ストーリー回というか、そんな感じのお話なので、適当に読み進めちゃってください。
同じタイミングでエロ回を投稿していますので、お口直しにどうぞ。
「所長、少しお伺いしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」
「……許そう。何が聞きたい? 言ってみろ、634番」
「はっ、ありがとうございます!」
刑務作業や自由時間が終わり、他の囚人たちがとっくに夢の世界に旅立っている深夜の時間帯。
私は定期的に行われているジェームス所長からの聞き取り調査のために所長室を訪れていた。
『囚人の心得』の効果がよく表れている私の調査をすべく、様々な質問を投げかけてくる彼の相手を適当にしつつ、色々と情報を探っていた私は、彼からの信頼度が一定以上あることを確信して、こちらから質問をする思い切った手を打ってみせている真っ最中だ。
完全に私が堕落し切っていると判断しているジェームス所長は、予想に違わず私からの質問に耳を傾ける姿勢を見せてくれている。
これ幸い、と知りたい情報を探るべく、私はド直球な質問を彼へと口にした。
「これまで所長は、数多くの受刑者たちを更生へと導き、出所させてきたと聞き及んでおります。その者たちがどうしているかを、お教え願えないでしょうか?」
「出所した者のことだと? そんなことを聞いてなんになる? お前は外の世界に未練を持たず、このアルカトラズ刑務所に骨を埋める覚悟ではなかったのか?」
「勿論です。今の私は外の世界のことなどどうでもいいと思っております。ただ、所長や看守の皆様の手で更生した囚人たちが、どのような人生を送っているのかということを知るのもまた、このアルカトラズ刑務所に尽くす者として知っておいて損はないと思ったので、こうして質問させていただきました」
「ふむ……なるほどな。確かにその通りだ。このアルカトラズを出て行った者が完全なる更生を果たしたのか? はたまた同じ過ちを繰り返す学ばぬ者であったのか? それを知りたいというお前の気持ちは尤もである。いいだろう。お前にその答えを教えてやろう」
「はっ、ありがとうございます!」
どくん、と心臓の鼓動が高鳴った。
前々から不明であった、出所した囚人たちの行方を知ることが出来る機会が訪れたことに、私も正直興奮が隠せないでいる。
ただ、これを悟られてしまってはジェームス所長に不審がられてしまうだろうと考えた私は、必死に自分を取り繕って普段通りの従順な雌犬としての姿を取り続けてえいた。
「先に言っておくが、これから話すこと、見せるものに関しては他言無用だ。囚人はもちろん、看守たちにも言ってはならん。わかったな?」
「はっ……! それほどまでに重大なものをお見せいただけること、感謝いたします!」
念を入れて私に確認をしてくる彼に普段通りの敬礼を見せつつ、返事をする。
『囚人の心得』のスキルのお陰で口封じは完璧だと判断した所長は、私の返事を聞くと机の裏側にあるスイッチのようなものを押し、部屋の中にあった隠し階段を出現させてみせた。
「これは――っ!?」
「ついて来い、634番。お前の知りたいものの答えは、この先にある」
見るからに怪しい、秘密の通路を進むジェームス所長の背を追って、私は先へ先へと進んでいく。
彼が持つ懐中電灯の明かりだけを頼りに細く暗い道を進む中、ジェームス所長は驚くべき秘密を私に打ち明けた。
「囚人番号634番、お前に言っておかねばならないことがある。何を隠そう、これまでこのアルカトラズ刑務所に収容された囚人のうち、外の世界に出た者……つまり、出所を果たした者は、ただの1人として存在していないのだ」
「………!」
彼の宝具の効果を知っていたから予想はしていたとはいえ、改めてその事実を認識するとやはり動揺してしまう。
大方の予想通り、これまでこの刑務所で捕らえられていた者たちはこのアルカトラズの外に脱してはいないのだと、はっきりとした言質を取った私は、怪しまれぬように所長との会話を行っていった。
「それは……どういうことでしょうか? 私は看守たちから、刑期を終えた囚人たちは出所を迎えて外に出て行ったと、そう聞いております。それが嘘であると、そういうことでしょうか?」
「その通りだ。囚人番号634番よ、お前も理解出来るだろう? このアルカトラズに送られてくる罪人たちは、揃いも揃って己の罪を贖い切れぬとんでもない大罪人ばかり……しかも、そのことに対しての罪の意識も薄く、己の罪を償おうと積極的に動くこともない。ただこの島の中で生き、刑期満了を迎え、外に出ていくことだけしか考えていない愚か者ばかりだ。お前が一時共に過ごした2人の女囚人たちもそう。お前のように、己の罪を噛み締めることもなく、ただのうのうと生き続け、反省する素振りも見せなかった。そんな奴らは何百年このアルカトラズで刑期を過ごしたとしても、更生は不可能だ。そして、更生していない罪人を世に送り出すわけにはいかないと判断するのは、刑務所長として当然のことである……違うか?」
「はっ! ジェームス所長は何も間違っておりません! 所長がそう仰るのならば、罪人たちは外に出て行く資格のない者たちだったのでしょう!」
私は何も考えず、脳死でジェームス所長を肯定した。
ここで否定をすることは彼の疑いを招く。なんの得もないそんな行動を取る意味はないし、ここで彼を肯定して上機嫌に話をしてもらった方が情報収集が容易くていい。
