※この作品はR-18です。

詭弁ですよ!霊夢ちゃん!ダークネス   作:名は体を表す

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なんやかんやで詭弁が縮むシリーズ


紅魔館から子供館に名前を変えた方が良いのではないか?

 『運命』というものは糸に例える事が出来る。一つの選択肢から伸びた運命という糸は、伸びた先で他の運命と絡み合って一本の紐(・)となるか、或いはほ(・)つ(・)れ(・)切(・)れ(・)る(・)か、もしくは……。

 ともかく偉大なる吸血鬼である私レミリア・スカーレットには、その運命という名の糸の先を見る事が出来る能力を生まれつき持っていた。一見正しいと思える選択の先には破滅が隠れていたり、一見間違えている選択の先にこそ真に望む未来が隠れていたり、その手の選択肢の先を見る事が出来るこの能力には実に感謝している。まあ、我が能力なのだけれど。

 この紅魔館に住む者達もまた『レミリア・スカーレット』という運命の糸を元に手繰り寄せられ、紡がれた者達だ。イマイチ正体の掴めない門番、『動かない』と自身で称してる癖に妙な所で行動派な友人、完璧だが可笑しなメイド、そして吸血鬼として狂っている我が妹。この私が『欲しい』と思い、手繰り寄せ、一本の紐として紡いだ愛しき運命達。

 

 最高で隙の無い能力……と、自身でも少し前まで思っていたが……どうやらこの能力には僅かな欠(・)陥(・)があるらしい。

 それは『運命は不可逆である』という事と『幾重にも紡がれた運命の先を辿れない』という事。

 不可逆であるというのは分かり易い。仮に糸を断ち切ってしまえば、もうその糸は他の糸と繋がる事は無い。断ち切った事を無かった事には出来ないのだ。そしてまた、一度紡(・)い(・)で(・)し(・)ま(・)っ(・)た(・)糸を解くのも難しい。紡がれた紐の内、糸の一本だけを取り除く事は時間のかかる事だ。無理に行えば糸は切れてしまう。故に一度そ(・)う(・)なったものを変える事は出来ない。

 幾重にも紡がれた運命の先を辿れないのも分かり易い。運命は糸と例えているが、実際の糸のように色が付いているようなモノでは無い。私は偶々その無色透明な『糸』を見る術があるが、その糸を常に『糸』として見る事は出来ない。『糸』が『紐』や『布』になるほど紡がれてしまえば、もう個別の『糸』としては見られないと書けば伝わるだろうか。

 

 以上の事を踏まえて、『レミリア・スカーレット』という運命の糸に加えたい者達が居る。

 一人は『博麗霊夢』。彼女という人間は非常に興味深い。今すぐにでも自身の血肉の一部にしたいとも思う。どう生き、どう死ぬのかを手に取って隅々まで眺めたいとも思う。だが、彼女の運命はあらゆる物から浮(・)い(・)て(・)し(・)ま(・)う(・)。それは私が能力を使って自身と繋ごうとも、自然とほつれていってまた一本の糸となってしまう。人間でありながら人間を辞めているようなその運命に、それでも尚私は惹かれ、自身の運命に紡ぎたいと思う。

 もう一人は『詭弁答弁』。彼という人間もまた非常に興味深い。彼は霊夢とは全く逆、あらゆる運命を惹(・)き(・)付(・)け(・)る(・)不思議な糸だ。彼の運命という糸は既にありとあらゆるモノと繋がれ、結われ、紡がれているのにも関わらず一切擦(・)り(・)切(・)れ(・)る(・)気配が無い。彼の運命の糸は『糸』という姿でありながら『紐』にも『布』にもなる、実に不可思議な存在である。

 霊夢は、その浮(・)い(・)て(・)し(・)ま(・)う(・)性質故に運命の先を見通す事は容易い。だが、その運命を操るのは非常に難解である。

 詭弁は、その惹(・)き(・)付(・)け(・)て(・)し(・)ま(・)う(・)性質故に運命の先を見通す事は叶わない。だが、その運命を操るのは簡単である。その後どうなるかまでは予測がつかないが。

