凜子姉が任務で学校を不在にしてしばらく経った。
俺は相も変わらず代わり映えのしない日々を過ごしていた。
あーあ、毎日楽しくねぇな。
そもそも凜子姉が居ない時点で日々に彩りがないんだよね。
ほら....フラれたとしても眺めれば目の保養になるし。
確かに五車には可愛い子は多いと思う。
でも見ていても幼馴染だからおかしくないのは凜子姉だけなのだ。
そうボッーと物思いに耽っていると、隣のデブオタが話しかけてきた。
「クナイの実習とか誰得....遠距離攻撃するなら銃一択だろJK....。そうは思いませぬか」
知らねぇよ。
問川はまるでうんざりした顔でクナイを握りしめて俺にそう尋ねる。
「知らんな。そもそもいつでも銃があると思うんじゃねぇよ、甘えんな。」
「持参すればいいでしょぉぉおおお!!!!」
問川が甘えんなと言われたのが気に食わなかったのか詰め寄ってくる。
うるさいな....俺は日々ダウナーなんだよ。
凜子姉が居なくなった時は会わなくて助かった~と思ったが、やはり数日凜子姉に会わないのは大きい。
普通に話せる美人の存在は貴重だ。
早く帰ってきてくれないかなぁ......
すると問川の前の人がクナイを的に投げ終わり、問川の番になる。
問川が振り返るとキメ顔でサムズアップした。
「....拙者、行ってまいります。」
「おー、爆死して来い。」
適当に答えると問川はしっかりと両足で地面を踏みしめて、仁王立ちする。
そして教師に投げるように言われ、クナイを構えた。
「ふっ!ほっ!はっ!フォカヌポウッッ!!!」
珍妙な掛け声を発してクナイを投げ続けるが物の見事に一つも的に命中しない。
なんなら地面に刺さったり、的の向こうの木に刺さったり、そもそもふにゃふにゃとした軌道を描いてぺたりと地面に落ちたりと最早投げていると言えないだろ、これ。
そして投げ終わって、教師が記録している間に俺にどや顔を向けた。
「どうでござるか。」
「下手くそ。如何投げたらそうなるんだよ。お前だけだよそうなるのは。」
「ドゥフww褒めないで欲しいでござる。言われなくても僕は元々特別なオンリーワンでござるよ。」
下らない事を言いながら後ろへと歩いて行く。
褒めてねーし。
しかしこんなひどい結果になることは実は予想は出来ていた。
問川は壊滅的にクナイの扱いが下手だ。
投げようとすれば手から滑り落ち、もはやクナイから拒絶されているかのような有様だ。
その癖、サバゲ―では打って変わって狙った物に百発百中なのだから、本人が銃を所望するのも無理からぬことだろう。
だがこれは実習だ、ご愁傷様。
そして次は俺の番になる。
「次、池守智一。初めっ!!」
その声と共にクナイを出して、投げる。
こんなものは感覚と力の入れようだ。
キチンとした軌道を描くように投げれば自ずと当たる。
投げた7本は的に真っ直ぐ飛んでいき、ど真ん中を4本がぶち抜き、残りの3本がそれら4本に寄り添うように的に突き刺さった。
教師は的を見ると記録し始める。
俺が後ろを振り返って歩いていき、問川の後ろに並ぶ。
「いつ見ても見事でござるね。」
「まぁクナイは投げることを想定した形してるしな。....それに俺の取り柄ってこれくらいしかないしさぁ.....。」
凜子やゆきかぜ、達郎みたいに戦闘に有効な術を使えないしなぁ......
