潰し、その富を残らず奪い取るという暴挙を行った王は大陸成立から数えてもランス一人だけといえよう。
既得権益を失った数々の旧勢力の怨嗟が重なり、鬼畜王という呼称が生まれ、その蔑称が彼に滅ぼされた国々・敵対する国々の人々にも伝わった。
その過程でランスの無類の女好きが揶揄されてやっかみを含めて皆が使うようになったというのが真実である。
<LP3年3月27日>
貴族の取り潰しを自ら指揮していたランスは侍女マリスを引き連れてリーザス城下を視察して廻っていた。
そこでランスは美しい歌声を聞く。
その歌声はランスの耳にとても心地よく響いた。
女の子の声だからという理由ではなく純粋に歌というものに対して強く惹かれるなどランスにとってこの時が初めての経験であった。
誘われるように徴収によって潰れた悪徳魔法魔法器SHOPに導かれるランス。
そのSHOPの中にあった壊れかけの魔法ビジョンから歌声が流れていた。
魔法ビジョンには一人の女の子が写っていた。
年の頃は10代半ば。
愛らしい顔立ちであるが背は170近く。
しかしそのやや高い身長が驚異的な腰の位置の高さや年齢の割りに見事に実った胸元さを余計に際立たせていた。
スラリとした肢体で手足はほっそりと長く足首がキュッと締まっておりスタイルの良さはまさに極上。
メリハリの効いたとても美しい立ち姿であった。
その柳腰と綺麗に長く伸びた形の良い双脚がその彼女の身に纏う正当派のアイドルの衣装と見事に調和していた。
手入れの良い綺麗な亜麻色の髪を揺らし、澄んだ歌声をその形の良いほっそりとした喉から発する歌姫。
傍らに侍るマリスから情報を仕入れるランス。
カパーラ・ウーチというのがその歌姫の名前であった。
最近売り出し中の歌手でありプリティリアの弱小プロダクション「ナタデTV」の所属である。
実力はあるが売れていないという点にランスは強く興味を持つ。
魔法ビジョンに映し出されている薄いルージュの引かれた形の良いカパーラの唇を見てランスは邪な考え抱く。
それはカパーラを一流のアイドルとして育て上げ、私的にも公的にも利用しまくるというものであった。
ランスは早速マリスにカパーラを城に呼ぶように命じる。
<LP3年3月28日>
ランスは親衛隊長のレイラ・グレクニーを自室に呼び出す。
ランスはレイラに戦場だけでなく夜も親衛を勤めさせようとしていた。
レイラは赤みのある茶色の瞳と髪の22歳の美しい女性である。
引き締まった戦士の躰だが、非常に綺麗なスタイルをしている。
レイラは"赤い死神"リックに次いでリーザスNO.2の剣の腕前を誇っていた。
彼女の率いる親衛隊はリーザス各地から集めた実力のある"美しい"女性だけで構成されている。
間違いなく大陸一華やかな部隊と言えるであろう。
800人もの隊員たちを纏め上げるための卓越した部隊指揮能力や戦闘能力が親衛隊の隊長には必要とされる。
さらに部隊の特性上、隊長には美人揃いの隊員の中でも一際目立つずば抜けた美しさも要求されることになる。
そのため親衛隊の中でも比類なく美しく強い女性剣士が栄えある親衛隊長の座に代々就任していた。
当然の如く現隊長であるレイラもまた歴代の親衛隊長に匹敵する美貌を誇る。
LP2年に先代の親衛隊長アビァトール・スカットが寿退職したためにその後を継いで21歳の若さで隊長職を拝命した。
隊長就任直後にリーザスへ侵攻したヘルマン第3軍に対して防戦に当たる。
だがこのときレイラはヘルマン軍に協力していた魔人アイゼルの妖術にかかって操られてしまう。
それを救ってくれたのがランスであった。
このときレイラは初めてランスと肉体関係を結ぶことになる。
レイラは強く美しい理想的な女性である。
清潔感に溢れる装いとキビキビとしつつも女性らしい優雅な動作でリーザス軍の誰もが好印象を抱いていた。
また膨大な数の隊員たちの管理を行う隊長役を務めるだけあって非常に面倒見がよい。
しかし恋愛や性的な面では頑なところがレイラには多分にあった。
"戦争中に色恋沙汰に囚われていると油断が生まれ即座に命を無くすことになる"と部下に熱心に教え込むほどである。
その反面、慌てたり照れたりするときに垣間見えるその可愛らしい表情や恥らう仕草はとても色っぽい。
普段のキリリとした武人としての表情とギャップが無意識に男心をそそらせてしまっていた。
