背後から伸びてきた、やわらかな手のひらが、クリトリスをつつみこむ。
「くぁ……っ♥ ふぅ、ん……っ♥」
あくまで、そっとおおいかぶさる感じで。
それでも、イッたばかりのクリトリスにはつよいつよい刺激。手のひらの熱で、じりじり焦げるみたい。
じんじん、じんじん。しびれていく。
「ふぁぁ……っ♥ うっ、く……♥」
あつい。あつい。クリトリスが、あつくてたまらない。
そのくせ、おなかのなかは、ぞくぞくと冷えきっていく。
りん……っ♥ りん……っ♥ りん……っ♥
またチョーカーの鈴が鳴りはじめる。鈴が鳴るたび、宙に、こぶしぐらいのおおきさの、桃色のハートマークが飛びだす。
「ふふっ、また鳴っちゃいましたね、メイさん」
「うぅん……っ♥ んっ……♥ んっ……♥」
耳にあつい息がかかる。ぞくぞくが、熱に変わる。
「指、入れますよ」
人差し指と、薬指で、あそこをひらかれる。中指が、そろそろと侵入してくる。
「あ――♥ あ――♥ あ――♥」
あたしのからだのなかに、あたし以外のものが、はいってくる感覚。
でもそれは、やわらかくって、あたたかくって、すべすべしていて、異物感なく、あたしの粘膜に溶けこむみたいで、あたしのそこは、にゅるん、って中指を受けいれる。
「どうですか? 痛くはありませんか?」
「んっ♥ んっ♥ んっ♥ ぜんぜん、へいき……っ♥ です……っ♥」
「よかったです。こんなに、とろとろですものね」
第一関節まで入った中指が、くるくると入口で円を描く。狭い入口を溶きほぐすみたいに。
あたしのそこに、たしかに穴があるんだとわからされてるみたいで、恥ずかしい。
「うっ♥ っく♥ っくうぅん♥」
「性感に集中できるように、目を閉じてくださいね」
左手で、両方の瞼をふさがれる。途端に、指先のかたちまでわかりそうなぐらい、意識が下半身にもってかれる。
そこをくるくる掻きまわされるたびに、あたしのこころまで、くちゃくちゃと掻きまわされてるみたいに、理性がぐちゃぐちゃになっていく。
「ふぅうぅっ♥ んっ♥ んっ♥ んっ♥」
「もうちょっと奥まで、入れてみますね」
にゅぐっ、にゅぐっ、と、第二関節まで、はいってくる。あたしでもさわったことのない、あたしのからだのなかの部分。
ぬるぬるしてて、ぐにゅぐにゅしてる、からだの内側の、粘膜。
そこまではいってくると、指の骨のかたさとかがわかってきて、異物感がすこし、あるかも。
でもその頃には、あたしのそこは、この指を、きもちよくしてくれるものだとおしえこまれていたから、こばむことはない。
むしろ――、もっとふかく、もっと奥まで、触れられてみたくて、ゆだねてみたくて、脚をひらく。
「ふふっ、もっと、入れてほしいですか?」
「~~~っ♥ んっ♥ んっ♥ んっ♥」
全部お見通しと、言わんばかり。あたしのあさましさを、おもいしらされてるみたいで、ぞくぞく。そして――。
りん……っ♥ りん……っ♥ りん……っ♥
鈴も、はしたなく、三回。
「じゃあ、いきますね?」
ぬるん、って根元まで。あたしのもっとも無防備な、なんにも守られていない粘膜を、指先が押す。
「っくっぅんん……っ♥♥」
指が根本まではいったのにあわせて、手のひらがクリトリスをやさしく圧迫する。じんわり、あっためられる。
「は……っ♥ は……っ♥ は……っ♥」
「うごかしますよ」
と言っても、指先をくいくいと曲げただけ。それだけでも、肉と神経がみっちり詰まったところだから、生まれる刺激は、すごくおおきい。
「あ……っ!♥ あっ!♥ あっ!♥ んっ!♥」
すごい――すごい。すごいこと、してる。
あたしのからだのなか、えぐられちゃってる――!
