※この作品はR-18です。

Target:"1"   作:ニョ

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第2話

 闇にぬらつく新宿の夜は、卑俗で、暴力的で、クサいアスファルトのニオイがしやがる。

 

「テメエらァ、草の根分けてでも探し出せ!」

 

 イチの足取りが途絶えて、俺は日没があまりにも憂鬱になった。日を追うごとに絶望は遠のく。

 

「本当に来るんですかね、イチ」

 

 並んで歩く三郎の横顔が街灯に照らされた。ドレッドヘアから覗く相貌は体躯に反して幼い。

 

「さあな」

 

 所詮イチという怪物も、俺を絶望の淵に立たしちゃくれねェみてえだ。……必然性、か。必然の名のもとに、俺はイチとジジイを探さにゃいけなくなっちまった。

 

「半端な絶望感、くれやがって……!」

 

「アニキ、何怒ってるんですかい……」

 

 俺は……追いかけられてェよ。怪物に、理由も本能もなく、ただただ迫られたいだけなんだ。すぐ天を仰げば水面が見えるような浅い海なんかで、俺はのうのうと生きられやしない。必死に海上へと顔を出そうとする所に、足を掴まれたいんじゃねえ。ノコギリの歯で以って、サメに喰い散らかされるほうがいい。欲を言えば、死んでも痛みを感じていてえ。

 

「…………」

 

 いや、そんなモンじゃねえ。本当はイチに、何度でも殺されてえよ。そこに感情は必要ない。

 

「あっ……アニキ、今度は勃起してら」

 

 イチ、テメエは一体どんなモンスターなんだよ……どこまで俺の想像を掻き立たせりゃ気が済むんだ──

 

「!」

 

 電気屋に陳列されたテレビのスクリーンに、玩具のCMが映し出される。

 

『ビーストウォーズ、戦闘開始! コンボイ、変身! メガトロン、変身!!』

 

 哺乳類や爬虫類の類が、ロボットみてえに変形するオモチャだ。

 

「トランスフォーマー、か」

 

 俺は13年前、あの信じられねえバカデカい金属の生き物をブラウン管越しに見たのを思い出した。

 

 

*

 

 

『オジサン、仕事はもうこれで最後だからねっ!!』

 

 ……発達を取り戻しちまったイチが、ピシャリとオレにそう叩きつけた。あの宣言にゃ困ったもんだぜ。受話器越しだが、なんとなくアイツの表情が分かったんだ。確実に、精悍な顔をする青年に成ろうとしているに違いねェ。

 

「とは言え想定の内だ。それになイチ……お前は、」

 

 成ろうとしているだけなんだ。マトモに経験値積んでないヤツがどーやって正しい青年期まで辿り着くってんだよ。いくら皮を被っても本質は変わりっこない。

 

「垣原、オマエだってそうだろうに……」

 

 本質たる痛みという単純な信号を、性に昇華しているに過ぎない──

 

 オレは路上でどつき合うチンピラを横目に、深夜の新宿御苑に侵入する。反トランスフォーマーの人間の代表的存在にして、悪の科学者を自称するサイボーグ、ねえ……

 

「バカになったもんだぜ。トランスフォーマーも人間も」

 

「誰がバカだと? 貴様わしを見くびるつもりかね?」

 

 耳障りな癇癪声の白衣姿が、滞空している赤い機体のF-15から顔を出す。あの老いぼれは、オレにとって優秀な取引相手なんだ。

 

「ヘヘッ……これはこれは、アーカビル殿。今のはただの独り言でしてね」

 

「フン、そんな事はどうでもよいわ。さア早く乗らんか!」

 

 本物のジジイは短気でいけねえ。ま、確かにここでボヤいてらんねーか。やけに静かなその戦闘機から垂れたロープを掴んで、オレはビジネスを開始する。

 

「それで、アーカビル殿。持ってきてくれたんですかい? 妄想を現実にする物質、アンゴルモアエネルギーとやらを」

 

 

 

つづく……

 




殺し屋1第七巻で昇が魔改造されるシーンの直後あたり(イチが「立花さん」と電話するシーン)から分岐。
舞台設定は1998年なので、トランスフォーマー的にはシティ建設中とかじゃないでしょうか。2003年にBT計画が本格化するのでそれはまだ構想段階だったりすると思います。
BWのCM:https://www.youtube.com/watch?v=I_sUuZBLJm8
(無印は97年だからちょっとズレてますね……)
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