ランスの性格をよく知っていたこともあってレイラはランスのリーザス王即位にも肯定的であった。
2歳年上ということもありランスにとってもレイラは頼もしくて綺麗なお姉さんのような存在であった。
今回のエクスの反乱に関しても逸早く不参加を表明した。
そしてレイラが改めてリーザス王への忠誠を誓ったため反乱軍への他部隊の参加を抑止する結果となる。
ランスは王となっても特別にレイラにだけは自分のことを"ランス君"と呼ぶことを許していた。
かつて何度か堪能したレイラとのセックスをランスは忘れられなかった。
幾度か経験積みということもありランスは気軽にいつも側に侍っている美貌の親衛隊長をベッドに呼ぼうとする。
リーザス王となったということでランスはレイラの主人になったわけでランスにしてみれば至極当然な流れであった。
だが予想外にもレイラはランスの誘いを断ってしまう。
思うところのあるレイラはランスの要望をすまなそうに拒絶したのである。
ランスと出会った当時は自分よりも強い男ならばOKというアバウトさであったレイラ。
だがあれから1年が経ったところでその方針は大きく変わってしまっていた。
誰にも秘密であったがレイラはリーザスに冠たる赤の将リックを一途に思っていたのである。
レイラに片思いの好きな人がいると知らされ、ランスも一旦は引き下がるしかなかった。
しかしどうしてもレイラのことを諦めきれないランスはその欲望を別の手段で発散することを考える。
親衛隊の中からこれと思う女の子をピックアップする作業にランスは取り掛かっていく。
<LP3年3月29日>
貴族たちを叩き潰した結果、国庫に莫大な財宝が転がり込むことになる。
ランスの指示で得られた財宝を資金に用いて魔法研究所の建築が開始されることになった。
一流の建築技術者団、通称ゼニコン部隊がその腕を発揮する。
冒険者として数多の困難を乗り越えてきたランスは鋭い認識力を培っていた。
それ故にランスは最強の軍隊を誇るヘルマン帝国を打倒するためにリーザスが必要とするものは何なのかを理解していた。
それは戦争時における魔法技術の効果的な運用であった。
ヘルマン帝国はブラックナイトを中心とする強力な鉄の軍団を保持しており魔法の介在しない戦場においては大陸最強である。
リーザスの軍隊は大陸でもっとも洗練された部隊運用や戦術運用を誇るがそれでもまともにぶつかったら勝ち目は薄かった。
冒険者として大成するには剣と魔法を巧みに組み合わせて難敵を打ち破っていく必要がある。
物理攻撃に強い相手には魔法攻撃で対応しその逆もまた真である。
この冒険者にとって当たり前の法則をランスは国家レベルで当てはめ、リーザス軍の魔法戦力の拡充を推進しようとしていたのである。
後に大陸東部で最高の権威を誇ることになるリーザス魔法研究所の建築は急ピッチで進められることとなる。
ランスが即位する以前のリーザスはヘルマンと同じ仮想敵国であるゼスに比べると魔法研究の面でだいぶ立ち遅れていた。
しかしランスが即位した後リーザスでの魔法産業は驚異的な成長率で伸び続けることになる。
為政者としてのずば抜けた資質と征服者としての類希なるセンスをランスは兼ね備えていたのであった。
ランスは反乱が起こったこの時期に対ヘルマン戦のことを考えてあえて魔法研究所の建築を指示した。
つまりはランスが反乱のことを軽く考えていた証左である。
ランスの脳中には反乱によって自分が倒されるかもしれないなどという弱気な思いはほんのわずかも存在していなかった。
ランスは反乱終結後の明確なヴィジョンをはっきりと持っていたのである。
<LP3年3月30日>
マリスの進言によりまず反乱軍の動きを見るという方針を選択することになる国王派。
反乱軍の攻勢を受け止めて然る後に反撃に転ずる戦略であった。
そのためランスは自分の側から軍を動かすことが出来なかった。
しかし中々に反乱軍は動こうとしない。
エクスは正規軍に属する同胞たちに反乱への参加を呼びかけて戦力の増強に努めていた。
早々に戦端が開かれると考えていたランスは当てが外れて不機嫌になる。
そこでランスは反乱軍が動き出しやすいように自ら隙を見せることにする。
新設されたばかりで今回の反乱劇にまったく無縁であり、他の軍と異なり定数がきちんと揃っている緑の軍。