なんなら凛子姉は逸刀流使えるし、白兵戦でも勝てねぇよ。
「これくらいっておまwww一発も当たらない僕はどうなるのやらwwww」
「お前は銃が凄いじゃん。」
「マジレスはNGですぞ。」
マジレスすると問川が真顔で返してくる。
授業はこのようにつつがなく進む。
昼休み、昼食の時間だ。
俺は親が拵えてくれた弁当を片手にどこで食べるか考えていた。
学校において俺が唯一問川とは別行動になる瞬間だ。
問川はあの図体だからこそ昼食だとしても凄まじい量食べる。
そのせいで親からは昼食を作るのを拒否され、彼の昼食はずっと学食なのだ。
弁当勢の俺が食堂の席を取ってしまうのはあまり望ましいことではないだろう。
よって俺は昼食の時間は一人になってしまうのだ。
まぁそれはアイツも同じ。
問川も一人で寂しく食っているだろうから俺も早く弁当を食って行ってやらないとな。
そう思って場所を探すも、中々しっくり来るところがない。
熱すぎてもダメだし、砂地であれば砂ぼこりが立つ。
それに草場であれば虫が飛んでいたりする。
蝿が一番嫌いな虫なんだよ、俺。
だが、まぁベストプレイスなら一つ思いついている。
屋上だ!
あそこは晴れやかでまた貯水タンクの影は涼しく、風通しもよくて人の目も少ない。
おまけに虫も砂地に比べれば少ないと来た!
コイツは、俺にとってこれ以上ないアガリじゃないか?
ルンルン気分で階段を上り、ドアを開けて屋上へ行く。
屋上は誰一人居らず、風が一陣吹いていた。
殺風景な風景。
だが、今やそれが望ましい。
俺は陰になっているところに腰を下ろして弁当の包みを開け始める。
日陰だからこそほんのりと涼しい風が頬を撫でる。
弁当箱を開けると唐揚げの入ったのり弁がその全貌を示す。
まずはさやえんどうから箸を付けて口に運んだ。
うん!いつも通りうまい!
さっさと食い終わらないとな。
唐揚げとおかずにご飯をかき込んでいるとドアが開く。
ん?
「ふぃー.....」
ドアが開いて一人の少女が屋上に入る。
赤毛の髪に大きな胸。
そして目つきのわるい目が特徴の少女。
彼女は気だるそうな表情で進んでいって、俺をチラッと見るも無視して柵に寄りかかっている。
彼女は俺という先客が居ても何食わぬ様子だが、俺はその真逆。
胸の中がさざめいていた。
ヤバいヤバいヤバい。
神村舞華じゃん....話したくねぇなぁ。
彼女は神村舞華。
男口調の男勝り。
典型的なヤンキー女だ。
ぶっちゃけ同級生の中で一番おっかない。
俺にとっては一番苦手なタイプだった。
ヤンキーとか....胸はデカいし、顔は良いのに.....もったいない。
まぁ面と向かってそうは言えないけど。
「.......」
俺は極力目を合わせないように黙々と飯をかき込む。
すると神村舞華はポケットから煙草?キセル?よくわかんないのに火を点けて加える。
ケッ!ヤニカスかよ....死ねよ。
こちとら飯食ってんだよ。
まずくなんだろうが。
問川は飯食ってる時に同じ空間で煙草を吸われても気にしないようだが、俺は気にする。
ていうか学生なのに何ヤニ吸ってんだチクるぞ。
....報復が怖くてそんなこと出来ないけど。
俺が静かに食っていると、ふっーと煙を吐いて空を眺める。
そして.....。
「おいお前、....いつもそんな風に一人で食ってんのか?」
えっ、なに?何で話しかけてきたの!?
