白いウサギは人肌に溶ける~執筆中=彼氏持ちレフィーヤ光のNTRストーリー 作:37級犬築士
聞こえる、いろんな人の声が
街の喧騒、聖夜に浮かれた人々や神々、その騒がしい声が、何度も近づいては過ぎていく。けど、その音はどこか遠く、まるで一枚何かを隔てているからだろうか
それに、何か小刻みな揺れを感じる。ガタガタと揺れる何か、けどそれが苦ではない。
僕を支える誰か、柔らかく受け止めて、負担にならないように体をさすっている誰か
「……おかあ、さん」
「あぁ、そうだ。ようやく目を覚ましたのだな」
微笑み、そう言葉を返す美しい女性、アルフィアさんだ。
体には何か布団のようなものがかかっていて、見渡すとここは小さな部屋、ではなく恐らく馬車の中
「あの、その服」
「そうだな、だが気にしなくていい。馬車の中とはいえ、外は寒いのだ。運転手、そろそろ」
「へ、へい」
「ベル、支払いを頼む」
「……あ、はい」
親切で、気を使って、優しくて格好つけるけど
この人、一文無しだと思うと、なんだか締まらない。
……まあ、お金はあるからいいんだけど
第二級冒険者として日々稼ぐベルにとって、多少の散財は一切苦ではなかった。
〇
喫茶店でのことはよく覚えていないけど、アルフィアさんは問題ないといった。深く聞こうにも、なんだか圧で聞く前にこっちが黙ってしまう。だから、とりあえず今は忘れることにした。
「ベル、もう少しいいだろうか」
「……はい、でも次は」
「バベルの方まで、街の賑わいを感じたいんだ」
日が暮れるまで、もう少し街を見ていたい。そう、アルフィアさんは告げる。
「……思い入れ、あるんですか?」
ふと、気になってそんなことを聞いて見る。
今日の行脚も、振り返れば道すがら多くの冒険者を見ていた。冒険者の寄るお店や露店を、どこか懐かしむように見ていた。
やっぱり、この人は
「おかあさん、は……その、オラリオで何をしていたんですか?」
冒険者だったのかな、そんな好奇心で、つい一言
返答は
「……冒険者だよ。今の君と同じ」
「!」
さし伸ばした手、最初のあれを思い出して少し身構えたけど、でも手を取った。
今は違うと、すぐに理解した。
「ふふ、しっかり握っていてくれ」
「……ぁ」
「昔語りをするには、ここは少々騒がしい」
足の行く先は変わる。アルフィアさんが踵を返すと、僕も追従して後を行く。
握った手からは嫌な感情は伝わらない。怒ってはいない、そう思えるだけまだ安心できる。
× × ×
「……ベル、すまないな」
「い、いえ……でも、こんな場所でいいんですか」
「……あぁ、最後はここに来たかった。なんせ、ここなら私の見たいものが一望できる」
「それは、そうですけど……へくち」
寒い、なんせここは、アルフィアさんの見たいものが一望できる場所。つまり、このオラリオを一望できる場所。
城壁の上だ。観光客向けに置かれた城壁の上にある展望台。だから雪は降るし、風もあるから
「……へくち、うぅ」
「ふふ、すまないな……ほら、もうすこしくっつくといい」
「……」
いつもなら遠慮する言葉を使うのだが、寒さには負けてベルはアルフィアの言葉に従った。
この場所は展望台、天窓はあるが、吹き曝しで、木製のベンチも暖かいわけではない。温もりを求めるには
「……ほら」
「ん、えっと……こうですか」
開いたコートの中、大きめのファーコートは、ギリギリベルの体を収納する。
ベンチで二人、くっついてオラリオを眺める。アルフィアさんの体温は、寒空でも十分に温かい。
「……あの、もう少し」
くっついても良いですか、そう口にする。最後の方は、恥ずかしさで言葉がかすれてしまった
「あぁ、構わないとも……ほら、腕も、おっぱいに当たってもいいんだ」
「!……あの、口にするのは」
「おや、好きではなかったか?」
……触ったり、吸ったりしたのに
「……ぅ」
羞恥で真っ赤に染まる。冬の寒さが気にならないくらいに
「ふふ……君は、本当に」
「!」
ぽふんと、頬が柔らかい枕に乗った。
ぽんぽんと、頭を撫でられながら、胸の温度を頬に感じて
「……アルフィア、さん……これは、いいんですか?」
「いいんだ、それに……アルフィアさんじゃなくて、おかあさんだ。外での約束は、忘れないでくれ」
「はい……ぁ、はい」
羞恥が抜けきらない。落ち着く間もなく、色んな刺激が心を揺さぶる。
熱を、柔らかさを、アルフィアさんの体を感じ取って、甘える行為がどこかいけなく思えてしまう。
「……綺麗だな」
「へ?」
「街の景色だ。景色は綺麗、君は可愛い……ふふ」
「……うぅ」
「ベル、さっきの質問だが、答えはシンプルだ。君と同じ、私も冒険をした。いっぱい、悲しいことも楽しいことも、だから同じだ。私は、良い冒険をしていた」
だが、と
「……最後だけは、君とは絶対的に違う」