だが軍団としての実戦経験がないことをランスは問題視する。
ランスは緑の軍の演習もかねてリーザス南部にある魔物の洞窟への遠征を企画した。
反乱が勃発してしまったこの時期に王が王城を離れるなど言語道断である。
只でさえ兵のサボタージュによってランス王派は兵が足りないのである。
マリスは反対しようとするがランスは聞かなかった。
後の事はマリスとバレスに任せてさっさと出立してしまう。
リーザスの全国民の目がランスの一挙手一投足に集中していた。
反乱など一向に気にも留めないランスの行動は逆に揺るぎない自信の表れとして国民に受け止められることになる。
実際のところそのとおりでランスは彼我の戦力差を見て反乱軍との戦闘について全く心配していなかったのである。
リーザス城を出てからノース・マウネス・リッチ・プアーを経由し、無事に魔物の洞窟に到着した緑の軍。
この行動はエクスの反乱に呼応しようとしていたリーザス西部の都市たちの動きを封じ込める結果となる。
ランスは緑の軍を率いて魔物の洞窟に乗り込んだ。
洞窟内の魔物との戦闘は設立したばかりの緑の軍にとって効果的な演習となる。
魔物との戦闘によって幾人かの負傷者を出してしまう緑の軍であったが、洞窟を最下層まで制覇することに成功する。
魔物の洞窟の最下層において大魔王の壺と呼ばれる美術品を手にしたランス。
ランスが手にしたのはそれだけではなかった。
ランスの目論見どおり今回の遠征を通して緑の軍は本当に戦場で使える部隊へと成長を遂げたのである。
ランスがリーザス西部に赴いたことは反乱軍をひどく刺激する。
舐めきったランスの態度にペガサスやハウレーンらの諸将は怒り心頭になる。
反乱軍の総司令官であるエクスだけが一人冷静にランスの動きの意味を見極めようとしていた。
反乱軍はリーザスの一番南東部に位置するオークスの街をその本拠地としていた。
オークスの街の最大の役所施設は反乱軍の総司令部として接収されている。
総司令部の一番大きな会議室に反乱軍に参加する将官たちが集い、今後の方針を議論していた。
当然ながら即座に打って出る意見が諸将の大半を占めることになる。
リーザス軍のほぼ半数近い人数がこぞって反乱軍に参加するに至り、反乱軍の意気は盛んであった。
正義を希求して盛り上がる反乱軍の只中でエクスだけが自分の判断ミスを悔やんでいた。
当初の予定ではリーザス軍のほぼ全てが自分の意見に賛同し、反乱軍に参加してくれるはずであった。
だが予想に反し、バレスやリック、コルドバらの同僚たちがランスへの忠誠を誓いリーザス城を動かない。
盛んに勧誘を行っているがこれ以上味方を増やすのが無理な感触を得てしまっていた。
黙っていても反乱軍の勢力が増大するような伸びしろは最早無い。
そうなると地力に勝るランス王派が次第に有利になっていってしまうはずである。
戦場で勝利するなどの劇的な情勢の変化を起こさない限り、今の流れは変わらない。
ランスの動きに胡散臭さを感じつつもエクスは兵を動かすしかなかった。
諸将を集めたエクスはついに出陣の命令を下す。
この内乱が長引く事を恐れ、一気に決着をつけようとするエクス。
長引けば他国の介入を招きかねない。
特に西方のヘルマン帝国の動きは要注意であった。
エクスは反乱軍を二手に別けて東と南からリーザス城に攻めあがる作戦を取る。
リーザス城は天下の名城であり難攻不落を誇る。
先のヘルマン軍侵攻時のように内側から落とされない限り、力攻めで攻め落とすのはまず不可能である。
そのためエクスはリーザス城を孤立させてその後の交渉でランスを退位させる方針を立てる。
ノースとウェスさえ落としてしまえばリーザス城は孤立無援になるのである。
反乱軍の諸将はエクスの作戦案を是として勇んで出陣していく。
ウェス攻略はエクス自らが行い、ノース攻略は老将ペガサスが担当することになった。
ウェス攻めの主力は現在の白の軍が中心となり、副将のハウレーンも参陣することになる。
ハウレーンは父であるバレスと戦う覚悟を決めていた。
父の蒙を開くためにも進んで戦いに臨もうとする。
エクスはノース攻めを自分の師でもあるペガサスに任せた。
ペガサスをサポートするために紫の軍の副将メルフェイスと黒の軍の副将ドッヂ・エバンスを付ける。