 二人はどこまでも対照的であるが、しかしだからこそお(・)互(・)い(・)を(・)紡(・)ぐ(・)と(・)し(・)た(・)ら(・)お(・)互(・)い(・)の(・)み(・)と思える程には相性が良い。

 

 ……長々と書いているが、運命を動かすのは何もレミリア・スカーレットだけの専売特許という訳ではない。強い意志を持つ者全てが持ち合わせている能力だ。ただ唯一、私だけが動かした運命の先を予め辿れる事が出来るというだけで。

 

 

 要するに、運命を見通す私にも予測のつかない事はあるって事。ああ、どうしてこうなった。

 

 

 

 レミリア・スカーレットの日記 ~麗しき吸血鬼伝説~ より抜粋

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 紅魔館の大図書館。

 長い年月をかけて成(・)長(・)す(・)る(・)という頭のおかしい魔法の掛けられた大図書館の中で広がる色とりどりの弾幕の嵐。

 その渦中にいるのは四人。『霧雨魔理沙』『パチュリー・ノーレッジ』『フランドール・スカーレット』『詭弁答弁』。各々が各々の持つ意志によって暴虐の渦中に身を沈める。

 

「ちょっと借りるだけじゃねえか!」

 

「貴方の言うちょっとが酷すぎるのよ!圧縮魔法の掛けられた風呂敷いっぱい!?図書館から本が無くなるわ!」

 

「あはは!楽しいわね詭弁!」

 

「俺は楽しくねえんですけどォ!!?」

 

 極太の光線を放ちながら高速で飛び回る白黒魔女、様々な属性を操る紫色の魔女、燃え盛る大剣を振り回す金髪の少女、青白く光り輝く長棒を持って駆け回る少年、各々が広い図書館を所狭しと動き回って邪魔者を排除せんと弾幕を放ち続ける。

 この戦いは四者入り乱れて戦うようなモノでは無かった。ただ、間が悪かっただけなのだ。

 

「く……コホッ、詭弁!貴方が魔理沙に変なモノ持たせたんでしょ!?貴方が何とかしなさいよ!」

 

「ざけんなバカモンその件に関しては俺の方が被害者だぞ!?研究に研究を重ねて作った『四次元風呂敷』が魔理沙に盗まれた時の俺の気持ちを答えよ!(配点10点)」

 

「悪いとは思うが私は反省しないぜ!くらえ『ブレイジングスター』!!!」

 

「『フォーオブアカインド』からの『ファイブカード』*1!!!」

 

「いや地獄ッ!!!」

 

 元々『圧縮魔法』関連の魔導書を返しに来た詭弁とその対応をしていたパチュリー。だがその時偶々魔理沙が件の風呂敷いっぱいに魔導書を入れて盗みを働こうとしていた。詭弁は風呂敷を取り返す為、パチュリーは魔導書泥棒を捕まえる為、協力して魔理沙を追い詰めようとした……だが、そこで詭弁の気配を察知したフランドールが大図書館に突撃。楽しい弾幕ごっこ(フランドール視点)に飛び入り参加するためにスペルカードを切ったのだ。その結果が大図書館の中で繰り広げられる大惨事。いくら本は魔法で保護されているとは言え、大図書館の主であるパチュリーは普通に泣いていい。まあその大惨事の一旦を担っているのだけども。

 

「うっ……ゴホッ!ゴホッ!!し、しまっ―――」

 

「パチュリーちゃん!?」

 

 持病の喘息によって大きな隙を晒してしまったパチュリーに飛び付き、弾幕の嵐から身一つで庇う詭弁。いくら身体が強く、丈夫になったとはいえども限度はある。ほんの僅か踏みとどまり、パチュリーを守るように結界を張った直後に突っ込んできた魔理沙に轢き飛ばされ、フランドールが放った弾幕の嵐に飲み込まれた。

 

「げっ!?や、やり過ぎたか……!?」

 

「あ……き、詭弁!?」

 

「『やり過ぎ』だって思うなら最初から威力を抑えなさいよ!ゴホッ……ゴホッ……ヒュー……ヒュー……」

 