勝手に声が出る。脚がぶるぶるする。おなかは、ひくひく。自分のからだが、自分のものじゃなくなっちゃったみたい。
支配、されちゃってるみたい――。
「たくさんあふれてきちゃってますね。もうちょっと、うごかしますよ?」
中指が、奥をくすぐるみたいに撫でながら、出たりはいったり。
「んんんっ!♥ んっ!♥ んっ!♥」
あそこのまわりが、ぞわぞわしたものにつつまれていく。どんどん、あつくなっていく。
「はっ♥ はっ♥ はっ♥ はぁあ、あぅっ!♥」
腰が、自然に浮いてくる。クリトリスを手のひらに押しつけてしまう。こすれて、ばちばち電気がはしる。
「あぅっ♥ あっ♥ きゃうっ♥♥」
くらくらする。どきどきする。とまらない。とめられない。
耳元で、ささやかれる。
「おまんこに、わたしがほじっているところに、意識を集中させてください。さっきのイッた感覚、おぼえてますか? むずかしくないですから。こわくないですから。その感覚を、ずっと追いかけてみてください」
中指は、あたしの愛液を掻きだすみたいに。ぐちゃぐちゃ、いやらしい水音が、あたまのなかでひびく。
ぞわぞわが、ぞくぞくに変わっていく。どんどん、ぞくぞくにとりかこまれていく。
ぞくぞくが、沸騰したお湯みたいに、ふつふつとちいさくはじける。次第に、おおきなおおきなうねりのようなものが、かたちづくられていく。
あつい。あつい、あつい、あつい――!
尋常じゃないぐらい、あたしのあそこが熱を発しているのがわかる。
でもその熱は、ほんものの熱なんかじゃなくて、にせもので、からだがやけどしそうなぐらいの、きもちよさなんだ、ってわかってて。
「はっ♥ はっ♥ あっ!♥ これっ♥ あっ♥ これっ♥ くるっ♥ くるぅっ♥ さっき、のっ♥ より、おっき――っ♥」
「だいじょうぶですよ、そのまま受け入れてくださいね」
「あっ♥ あっ♥ でもっ♥ こわいっ♥ これっ♥ こわ――んむっ!?」
突然、唇があつくてやわらかいものでおおわれて、にゅるりと口のなかに、ぬめったなにかがはいってきた瞬間。
「――っ♥ ――っ♥ ――っ♥」
あたまのなかが真っ白になる。腰を突きだす。ぎゅうぎゅう指を締めつける。
どこまでもどこまでも吹きとばされそうな、白い、快感。
「――ッ! これって、まさか――」
あたしのからだをいじくってた、まひるさんが、息を呑む。
「まさか……こんな……さしずめ……、電子の妖精ならぬ――」
――妖精みたい。
なんども言われたことば。
耳にするたびに、またか、っておもうことば。
きらいなことば。
あるひとは、あたしの見てくれを指して。
あるひとは、あたしの要領のわるさを見て。
むかし、両親に、あんたは妖精にとりかえられたんだ、って言われたことがある。
発育不良で、成人しててもこどもみたいな外見とか、魔術がまんぞくにつかえないところとか。
いつもぼうっとしてて、不注意で、集中力がなくて、勉強もできないし、いやなことがあるとあたまのなかがふわふわしてきて、自分でも考えがまとまってないってわかってるぐらいで、なにを考えているのかわからないとか、いたずらとしかおもえないぐらい出来がわるいだとかも、言われたりした。
鼠態LMOの
でも、あたしにはむりだった。NEMESISが、ちゃんと発現しなかった。
家族には、できそこない、身内の恥さらしだ、妖精の子ってなじられつづけた。
だからあたしはこどものころ、あたしは妖精なんだ、ってずっと本気で信じこんでた。
あたしは、妖精がきらいになった。
妖精が余計なことをしなきゃ、あたしはこんな世界でつらいおもいをすることもなかったのに――。
ほかの妖精なんて、みんな砕けてしまえばいいのにって、おもってた。
もの覚えがわるくて、考えるのもおそかったし、他人とコミュニケーションをとるのも苦手だったから、仕事もぜんぜん見つからなかった。
大使館の警護長のお父さんのコネで、事務に採用してもらったけど、仕事は全部アンドロイドでこと足りてた。
だれも就きたがらない仕事なのに、部署にひとりはヒトがいなくちゃいけないから、ちょうどよかったんだとか。
だれも就きたがらない理由は、すぐにわかった。
お給料はカフェでアルバイトしてたほうがマシなぐらいだし、仕事内容はちょっとした雑務のほか、一日中アンドロイドをながめてて、ときたま資料に承認印を押したり、アンドロイドが故障したら技師さんを呼ぶだけだったから。
そんなでも、あたしには向いてないみたいで、簡単な仕事でもミスを連発してしまって、毎日アンドロイドの警告をわんわん鳴らしちゃうから、いっつもびくびくしてたりする。
