本当にごめんなさい。次のお話をすぐに投稿できるように頑張ります。
熟考の末、私は協力者としてこのアルカトラズ島に収監されている囚人たちを選んだ。
如何に親密な関係になろうとも看守は看守、私の敵であることに変わりはない。
彼らの仕事が私たちを管理することである以上、どのタイミングで裏切られてもおかしくないのだ。そんな危険な相手を脱走の協力者として選ぶことは避けた方が賢明だ。
対して、囚人の方ならばこの刑務所から出るという目的は一致している。
親密な関係を築き、協力に値する人物だという信頼を勝ち取ることが出来れば、心強い仲間になってくれるはずだ。
問題は、囚人たちとの接触方法だが……それに関しての策は、既に講じてある。
深呼吸をし、気持ちを落ち着かせた私は、たった1人で所長室の前に立ち、その扉をノックした。
「来たか、入れ」
「はっ! 囚人番号634番、入室しますっ!!」
ドアの向こうから聞こえてくる所長の言葉に反応し、大声で返事をしてからきびきびと入室。
後ろ手に扉を閉め、数歩歩いて所長の前にまでやって来た私は、そのまま自身の大きな胸を揺らすようにして張りながら敬礼の構えを取る。
「本日は私のために貴重なお時間を割いていただき、誠にありがとうございます!」
「ふむ……私に直談判での要請があるとのことだが、用件はなんだ? 先に言っておくが、お前の忠実な働きは認めているとはいえ、減刑や娯楽施設の開放といった要望は許可出来ない。このアルカトラズの原則は――」
「『最小限の特典、最大限の警備』……ですよね? わかっています。私もそのようなことをお願いするためにここに来たわけではありません。私は、ジェームス所長をはじめとしたこのアルカトラズ刑務所の皆様に感謝を伝えたくて、こうしているのです」
「……ほう?」
私の言葉を聞いた所長の目に興味の感情が宿る。
『囚人の心得』のスキルを順調にランクアップさせ、あと僅かで完全なる奴隷に堕とせそうなくらいに従順になっている私が何を言い出すのか、それに関心があるようだ。
上手くいった、と心の中でほくそ笑みつつ、私は真剣な表情を浮かべ続ける。
ご主人様に演技が上手くなるスキルを付与しておいてもらってよかったと思いながら、私はスキルで得た抜群の演技力を以て、所長へと心にも思っていない感謝の想いを告げていく。
「……私はこれまで、己の罪深さに気付かずに過ごしてきました。死して英霊となった後も、過去に人を殺めたことに対してなんの罪の意識も抱いていなかった。ですが……このアルカトラズで自分自身の罪を突き付けられ、贖罪の日々を過ごすうちに、段々と心境が変化していったんです」
「……続けろ」
「私は、私は……なんて愚かだったんだろう! 辿り付けもしない剣の頂を目指すなどと宣い、多くの命を奪って、それを当然のものと考えていただなんて……!! 無意味に人を殺め、罪を重ね、私は地獄の閻魔でも裁き切れないほどの罪を犯してしまいました! 生前の私は何故、あんな真似を……っ!?」
そう言いながら顔を覆い、泣き崩れる演技をする。
普段の私がやれば大根演技にしかならないだろうが、今の私は芸術家のご主人様に付与された演技のためのスキルがあるから、声にも動きにもしっかりと悲しみと後悔の感情が乗っている素晴らしい言動を取ることが出来た。
間違いなく、ジェームス所長も騙されているだろうと確信しながら、演技によって流した涙で軽く赤くなった目を彼へと向けた後で、私はすぐにその場で土下座しつつ、最大限の感謝の言葉を述べていく。
「その罪を、このアルカトラズで裁いていただき、贖罪の機会まで与えていただけるだなんて、私はとんでもない果報者です! ここで己の罪を噛み締め、刑務作業に従事して、愚かな自分の行いを償う日々を送って……看守の皆様に褒めていただく度に、私の心は晴れやかになるのです! このアルカトラズでの日々は、私を生まれ変わらせてくれました! 本当に……ありがとうございます!」
「……お前の感謝の気持ちはわかった。しかし、それを伝えるためだけに私にアポイントメントを取ったのか?」
「……いいえ、違います。私の話は、ここからが本題です」
土下座をしながら、最大限の敬服と忠誠の証である姿勢を見せながら……私は、勝利を確信していた。