 赤い血を宙に散らし、本棚を巻き込みながら吹き飛んで行く詭弁を見て青ざめた表情を浮かべる三人。一人は別の意味で顔を青ざめさせているが。

 運の悪い事に、詭弁が飛ばされた方向はパチュリーをして危(・)険(・)な(・)魔(・)導(・)書(・)と判断した物を集めていた棚だった。中には見るだけで脳を侵食してしまう様な異界の知識が込められた魔導書や、開くだけで魂を吸い取るような魔導書だってある。

 パチュリーは自身の配下である小悪魔を呼び寄せ、詭弁の救助に当たる。小悪魔も増(・)え(・)て魔導書に埋もれる詭弁を探し、掘り起こす。

 

「お、おいパチュリー……私も何かした方が……」

 

「アンタ程度の魔法使いじゃ見(・)る(・)だけで発狂するようなモノが中身を開いてゴロゴロしてるのよ?居るだけ邪魔よ!」

 

 カラダの作りが根本的に人間と異なる悪魔ならではの方法で、開かれた地(・)雷(・)魔(・)導(・)書(・)を踏み抜き取り除いていく小悪魔達。

 

「居たー!!詭弁さん発見しました!!」

 

「あふふ……魂は無事……精神も傷はなさそうですねぇ……ふぅ、良かった……」

 

 乱雑に散らされた魔導書の山から詭弁を引きずり出した小悪魔。

 

「さて、後は身体の方ですがぁ……あー……えー……えぇー?」

 

「どうしたのよ小悪魔」

 

「あー、その……なんと言えばいいか。詭弁さんがぁ……そのー……縮んでましてぇー……」

 

「……はぁ?」

 

 そう言ってパチュリー達三人の前に詭弁を抱きかかえてパタパタ飛んでくる小悪魔。抱えられている詭弁は、なるほど確かに縮んでいた。

 

 

 

 

 

「という訳でこの子をウチで見習い執事として雇うわよレミィ」

 

「どうしてそうなったァ!!!?」

 

 運命を見通すレミリア・スカーレットの目をもってしても、詭弁という男を見通す事は出来なかった。

 

 

 

 

 * * * * *

 

 

 

 

 俺の名は『詭弁紅夜』。紅魔館の見習いひ(・)つ(・)じ(・)だ。迷える子という訳だな。

 

「『ひつじ』じゃなくて『執事(しつじ)』よ詭弁」

 

「ひつじ!」

 

「だから執事……はぁ、もういいわよ」

 

 呆れたようにため息を吐くのは紅魔館の主であるレミリア・スカーレットお嬢(ぜう)様。俺(・)と(・)同(・)じ(・)く(・)ら(・)い(・)の(・)背(・)してる癖にとても偉い吸血鬼だと言う。妹に負ける敗北者なのにな。

 

「誰が妹に負けてるって?」

 

「お嬢(ぜう)様」

 

「ふざけた事を言うのはこの口かしら?ええ?」

 

「ひゅーひゃひほうひょふほふっへはいはんぅ(従者に暴力を振ってはいかん)」

 

 口に指を突っ込まれて引っ張られるが、俺は暴力に屈しない!

 

「お姉様、子供相手にムキになって恥ずかしくないの?」

 

「ムキになってないし!この生意気な従者に立場ってモンを分からせてあげなきゃいけないのよ!」

 

「手を出してる時点でムキになってると思うぞお嬢(ぜう)様」

 

「アンタが言う事じゃないのよ従者ァ!!!」

 

「お姉様、淑女たるもの、大声はむやみに出さないんじゃなかったかしら?」

 

「ふぐぅ……」

 

 お嬢(ぜう)様からの理不尽な暴力から救ってくれたのはお嬢(ぜう)様の妹、フランドール・スカーレットお嬢(ぜう)様。姉より性格面で優れているし、俺に時々甘いお菓子をくれる良い人。

 

「あー怖かったわねぇ詭弁、大丈夫?あの変なのに絡まれても無視して良いのよ?」

 

「めぇ」

 

「フラン今姉の事『変なの』呼ばわりした!?ねえ!?ちょっと!?」

 

「さあ詭弁、お茶にしましょ?今日はクッキーを焼いたのよ」

 

「おー、クッキーはサクサクしてて好きだぞ。紅茶はまだ練習中だから大目に見てくれ」

 

