Target:"1" 作:ニョ
オジサンと早く会わないと。薬がもうないよ。
僕のオチンチンどうしたんだろう……怖い病気じゃないといいけど、ずっと熱い。
暑いと言えば、妙に喉が渇くなぁ。その辺でジュース買おっ。
*
「オレ様がそんな与太話を信じると思っているのか? このチビ助め」
オレはこの図体のデカい鉄の塊に、復讐の手伝いを申し出た。デストロンの連中がどんなモンかってのは兼ねてから窺っていたが、相当のバカ揃いだな、こりゃ。
「ダンナがチャムリーの奴にしてやられたってのをアーカビルから聞きました。私はこの目で、あの老骨が日本を隠れ蓑にしてるってのを見たんですよ」
コイツの標的──チャムリー卿が二つの思惑の為に日本で身を潜めているとの情報を、スタースクリームに与えた。こいつぁ紛れもない真実だ、オレと同じで整形手術までして表社会から逃げ果せ、日本人をその技術で捕らえて人体実験をしているらしい。もう一つは、反トランスフォーマー連中との『密会』が目的だったようだ。
「チッ、どうだかなァ。それにしても気に入らねえぜ、あの老いぼれ人間めが……!」
スタースクリームの声は恥辱に怒れていた。……お、そろそろ新宿か。
「あの辺に隠れ家がありますんで、ここらで」
「ああ、わかった……だがお前、騙したら承知しねえぜ」
「へへ……任せてくださいよ」
オレはEDCの調査記録を盗み見るのに成功していた。どうやら反トランスフォーマー組織のシッポを掴み始めているみてえだ。だが、それが組織になろうとしているのには気づいちゃいない。
あんな関心を煽られるネタを知っちまった以上、忘れる事なんてできやしねェ。無関心でいられるわけがないんだよ。
イチ。お前が調子さえ良けりゃ、こんな大事に手ェ出さずに済んだんだけどなぁ。……垣原の奴を忘れちゃいねえがな。そろそろ一息つけたら、またあそこに『報告』しねえとな。誰かにバラしちまいそうだぜ。
*
地下駐車場に照る昼白色は克明にコンクリートを映す。そして、トランスフォーマーを詰問する彼らのもとにやって来た殺し屋──イチの頬に光沢を与えた。
「あ…………」
イチは中身を零しながら転がる清涼飲料缶と、ヤクザたちの顔色を交互に覗った。イチは経験上、自分が歓迎されないのを痛烈に覚る。
「あ、ゴメンナサイ。すぐ帰りますから……あっ!」
異邦者扱いの自分が彼らの視線を浴びて、挙動をぎこちなくしたイチは足を滑らす。矢印の塗装の上で。
「あうっ」
「どっかで見た顔だな。オイ、金子知ってんのか?」
眉をしかめて、垣原が様子のおかしい金子に事情を問う。
「いっ、いえ」
「…………邪魔しやがって」
だが、垣原からは少々の確信が芽生えようとしている。──転倒したイチの荷物から、刃の露出した靴がゴトンと滑り落ちているのを捕捉していたのだ。
それは洗濯物の一部であった。
「なんだあのクツは……?」
「ゴ、ゴメンナサイ」
「!」
イチの卑屈な態度、そして彼のきつい口臭から、見事に垣原の一時的な忘却を打ち払い、点と線を繋ごうとされていた。
──この前のガキ……まさかこいつが『イチ』だってのか? ゲロのニオイ、『斧』みてえなカカトのクツ……
「お前ら……こいつが、多分、イチだ」
「!」
「……こいつが、イチだとぉ」
金子は眉ひとつ動かさなかったが、その光景をイチに恩を売ったのを後悔しながら眺めた。垣原は『理想ではなくなった』イチに失望しながら、三郎に目を遣ると、革靴を鳴らしながら腰を上げようとする青年へ歩み寄った。目配せを受けた彼は、二郎を凌駕できなかった不条理を克服するべく、その手でイチを肉片に変えんと躍起になっていた。
「オマエ……ブチ殺す」
三郎の目の色がどうだったかは、言うまでもない。
「あ……あああ~~~~っ」
へたり込んで、すっかり殺し屋の貌を失ったイチは滂沱の涙を流す。
「これはチャンスかも。いたた……」
バンブルは眼部に深く刺さった鉄針を、小さく呻きながらつまんで引きずり出した。そして、自らが垣原の死角となったのを見逃さなかった。
「そらっ!」
「!?」
バンブルは両手を頭上に突き出し体を延ばし、身軽に跳躍した。垣原は過失による託言がましい目でバンブルを追う。天井を擦らん勢いで跳んだ勇気のサイバトロンはイチの手を取る。
「ねえ君、大丈夫かい? ココ危険だからオイラと一緒に逃げようよ!」
「え? あ、うんっ」
「野郎!! 追え!!!」
*
……イチもバンブルも九死に一生を得た、というのは間違いである。否、バンブルだけは助かったのかも知れない。
しかし真に救われたのは、垣原とその組員たちに他ならない。
そして──ジジイの魔手から離れた彼らの命運は、再び同じ手中に戻ろうとしていたのである。ビルの屋上には、スタースクリームが既に停泊していたのだから。
つづく……
スシロー行きたい