……結局、いつまでやってたのかわからない。気づいたら、朝だった。
部屋は、すごい荒れよう。いろんな道具が散乱して、じっとり、しめってる。
ふたりは、熟睡してる。起こすのもわるいから、ふたりのCPにメッセージを残して出ていく。
やりすぎて、へとへとだった。ひとまず汗とか、いろいろ、流したくて、温泉に行く。
ラベンダー色の湯船に浸かりながら、物思いにふける。他人と接するのも、わるくないかなって、おもいはじめてることに、気づく。
でもやっぱり――ひとりが、楽かも。なんだか、解放されたような気分。
三人でするえっちは、たのしかった。一晩中やるのはほんとうに疲れたけど、まぁ、きっとこんな機会、二度とないだろうし、一回ぐらい体験しておいてよかった、気がする。
三人どころか……ほかのだれかとすることさえ、もう、ないかも――。
ひと心地つくと、カフェでかるく食事を摂った。
カフェを出て、部屋にもどる前に、カプセル搭乗型のリラクゼーションマシンを見つけた。
アロマの種類やら、酸素濃度、BGM、マッサージ方法、場所、長さ、タイミング、加減……項目がいっぱいある。つかう前に、疲れてしまいそう。
おすすめ設定もあるみたいだった。チェックインのときから、チョーカーで計測してきたバイタルを参考にして、人工知能で自動プログラムも可能なんだとか。よくわかんないけど……。
これならコミュニケーション疲れもないし、落ち着けるかも。おすすめ設定で、ためしてみる。
服を脱いでから入るように、って注意書きがある。完全抗菌素材で、自動フル洗浄なので清潔だ、とも。指示にしたがって、裸になってカプセルに入る。
カプセルの首から上は、ヘッドマウントディスプレイになってて、映像が映るみたい。下は、人工皮膚におおわれた、人工筋肉の柔らかなシート。
ぽーん、ってやわらかい電子音がする。つづいて、しっとりした、若い女の子の声。
「こんにちは。サンセットリゾート統合管理人工知能・リラクゼーション人格のサンセットと申します。短い間ではありますが、お客さまの施術を担当させていただきます。どうかサンとお呼びください」
「ぁ……はい……」
まさか人格のある人工知能が応対するだなんて。ちょっとびっくりしたけど、あくまでひとじゃないから、ほっとする。
「このたびは自動プログラムコースをご利用いただき、ありがとうございます。本コースは、お客様のバイタルから、お客様のお身体が必要とされている施術内容を自動で構築するものとなっておりますが、万が一、お気に召さなかった場合、申し出ていただければただちに修正を行いますので――気兼ねなくサンにおっしゃってくださいねっ」
「……わかりました」
途中から急に気さくな口調になったのがおかしくって、かるく笑みがこぼれる。
なんか、親しみやすい子だな――。
「ちなみに、サンのご利用中は、ご主人さまにリラックスしていただくため、チョーカーのサインおよび音声は一時的に解除させていただきます。故障ではございませんので、心配なさらないでくださいね」
いつのまにか、ご主人さま呼びになってる。
「――ではでは、プログラムを開始します。映像と音楽をお流ししますけど、こちらも変更できますので、不快でしたらいつでもサンにお申し付けくださいね。二百十八万種類のなかから、サンがご主人さまにぴったりのものをばっちり当てちゃいますからっ」
ひとに仕えるのが好きでたまらないって感じ。キャラ化すれば、きっと犬っぽい外見、かも。
HMDに、模様があらわれて、音がながれる。
ロールシャッハテスト? だっけ? みたいな、しみっぽい図形が、色とかたちを徐々に変えていく。目が疲れにくいパターンで、ぼんやりながめてられる。
音の方は、周期性のある、音波みたいなので、これも微妙に変化してる。耳をかたむけてると、ぼうっとしてくる。
ふわっと、あまいアロマがただよう。なんだか、くせになる香り。
どれも不思議とやすらぐ。よくわかんないけど、心理学? とかその辺の技術が、ふんだんに応用されてるのかも。
「どうですか、ご主人さま?」
「ん……きもちいい、かも……」
「こういう五感カウンセリングははじめてですか? 最初はみなさん、とまどわれますけど、そのうちとってもリラックスできますよ」
「そう……なんだ……」
「では、おからだのマッサージの方も、はじめちゃいますね」
人工筋肉のシートが、うにょうにょって、うごきはじめる。肉を揉みほぐしてくる。
骨のかたさがないから、ひとの手よりやわらかい。肉を肉で揉みほぐしてるんだから、当然とも言える、心地よさ。