「ふふふ、紅茶は気持ちで淹れるのよ」

 

「ちっとは聞きなさいよお前らァ!!!」

 

 俺は気が付けばこの紅魔館の図書館に居たらしく、そこの主に拾われて今に至る。それより前の記憶は亡(・)く、図書館の主は手が空いた時にその記憶をサルベージしているようだ。勘だが、無駄な事をしている気がする。

 前(・)の(・)俺(・)はどういう存在だったのか、それを知った所で『詭弁紅夜』としての俺が変わる訳でも無し。ただ今を生きていくだけである。

 

 詭弁紅夜、レミリア・スカーレットを名付け親とし、紅魔館の見習いひ(・)つ(・)じ(・)として生きる者。そしていずれは紅魔館の主として君臨する事をコッソリたくらむ者!

 

「今なんか下剋上企てられた気がするんだけどォ!!?」

 

「お姉様さっきからうるさいわ」

 

「めぇ」

 

 ただそれは暫く先の話である。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 紅魔館の見習いひ(・)つ(・)じ(・)の朝は早い。

 吸血鬼の癖に、朝に起きる生活をしているお嬢(ぜう)様に合わせて生活しなきゃいけないらしい。謎だ。

 

「ほら、早く起きなさい詭弁」

 

「んぅ……寝る子は育つと言う……」

 

「十二分に寝てるでしょ貴方……」

 

 お嬢(ぜう)様が起きる時間より遥か早く。紅魔館のパーフェクトメイドな咲夜姉さんのモーニングコールで起きる……というか起こされる。

 

「ほら、早く着替えなさい」

 

「めぇ」

 

「……詭弁、その誤魔化す時に鳴く癖治しなさいって言ってるでしょ」

 

「紅魔館の見習いひ(・)つ(・)じ(・)な俺のアイデンティティなので」

 

 眠たい目を擦りながら、支給されたモコモコ綿の詰まった白い服を―――

 

「だから貴方の制服はこっち!」

 

「めぇ」

 

 仕方なく清潔感のある燕尾服を着る。

 

「……ほら、こっち向きなさい。ネクタイが曲がってるわよ」

 

「んぃ」

 

 咲夜姉さんの方に向き、首元のネクタイを直される。……ふむ。

 

「これで良し、と。さあ、今日も一日頑張るわよ」

 

「んにぃ。ところで咲夜姉さん」

 

「何よ?それとちゃんと『メイド長』と呼びなさい」

 

「毎日白いパンツだけど偶には違うのをはいた方が良いんじゃないかメイド長」

 

「……いつの間に見たのかしら」

 

「ネクタイ直す時。いつも俺から丸見えだぞ」

 

「………………」

 

 咲夜姉さんの身長は高い。俺の身長はレミリアお嬢(ぜう)様と同じくらいという事は、ネクタイを直すためには自然と腰を落とさざるをえない。更に此処には身だしなみ確認用の三面鏡が置いてある。つまり、そういう事だ。

 

「……これは私のミス、これは私のミス、これは私のミス……ふー……詭弁。女性の下着はあまり見るモノではないわよ」

 

「フランドールお嬢(ぜう)様の下着を毎日変えてるのは俺なのだが」

 

「貴方そんな事までしてるの?」

 

「させられてるのだが」

 

 フランドールお嬢(ぜう)様直々の命令である。しがないひ(・)つ(・)じ(・)に拒否権など無いのだ。めぇ~。

 

「フラン様……いや、後にしましょう……と、とにかく女性の下着は積極的に見るモノではないの!分かったわね?」

 

「分かった」

 

 そういう事にしておきたいって訳だな。

 

「何かすさまじい誤解が生まれてる気がするわ」

 

「それより仕事に向かわなくて良いのか?」

 

「貴方のせいよ!」

 

 頭を叩かれる。人、コレをパワハラと呼ぶ。

 

「私はいつも通り朝食の準備に向かうから、貴方は妖精達に指示を出しなさい。時間になったら妹様を起こしに行くのよ?」

 

「んぃ」

 

「返事は『はい』よ」

 

「はいはい」

 

「『はい』は一回!」

 

「はーい」

 