淫霊になったとしても僅かに残っていた剣士としての直感が、所長の警戒が緩んだことを感じ取っている。
自身の宝具の能力と、今日までの私の従順な態度を見てきた彼は、既に私の『囚人の心得』スキルが十分な成長を果たしたと判断したのだろう。
そして、私がこれまでの囚人とはまた違う態度を見せていることに興味を示し、ここから私が何を言い出すのか気になっているのだ。
今のジェームス所長の頭の中にあるのは、私をどこまで利用出来るかという考えのみ。
完全なる奴隷に堕とす前に、私がこのアルカトラズ刑務所の役に立つ存在になるかどうかを見極めようとしている彼に向って、感極まった演技をしながら私は言う。
「看守の皆様から聞きました。このアルカトラズには、所長の寛大なるご処置に不満を抱き、無用な反抗を繰り返す愚かな囚人たちがいると……そのような輩の存在を、私は許しておけません。手を打つべきです」
「どうするつもりだ? 生前のように、刀を振るってそいつらを処断するのか?」
「まさか! そのような愚かな真似は二度としないと、アルカトラズでの生活を経て私は誓いました! 私が振るうのはもう1つの武器……この淫らな肢体です」
ずいっ、と机に乗り出すようにして体を傾けながら、私は所長に言う。
淫霊になってから更に大きさと柔らかさ、そして感度を増させた乳房を揺らしながら、私は真剣な提案を装って所長へと訴えを口にした。
「提案の内容ですが……購買部に、
「ふむ、なるほどな。男囚人共がお前の体に価値を見出せば、その権利を買うために真面目に刑務作業に従事するようになる。逆に、治安を乱す者からは罰則としてチケットを取り上げることにすれば、無用な反抗もしないようになる、か……」
「その通りです。流石は所長、聡明でいらっしゃる」
「見え透いた世辞はいい。だが、囚人番号634番、こんなことをしてお前になんのメリットがある? お前を商品として陳列したとしても、お前自身の刑が軽くなるわけでもなく、刑務作業に関しても免除されることもない。どうしてこんなことを急に提案した? 理由を述べろ」
……ああ、全く。この人は本当に予想通りのことをしてくれる。
その質問をしてくることも、その裏に隠されている思惑も理解している私は、むしろ疑問を抱いた風を装ってジェームス所長へとこう返した。
「メリット? 何故、そんなものを求める必要があるのでしょうか? 私はただ、敬愛するジェームス所長や看守の皆様のお役に立ちたい、その想いからこのような提案をしています。このアルカトラズに秩序がもたらすためなら、私は命すら捧げる覚悟……私自身に対する褒美など、何一つとして求めてはいません!」
「……本当だな、囚人番号634番。お前は、その言葉を嘘偽りなく口にしているんだな? 正直に答えろ」
「嘘? 私が、ジェームス所長に嘘を吐く……? そんなこと、絶対にあり得ません!! 私はあなたを尊敬し! あなたに感謝し! あなたに絶対の忠誠を誓っています! このアルカトラズで得た教訓を魂に刻み、英霊の座に持ち帰って……いいえ、そんな必要もありません! アルカトラズとジェームス所長のお役に立てるのなら、私は魂魄が擦り切れるまでここでご奉仕いたします! 私が永遠の命を有する英霊としてこのアルカトラズに召喚されたのも、きっとそうなる運命に導かれてのことだったのでしょう! 私はこれまで出会った誰よりも、貴方様を慕っております! ジェームス所長!!」
この質問の意味も、理解している。
『囚人の心得』スキルの効果を用いれば、相手に半強制的に本心を喋らせることが可能。つまり、スキルが一定以上に育っている相手であれば、先の質問だけで自白を促すことが出来るのだ。
だが……残念ながら、私はその束縛から逃れている。
スキルの効果で所長の『正直に話せ』という命令を無視出来る私は、敢えてオーバーな反応を見せてわざとらしく彼に忠誠を誓う奴隷として振る舞ってみせた。
大丈夫、彼は絶対に疑わない。自身の宝具の効力を信じ、その影響下にまだ私があると信じているから。
故に、先の私の大袈裟なリアクションも、涙ながらに訴えるわざとらしい振る舞いも、全て私が本心から見せているものだと信じて……騙されてくれるはずだ。
