Target:"1" 作:ニョ
暗夜が支配する新宿の上空に、三匹のトランスフォーマーが航行していた。デストロンのインセクトロンたちである。
「奴の発信機が狂ってなけりゃ、このあたりにいるはずだ」
キックバックはバイザーを光らせ、地上を見渡す。常に不服そうにする彼もまた、メガトロンに命ぜられた仕事に不満があった。……デストロンの擁する、連絡の途絶えた航空参謀の捜索の事だ。
「スタースクリームなんて放っておいて、久しぶりに松の木でも食いてえよなア」
それは、そうぼやくシャープネルも同じで、結局彼らは食い気が全てに勝っている。だが、心理工作兵、ボンブシェルだけは異なる感想を抱いていた。
「ニンゲンは我々トランスフォーマーにやたら似ている……そこらへんのビルを食っちまうってのも悪くねえが、ニンゲン共を……そうだ、洗脳したら面白えと思わねえか?」
二人の仲間は、面倒なアイデアに手を貸したくないという意思を露わにした。……このボンブシェルの発想は、EDCとバイナルテック計画を脅かすのだが、それは二十一世紀に入ってからである。
*
そして! 当のスタースクリームは絶体絶命にあった!
「…………」
「動かなくなりましたね、コイツ」
金子が熱帯夜の微風を受けながら、垣原の顔色を窺った。
「え? あ、ああ……加減がよく分からねェからな。刺激が強すぎたのかも知れん……いや、」
いや、それよりも。
彼の脳裏には、まだイチの影がこびり付いている。視神経を通って、脳が灼けるような気持ちで、垣原雅雄は胸を押えていた。
「?」
垣原は、失望が絶望に変換されるんじゃないかと、崎嶇の果てに結論を急いでいた。頭の中で疎明が縦横無尽に飛び交っていたが、その末に、「あんなナメたガキ如きに俺たちは皆殺しにされるんだ」という、恍惚たる新たな価値観を開拓するのに成功してしまった。
「本当によォ──どこまで俺をバカにするってんだよ、なあ」
キン、という鋭い金属音と共にスタースクリームのボディが細切れにされた。熱をはらんだ夜風がまた吹き、瞬く間ののちに屑鉄が轟音を響かせ散っていった。角ばったそれらの向こうに、殺し屋イチが天を仰ぎ涙を流している。
「うう~~~っ……ひ、ひどいよ、吉岡君は……君が僕のを壊すから、僕も君のを壊すハメになっちゃったじゃないかぁ~~~っ!」
「…………!」
垣原がそこで、全身全霊をもって得たものは、まさに希代の──昿世たる感覚。
「……待たせるんじゃねェよ、この変態野郎」
初夜を控えた妙齢の娘と同じ目をし、しかし現実的な……そう、彼の言葉で翻訳するならば『必然性』を思い起こし、金子に命令する。
「──撃て。ターゲットは、イチだ」
金子は、もう会えなくなるであろう息子の顔と、もう会えなくなった女房の顔を思い描きながら引き金に指をかけた。
*
衛星タイタンに、高度な科学を有した宇宙人たちが密計を共有していた。彼らは複数の顔を持つ者、幾つもの触手を持つ者、そのすべてが機械と有機体が融合した生命体──クインテッサだ。
「それで、地球歴2010年から来たという我らが同胞よ。タイムウィンドウを介してまで、なぜここへ訪れたというのだ」
「諸君、我らクインテッサの未来は暗い。トランスフォーマーの著しい宇宙進出によって、我々は淘汰される運命になりそうだ。そこでひとつ、昔のように遊戯をしようではないか。このユニクロンの血ともいえようガイアエネルギーを使ってな」
「ユニクロンだと? 奴が太陽系に近づいているというのか?」
「そうだ。だがそれは大した事ではない、地球人とトランスフォーマーの共生こそ、我らが凋落する原因に他ならないのだ。だが我々が手を下すのも癪──そこで私は、すでにユニクロンのエネルギーを地球に撒いたのだよ」
彼も過去の改竄を目論んでいる。……400万年の眠りを二度経験したジャガーのように。
つづく……
最近、どんな文章読んだり作ったりしてても
地の文がトランスフォーマーのナレーションぽく感じてしまう、、、
脳内再生余裕でしたって思ったんだけど脳内再生余裕でした、って10年振りくらいに言った気がする