ふだんは他人とかかわらないですむんだけど、週に一、二度、上司に呼び出されて、どうしてこんな書類を通してくるんだとか、ほんとうにチェックしてるのかとか、いろいろ怒られたりもする。
でも、下っ端じゃどうしようもないような決定事項だったり、数式やデータを見てもわかりっこない集計内容だったり、ほとんど八つ当たりなのは、たぶん上司もわかってる。
アンドロイドか、上司に怒鳴られるかをひたすら繰りかえすだけの日々――この生活を一生つづけるのかとおもうと、ゆううつで仕方なかった。
ひとりの狐の来訪を、のぞいては。
「ごめーん、メイ、今日もかくまって!」
「……またさぼり? ナリアさん」
事務所に駆けこんでくる金髪の狐態LMO――稲荷あざみ。
ときどき、こうして仕事から逃げてくる。ほかにひともいないし、ここの事務室は、逃げこむのにもってこいだから。
「いやぁ、あの公爵、いっつも妹に会わせろってしつこいしさぁ。生理的にむりなんだよね」
「問題に、ならないの?」
「うん、大問題。これからどーするか考えるとこ。あーあ、やんなっちゃう」
べたっとデスクの上に寝転がるナリアさんを見て、あたしはわらう。
ナリアさんは爵位持ちだし、本来ならちかづける立場じゃないけど、ナリアさんが気さくだし、こうしてかくまってあげてるうちに、仲良くなった。というか、仲良くしてもらってる、のかも。
はじめてできた友人に、最初は緊張して会うたびに汗をかいてたぐらい。今でも、ちょっと火照る。
「でも、ナリアさんはいつもたのしそう」
「まーね、向いてるし、やりたい仕事ではあったし。メイは?」
「あたしは、べつに、たのしいとおもったことは……でも、こんなことぐらいしかできないし、仕事だし、しかたないのかなって」
「んー、それはちがくない?」
「どうして?」
「仕事はさ、生きるためにはやんなきゃいけないじゃん。でも、仕事イコール苦痛ってのを受けいれちゃうと、生きることそのものが苦痛ってことになっちゃうじゃん?」
「あ――」
「それって、ほんとに生きたいの? 生きたいっておもうこと、強要されてるんじゃないの?」
「……ちょっとわかる、気がする」
「まぁ人生仕事がぜんぶってわけじゃないけど、どうせやんなきゃいけないことだし、一日の大半は仕事しなきゃだし、なら、たのしいことのほうがいいじゃんって、あたしはおもうな」
「……うん」
そう言い切れることが、ナリアさんはつよいっておもわされて、まぶしくて、あたしのよわさに気づかされて、ちょっとへこむ。
「……あたしは、得意なこととか、好きなこととか、趣味とかもないし……生きてることをたのしめてるナリアさんが、ほんとにうらやましい……」
「そう? メイ、お酒好きだったよね?」
「でも、そんなに詳しくはないし……仕事にできるほどの熱意もないかな……」
「やってみなきゃわかんないもんだよ? 案外、バーテンさんとか合ったりして」
「ぜ、ぜったい、むり……話とか、つづかないし……きっとお客さんも、こまるとおもう……」
「そうかな? あたしはメイといると、なんかよくわかんないけど、たのしくなってくるよ。メイがわらうと、なんかあたしまでぽわぽわしちゃうんだよね」
「……っ」
社交辞令ってわかってるけど、ナリアさんにそう言われると、やっぱり、うれしい。
「あ、そだ、メイ、来週の長期休暇、なんか予定ある?」
「とくに、ないけど……?」
どきりとする。もしかして――。
「実は女の子限定のリゾートに行くつもりでチケットとか買っちゃったんだけどさ、どーしても外せない仕事――っていうか同盟スフィアの領主の娘とデートなんだけど、はいっちゃって、行けなくなっちゃったんだよね。代わりに、行く気ない? 旅費も宿泊費も、全部ただでいーよ」
こころが、ぎしぎしする。
……やっぱり、付き合ってる子ぐらい、いるよね。
なるべく顔に出さないように、なんとかことばをしぼりだす。
「……え、いいの……?」
「いーのいーの、いっつもかくまってくれてるからね」
「でも、そんな、高いんじゃ……」
「ほかの子はみんな、忙しいらしくってさ。もう払い戻しもきかなくて、このままじゃもったいないし」
「……それなら、いってみようかな」
「かなりいいとこらしいから、のんびり癒されてきなよ」
「……ありがと」
むしろこの会話でいちばん傷ついてたから、そのときはなにも考えずに受けとったけど、あとでしらべてみると――、一泊であたしのボーナス一年分ぐらいだった。
あたしは、まよわずスフィア
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