そんな私の考えなど露知らず、べらべらと珍しく饒舌に話を続ける所長は、更に熱を帯びた声で己の秘密を語り続けた。
「更生を果たせぬ罪人を外に出すわけにはいかない。そんな連中が再び罪を犯すことのないよう、このアルカトラズで永久に監視しておく必要がある。しかし、そんなことは普通に考えれば不可能だ。そう、
「っ……!?」
そう言いながら足を止めたジェームス所長の視線の先には、古ぼけた木製のドアがあった。
それを目にして、彼と同じくその場で停止した私は、その扉の先から漂う異様な気配を敏感に感じ取ると軽く息を飲む。
本当に……その気配を上手く言語化出来ないのがもどかしいのだが、生温く惚けた私の直感ともいえない本能的な感覚が感じ取れるくらいに、その雰囲気はヤバい。
近付かない方がいいと、そう頭では理解しているはずなのに、どうしてだか足がそちらへと進んでしまう甘い誘惑と恐怖が混在している、完全に異質な空間がその扉の先に広がっているという確信が、少し離れたこの位置からでも感じ取ることが出来る。
間違いない、この先に……私が探し求めている性杯がある。
この異質な空気を作り出している元凶であり、私が回収しなければならない世界を狂わせる驚異であるそれを確認するために、ジェームス所長が開いたその扉の先へと足を踏み入れた私は、中の光景を見て愕然とした。
「これ、は……っ!?」
「……素晴らしいだろう、囚人番号634番。これが私の望む、完璧なる管理の形だ」
扉の先の空間は、思ったよりも広かった。
少なくとも、今の私が住まう独房よりは一回りも二回りも大きな部屋の中央に置かれた台座の上には、金色の杯が鎮座している。
一目見て理解して、あれが『性杯』だと。
何度か見覚えのある万能の願望器『聖杯』と左程変わらぬ見た目をしているが、そこから放たれる濃い淫気を感じ取った私は、遂に探し求めていた品を発見したわけではあるが……私が注目していたのは、その性杯ではない。
まるで獣の剥製のように、あるいは何らかの栄誉の証明として授与された盾やトロフィーであるかのように、それはこの部屋の壁にずらっと並べられていた。
大きさ、形、色……それらが何一つとして一致していないそれらであるが、たった1つだけ共通していることがある。
それは、大きな数字がかかれているということ。壁から突き出すようにして、生えるようにして並べられたそれの正体が
(あの2人も、この壁尻の中に……!! この部屋はいったい、なんなの!?)
見るからに悪趣味で、嫌悪感を禁じ得ないこの部屋は何のために存在しているのか?
その答えを唯一知る人間であるジェームス所長は、恍惚とした表情を浮かべながら部屋の中を見回して、私へと言う。
「見ろ、634番。この部屋に捕らえられている女どもは、性杯から発せられる淫気に当てられて常に発情状態に陥っている。限界まで肉体と精神を追い詰められながら、己の罪に見合った苦難を味わいながら、永遠に解放されることのない性の責め苦を受け続けることこそが、この囚人たちに課せられた罰なのだ。これこそが……私が望む、真なる囚人たちの管理の形だ。うは、うはは、うはははははは……!」
……ああ、もっと早くに気が付くべきだった。この男のネジが、狂っているってことに。
性欲を暴走させ、男をタガの外れた獣にしてしまう性杯の在り処であるアルカトラズ刑務所に居ながら、誰よりも性杯に近い位置にいながら、これまでずっと私を抱こうとしない時点で、私はジェームス所長の異常さに気が付くべきだったのだ。
この男は性欲と支配欲を合一している。もっといえば、性欲を利用して他者に罰を与えている。
この異常性を目の当たりにしてようやく理解出来た。この男の目的は、性杯を用いて自身の宝具の効果範囲を世界中に広げようとしているのだ。
一定の範囲に存在する人間を囚人とし、彼らを従わせることで抗えなくする初見殺しの宝具『
ジェームス所長はその力を以て世界を管理し、自分に従わない者たちをこうして壁尻の刑に処してしまうつもりなのだろう。
男は性杯の効果で性欲に狂い、女もまた強い淫気に晒され続けることで心身を乱される。
三大欲求の1つである性欲を完全に支配したジェームス所長には、彼自身の宝具の効果も相まって誰も叶うことがない。
そうなれば……世界は終わりだ。彼が管理し、支配する、文字通りの監獄となってしまう。
この狂った男が支配する世界が正常に動くはずがない。間違いなく、世界は破滅の一途を辿ることとなるだろう。
(この間の微小特異点なんかとは比べものにならない……! 私が脱走に失敗したら、世界が滅ぶ!!)
正直、ちょっと舐めていた部分があった。性杯探索っていっても任務の大半はヤリまくることで、目的を達するついでに気持ちよくなれる、ちょっとしたお遊びみたいなものだって気持ちが、私の心の何処かに在り続けていた。
でも、違うんだ。これもまた、私が知っている世界の存亡を賭けた戦いで、私は世界の命運を握る
負けられない、負けるわけにはいかない。
世界の未来のためにも、性の悦びに満ちた世界を守るためにも、私を育ててくれたご主人様たちの期待に応えるためにも……淫霊宮本武蔵の名に懸けて、ジェームス所長の野望は阻止してみせる。
それが、私の使命。世界の命運をおまんこで背負う、最弱の淫霊がイキ狂ってでもすべきこと。
そう、自分自身の背負ったものの重さを認識した私は、目的である性杯の在り処をしっかりと頭に叩き込むと共に、脱走計画の成就に向けて最後の仕込みに入るのであった。