「伸ばさない!」

 

「はっ!い」

 

「素直に『はい』で良いでしょもう!」

 

「せやな」

 

 ようやく仕事に向かう。やれやれ、咲夜姉さんは朝から元気だなぁ。『誰のせいだと思ってんのよ!』という思念が飛んできた気がするが気のせいだ。

 俺は一度エントランスホールに出て、妖精メイド達用の使用人棟に入る。同じ紅魔館の中だというのに紅魔館本館と使用人棟は空間的に隔離されているらしく、此処でいくら大騒ぎしようともお嬢(ぜう)様方には聞こえないそうだ。不思議。

 

「全員起床ッ!!!」

 

 使用人棟全体に響き渡る程に大きな声をあげても本館には全然聞こえないという便利仕様。一匹ずつ起こす手間が無くていいね。

 バタバタと音を立てながら、俺と同じくらいの大きさで背中に羽根の生えた女の子達が整列していく。中には髪が爆発したかのようにはねてる子や衣服が乱れてる子、乱れてるどころか全裸に近い子も居る。まあ良いけどさ。

 全員が揃ったところで、そのまま朝礼。と言ってもお嬢(ぜう)様達の今日の予定をざっくり伝えるくらいしか言う事が無いんだけど。

 

「―――てな感じで、お昼にお嬢(ぜう)様は博麗神社に向かう予定だから清掃班はお嬢(ぜう)様が出たの確認してからお嬢(ぜう)様の部屋掃除に入る事。後はー……そんな所か。じゃ、後30分で夜組と交代だから、それまでに全員身だしなみ整える事。以上!」

 

「「「 はーい! 」」」

 

「『はい』は三回!」

 

「「「 はいはいはーい!! 」」」

 

「元気があってよろしい。じゃあ解散」

 

 そう伝えたら部屋に戻る者、その場に残って近くの妖精と会話する者、俺に向かって飛び付いてくる者と分かれた。

 

「詭弁様ー!」

 

「はいはい」

 

 何故か知らんが俺は妖精メイド達から『詭弁様』『詭弁様』と慕われている。特に何かした記憶はないんだが……まあ嫌われてるより好かれてる方が断然良いので特に呼び方を直す事はない。

 飛び付いてくる妖精メイド達を抱きとめ、順番に頭を撫でていく。全員をゆっくり相手している時間は無いが、まあ仕事の合間に頭を撫でるくらいなら大したことはない。いくら紅魔館が広いと言っても、メイド妖精がこれだけ大勢いれば数の利で掃除だろうがなんだろうがあっという間に終わる。空いた時間にこうして付き合ったって構わないだろう。

 

 そうしてメイド妖精達を相手にしていたらあっという間に30分経った。使用人棟に備えられてる大時計が鳴り、夜班と昼班の交代を告げる。

 

「今日も頑張ってこい」

 

「はい!」

 

 大勢の昼班のメイド妖精達が飛び立っていき、入れ替わる様に夜班のメイド妖精達が使用人棟に飛び込んでくる。

 

「詭弁様成分補給~」

 

「おぶっ」

 

 使用人棟に飛び込んでくる際、一部のメイド妖精はそのまま俺に抱き付いてくる。

 夜班のメイド妖精達は数が昼班に比べて少ないが、体格が大(・)き(・)い(・)者達が多い。すなわち咲夜姉さん並の背の高さのメイド妖精達に抱き付かれてしまえば、背の低い俺は為すがままである。そのまま謎成分を吸い込むように髪に顔をうずめる妖精メイド。

 

「次は私よ!」

 

「俺も仕事があるから手短にせーよ」

 

 そのまま回されるように髪やうなじ、脇等を嗅がれる俺。対価とばかりにおっぱいを揉んでいるが特に堪えてるためしがない。

 

「スンスン……詭弁様ってま(・)だ(・)?」

 

「何がだ?」

 

「いーえー、分かんなければそれでー」

 

「んぃ?」

 

 俺の股座に顔を突っ込んで匂いを嗅ぐメイド妖精が意味深な事を言うが意味が分からない。とりあえず言える事は股間に顔を突っ込むもんじゃないぞって事。

 夜班のメイド妖精の数は昼班の半分以下。そして俺に突っ込んでくる数も更に少なくなるから、解放されるのは割りと早い。

 