空を眺めつつ、そう聞いてくる神村。
正直無視してさっさと飯食って逃げたかったが、怖かったので俺は震えながらも答える。
「えっ、あ、あのっ...しょうでしゅ!」
噛んでしまった。
クッソ恥ずかしい。
しかし神村はそんなことお構いなしなようで。
「へぇ....そうかよ。」
その言葉きりで黙る。
なんだコイツ。
突然話しかけてきた神村に戸惑いつつも、飯をかきこむ。
おっ、終わりが見えてきた。
これで地獄みたいな時間も終わるんやなって。
そして最後の一口を食べた瞬間、再度神村は口を開いた。
「まぁなんだ....見てたぜ、アンタ。毎回クナイ投げ上手いじゃねぇか。」
神村がそう言う。
しかし、そう言われた俺の心中は晴れやかじゃない。
それもそうだ。
神村は自分で制御できない程の火遁を扱う事が出来て、ゆきかぜ達とも並ぶほど対魔忍のホープと評されている。
当たり前だ、遁の術使いの中でも最高クラスの火炎を操る事が出来るのだから。
ゆきかぜと同じく制御の為にバズーカを使っているくらいだ。
俺と比べて才能の桁が違う。
彼女の派手で強力な術と俺のあるかないか分からないミソッカスな術。
月とすっぽんだ。
そんな奴にクナイ投げで褒められても、まったく嬉しくない。
プロが素人に筋が良いと褒めるくらいのニュアンスだろう。
そんなに神村とは親交がないし、アイツがそんなこと言うようなキャラとは思えない。
気まぐれに言ったことだ。
懐が狭いと言われるかもしれないが、そんなこと言われても不快なだけだった。
だが面と向かって不快と言う程の勇気はない。
俺はにへらと愛想笑いを浮かべて機嫌を取る。
「いや~期待の逸材とも評されている神村さんにお褒めの言葉を頂けるなんて恐れ多いっすよwんじゃ、僕は行くんでぇ....そこでヤニでも吸っててください~。」
ちょっと口調がふざけすぎたか?
そう思ったが、神村は何も言って来ないのでそのままそそくさと屋上を出た。
そして階段を下りて食堂へ急ぐ。
食堂に入ると問川がテーブルに突っ伏していた。
「お、おい...大丈夫か?」
俺が声を掛けるとガバっと勢いよく顔を上げる。
「おっそいなりよぉ~!!拙者周り知らない女子に囲まれて凄く気まずかったんですぞ!!殺す気か!?」
「いやそのくらいじゃ死なねぇだろ...あぁもう悪かったよ。ちょっと野暮用があってな。」
神村に絡まれたことは口には出さない。
どうせ出したところでへ~くらいだろう。
ぶっちゃけ俺にとってはいち早く忘れたいことだった。
また絡まれたら嫌だな~。
そして夕方。
下校時間。
俺は問川と一緒に家に帰っていた。
「あ~今日は恥かいたでござる。これはもう明日の休みはサバゲ―しにいくしかないんじゃないか!?行きましょうよ~」
問川がくねくねと気持ち悪い動きをしながら俺に提案してくる。
しかし俺は乗り気ではなかった。
そもそも俺は銃器を扱うのは苦手だ。
思ったところに銃弾が飛んでいかない。
あんなもんさっさとナイフ投げたら終わりだろ。
しかも装填の手間もそれならかからない。
うん、やっぱナイフ投げたほうがいいわ。
それに明日は少し予定が入っている。
「悪いな、明日は頼んでいた物が届くんだよ。」
そう言うと問川があきれ顔で聞いてくる。
「それってもしかしてナイフのコレクションでござるか?」
「うん。」
俺が首肯するとぷぷぷと口元に手を当てる。
「ぷぷぷ....ナイフとかw中二臭wwwww」
「お前殺されてぇのか。そんなこと自覚してんだよクソ!でもなぁ!ちょうどかっこいいのが安値でオークション出てたんだよ!買うしかねぇだろ!!」