エクスは熱血しやすいペガサスの止め役になるよう言い含めて愛人であるメルフェイスを送り出していた。
<LP3年3月31日>
オークスの街を出撃したペガサス率いる反乱軍別働隊はサウスとオクを経由してノースの街に向かっていた。
エクスの立てた方針に従ってノースを攻略し、リーザス城を孤立させるためである。
その動向はリーザス城から注意深く監視されていた。
反乱軍の動きに呼応して正規軍もまたノース方面に兵を動かす。
反乱軍の前衛はペガサス率いる白の軍700名の騎士とドッヂ率いる黒の軍1000名の騎士である。
そして後衛にメルフェイス率いる魔法使い300名が控える陣構えであった。
これは反乱軍全体の約三割に相当する戦力である。
特筆すべきは反乱軍にとって虎の子のメルフェイスの魔法部隊がこの方面に配備されている点である。
本隊には魔法使いの部隊がないことを考えると指揮官の扱いようによっては本隊以上の戦果が期待できるはずだった。
反乱軍のノース攻略を阻止すべくリーザス城から出撃したのはバレス率いる黒の軍の最精鋭であった。
現状のリーザスで一番の精強さを誇る部隊がこの戦線に投入されたのである。
バレスは足りない兵力を補うためにリック率いる赤の軍から副将メナド・シセイの部隊を借り受けていた。
バレスの黒の軍とメナドの赤の軍がノースの街の近郊で反乱軍を待ち構えることになる。
バレスの黒の軍には700名の騎士がメナドの赤の軍には1100名の騎士が配備されていた。
ノースを死守するというのであれば正規軍側は篭城戦を行うのが妥当な戦術である。
だが正規軍はあえて平地での戦闘を望んでそれに相応しい兵力を向けてきた。
ランスがバレスに対して圧倒的な勝利を求めたためである。
市街地に被害が出るのを嫌った面もあるがそれぐらいの器量を見せてみろとバレスに発破をかけたのである。
ノースの街を望む平原にて反乱軍と正規軍の騎士たちが対峙する。
正々堂々と兵を勝負を挑んできた正規軍に対してペガサスは熱くなり、突撃の号令を発した。
戦闘技能を持った騎士たちが隔絶した戦闘力を発揮して戦場でぶつかり合うことになる。
この方面に投入された騎士や魔法使いは反乱軍の2000名に対して正規軍は1800名である。
数だけ見れば反乱軍が上回ってはいたが正規軍には黒の軍の最精鋭が属していた。
純粋な戦闘力だけ見れば正規軍が有利である。
ただし反乱軍には後方からの援護が可能な魔法使いの部隊が参加している。
前線が正規軍の猛攻を食い止め続ければ反乱軍の勝利が見えてくる状況であった。
つまりは戦力的にはほぼ互角な状態であり、勝敗は両指揮官の采配振りにかかっていたのである。
結論としてバレスとペガサスでは役者が違いすぎた。
バレスは歴戦の名将である。
翻ってペガサスは名誉職的な意味合いで白の軍の将軍職を得た人物である。
兵の指揮に関してみれば両将の間に歴然とした差があった。
老いた熱血漢であるペガサスがバレスの部隊に向かって勇んで無謀な突撃を敢行してしまったことが敗因となる。
リーザス軍の総司令官であるバレスを討ち取ればこの戦場だけでなく反乱を成功させる上で大きな勝利になる。
ペガサスは目の前の大魚に釣られて一気に勝敗を決しようとしてしまう。
だが肝心の彼我の戦力差について認識していなかったのである。
最初の激突時にペガサス率いる騎士たちの半数が弾き飛ばされることになる。
慌ててペガサスを援護するために突撃をしかけるドッヂ。
しかしその攻撃もまたバレスの部隊にしっかりと受け止められ、逆に手痛い反撃を食らうことになる。
勢いを殺されたドッヂの部隊に対してメナドの赤の軍が横合いから襲い掛かった。
正面のバレスの部隊と側面のメナドの部隊に万力のように挟まれ、ドッヂの部隊は支えきれず圧解し始める。
戦闘が始まってすぐに反乱軍の敗勢が確実なものとなっていく。
メルフェイスはペガサスに撤退を要請し、ペガサスもそれを受け入れざるをえなかった。
ドッヂは武人としての威厳を保って殿として戦場に残り、追撃してくるメナドの部隊を食い止めようとする。
ペガサスとメルフェイスを無事に逃がすことに成功したドッヂであったが自らの離脱には失敗。
赤の軍の騎士たちに斬りかかられ、衆寡敵さず儚く戦場の露と消えることになる。
