俺は、転生した。
名前を忘れ、過去を忘れ、今まで積み重ねてきたであろうこと全てを忘却した俺は、なぜか転生したという事実だけは認識できていた。
いつ、どこで、どうやって。
そんなことは分からない。いつのまにか、としか言いようがなかった。
何もかもを忘れ去り、全てをゼロから始めることになった存在。
それが、今の俺だった。
だが、幸いにも新しく誕生した俺には、特別な力があった。
全ての過去が消え去った代わりに、すべての万象を操り改変する力を得たのだ。
その力を使って、俺は第二の故郷となるこの世界の王となった。
全てを統べる王。全てを知ることはできないが、全てを成すことができる全能の王となった。
だが、王となった俺は何をするでもなく世界を治めた。
全てを操り、全てを成すことができる俺には、いつでもどこでも何度でもできることしかなかった。
もちろん俺にも人並み以上の欲はあるが、すぐに満たすことができるからいつやっても同じ。
そして俺には寿命がないらしいので急いでやる必要もない。
全てを得た俺は、まったく満たされない日々を送ることになったのだ。
そうして何年、何十年、何百年、何千年────時が過ぎていった。
全ての万象は定められた時を生きて、最後には朽ちる。全ての存在に終わりがあり、それは俺を除いた全ての存在に適用される。
長く時を過ごしていると、俺を奉り崇めていた者たちの中に俺に逆らい、抗うものが生まれるようになった。
俺はそれを歓迎した。
いつまでも同じことしかしないなど、あまりに面白味が無さすぎるからだ。
俺の退屈を紛らわせるのには丁度いいと、ある程度育つまで放っておいた。
抗う者たちは志を共にする同士を見つけ、俺を殺す手段を探り、俺のいない新しい未来のために動き、俺の前に姿を表し──────そこで俺直々にその者たちを終わらせた。
肉体的にではなく、精神的に。
心を壊し、生きているのに死んでいる状態にしたのだ。
心のなくなった肉体は人形として使うことにした。もっとも、どう使うかなど何も考えてはいないが。
俺を少しは楽しませた抗う者たちはいなくなり、残ったのは心をなくした人形だけ。
────その時点で、俺はこの世界に見切りをつけた。
俺を楽しませるものはなく、俺を満たすようなものもなく、俺を崇める者の敵となるものもいない。
俺の敵となった者も、消え去った。
俺を崇め、技術と文化だけが育っていくこの世界はひどくつまらない。
だから俺は、別の世界に行くことにした。
俺が満たされるために。俺が、楽しくあるために。
▼▼▼▼▼
「なるほど、神の座というやつか」
わかりやすい、と。俺は呟く。
自身を神と自称するだけあって、自己顕示欲も強いらしい。
白と黒と極彩で染められた空間。本来ならば主を守る城にもなり得たのであろうこの場所も……俺の手にかかれば、ただの紙にしかなりえない。
「なぁ?エヒトとやら」
エヒト────あぁ、確かエヒトルジュエとか名乗っていたか。
魂だけでありながら、俺が見てきた中でも最高級の力を有する存在。
それが今や、自身の作った人形に閉じ込められる木偶の坊と化している。
中々に愉快だ。
傲慢で、高慢で、自己主義で、欲深く、醜悪で────そんな存在を堕とすのはとてもたまらない。
まぁ今ではかつての俺と同じように、全てを忘れ去っているだろうが。
俺に抗うな。俺の物となれ。全てを忘れろ。俺に仕えろ────他にも色々と命令した。
全ては、俺が満たされるために。
「さて、と」
神の間とも言うべき場所から、この世界を覗き込む。
そこから見えるのは、俺のいた世界とはまったく違い───そして、俺の知らない世界があった。
「く、はははは」
あぁ、楽しみだ。
ここなら、俺も満たされるかもしれない────そう、感じた。
まだエロはありません。
次で出します