俺がそう言うと問川がうんうんと目を閉じて首肯する。
「分かりますぞ。拙者のフィギュアと同じですな。買わねば!と思った時には既に行動が終わっているんですぞ!」
「....それと同じで良いよ。もう。」
コイツの性欲に起因するフィギュア集めと同一視されて一瞬違うと言おうと思ったが、正直同じであると言われても頷かざる負えない。
諦めてそれと同じということにした。
すると急に問川が口を開く。
「あれ親方君じゃない?また綺麗な執事さん連れてて羨ましいンゴねぇ~。」
見ると目の前で同級生である風魔小太郎が執事である風魔時子を連れて歩いていた。
二人で寄り添っているかのように見えて、親密さが窺える。
親方君と俺たちが呼ぶのは綺麗なお姉さん執事にお館様といつも呼ばれている為、揶揄しているのだ。
....まぁ嫉妬からだ。
おっぱいも大きくて尽くしてくれて美人なお姉さんとかマジで羨ましい。
俺も欲しいわ。
やっぱ世の中家柄が全てだな。
クソだわ。
ちょっと悔しいので少しネタにすることにしよう。
「お館様ぁ!時子はぁ....立場が下な使用人に処女をもらって結婚しますぅ♡」
「えっ、急にどうしたんでござるか。気持ちの悪い声出して。」
「あの人の真似。」
俺がそう言うと吹き出す。
「ちょっ、聞こえたらまずいですぞwww」
まずいとは言いつつも、問川も乗り気なようだ。
「聞こえねぇって大丈夫だって。.....問川様の子供作って結婚します!こんなだから時子は死ぬんですぅ!こんなの初めてなのぉほ♡」
「ちょっww僕を巻き込まないでクレメンスwwww死ぬとかどういう設定なんwww」
「昨日やったエロゲでそういうのあったから。子供産まされた後に処刑される的な。」
「いきなり重い設定ぶち込まないでクレメンスwwww目の前に本人が居るのに頭おかしいwwww」
頭おかしいとか言いつつ、問川のツボには嵌ったようで彼は腹を抱えて爆笑している。
そりゃ目の前の人間の真似を友達がアヘ顔でしていたら誰でも笑ってしまうだろう。
後ろを向きながら真似をし続けていると......
「お館さまぁ...はぁ....見ててくださひぃ♡時子のすが....ん?」
後ろ向きながら歩いていると何かにぶつかる。
どことなく殺意が背中から伝わってくる。
ゆっくりと振り返ると.....
「随分と楽しそうですね....」
時子が満面の笑みで俺たちにそう言ってくる。
しかしその笑みからは気迫を感じ、腹の底が冷たくなる感覚が俺を襲う。
もしかして....聞かれてた?
なんで!?あの距離なら聞こえないはず.....ッ!!
すると時子の少し後ろに立っている小太郎が目に入る。
小太郎はどこか面白がっている顔で俺たちにこう言った。
「お前ら、盛り上がっててすげぇ声大きくなってたぞ。」
マジか.....無意識にそこまで声が大きくなってしまっていたか。
偶にこういうことあるんだよなぁ.....。
怒ってるよなこれ....殺意をビンビン感じるもん。
「二人とも、....正座。」
「はい.....」
そして俺と問川は夕刻に地面に膝を付けて綺麗な土下座をかましながら、説教されていた。
やっぱ誰かで妄想はするべきじゃないな。うん。
俺か問川の家でやろう。
その後、親方君の俺も妄想する時はあるから許してやろうぜ的な発言で俺たちは放免され、各々家に帰ることになった。
額が砂でじゃりじゃりしているので、さっさとお風呂に入ってしまおう。
休日。
前日に届いた鍵開け専用鉄具?ていう名前のナイフを手の平で弄んでいると携帯が鳴動する。
なんだ?