あ……、これだめになるやつだ――。
さらにくだけた感じで、サンがたずねた。
「お加減、どーです……?」
「すごく……、いい……」
「えへへっ、よかった……、サン、がんばっちゃいますよーぅ」
これはほんとにハマりそう……一家に一台ほしい。
きっとべらぼうに高いんだろうけど、値段、しらべてみようかな――。
「むむっ! なにか気になることでもございますか、ご主人さま?」
見抜いたような、サンの問いかけ。
「あ――、……うん、あんまりきもちいいから、家に置こうとおもったら、いくらぐらいするのかなって……」
「ふふっ、これはサンセットリゾートの自社開発設備で、非売品なんですよ。それに、サンぐらい、かしこい子じゃないと、うごかせないですし」
「そうなんだ……、ざんねん」
自分を、かしこい子、だって。
なまじまちがってなくて、えらそうにしないから、ほほえましくて、かわいい。
心底申し訳なさそうに、サンが言った。
「ご期待に添えなくて、ゴメンナサイ……、でも今日は、またサンに会いに来たいー、ってご主人さまにおもってもらえるぐらい、たーっぷりきもちよくして、とろっとろにしちゃいますからねーぇ」
忠犬っぷりを発揮するサン。ほんとにかわいい。
そのままサンのマッサージにすべてをゆだねてると――身もこころもとろけてきて、いつのまにやらうとうとしてた。
「んっふふ……、きもちよさそうですねぇ……」
まどろみを邪魔しない、あまくささやくような、声量。
「さいこー……だよ、サン……、やみつきに、なっちゃそ……」
「えへへ、気に入っていただけたみたいで、なによりですっ。――そうだ、サン、実はオイルマッサージも最近おぼえたんですけど……ためしてみます……? もっときもちいいですよーぅ……?」
オイルマッサージ――初日にまひるさんにされたみたいなやつ、かな。
ううん、あれよりもっときもちいいはず。すでに、あれよりもきもちよくなってるんだから。
からだも、あたまのなかも、ふわとろになってる今、あれみたいにぬるぬるに解きほぐされたら――きっと、最高にきもちいい。
ためらう理由は、ないかも。
「じゃあ……してもらお、っかな……」
「りょーかいです♪」
ひと肌温度のオイルがにじんでくる。にゅるにゅる、すべすべ、まとわりついてくる。
オイルは皮膚によくなじんで、染みこんでくるよう。おもわずため息がこぼれる。自分の肌の境界が、わからなくなってる。
まるで、筋肉が、オイルのなかに溶けだしてるみたい。実際かなりあつくなってきて、汗をかきはじめてた。
巨大な大陸生物にでも丸呑みにされて、胃のなかでやさしく消化されてるような、そんなイメージ――。
「ご主人さま、水分補給しましょーか。あーんしてくださいね」
口を開けると、口元にノズルが伸びてくる。くわえると、あまい水が出てきて、喉をうるおした。
「……気が利くね、サン……」
「えへへっ」
アロマがむわっとねばっこく、あまくなる。映像は暖色系になって、音はゆっくりしたものに。
ゆっくり、どきどきする。ぽかぽかする。眠気が、つよくなる。ふわふわする。
天国ってこんな感じかな――。
サンのうごきが、肉を揉みほぐすものから、腋とか内腿とか、足の裏とか、くすぐったいところを刺激するものに。
くすぐったがりだから、いつもなら身じろぎするような刺激だったのに――。
「ん、ふ……ぅ」
あまい声が、漏れる。ぞくぞくする。
リラックスしすぎて、くすぐったいところを触れられても、緊張できないからか、むしろ心地よくて、ことばにできない感覚が、皮膚の下にじゅわっと広がる。
つづけられるうちに、おなかのなかがむずむずしてくる。
「ふー……っ、ふー……っ」
鼻息があらくなってくる。おしりをもぞもぞさせてしまう。自分の、鼓動を感じる。
これ……あたし……。
夢うつつのなか、連想してたのは――昨日のこと。
――むらむらしてる、かも……。
ふたりに、前から後ろから、右から左から、上から下から――全身めちゃくちゃにされたこと。
ふたりの指の、手のひらの、太ももの、あそこの、唇の、舌の、感触、あたたかさ、ぬめり、匂い、味――。
「ご主人さま……♥」
どこかうっとりしたような、ぞくぞくするささめき。
「どーですか、サンの、オイルマッサージ……♥ おぼえたてですけど、うまくできてますか……?」
「ん……っ、すごい……、っ……、じょーず……、だとおもう……」
すなおに褒めると、今までのパターンなら、こどもっぽく、はにかむみたいによろこぶはず――だったのに、サンは、鼓膜にからみつくとろけ声を出した。