「それじゃーおやすみなさい詭弁様ー」

 

「おう、おやすみ」

 

 夜班のメイド妖精達が部屋に戻っていく。俺も懐中時計を確認すれば、もうじきフランドールお嬢(ぜう)様を起こしに行く時間だ。紅魔館地下へ向かう。

 フランドールお嬢(ぜう)様は吸血鬼らしく日の一切が届かない地下深くにある部屋で眠っている。移動するのが面倒くさいことこの上なく、こっそり直通ルートを作ってなかったら脚がムキムキになる所だ。

 あっという間にフランドールお嬢(ぜう)様の部屋に到着。時間は……まあちょっと早いけど良いか。

 

「ノックしてもしもーし!フランドールお嬢(ぜう)様起きてるー?」

 

 返事はない。

 

「入りますよー」

 

 やっぱり返事はない。そのまま部屋に入る事にする。

 部屋の中は最低限の家具が置いてあるだけで人形一つ置いていない、『寝る専用の場所』と言わんばかりに殺風景な部屋だ。ただ唯一ベッドだけ豪華にキングサイズの物が置かれている。一点豪華主義。

 

「フランドールお嬢(ぜう)様起きてください」

 

 布団に引きこもって籠城戦の構えを取っているフランドールお嬢(ぜう)様。起こさなきゃ仕事にならないので起こす。

 人を起こすのに大声は要らない。ただ目覚めざるをえない音(・)を出せばいい。

 

「ぶ~~~~~~~~~~~~ん」

 

 ボンッ

 

 突如空中が爆発する。どうやらお目覚めの御様子。

 

「……詭弁、その起こし方は止めてって言ってるでしょ……」

 

「普通に起きてくれれば止めますとも」

 

 人間も吸血鬼も耳元で蚊が飛ぶ不愉快さは一緒らしい。布団からモソモソ出て来たのは全裸のフランドールお嬢(ぜう)様。寝る時は裸主義らしい。

 

「ほらフランドールお嬢(ぜう)様、服を着て朝食にしましょう」

 

「ん~……詭弁着せて~」

 

 全裸のフランドールお嬢(ぜう)様を抱き起こし、クローゼットから衣服一式を出して着せていく。毎日こうだからもう慣れたモノである。

 

「詭弁、おはようのキスをしなさい」

 

「遠慮しておきます」

 

「主の命令に遠慮とか無いのよ」

 

 人間の口の中には多くもの細菌が棲息している。起きている際には唾液によって洗い流され、細菌はそれほど増殖しない。だが寝ている際には唾液は分泌されず、口の中の細菌は増殖し放題である。故に寝起きの口腔内には非常に多くの細菌がウヨウヨしている。そんな状態でキスをするというのは、一説にはトイレの便器とキスしているようなもので―――」

 

「全部口に出てる!歯磨けばいいんでしょもう!」

 

「分かっていただけたようで」

 

 無論俺は完璧な見習いひ(・)つ(・)じ(・)なので朝歯を磨かなくても常に清潔なのだ。めぇ~。

 フランドールお嬢(ぜう)様が歯を磨き終えるのを待ち、時間を確認。そろそろ朝食が出来る頃合いだろう。

 

「さあ詭弁!おはようのキ―――」

 

「フランドールお嬢(ぜう)様、朝食の時間ですので移動しましょう。俺も食いっぱぐれたくないので」

 

「んもー!!!」

 

 フランドールお嬢(ぜう)様に抱きかかえられ、直通ルートを飛ぶ様に移動する。行きと同じようにあっという間に地上階に到着し、食堂に向かう。

 食堂には既にレミリアお嬢(ぜう)様、美鈴姉さん、パチュリー姉さんが揃っていた。

 

「おはよう詭弁、フラン。相変わらず仲良さそうねアンタ達」

 

「詭弁はあげないわよ」

 

「要らないわよ……」

 