「?」
「7年前、それが私の終着点だ。だから、結局は決定的に違うんだ。君は光の道を、私は暗い闇だ」
「おかあ、さ……ッ!」
……ぽつり
落ちた、翡翠と銀のオッドアイから、今僕の顔に温もりが落ちて来た。
君と同じ、最後は違う。
その言葉は、ひどく重い、静かに言の葉を紡いでもその重みだけは、拭えないものだった。そう、僕には感じ取れた。
「ごめんなさい、アルフィアさん」
「……ッ」
「昔の話、やっぱりしたくない、ですよね」
出で立ちを直す。胸から顔を離し、僕は隣に座って、顔を合わせず、静かに
「ごめんなさい。だって、言いたくないこと……言わせている気がして。その、今さらですけど」
聡明である自身はない僕でも、少しはその可能性にたどり着く。もし、奇跡がこの世界に在って、世界が思ったよりも、あり得ないことを許容する幻想があるなら。
このバカげた推理が、答えになりうる可能性があるなら
「……ベル」
「アルフィアさんは、僕の……ベル・クラネルの」
……ぼくの、そうぼくの
……この人が、僕の知らない、家族の『……ただの、ただの女だ。君とは初対面の、ただの他人なんだ』
「!」
『君は良いんだ! 君は、私に何をしてもいい。私には、拒む権利はない』
……僕は、この人に
「…………ッ」
強く、ズボンを掴み、そして歯を食いしばった。
強く衝撃を受けた。センチになって、たかが好奇心で、僕はいけないことをしようとした。真実を求めても、僕もこの人は、何も
……何も、良くはならないのにッ
「ごめん……なさい」
「……ッ」
アルフィアさんが驚いた顔を示す。予想とは違った、そんな反応をしている。きっと、僕が真実を言い当てるのだと、そう身構えていたのだろう。
だけど、もう僕には
……言えないッ
あぁ、理解してしまう
この人は、僕に関わり深い人、でも、それを知って、口にして、広げてしまうのは
「……ごめんなさい、アル……おかあさん」
きっと、傷になってしまう
「ベル、君は……」
心配そうに、そして申し訳なさそうに、僕の手をそっと取る。
気づけば、僕の目は涙に溢れていた。イケないことをしようとして、いたたまれなくなって、自分が恥ずかしくなった。
そうだ、この関係はとても危うい。
僕は綱渡りをしている。ひどく不安定な綱渡り、失敗すれば
「――――ッ!」
……予感がする、この人の存在は泡沫で、だから
「……ッ!!」
真実よりも、大事なことがある。今僕にとって、この人の出会いはもう、消し去ることはできない、絶対に消したくない。
追及することは、もうしない。この人は、僕に優しくしてくれて、母性があって、ただ素敵な人。ただ、それだけでいい
「……ベル、どうしたんだ……泣いているぞ。どこか、痛いのか」
「さあ、痛いかもしれません……だから」
……おかあさん、そう呼べるだけで、もういいんだ。だからッ
「!」
「おかあさん、お願い……ッ」
腕に抱き着き、すがるようにアルフィアさんを求めた。
「……いいのか、聞かなくて」
「もう、いいです。だって」
『聞けば、あなたは消えてしまうかもしれない』
「……そうか、そう思うのか、君は」
「だから、僕は」
……ぎゅぅ
「傍に、います……だから、あなたも、いなくならないでください」
泡沫の夢、もしこの奇跡がそんな脆く儚いものであるなら、これ以上の詮索はしたくない。するべきではない
もう、僕は
「……ッ、僕は」
「!」
抱きしめる。胸に顔をうずめ、強く強く抱きしめる。
世界は寒い、冷え切っている。だけど、人の熱はどこまでも暖かい
「温めてよ……おかあさんッ」
「――――ッ」
返答はない、ただ、この人もまた僕を強く抱きしめた。
深く、深く、寒空で抱きしめ合い、互いの熱を感じた。今、こうして感じあって、ようやく理解した
……最後に、ここに来たかった。
「!」
消えるつもりだった。きっと、この人はもう、僕の傍から離れようとした。
だけど、そんな願いは聞き届けたくない。叶えさせたくない
「……ベル」
囁いた。感情がこもって、重く詰まった声が耳に届く。
「ベル、聞かせてくれ……君の願いを、私に」
「……」
「わかった、もういなくならない。ずっとそばにいる、だから、教えてくれ」
「……ッ」
願う、叶えて欲しい事があるなら
「……ん、んく」
「ぁ、こら……ベル」
顔に触れている胸、暖かくて、気持ち良い場所。
熱が欲しい、冷えた体を癒してくれる、そんな熱が
……わからない、言葉にできない、でも
抽象的な願い、漠然と抱いたこの気持ちを、僕は、そのままに
「……ぼくを、あたためて、ください」
地味にルート分岐を示唆してみました。ベルはアルフィアの正体よりも、今を生きる喜びや幸せを選びました。
つまり、物語はHルートに突入。次回よりエチエチ前戯が始まりまして早漏