昨日はひどい目にあった……あんなの、ほとんど拷問だった。何度も、本気で死ぬかとおもった。
でも、からだの疲労はこれっぽっちもなかった。あんなにあちこちめちゃくちゃにいじくりたおされたのに、炎症ひとつないみたい。
むしろ、極上のマッサージをしてもらったあとみたいに、すがすがしいくらい。
サンの腕がやっぱりよかったのか、あるいは夢だったのかも、ともおもったけど――CPに入ってた英姉妹からのメッセージを見て、現実だったって、さとった。
『メイ、生きてるー?
昨日の見てたよー! すごかった!
十回ぐらい心臓マッサージ? されてたけどぶっ壊れてない?笑
また遊びにおいでよ! ψs』
あたまを抱えて、ごろごろした。
自分のからだどうこうより、あんな痴態を何百人に見られたことの方が、よっぽど問題だった。
とてつもない羞恥と、後悔。枕に顔を押しつけて、おもいっきり叫んだ。
でも――旅の恥はかき捨てと言うし、本来ここにくるようなひととはきっと二度と出会わないだろうし、その点は幸いだったと言うかなんというか――。
ベッドとシャワールームの間を、行ったり来たり。あせったり、ためらったり。
外に出にくいとは言っても、ここにいられるのもあと二日と半日。引きこもってるのは、正直もったいなすぎる、気がする。
どこかひとが少なそうなとこはないかと案内をながめてみる――見つけた。
ちゃんとした服はもってきてなかったけど、えっちな道具とおなじように、個室のクローゼットの服は、自由に使っていいらしい。至れり尽くせり。
シャワーを浴びて、そそくさと準備する。いつもは地味めな化粧も、ちょっぴり気合いを入れて。
そのバーの名前は、ポールサイドと言うらしい。
店内は薄暗くって、落ち着いたBGMは控えめな音量で。まだ昼なので、窓には夜景の映像が流れてる。シックな雰囲気。
背の低いカウンターにはソファがならんでる。カウンターも奥のテーブル席も、客はほとんどいない。
……よかった、昼間から呑んだくれるような客層のリゾートじゃなくて――。
隅っこのカウンターにつくと、バーテンがやってきた。一瞬男の人かとおもってぎょっとしたけど、アンドロイドだったから、胸を撫で下ろす。
バーなのにアンドロイドなんて、めずらしい。個人的には、うれしいけど。
とりあえず頼んだマティーニは、清涼感があるのにしっかりした香り。あたしにはなじみのないベルモットをつかってるらしい。なかなかいい。
うしろの方のテーブル席から、二人組ののんびりした話し声が聞こえてくる。
「リラクゼーションマシンの話なんだけどねえ、にっちゃん?」
「緊急メンテ中のやつかなあ、げっちゃん?」
「そおそお。さっき前通りかかったときなんだけど、なんか防護服? みたいなの着たスタッフがいたんだよねえ」
「え、なに、こわあ」
「うわさなんだけどねえ、新種の細菌汚染だとかで――」
チャージのキウイを摘まみながら、次はなににしようか、かんがえる。
ここはやっぱり、ギムレットかな――。
「ジンが好きなんだね」
お酒で焼けた、低い声。碧い瞳をした白毛の犬が、ふたつ隣の席に座ってた。
しっとりしたダークグレーのシャツ、黒いネクタイ、パンツスタイルのダークスーツ。
背が高く、すらっとしていて、長く伸ばした細い白髪は、うしろでひとつにくくってる。
雰囲気はおとなっぽいのに、顔のつくりは可憐で、妙にあやうい感じ。
歳はみっつも離れてなさそうなのに、年上か年下かわからない。なんか、男の子っぽい。
飲んでるのは、たぶんブランデー。
身なりはいいし、スーツも、腕時計も、靴も高そう。いいとこのお嬢様、なのかな。
「ああ、失礼。ずいぶんおいしそうに呑んでて、いまどき珍しく、純粋にお酒を楽しんでるひとだなっておもって、つい」
いたずらっぽいような、無邪気っぽいような笑み。
どきりとして、息が詰まる。
「あの……? えと……」
白犬が、しゃべりつづける。
「昔、知人に、ジンはライターオイルの味がすると吹きこまれたせいで、ジンは呑まずぎらいなんだけど、実際のとこ、どうなんだい?」
むっとする。ことばが勝手に口を衝いて出る。
