「裏ポケモンコロシアムねぇ」
「はい。是非エリートトレーナーであるキル様に出場して頂きたく」
これでも裏稼業に足を突っ込んで随分たつから噂くらいは聞いたことがあった。
裏ポケモンコロシアム
真のポケモンバトルを唄い、殺し、トレーナー攻撃、なんでもありな危険なバトルを提供する非合法のコロシアムだ。
正直、出場すれば勝つ自信はある。が、リスクを考えればそんな危ないマネはしない。私は確実性と安全マージンはしっかりとる。だから今でも生きてると自負している。
そしてどこから私のことを聞きつけたのか、この裏ポケモンコロシアムの支配人を名乗るジェントルマンが尋ねてきた。
「キル様ほどのエリートトレーナーが出場して頂けるのでしたら、大好評間違いなしです」
「いや、かえって盛り下げるんじゃないかい?」
安全と確実性をとる私の名前はそう知られていないはずだ。
「おや、ご存知ありませんか?キル様の名前は一流を名乗る者たちには有名なんですよ」
「はぇ?そ、そうなの?」
いかん、予想外のことで思わず変な声が出た。こんな態度じゃ舐められる。舐められたらこの世界じゃやっていけない。
しかし、一流の連中に有名ねぇ。うふふ、うふふふふふ。
「ええ。ですから是非出場をという声もとても多く」
「ふうん」
確かにそう言われればそうなのかと思うが、出場するしないは話が別だ。
「そこでですね。もしキル様が出場して頂けるのでしたら、莫大な富を約束しましょう」
「へぇ。言うからには相当なんだろうねぇ?」
「もちろんですとも。当コロシアムはたくさんの資産家の投資によって成り立っております。もしキル様が出場してくださるのなら、自らが賞金を出してもいいと言う融資家達が大勢いまして、今これくらいの金額が確約されております」
「へぇ、どれどれ。は!?何この金額!?桁間違えてないのかい!?」
「いえ、それで合っております。なんせ融資家達のほとんどが一流の方達ですから」
金額は驚くべきものだった。多分一生遊んで暮らしてもお釣りがくる。
「不足でしたら、さらに融資を募りましょう。当コロシアムももちろん参加させて頂きます」
この上さらに増えるのか。こんな金額、今後一生拝めることはないだろう。さすが裏のコロシアムが言うだけはあった。
どうする?自分のルールを破ることになるが、リターンは大きい。
「それとですね、今回は命の保証を致しましょう」
「え?それじゃ売りがダメになるだろう?」
「いえいえ、今回の融資家達は、キル様の戦う姿を見られたいのです。なので命の危険が迫るようなことはするなと条件をつける方もいたくらいで」
「じゃあ命の心配までしなくていいんだね?」
「はい。ただし、それ以外は通常通りのルールですのでご注意下さい」
これで一つルールを破らずに済んだ。
「それともう一つ。こちら側にはハンデをつけましょう」
「ハンデ?」
「はい。そちらは通常通り6体のポケモンで結構です。対してこちらは3体でお相手致しましょう」
「私を舐めてるのかい?」
「いえいえ、キル様が安全マージンを必要とされることは存じておりますので」
何もかも知ってるって訳ね。その上でこっちのルールを守ってくれると。
「返事はいかがでしょう?」
「いいだろう。出場してやるよ」
ここまでお膳立てされてノーとは言わない。私を舐めた事後悔させて、ついでに賞金ゲット。とっととこの世界から足を洗って一生遊んで暮らしてやるぜ!
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「皆さま、大変長らくお待たせいたしました!これよりエリートトレーナーのキルとポケモンマニアのタクヲのバトルが開催されます!」
ウオォォォォォオオオオオオーーーーーーー!!!!