携帯を確認すると問川から凄いもん発見したから家に来いという内容のメールだった。
ほぉ、問川の癖に俺を呼び出しですか。偉くなったものですね。
まぁちょうど暇してたし行くんだが。
階段を下りて、玄関へと赴き外に出る。
そして歩くこと数分。
問川の家に到着する。
そして中に入って、問川の部屋へ。
一応マナーではあるし、ノックはしておこう。
「いいなりよー」
了承されたのでドアを開けて中に入る。
「わざわざ呼び出しやがって。凄いもんってなんだよ。下らねぇ物だったらぶっ殺すぞ。」
俺が言うも問川は神妙な顔になっている。
「いや、急に呼び出してすまんなww....でも後悔はさせないぞ。深層ウェブを漁ってたらヤバい物見つけたんよ。」
「また呪われたゲームか?流石はスーパーハカー。もっと別の事にそういう技術使えよ。」
俺が言うと彼は鼻息荒く返答する。
「ハカーじゃなくてハッカー!それにそんな風に言えるのは今の内ンゴねぇ.....よし、このページだ。welcome to underworld。」
妙に自信満々な問川。
変なテンションで俺を手招きした。
気持ち悪。
だが俺は手招きされるがままに、問川の横に座る。
問川のデスクトップパソコンはほの暗いアングラ臭漂うウェブページを映していて、URLなんて見たことない物だった。
まぁそれも深層ウェブだからな。
コイツは最近どっかから深層ウェブにアクセスするのに必要なプログラム?を買ってきて掲示板に深層ウェブからサルベージしてきた物を貼るのに嵌っているらしい。
でも大体そういう転がってるのって悪ふざけもあるし、下らない物も多い。
問川がページをどんどん行ったり来たりしていると一つのサイトに繋がった。
見る限りどこか風俗のサイトっぽい。
会員制か。
まぁ深層ウェブを使うなんて闇の勢力、魔族などが活動する場合に使うのが大半らしいし、これも裏風俗的な何かなんだろう。
そして最近更新されたのか一際注目を煽るバナー。
そこをクリックすると......。
「なんだこれ...『正義のメス豚Y豚ちゃん調教日記』?」
画像ではほぼ半裸のようないやらしい恰好で目元を黒い線で隠された褐色の少女が男に足を掴まれて持ち上げられて、ピースマークを作って笑っていた。
....ていうかこの女どっかで見たことあるな。
「どうでござるか?見覚えあるでしょ?」
問川が言う。
しかし俺は首を振って答える。
「いや確かにゆきかぜには似ているがありえないだろ。あの雷撃の対魔忍だよ?もしこんなことになるなら遅れを取ったということになるし、アイツに限ってそれはないだろ。うんないわ。他人の空似だわ。」
俺はそう言って笑い飛ばす。
すると問川が俺にヘッドフォンを渡してくる。
「これ動画も付いていて声は加工されてないから聞いてみてクレメンス。」
そう言われたのでヘッドフォンを装着する。
すると問川は動画を再生した。
『オラっメス豚ァ!テメェに付けられた傷が今でも痛むんだよ!!ぜってー孕ませてやるからなァ!!』
『い”や”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”♡助けてぇ♡助けて達郎ぉ!私、犯罪者の子供作らされてる!妊娠させられちゃうよぉぉぉ♡おっ”、おっ”おほぉおぉぉおおおおお♡♡♡』
「これゆきかぜやん。」
聞いた声はどう考えてもゆきかぜだった。
達郎とか言ってるし。
えっ、マジか。
里での期待のホープがこれとかえぇ......。
これ任務失敗してんだろ。
どんだけヤバいんだよその任務。
「やっばすげぇ喘いでるwこれちょっとエロイな。後でUSB入れてくれよ。てかこれ達郎見たら発狂するだろwww」
半笑いの智一。
確かに幼馴染であるので気の毒だし、あれほど強力な対魔忍であった彼女がこんな状態になっていることに驚きだ。
だがそれ以上に、今まで里で見下されてきた分、内心仄暗い感情がないわけではない。
取り敢えず今日のおかずにしよ。
そう心の中で決めた。
すると問川が真顔で口を開く。
「まだ見るのをやめるのは早いですぞ。最後まで見ろよ見ろよ。」
そう言われるので外そうとしたヘッドフォンを装着し直す。
すると動画の場面が変わる。
『へっへっ...なんだコイツ壊れちまったのかぁ?』