「……ライターオイルは飲んだことないですけど、そのお知り合いの味覚はおかしいとおもいます」
おもわず、嫌味っぽく、突きはなすように。
「それを聞いて安心したよ。もののついで、ではないけど、初心者におすすめのジンのカクテルはどんなのがあるんだい?」
「――え……、えと、ジンバック、とか、トム・コリンズとか……? ロングで……甘すぎないし、くせもないから、たぶん、呑みやすいかと――」
「なるほどね、さっそくためしてみよう」
白犬が、指を鳴らしてアンドロイドを呼んだ――。
白犬は、ペルセって、名乗った。本名じゃなくて、通り名のようなものなんだとか。
医療用の薬草を栽培しているんだとか。なんだかすごく、うさんくさいけど、ひと懐っこく、溌剌としていて、いやな感じはしない、かも。
最初はひとが呑んでるものに、わざわざけちつけるだなんて失礼なやつ、っておもって、むっとしたけど、それ以外は普通にいいひとそう。
話せばわかるいうか、ひとの言うことを鵜呑みにしやすいだけ……、なのかな。
あたしがすすめたものは、素直に全部注文して、おいしいって、言ってくれてる。
なんというか――緊張感のないひと。おかげでこっちも緊張しないで済む。
会話も、はずんだ。馬が合うというより――、ペルセが話を引きだすのがうまいのかも。
だれかと一対一で、こんなに話したことないかも、ってぐらい、盛りあがって、気づけばお酒もがばがばとあけて――。
どさり、とベッドにたおれこむ。
あつい、あつい――。
熱気を感じる。熱気に、おおいかぶさられてる。
あつい――目を開ける。白犬がのぞきこんでる。
ペルセ。やたらと、ちかい――。
「ふぁれ……? ここ、ろこ……?」
ろれつが、まわらない。朦朧としてる。
「どこって、わたしの部屋だけど」
「え……? ……? なんで――むぐっ!?」
唇にやわらかくて、あついものが押しつけられる。舌にからみつく。真っ白になる。ぞくぞくする。
あついあついあつい、とけ――。
「ぷはっ、なっ、なに、するんですかぁ……」
「なにって、わたしの部屋に来たいっていったのは、メイだろ? こういうことしたかったんじゃないの?」
わからない――おぼえてない――。
ふわふわする。ぞくぞくする。
……あたし、さそっちゃったの――?
そんなはずはないって、おもう。でも……確信も、ない。
……もし、さそっちゃったなら――……しかたない、のかも――。
ぞくぞくする。どきどきする――りんりんする。
あたし――あたし、するんだ――会ったばっかりの、ひとと――。
ペルセが、腰の辺りをつかんでくる。
ぞくぞくぞくぞく――ぅ!
「――っ!? ――っ、――っ!」
りんっ♥ りんっ♥ りんっ♥
あまりのぞくぞく感に、からだをくの字に折る。
なにこれなにこれなにこれ――!
ぶわって、汗が噴きだす。じゅわって、おなかのなかで、にじむ。
指が、下着を這う。
「うわ、すご、もうびしゃびしゃなんだけど。お酒こぼしてたわけじゃないよね?」
「~~~っ!」
はずかしくて、なにも言えない。手で顔をおおう。
「一応、たしかめるね」
下着をずらされて、ぬかるみに、指を入れられる。反射的に、のけぞる。おもいっきり指を締めつけてしまう。
「あ゙っ♥ あ゙っ♥ あ゙っ♥」
なにこれなにこれなにこれ――!
どうしてこんな感じて――。
「う、わ、やけどしそ……ってかどろどろすぎ」
中指がうごく。おなか側をさぐってくる。掻きだすように。
「あ゙ーっ♥ あ゙っ♥ んあ゙っ♥」
腰が浮く。必死に、ペルセにしがみつく。
「うわ、本気汁すごいんですけど」
ペルセの手のひらに白い粘液がべっとりへばりついているのを、見せつけられる。耳がかっとあつくなる。
「いつもこんななの?」
「しっ、しりっ、あっ♥ あっ♥ しりま、あっ♥ あっ♥」
「しゃべれてないし。かわいいな。がっつりイカせちゃお」
「~~~っ♥ ~~~っ♥♥ ~~~っ♥♥♥」
声も、出せない。ただひたすらに、痙攣するしか、できない。
りんっ♥ りんっ♥ りんっ♥
きもちいい、きもちいい、きもちいい――っ!