そして、ここまで仕上がった私に『更生宣言』のスキルを使うよりも前に、今までの女囚人とは全く違う反応を見せる私を観察したいと思うはず。
ここまで深い忠誠と尊敬を抱くに至った理由はなんなのか? 偶然なのか? 必然なのか? その答えを見つけ出すまで、彼は私を完全なる奴隷とはしないはずだ。
「……囚人番号634番。私は、お前を誤解していたようだ。冷酷無比な殺戮者であり、連続殺人という大罪を犯した救えない人間であると……そう思っていた」
「そう思われるのも当然です。私は、それだけの罪を重ねてきましたので」
「だが、お前は自らの過去を恥じ、それを償おうとする意志を見せている。このアルカトラズでの日々がお前を変えたというのならば……このアルカトラズ刑務所の責任者として、お前の献身に報いる判断を下すのもやぶさかではない」
「で、では――!!」
……ほらね、上手くいった。自身の強力が過ぎる宝具を過信しているジェームス所長は、私の演技に一切気が付かないでいる。
今も私は心の中ではこんなことを考えているけど、表情は期待と尊敬に満ち溢れた笑顔を浮かべていて、反抗作戦を考えている素振りなんて全く感じられない。
そんな私の前で、大きく頷いたジェームス所長は……珍しく上機嫌な雰囲気を感じさせる声色で、私が望む答えを口にしてくれた。
「認めよう、お前の性奉仕権利を購買部で売り出すことをな。それに合わせ、お前の刑務作業を軽くするよう担当刑務官に指示しておく」
「所長……! ありがとうございます! ありがとうございます!!」
「ふふ、感謝するのはいいが、今すぐに実現出来るわけではない。話し合いを重ね、検討に検討を重ねた上で実行しなければ、不備が生まれるだろうからな。そのためにもお前からの意見を聞かせてもらう必要がある。これからは、私の呼び出しを受けたらこの部屋に来るんだ。わかったな?」
「はっ!! 畏まりましたっ!!」
この命令にも意味がある。呼び出しを聞き入れれば私の『囚人の心得』スキルが成長していくし、話し合いの中でどうして私がここまでの忠誠を誓うようになったのかの研究も行えるはずだ。
全てが思い通りに進んでいることに満面の笑みを浮かべた私は、再び敬礼のポーズを取ると彼への感謝の言葉を大声で叫んだ。
「この度は、私の未熟な提案を採用していただき、本当にありがとうございます! 誠心誠意、所長のご期待に応えられるよう努力いたしますので、これからも囚人番号634番をよろしくお願い申し上げます!」
「うむ、励めよ。では、下がれ。また用があれば呼ぶ。お前の提案が実現するまでの間は、普段通りに刑務作業に従事しろ、わかったな?」
「はっ! 了解です! 囚人番号634番、刑務作業に戻らせていただきます!!」
三度びしっと敬礼のポーズを取って、深くまで頭を下げてから所長室を出る。
そして、きびきびと数歩進んで部屋から離れたところで……私は、とても邪悪な笑みを浮かべた。
(上手くいった! これで他の囚人と接触する下地は出来上がったね! 後は、どうやって彼らを仲間に引き込むかだけど……)
その辺に関しても問題はない。私は淫霊宮本武蔵、やることはヤルことだってのは重々承知してますから♡
頼りになるご主人様たちに協力してもらいつつ、所長や看守の信頼を得つつ……このアルカトラズから脱走するための手筈を整えさせてもらおう。
(ま、その辺のことはちょっと放置しといて……今日もいっぱい
どんな作戦があっても、どんな思惑があっても、私のやることは変わらない。
セックスして、ちんぽ奉仕して、淫霊としての能力をフルに使って……性杯を回収する、それだけだ。
だから今日も私は淫らに腰を振ろう。男たちに肢体を差し出そう。
悦楽と幸福に満ちた性の宴を愉しみ、淫霊としての本分を果たそうじゃあないか。
「今日の作業は~……おっ、ラッキー♡ 犬の餌の仕分けじゃんっ♡ これなら10分もあれば終わるし、残り時間はず~っとセックスしてよ~っと♡」
自分の予定を確認し、お馴染みの楽で仕方のない作業に満足気に笑いながら、私は今日もこのアルカトラズでの日常を繰り返していく。
看守たちからの興奮に満ちた視線を全身に浴びながら、それを心地良い快楽として味わいながら、私は堂々と刑務所の廊下を闊歩するのであった。