『そりゃあんだけ詰めたんだ。もう頭の中ウンチ一色だろ?』
二人の目元の隠れた男がニヤニヤとした笑みを浮かべている。
そしてその真ん中で苦悶に顔を歪めながら蹲踞で震える黒髪の女性。
その姿はどこか見覚えがある。
おいおい....嘘だろ。
『おい豚ァ...出してぇか?』
『出したい!出じたい!出させてくれぇ!!』
『なら一緒に連れてきたチビにガキ仕込んでも良いよなぁ?』
一緒に連れてきたチビ。
それはきっとこの女性が自分の予想から反していなければゆきかぜのことだろう。
すると女性は勢いよく何度も首を縦に振るって声を上げる。
『良い!良いぃ!幾らでも仕込んで良いから!ゆきかぜにはいくらでもぉ!子供産ませていいからぁ!!!だからお願い!出させてくれぇぇぇ!!』
『おらっ!なに生意気な口聞いてやがる!』
『自分の下の世話も出来ないんでちゅから赤ちゃん語使うのがマナーでちゅよ~』
一人が激昂して女性の尻を思いっきり叩き、もう一人がおちょくる口調で煽る。
すると女性が尻を叩かれて舌を出す。
『あっ..お、お願いひぃぃ.....出させてほちいでちゅ!ゼリーブリブリしたいでちゅぅぅ~♡♡♡』
すると男は下卑た笑みを浮かべて女性の尻のプラグに手を付ける。
『それじゃ3・2・1でいくぞ?3..2.....』
その瞬間、プラグを外す。
1が来るまで外さないと思い込んでいた女性は一瞬呆けた顔をした後、メス鳴きする。
『おぉぉおおおおぉおおおお♡んぎゅいぃぃいいいいい!おっ、おっほ♡ほぉぉおおおおおおおお♡♡♡』
その声と共にピンク色の透き通ったゼリーがチューブ状にお尻からでゅるりと出てくる。
そしてほかほかと湯気を発しているゼリーを出し切るとだらしなく舌を出したまま地面にうつ伏せに倒れ伏す。
『やっべw手が滑っちまったwww』
『おいおい出した物はちゃんと食べろ?教えたこともやるんだぞ?』
そう言うとゼリーを皿にのせて、スプーンで口に運ぶ。
そしてその女性に口いっぱい食べさせると女性は口を開いた。
『あ、あにゃるゼリーおいちぃ....た、たつろー♡お姉ちゃんのブリブリゼリー見てくれたぁ?い、いえーい!ぴ、ぴーしゅ☆』
そして女性はあほ面でピースした。
この人....凛子さんじゃん。
頭の中が冷えていく。
初めて知ったよ。
怒りでスッと頭の中がクールになるなんてな。
「おい....なんだこれ。お前はこんなものを見せる為に俺を呼んだのか?なんだこれは?」
俺が問川に目を向けると彼は首肯する。
「なにって任務に失敗した二人が調教されているのをネットサーフィンで見つけたから呼んだんだが。」
そう言う問川に掴みかかる。
「ゆきかぜはまだしも凛子姉にこんなことしやがって....絶対に許さねぇ!!!」
「ぼ、僕にやつあたりはやめて欲しいでぶ!それにただ見せる為に呼んだわけじゃないンゴ!!」
「ほう....じゃあなんのつもりだ。」
手を離すと首が絞まっていた問川は呼吸を整える。
「ふー、これのタイトルは調教日記でふ。ならば日数が進めば進むほど調教が進むのは道理。そして二人は任務に失敗しているであろうことはこの里の人は誰も知らないハズですぞ。ならば校長にこの映像を見せて助けを派遣してもらうのが今ここにいるワイらが出来ることやないんか?やから二人で言いに行こうや!一人じゃアサギ先生と話すなんて無理や。」
なるほど。
確かにそれは良い考えだ。
だが......
「凛子姉の痴態を他人に見せて、もし里に戻ってきた時に居づらくなるんじゃ....」
「言っとる場合か!本当に好きだったなら助けを呼ぶのが一番の貢献ですぞ!!」
問川が俺の目を見つめて真摯な表情で言う。
そうだな.....。
「お前の言う通りだな。行こう。」
「ふっ....そう言うと思ったナリよ......。善は急げ!今から行きますぞ~!!」
なにカッコつけてんだ。
だが俺たちの働きかけで凛子姉を助けられるなんて。
こんな機会あるんだな。
なんとなく感慨に耽りつつ、家を出て学校に向かった。
「ゆきかぜ....姉さん!出るッ!!」
散らかった薄暗い部屋で一人の少年がPCの前に座っている。
ティッシュを捨てるとベッドに横になる。
「......寝よ。」
その目はなんの望みがないと言った様子で虚無を湛えていた。