※この作品はR-18です。

砕けよわが妖精   作:伊土 讃阿

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【サンセットリゾートへようこそ】

 

 

 

 背後から伸びてきた、やわらかな手のひらが、クリトリスをつつみこむ。

 

「くぁ……っ♥ ふぅ、ん……っ♥」

 

 あくまで、そっとおおいかぶさる感じで。

 

 それでも、イッたばかりのクリトリスにはつよいつよい刺激。手のひらの熱で、じりじり焦げるみたい。

 

 じんじん、じんじん。しびれていく。

 

「ふぁぁ……っ♥ うっ、く……♥」

 

 あつい。あつい。クリトリスが、あつくてたまらない。

 

 そのくせ、おなかのなかは、ぞくぞくと冷えきっていく。

 

 りん……っ♥ りん……っ♥ りん……っ♥

 

 またチョーカーの鈴が鳴りはじめる。鈴が鳴るたび、宙に、こぶしぐらいのおおきさの、桃色のハートマークが飛びだす。

 

「ふふっ、また鳴っちゃいましたね、メイさん」

「うぅん……っ♥ んっ……♥ んっ……♥」

 

 耳にあつい息がかかる。ぞくぞくが、熱に変わる。

 

「指、入れますよ」

 

 人差し指と、薬指で、あそこをひらかれる。中指が、そろそろと侵入してくる。

 

「あ――♥ あ――♥ あ――♥」

 

 あたしのからだのなかに、あたし以外のものが、はいってくる感覚。

 

 でもそれは、やわらかくって、あたたかくって、すべすべしていて、異物感なく、あたしの粘膜に溶けこむみたいで、あたしのそこは、にゅるん、って中指を受けいれる。

 

「どうですか? 痛くはありませんか?」

「んっ♥ んっ♥ んっ♥ ぜんぜん、へいき……っ♥ です……っ♥」

「よかったです。こんなに、とろとろですものね」

 

 第一関節まで入った中指が、くるくると入口で円を描く。狭い入口を溶きほぐすみたいに。

 

 あたしのそこに、たしかに穴があるんだとわからされてるみたいで、恥ずかしい。

 

「うっ♥ っく♥ っくうぅん♥」 

「性感に集中できるように、目を閉じてくださいね」

 

 左手で、両方の瞼をふさがれる。途端に、指先のかたちまでわかりそうなぐらい、意識が下半身にもってかれる。

 

 そこをくるくる掻きまわされるたびに、あたしのこころまで、くちゃくちゃと掻きまわされてるみたいに、理性がぐちゃぐちゃになっていく。

 

「ふぅうぅっ♥ んっ♥ んっ♥ んっ♥」

「もうちょっと奥まで、入れてみますね」

 

 にゅぐっ、にゅぐっ、と、第二関節まで、はいってくる。あたしでもさわったことのない、あたしのからだのなかの部分。

 

 ぬるぬるしてて、ぐにゅぐにゅしてる、からだの内側の、粘膜。

 

 そこまではいってくると、指の骨のかたさとかがわかってきて、異物感がすこし、あるかも。

 

 でもその頃には、あたしのそこは、この指を、きもちよくしてくれるものだとおしえこまれていたから、こばむことはない。

 

 むしろ――、もっとふかく、もっと奥まで、触れられてみたくて、ゆだねてみたくて、脚をひらく。

 

「ふふっ、もっと、入れてほしいですか?」

「~~~っ♥ んっ♥ んっ♥ んっ♥」

 

 全部お見通しと、言わんばかり。あたしのあさましさを、おもいしらされてるみたいで、ぞくぞく。そして――。

 

 りん……っ♥ りん……っ♥ りん……っ♥

 

 鈴も、はしたなく、三回。

 

「じゃあ、いきますね?」

 

 ぬるん、って根元まで。あたしのもっとも無防備な、なんにも守られていない粘膜を、指先が押す。

 

「っくっぅんん……っ♥♥」

 

 指が根本まではいったのにあわせて、手のひらがクリトリスをやさしく圧迫する。じんわり、あっためられる。

 

「は……っ♥ は……っ♥ は……っ♥」

「うごかしますよ」

 

 と言っても、指先をくいくいと曲げただけ。それだけでも、肉と神経がみっちり詰まったところだから、生まれる刺激は、すごくおおきい。

 

「あ……っ!♥ あっ!♥ あっ!♥ んっ!♥」

 

 すごい――すごい。すごいこと、してる。

 

 あたしのからだのなか、えぐられちゃってる――!