驚くべきことにペガサス率いる反乱軍の別働隊はこのたった一回の戦闘でその戦力の7割を失うことになった。
圧倒的な敗北である。
最早単独での作戦継続は不可能な状況である。
ペガサスは歯噛みしつつもメルフェイスの提案に従いエクスとの合流を図るべく東へと落ち延びていくことになる。
ペガサスがノースで手痛い敗北を喫していた頃、エクス率いる反乱軍本隊は北上を続けていた。
目指すはリーザス城の北の玄関口とも言えるウェスの街である。
ウェスはバラオ山脈から流れ出てリーザスの国土を横断する大河ロエイの北岸に位置する。
ウェスを攻略するにはロエイに掛かるカシミア大橋を渡る必要があった。
ロエイを挟んで反対側にあるバランチは反乱軍の勢力下にある。
バランチを出撃した反乱軍はそのカシミア大橋が青い壁によって完全に封鎖されているのを目撃することになる。
国王派はエクスの進撃に対応するためにリーザスでもっとも堅い部隊をこの方面に回してきた。
防衛戦に特化された軍隊である青の軍が反乱軍のカシミア大橋の通過を阻止すべく準備を整えていた。
青の軍を率いるコルドバ・バーンは"リーザスの青い壁"と称されるほどの防衛戦のスペシャリストである。
ランスはそのコルドバに対してウェスの死守を命じたのである。
例えエクスであってもそうそう簡単には打ち破ることの出来ない相手であった。
エクスの旗下の軍勢に属する騎士の数は総計3800名。
内訳は白の軍の上級騎士1000名と下級騎士1400名と黒の軍の下級騎士1400名である。
数は多いが白と黒の混合軍であり、連携の面で課題が残る布陣であった。
対するコルドバの軍勢は総計2200名。
内訳は青の軍の上級騎士1000名と下級騎士1100名と紫の軍の魔法使い100名である。
数では反乱軍に大きく劣って一見して心もとないように見えるが指揮系統が一本化されており、練度は高い。
さらに陣形の中にアスカ率いる魔法使いの部隊を組み込むことによってより堅牢な守備隊形を完成させていた。
防衛に特化された軍隊がカシミア大橋の出口に陣取り、守備を固めている。
攻撃三倍の鉄則が成立する場面であり、エクスは困難な戦いに挑むことになる。
様々な策略を用いて戦局を優位に進めることに成功するエクス。
だがコルドバはエクスの誘いに乗らずに頑固に守備を固め続ける。
反乱軍はややもすると強引な攻めを行わざるをえなくなり、結果として逆に出血を強いられてしまっていた。
エクスにとって配下の黒の軍が遊兵と化してしまっていたのが大変痛かった。
黒の軍の将軍たちがエクスの高度な作戦についてこれず、作戦に支障をきたしてしまっていたのである。
橋という限られた空間の中で戦闘が行われたため思うように部隊の展開ができなかったことが大きかった。
エクスは実質白の軍だけを率いて青の軍と戦っていた。
何度も攻撃を仕掛けるがその都度"青い壁"に跳ね返されてしまう反乱軍。
戦線は正規軍側の思惑通りにこう着状態になってしまう。
エクス率いる反乱軍の本隊はカシミア大橋に釘付けにされてしまった。
ルーベランに捕まったシィルとソウルはボルゴZのボルゴ刑務所に収監されていた。
ボルゴZに送られることによって逆にシィルとソウルの両名の無事が確定されてしまったことはなんとも皮肉な結果である。
通常の監獄に入れられていたのなら彼女らの美貌であればすぐに看守達の慰み者になってしまったであろう。
だが彼女達には政治犯にして重犯罪者というレッテルを貼られてしまったいる。
そのため彼女らに不用意に接触した者は政府の諜報員に睨まれることになりかねなかったのである。
通常の罪人ならば簡易な裁判が行われた後、あっけなく絞首刑になるのが関の山である。
だが盗賊団のボスである主犯格のランスが捕らえられるまでその情婦である二人の刑も確定されない状況となっていた。
ランスの行った反政府活動が余りに大規模なモノであったためである。
結果としてシィルとソウルはただ暗い牢の中に拘束され続けることになる。
幸いなことに二人は同じ部屋に捕らえられることになり、孤独に苛まれることはなかった。
ただし自分たちの刑が確定しない理由については知らされていなかったため、常に不安を感じながら日々を過ごすことになる。
ソウルは不安に苛まれ叫び続ける。
シィルはソウルを宥めつつも黙ってランスが助けてくれるのを信じ続けた。