九郎は背後に4つの業火の如き、闘気を感じた。
振り返ると、そこには凶悪そうな面構えの4人の若者たちがいた。
皆揃いのバトルジャケットを纏っている。
どうやらRABIDのメンバーのようだ。
その中の一人のスキンヘッドの大男が巨大な拳で殴り掛かってきた。
全身を筋肉の鎧で覆われた巨躯、そのパンチ力はヘビー級ボクサー並みのものだった。
だが、九郎は微動だにせず、拳を受け止めた。
しかも、左手の中指と人差し指の二本のみで。
「何ィ? 俺の拳を指だけで受け止めただとォ!?」
そして、驚く大男の腹に反対側の拳が叩き込まれた。
200キロは超える巨体の足元が、宙に浮き、後方に10メートルほど飛び壁に激突した。
大男は衝撃で白目を向いて気絶した。
「やっ……野郎~~~!! 死ねやァ!!!」
次いで、キャップを被った長髪の男がナイフを持って襲い掛かる。
九郎は、それを素手で掴むと、刺そうとする相手の力を利用して空中で一回転させて、背後に投げ飛ばした。
激しい音と共に、ナイフ男の背中が床に叩きつけられた。
突然の打撲により息が荒くなり、床に倒れたまま激痛に悶える。
「へへへっ……コイツで、あの世に逝きなァーーーーーーーーーーッ!!!」
長髪をバンダナでまとめた筋肉マッチョがポケットから銃を取り出した。
強力なマグナム弾を仕込んだコルトパイソンだ。
バンダナは葉巻を咥えながらコルトパイソンの銃口を九郎に向け、発砲した。
凄まじい銃声がフロアに響く。
だが、九郎は何食わぬ顔で佇んでいた。
バンダナは更に弾丸を何発も九郎に目掛けて発射した。
九郎は、弾丸を何発撃ち込もうとも何食わぬ顔で、凝然と立ったままだ。
「くそっ!! 何で死なねえんだッ?! こいつ、化け物か……」
バンダナは苛立ちながらも狙いを定め、最後の弾丸を放った。
狙いは九郎の頭部だ。
マグナム弾が直立する九郎の額を打ち抜こうとした瞬間、奇妙な生き物が九郎の背後から現れた。
全長30㎝ほどの、青い肌をした小鬼のような怪物だ。
白いボサボサ頭に、鋭く尖った耳、白目の無い冥界の闇の如き黒目、唇からは鋭い二本の牙が覗き、額には2本の角がある。
小鬼は九郎の肩に乗り、細長い指で弾丸を掴んだ。
「なっ……何だ? コイツは……」
バンダナは、この世の者とは思えぬ奇怪な怪物の登場を恐れと腹立たしさの混じった表情で迎える。
さっきから何発も撃ち込んでるのに当たらないのは、この怪物が九郎を守っていたからなのだ。
「何だコイツは?じゃねえよ!! 俺の名前はベリアル、魔界の貴公子なんだぜ」
小鬼がしゃがれた声で自己紹介をした。
だが、目の前の喋る怪物が魔界から来た悪魔だと知っても今更、驚く事でもなかった。
ベリアルがマグナム弾を自分の口の中に入れた。
そして、バンダナの方をジッと見つめたかと思うと、口から弾丸を凄まじい勢いで吐き出した。
弾はバンダナの太ももに命中し、銃と変わらぬ威力で肉の中にめり込んだ。
バンダナはガタイに似合わぬ女のような悲鳴を上げて、太ももを抑えながらうずくまった。
「お前、なかなかやるじゃねえか! だが、このまま生かして返すわけにはいかねえぜ」
4人組の最後の一人が言った。
ツンツンに逆立てた金髪、精悍な顔立ちに鋭い眼光、鍛え上げられた肉体と獣じみた闘気、どうやらこの男が佐守に次ぐナンバー2のようだ。
スパイキーヘアが、ファイティングポーズを取り迫ってきた。
九郎も、同じように戦闘態勢に入る。
睨みあう両者、お互いに相手が只者ではないことを認識しているためか、見合ったまましばらく動かない。
スパイキーがまず、九郎に接近する。
九郎は左フックを当てよとしたが、スパイキーは身を屈め避けてしまった。
二人の動きはプロボクサーを凌ぐ俊敏なものであった。