 

 勝手に声が出る。脚がぶるぶるする。おなかは、ひくひく。自分のからだが、自分のものじゃなくなっちゃったみたい。

 

 支配、されちゃってるみたい――。

 

「たくさんあふれてきちゃってますね。もうちょっと、うごかしますよ?」

 

 中指が、奥をくすぐるみたいに撫でながら、出たりはいったり。

 

「んんんっ!♥ んっ!♥ んっ!♥」

 

 あそこのまわりが、ぞわぞわしたものにつつまれていく。どんどん、あつくなっていく。

 

「はっ♥ はっ♥ はっ♥ はぁあ、あぅっ!♥」

 

 腰が、自然に浮いてくる。クリトリスを手のひらに押しつけてしまう。こすれて、ばちばち電気がはしる。

 

「あぅっ♥ あっ♥ きゃうっ♥♥」

 

 くらくらする。どきどきする。とまらない。とめられない。

 

 耳元で、ささやかれる。

 

「おまんこに、わたしがほじっているところに、意識を集中させてください。さっきのイッた感覚、おぼえてますか? むずかしくないですから。こわくないですから。その感覚を、ずっと追いかけてみてください」

 

 中指は、あたしの愛液を掻きだすみたいに。ぐちゃぐちゃ、いやらしい水音が、あたまのなかでひびく。

 

 ぞわぞわが、ぞくぞくに変わっていく。どんどん、ぞくぞくにとりかこまれていく。

 

 ぞくぞくが、沸騰したお湯みたいに、ふつふつとちいさくはじける。次第に、おおきなおおきなうねりのようなものが、かたちづくられていく。

 

 あつい。あつい、あつい、あつい――!

 

 尋常じゃないぐらい、あたしのあそこが熱を発しているのがわかる。

 

 でもその熱は、ほんものの熱なんかじゃなくて、にせもので、からだがやけどしそうなぐらいの、きもちよさなんだ、ってわかってて。

 

「はっ♥ はっ♥ あっ!♥ これっ♥ あっ♥ これっ♥ くるっ♥ くるぅっ♥ さっき、のっ♥ より、おっき――っ♥」

「だいじょうぶですよ、そのまま受け入れてくださいね」

「あっ♥ あっ♥ でもっ♥ こわいっ♥ これっ♥ こわ――んむっ!?」

 

 突然、唇があつくてやわらかいものでおおわれて、にゅるりと口のなかに、ぬめったなにかがはいってきた瞬間。 

 

「――っ♥ ――っ♥ ――っ♥」

 

 あたまのなかが真っ白になる。腰を突きだす。ぎゅうぎゅう指を締めつける。

 

 どこまでもどこまでも吹きとばされそうな、白い、快感。

 

「――ッ! これって、まさか――」

 

 あたしのからだをいじくってた、まひるさんが、息を呑む。

 

「まさか……こんな……さしずめ……、電子の妖精ならぬ――」

 

 

 

 

 

 

 ――妖精みたい。

 

 なんども言われたことば。

 

 耳にするたびに、またか、っておもうことば。

 

 きらいなことば。

 

 あるひとは、あたしの見てくれを指して。

 

 あるひとは、あたしの要領のわるさを見て。

 

 むかし、両親に、あんたは妖精にとりかえられたんだ、って言われたことがある。

 

 発育不良で、成人しててもこどもみたいな外見とか、魔術がまんぞくにつかえないところとか。

 

 いつもぼうっとしてて、不注意で、集中力がなくて、勉強もできないし、いやなことがあるとあたまのなかがふわふわしてきて、自分でも考えがまとまってないってわかってるぐらいで、なにを考えているのかわからないとか、いたずらとしかおもえないぐらい出来がわるいだとかも、言われたりした。

 

 鼠態LMOの紫明(シメイ)家の魔術は、からだの調子をととのえるもの。機械化とか、機獣の操縦に適してたから、みんな騎士になる。

 

 でも、あたしにはむりだった。NEMESISが、ちゃんと発現しなかった。

 

 家族には、できそこない、身内の恥さらしだ、妖精の子ってなじられつづけた。

 

 だからあたしはこどものころ、あたしは妖精なんだ、ってずっと本気で信じこんでた。

 

 あたしは、妖精がきらいになった。

 

 妖精が余計なことをしなきゃ、あたしはこんな世界でつらいおもいをすることもなかったのに――。

 

 ほかの妖精なんて、みんな砕けてしまえばいいのにって、おもってた。

 

 もの覚えがわるくて、考えるのもおそかったし、他人とコミュニケーションをとるのも苦手だったから、仕事もぜんぜん見つからなかった。

 

 大使館の警護長のお父さんのコネで、事務に採用してもらったけど、仕事は全部アンドロイドでこと足りてた。

 

 だれも就きたがらない仕事なのに、部署にひとりはヒトがいなくちゃいけないから、ちょうどよかったんだとか。

 

 だれも就きたがらない理由は、すぐにわかった。

 

 お給料はカフェでアルバイトしてたほうがマシなぐらいだし、仕事内容はちょっとした雑務のほか、一日中アンドロイドをながめてて、ときたま資料に承認印を押したり、アンドロイドが故障したら技師さんを呼ぶだけだったから。

 

 そんなでも、あたしには向いてないみたいで、簡単な仕事でもミスを連発してしまって、毎日アンドロイドの警告をわんわん鳴らしちゃうから、いっつもびくびくしてたりする。

 