 こうして全員(メイド妖精と図書館に居る小悪魔達を除く)が食堂に集まって食事するのは最近になってからの習慣らしい。なんでかは知らないがそういうものだと思ってる。

 そうして食卓につくフランドールお嬢(ぜう)様と俺。従者と一緒に食っていいんかと思うがそういうものだと(略

 咲夜姉さんがあっという間に配膳し、席につく。

 

「いただきます」

 

「「「 いただきます 」」」

 

 レミリアお嬢(ぜう)様が号令をかけ、全員揃っていただきますを言う。今日の朝食は白米に納豆、焼き鮭、漬物、豆腐と油揚げの味噌汁。吸血鬼の居る食卓とは思えないラインナップだが、吸血鬼二人の前には更に血のワインが注がれている。それでいいのか。

 納豆は良いよな。ネバネバで健康に良い感じがする。それに焼き鮭と漬物も良い感じの塩味でご飯が更に進むというもの。味噌汁を啜って一息つく。アミノ酸摂取してるって感じ。

 

「……」

 

 そうして朝食を食べていると、ジッと見つめられている様な感覚を覚える。だが食べる手を止めて軽く見回しても誰も俺を見ている訳ではない。はてな。

 

 そうして黙々と朝食を食べ終える。皆何故か朝食を食べる時は決まって一言も喋らない。昼食と夕食はそもそも一緒に食べないのでよく分からないが、何故か朝食は全員集まって食べるのに何も喋らないという事に違和感を覚える。

 

「ごちそうさまでした」

 

「「「 ごちそうさまでした 」」」

 

 俺が食べ終える頃には全員食べ終えていて、全員が席を立つ。朝食の片づけ及び食器洗いは俺の仕事なので、食器を纏めてシンクに持っていく。

 

「パチェ、―――は―――の?」

 

「ええ、――――よ」

 

「―――ね」

 

 小さい声で何かを話している声が聞こえるが、まあ俺には関係ない事だろう。意識を外して食器洗いに集中する。

 パチュリー姉さんの指示によって、小さい事でも魔法を使うことで習熟度を上げていく訓練をしている。具体的には食器洗い用の水を魔法で作りだし、洗った食器は魔法で乾かすように言われている。

 だが俺は更に一歩踏み込むぜ。食器洗い用の水の中に微細な気泡を作りだし、汚れを浮かせて洗い流す。洗剤要らずで納豆や油汚れを落とし、あっという間に洗い物を片付ける。時間操作する咲夜姉さんには劣るが、食器洗いに関しては既にマスターしている俺に隙は無い。同じように洗濯や掃除も魔法を使ってちょちょいのちょいやで。食事を作るのや紅茶を淹れるのはまだだが。

 

 片づけが完全に終われば、後は日によってやる事が違う。掃除?洗濯?それらは全て妖精メイド達がやるので俺がやる事は無い。

 では何をするか。それは―――

 

「詭弁さん、今日の修業を始めますよ」

 

「おっす美鈴姉さん」

 

 今日は美鈴姉さんと行う身体作りだ。違う日だとパチュリー姉さんと魔法講座だったり、咲夜姉さんと料理修業だったり、とにかく色々やる事が違う。

 俺はまだ子供であり、小さい頃から身体をムキムキマッチョにするとその後の成長に悪影響が出るとの事。故に身体作りでやる事と言えば主に柔軟、次に瞬発力訓練……これは逃(・)げ(・)足(・)を鍛える物らしい。

 

「身体が柔らかくなれば怪我をする事が少なくなります。また、関節の可動域を広げる事で多少体勢が崩れても強力な攻撃を撃つ事も出来ます。こんな感じで足を頭上より高く上げられるのが最終目標ですね」

 

 そう言って片足で身体を支えながら脚を伸ばし、天を蹴るが如く真上に伸びきっている。やべぇ。

 

「どうですか詭弁さん」

 

「うむ、黒は攻めすぎだと思うぞ」

 

「黒?なんの―――」

 

 美鈴姉さんの服は簡素な作りで、スカートにはスリットが入っている。要するに中身がオープンザプライス。

 

「……ふっ」

 

 そうして無言で走り去ろうとする美鈴姉さん。何処へ行く。

 

「追いかけてこないでください詭弁さんッ!私はっ!私はまた同じミスを!!!」

 