入場口からも聞こえる大歓声。私はこれからその舞台で一世一代の博打に出る。勝てば一生かけても使いきれない富が。負ければ死ぬことはないが、それでも危ない事は免れない。
怪我やセクハラ程度で済めばいいだろうが、最悪、身体の欠損や辱めは起こりうるだろう。ここはそういう場所なのだから。
だから私は負けない。ただでさえ勝つ自信はあったうえに、相手は舐めきってハンデまでよこしたのだ。絶対に負けるわけにはいかない!
「それでは登場して頂きましょう!裏世界の知る人ぞ知る稀代のエリートトレーナー、キィィィィィルゥゥゥゥゥゥ!」
私は飛び出し、中央へと向かう。側転、バク転、バク宙と派手に回って指定位置へと着地した。
ウオォォォォォオオオオオオーーーーーーー!!!!
再び溢れるような歓声。まあこれくらいのサービスはいいだろう。
「対する相手はぁ、当コロシアムがスカウトしてきた謎のトレーナー、ポケモンマニアのタクヲォォォォォォーー!」
向こう側の入場口から入ってきたのは、メガネ、デブ、暗そうと言ってしまえばキモデブと称するような男。
そいつはゆっくりと歩いてきて指定位置で止まった。
「ブヒヒヒヒヒッ。まさか本当にキル様を引っ張り出してくるなんてさすが裏コロ」
うわ気持ち悪っ!声が陰湿でネットリとして聞いてるだけで不快になりそうだ。
キモデブはこっちを舐めるように、特に下半身と胸は執拗にいやらしい視線を遠慮なしに向けてくる。
「ブヒヒッ、エロい身体付きしてやがる。たまんねぇ!」
「……おい豚。キモいからこっち見んな」
「ブヒヒヒッ!その言葉はコッチの世界じゃ褒め言葉ですぞ。そんな目で見ないでよ。興奮しちゃうじゃないかぁ」
あまりにも気持ち悪くてつい本音が出たが、むしろ興奮させる結果になったらしい。ヤツの股間もどんどん膨らみ、その存在を主張し始める。
なるほど、それで殺さない約束をしたわけか。要するに私を陵辱する様を見たいわけね。だが残念。ただでさえ勝てる勝負にこんな弱そうなやつが相手なら、ますます負ける要素がなくなった。
思惑通りにいかなくて残念だったな!
「それではみなさん御一緒にぃ!ポケモンバトル!」
「「「レディィィィィ!ゴォォォォーー!!!」」」
バトルが始まった。
「行けっ!ウェンディ!ケンタロス!ダグトリオ!」
私は相棒であるポケモンたちを出す。どれも強力で頼りになるポケモンたちだ。
非合法だからポケモンは一度に何体出してもいい。ただ、たくさん出し過ぎても指示が追いつかない。たくさん出せば勝てるなんてのは素人やバカの考えることだ。
「ブヒヒッ、楽しんでこい、カイリキー、ドククラゲ」
キモデブは2体か。3体同時に指示する自信がないのか?私の敵じゃないな。相性も悪くない。ならさっさと倒してこの茶番を終わらるか。
「ダグトリオは穴を掘る!ケンタロスはドククラゲを、ウェンディはカイリキーの相手をしなさい!」
「ブヒヒッ、セオリー通りでつまんないなぁ。カイリキー、ドククラゲをキル様に向けて投げてから地割れ」
「なっ!?」
カイリキーの剛腕から放たれたドククラゲを私は避けることもできずに激突、思わず倒れ込んだ矢先、顔にドククラゲが張り付いた。
「はーいゲームオーバー。キル様油断しすぎでしょ?そのツケは身体で払ってもらうからねーブヒヒヒヒヒッ!」
前が見えないぶん、カンに触る声がハッキリと聞き取れる。だがまだだ!私はまだ負けてない!
「ドククラゲ、耳に直接超音波。それから溶解液で服を溶かせ。あ、下着は残しとけよ」
私はドククラゲの触手をヘッドホンのようにつけられて、そこから聞こえる音に頭がおかしくなりそうになり、意識を混濁させられた。