 ふだんは他人とかかわらないですむんだけど、週に一、二度、上司に呼び出されて、どうしてこんな書類を通してくるんだとか、ほんとうにチェックしてるのかとか、いろいろ怒られたりもする。

 

 でも、下っ端じゃどうしようもないような決定事項だったり、数式やデータを見てもわかりっこない集計内容だったり、ほとんど八つ当たりなのは、たぶん上司もわかってる。

 

 アンドロイドか、上司に怒鳴られるかをひたすら繰りかえすだけの日々――この生活を一生つづけるのかとおもうと、ゆううつで仕方なかった。

 

 ひとりの狐の来訪を、のぞいては。

 

「ごめーん、メイ、今日もかくまって!」

「……またさぼり? ナリアさん」

 

 事務所に駆けこんでくる金髪の狐態LMO――稲荷あざみ。

 

 松任(マットー)のアイドル、ナリスのお姉さんで、外交官さん。妹とよく似た、すごい美人さん。

 

 ときどき、こうして仕事から逃げてくる。ほかにひともいないし、ここの事務室は、逃げこむのにもってこいだから。

 

「いやぁ、あの公爵、いっつも妹に会わせろってしつこいしさぁ。生理的にむりなんだよね」

「問題に、ならないの?」

「うん、大問題。これからどーするか考えるとこ。あーあ、やんなっちゃう」

 

 べたっとデスクの上に寝転がるナリアさんを見て、あたしはわらう。

 

 ナリアさんは爵位持ちだし、本来ならちかづける立場じゃないけど、ナリアさんが気さくだし、こうしてかくまってあげてるうちに、仲良くなった。というか、仲良くしてもらってる、のかも。

 

 はじめてできた友人に、最初は緊張して会うたびに汗をかいてたぐらい。今でも、ちょっと火照る。

 

「でも、ナリアさんはいつもたのしそう」

「まーね、向いてるし、やりたい仕事ではあったし。メイは?」

「あたしは、べつに、たのしいとおもったことは……でも、こんなことぐらいしかできないし、仕事だし、しかたないのかなって」

「んー、それはちがくない?」

「どうして?」

「仕事はさ、生きるためにはやんなきゃいけないじゃん。でも、仕事イコール苦痛ってのを受けいれちゃうと、生きることそのものが苦痛ってことになっちゃうじゃん?」

「あ――」

「それって、ほんとに生きたいの? 生きたいっておもうこと、強要されてるんじゃないの?」

「……ちょっとわかる、気がする」

「まぁ人生仕事がぜんぶってわけじゃないけど、どうせやんなきゃいけないことだし、一日の大半は仕事しなきゃだし、なら、たのしいことのほうがいいじゃんって、あたしはおもうな」

「……うん」

 

 そう言い切れることが、ナリアさんはつよいっておもわされて、まぶしくて、あたしのよわさに気づかされて、ちょっとへこむ。

 

「……あたしは、得意なこととか、好きなこととか、趣味とかもないし……生きてることをたのしめてるナリアさんが、ほんとにうらやましい……」

「そう? メイ、お酒好きだったよね?」

「でも、そんなに詳しくはないし……仕事にできるほどの熱意もないかな……」

「やってみなきゃわかんないもんだよ? 案外、バーテンさんとか合ったりして」

「ぜ、ぜったい、むり……話とか、つづかないし……きっとお客さんも、こまるとおもう……」

「そうかな? あたしはメイといると、なんかよくわかんないけど、たのしくなってくるよ。メイがわらうと、なんかあたしまでぽわぽわしちゃうんだよね」

「……っ」

 

 社交辞令ってわかってるけど、ナリアさんにそう言われると、やっぱり、うれしい。

 

「あ、そだ、メイ、来週の長期休暇、なんか予定ある?」

「とくに、ないけど……?」

 

 どきりとする。もしかして――。

 

「実は女の子限定のリゾートに行くつもりでチケットとか買っちゃったんだけどさ、どーしても外せない仕事――っていうか同盟スフィアの領主の娘とデートなんだけど、はいっちゃって、行けなくなっちゃったんだよね。代わりに、行く気ない? 旅費も宿泊費も、全部ただでいーよ」

 

 こころが、ぎしぎしする。

 

 ……やっぱり、付き合ってる子ぐらい、いるよね。

 

 なるべく顔に出さないように、なんとかことばをしぼりだす。

 

「……え、いいの……?」

「いーのいーの、いっつもかくまってくれてるからね」

「でも、そんな、高いんじゃ……」

「ほかの子はみんな、忙しいらしくってさ。もう払い戻しもきかなくて、このままじゃもったいないし」

「……それなら、いってみようかな」

「かなりいいとこらしいから、のんびり癒されてきなよ」

「……ありがと」

 

 むしろこの会話でいちばん傷ついてたから、そのときはなにも考えずに受けとったけど、あとでしらべてみると――、一泊であたしのボーナス一年分ぐらいだった。

 

 あたしは、まよわずスフィア道後(ドーゴ)行きの船に乗った。

 

 

 

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