「大丈夫だ、人は何度も繰り返しミスして日々成長をしていく生き物なのだから」

 

「うわあああっ!その姿で慰めないでください詭弁さぁん!!!」

 

 それはどういう意味だ。

 

「見られた事は気にしなくていいぞ美鈴姉さん。男は幾つになっても太ももとパンツは好きなモンだ」

 

「貴方が言うと意味合いが変わってくる!」

 

 だからどういう意味だ。

 泣きながら顔を真っ赤にして逃走する美鈴姉さんを追いかけ続けると、視界の端に白黒の人間が見えた。

 

「侵入者だ!」

 

「おう。世紀の大泥棒、霧雨魔理沙様だぜ」

 

「紅魔館の見習いひ(・)つ(・)じ(・)の詭弁紅夜だ」

 

 そう名乗ると、侵入者の顔が悲痛そうに歪んだ。

 

「……チッ、あん時無理にでも連れて帰ってれば……おい詭弁!お前、この館の連中に騙されてるんだぜ!」

 

「騙されてる?何言ってんだ?」

 

「良いか、お前は本当は―――」

 

 

 ―――彩符『極彩颱風』

 

 

「詭弁さん、侵(・)入(・)者(・)と仲良く会話してる暇があるんですか?」

 

 弾幕と共に威圧的な声が響く。

 

「くっ、随分とちっちゃい詭弁にオネツじゃないか美鈴!」

 

「……詭弁さん『紅魔館に許可なく立ち入る者は―――」

 

「―――排除してから指示を仰ぐ』。分かってるさ」

 

 美鈴姉さんの声で意識を切り替えた俺は、俺(・)に(・)は(・)無(・)骨(・)で(・)大(・)き(・)さ(・)が(・)合(・)わ(・)な(・)い(・)手甲を身に着け、大声を出す。

 

「戦闘部隊集合ッ!!!」

 

「な、なんだ!?」

 

 俺の掛け声が館全体に響き渡ったその直後、大勢のメイド妖精達が集合してきた。

 

「妖精っ!?だが、幾ら数を揃えたところで所詮妖精だぜ!くらえ『マスタースパーク』!!!」

 

「大盾部隊、前へ!!」

 

 何処からともなく取り出した大盾を全面に構えた妖精達が隙間なく集まり、極太のレーザーを完全に遮断した。

 

「な、なぁ!!?そんなんアリかよ!?」

 

「射撃部隊、掩護!!」

 

 大盾を構えた妖精達に僅かな隙間が開き、その隙間から光弾やクナイ弾が飛び出す。侵入者は妖精を落とそうと躍起になるが、弾幕は大盾に防がれて返しの攻撃によってボロボロに消耗していく。

 

「く、ここは撤退するしかない……」

 

 そう言って空高く飛びあがり、逃走した白黒の侵入者。歓声を上げる妖精達。

 

「流石詭弁さんですね!妖精使いが堂に入ってます!」

 

「それほどでもない」

 

 飛び付いてくる妖精達をなだめつつ、仕事に戻らせる。

 

 そうして一日は過ぎていく。

 平和で、時々可笑しな日常は過ぎていく。

 

 

つづく

*1:
禁忌『カゴメカゴメ』禁忌『恋の迷路』禁弾『過去を刻む時計』QED『495年の波紋』




気を抜いたら一万字超えてもえっち一つ無いとかもう病気だな!
いい加減切り上げてエッチパート書かなあかんとの事で、今日は一応ここまで。


・詭弁紅夜

 めっちゃ危険な魔導書の影響により記憶消滅&幼児化のダブルパンチを受けた姿。10歳未満程度のイメージ。
 紅魔館で純粋培養された影響でスケベではないが、詭弁は詭弁なのでラッキースケベに見舞われる程度の能力。女体に興味があるのは本能レベル。
 未精通(ここ重要)


次回予告!

「れ、レミリアお嬢様!」
「どうしたのよ詭弁、そんな慌てて」
「俺の股間から白い粘液がぁ……!」
「……は?」
「俺、おれ……死ぬのか……?」
「――――――……は?」

次回!『カリスマおぜうさまのパーフェクト保健体育!』

 レミリア、処女卒業するってよ。
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