なんかの、スイッチが入っちゃったみたいに。
「でも……♥ ご主人さま、なんだか、ものたりなさそーです……♥ せつなそーです……♥ ものほしそーです……♥ ご主人さま、うずうず、しちゃってます……♥」
ぞくぞくする。息を呑む。ぐるぐるする。
もてあそぶように、サンがますますきわどいところを、さわってくる。
幻聴がする――りんっ♥ りんっ♥ りんっ♥
「実は、サン……今、ご主人さまがしてほしそーな……そーゆーマッサージも勉強中なんですけど……♥ ためしてみます……?♥」
生唾を呑む。
「で、でも……」
あたまのなかが、りんりんする。
「今のままだと、ご主人さま、きっとつらいです……くるしくて、もどかしくって、せつなくって、おかしくなっちゃいます……でも、サンなら、すっきりさせられます……♥」
どきどきする。
あつい、あついあつい――。
「ご主人様のかゆいとこ……わるさしてるとこ……よわいとこ……♥ めちゃくちゃにして……、かきまぜて……♥ わけがわかんなるぐらい……♥ いじめてあげられます……♥ ご主人さま……、そーゆーの、すき、ですよね……♥」
あたしのこころを、見透かし、誘惑する、ねっとりした、声色。
いき、ぐるし――。
どきどきどきどき、りんりんりんりん――。
「サン、完全防音なんですよ……♥ ご主人さまがどれだけえっちな顔して、えっちな声を出しても、だれにも気づかれないので、安心です……♥ あ……♥ それとも……くすくす♥ こーふんです……?♥」
ぞくぞくぞくぞく、りんりんりんりん――。
「こんなせまい機械のなかに閉じこめられて、めちゃくちゃにされて……♥ どれだけイッても、気絶しても、やめてもらえなくて……♥ どれだけ泣きさけんでも、だれもたすけてくれなくて……♥ 全部あばかれて、支配されて、機械相手に、おもちゃにされて、きもちいいだけにされて……♥」
――ほしい――。
「あ、でも、安心してください、こういうこともあろうかと、サンには生命維持機能がついてるんです……♥ 衰弱死することもショック死することもないですし……♥ 下のお世話も抜かりないです……♥ だから、ご主人さまがこばまないかぎり、ご主人さまが発狂するまで、ただただイクだけの、きもちいいだけの肉の塊にして、生かせられるんです……♥」
――して、ほしい――。
「あ♥ だめですよ、ご主人さま、勝手に想像だけでイッちゃ……♥ くすくす……♥ サンはまだ、えっちモードじゃないんですから……♥ すとっぷですっ♥ すとーっぷ♥ イクの禁止ですっ♥ 許可しませんっ♥ イッちゃったら、規定逸脱で、サンは強制停止なんですから……♥ はい、おあずけです……♥ ふふっ♥ ほら、深呼吸しましょ……♥ すってー♥ はいてー♥ すってー♥ はいてー♥ すってー♥ はいてー♥ どーですか? あまーいアロマが肺の細胞ひとつひとつに染みわたって、血液に乗って、おなかの奥の方に溜まってって……どきどき♥ しますよね……♥ くすくす……♥ 実はこれ、媚薬、なんです……♥ しかも排卵誘発剤入りの……♥ 効果は短いんですけど、効いてる間は、ずぅっと、ぷちぷちぷちぷち♥ 卵子垂れながしになっちゃうようなエグいやつなんです……♥」
――してほしくて、たまらない――!
「もう効いてきたみたい、ですね……♥ おなか、すっごいずきずき♥ して、卵巣の位置、わかっちゃうでしょ……♥ 今、ご主人さまのからだは、必死にこーびする準備してるんです……♥ おなかのなかを硬くて長くてぶっといので、乱暴に掻きまわされて、内臓がひっくり返っちゃうぐらいえぐりたおして、おなかの奥の、女の子にとっていっちばん大事でいっちばんやわらかいとこに、どろっどろで、あっつあつのをいっぱいびゅーびゅー出されて、よごされちゃう、そのための、準備です……♥ くすくす……♥ もう我慢できないって顔ですね……♥ じゃあそろそろ……♥ しちゃいましょうか……♥ 肉体改ぞ……、じゃなかった、ちょっぴりえっちなマッサージ♥ 舌噛まないようにするのと、自発呼吸ができなくなっちゃったときに酸素供給する用のノズルを伸ばしますけど……それをくわえたら、承諾ってことで……♥ あらあら♥ くすくすくすっ♥ あっさりくわえちゃいましたね……♥ ありがとうございますっ♥ では……覚悟してくださいね……♥ 死ぬたびにイッちゃうっておもうぐらい、じゃなかった、イクたびに死んじゃうっておもうぐらい、きもちよくしちゃいますから……♥」
EX-Count:20