まひるさんや、英姉妹としたときは、イッてもないのに、ここまで感じること、なかったのに――。
ひょっとして、サンのせい……?
あそこから、ばしゃばしゃなにかをしぶかせながら、立てつづけに三回イク。
どれもふかすぎて、意識が飛び飛びになる、激しい絶頂。
「んぎぃっ♥ くひっ♥ んひぃいっ♥ あ゙♥ ああ゙ーっ♥ ――っ♥♥♥」
「ほら、またできてない。イクときは、ちゃんとイクって言いなよ。はい、はじめから」
「……っ♥ ……っ♥ ――っ!♥ あうっ♥ いうっ♥ いうからぁああっ♥♥ んはぁああっ♥ あ゙♥ ぃっく♥ いぐっ♥ いぎますぅっ♥♥」
「はー……、ほんと、かわいいね、メイ。ね、わたしのもさわってよ」
ペルセがパンツスーツを下ろして、なまっちろい肉の――管? をまろびだして、にぎらせてきた。
「あつ……っ!? えっ!? これ、おちん――おとこのひと、だったんですか……!?」
「いや、ちがうけど……いや、ちがわない? これは、女同士でこどもをつくる用のペニスで……インタポーザ、知らないの?」
心底、不思議そうな表情のペルセ。
「まあいいや。舐めてくれない?」
インタポーザ? を顔に近づけられる。むわっとした臭気の熱が、吹きつける。くらくらする。
けしていい匂いとはいえないはずなのに、その匂いが、鼻孔や、喉の奥に、べとって、へばりついてくると――、どきどきして、ぞくぞくする。
言われたとおりに、舌を這わせる。あつい。舌が火傷しそう。それに、骨が入ってるみたいに、かたい。
ペルセがため息を吐く。目をほそめる。
「いいよ、いい子だね、そのままつづけて――」
……さっき会ったばっかりで、よく知らないひとのここを、こんなことして、言うこと聞かされてるなんて――。
まひるさんや、英姉妹とも会ったばっかりで似たようなことしてたけど――これはちがう気がする。
ひりひりするような、あぶない、気配がする。
でもそれがむしろ――どきどきを、加速させる。
舐めれば舐めるほど、インタポーザがあつく、かたく、おおきく、育ってく。匂いはきつく、くらくらするのに、すんすん鼻を鳴らして、嗅いでしまう。
その出所は、インタポーザの先端から、すこしずつあふれでてる、とろみのある透明な液体。
舐めとってみると、しょっぱくてくせになるというか、やけにどきどきする味。それを、夢中になって舐めていると。
「歯を立てないように、くわえてみて」
先端を、口にふくむ。あつい。口蓋がやけどしそう。匂いが口のなかに充満する。
くらくらがつよくなる。ぼうっとしてくる。
「そのまま舐めたり、そう、あたまをうごかして、唇でしごく感じで、あー、いいよ」
ペルセに言われたとおりに全部やる。そのつど、どきどきが強まる。おなかが、きゅんきゅんする。
――りん……っ♥
顎が疲れてくる。じんじんしびれる。唾液が、顎をつたってぼたぼた落ちる。鼻息があらくなる。
りん……っ♥ りん……っ♥
「すごいおいしそうにしゃぶるね、メイ。じょうずだし、いやらしすぎるんですけど。ほんとにはじめて? ぜったいあそびまくってるでしょ」
褒められながら、なじられる。
ぞくぞくする。全身が、羞恥で火照る。
ひどいこと言われてるはずなのに、どうしてだか――。
りんっ♥ りんっ♥ りんっ♥
舐めるのを、やめられない。むしろ、いっそう吸いついちゃう。
なにも、考えられない――。
本能に刷り込まれている、衝動のような――。
「おっと」
インタポーザを、引きぬかれる。唾液が糸を引く。
インタポーザの代わりに、口のなかが、名残惜しさでいっぱいになる。インタポーザを目で追っちゃう。陶然と、見つめる。
かとおもうと、顔にインタポーザを押しつけられる。べちゃっと自分の唾液で顔がよごれる。
どっどっどっどっどっ――。
これ――、こんなの――。
心臓が張りさけそうなぐらい高鳴る。それに、頬を擦りつける。化粧が落ちるのも気にならない。
もっと舐めたい――、もっと褒めてほしい――、もっと――。
「もう、いいよね?」
ペルセの眼光が、ぎらつく。
りんっ♥ りんっ♥ りんっ♥
EX-Count:1012