※この作品はR-18です。

白いウサギは人肌に溶ける~執筆中=彼氏持ちレフィーヤ光のNTRストーリー   作:37級犬築士

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 サブタイ微調整、意味より語呂の響きで変えました。





(2) 遠くて近きは男女の仲、レフィーヤ嬢は打ち解けたい

 

 多くの宿が連なる温泉街で、その建物が最も際立って目立っていた。

 

 坂を上りたどり着いたのはここで最も大きく、そして人気の上位に立つ温泉宿。極東の趣ある大開の門を抜ければ、まるで王族の豪邸を思わせるほどに荘厳な建物が身構えている。

 

 木造の建築で、瓦や柱、何よりガラス越しに放つ暖かな光は見るモノを惹きつける。全て、絵で見た通り一度は来てみたいと妄想を沸き立たせる見事な仕様である

 雪が積もるこの季節で無ければ、もっと庭園の細部まで見えていたのだろうが、あいにくこの豪雪で周囲は一面白の凹凸ばかり、だがそれもまた趣を覚えてしまう

 

 

「……ふぁ、はくち」

 

 

 愛らしいクシャミが出てしまった。日も暮れ夕日が差し込む時間ではあるが、この雪空では薄暗く夜が少し早く来てしまう。

 

 

……はやく、入らないと

 

 

 せっかくの温泉宿で、風邪をひいてしまっては元も子もない。レフィーヤは光に誘われる羽虫のごとく、ふらふらと光に呼ばれ門を押し開けた。

 

 

 

   ×   ×   ×

 

 

 

「ご予約は承っております。さ、お荷物の方を」

 

「……はい」

 

 入って早々に、着物を着た従業員からの接待が待ち受けていた。

 

 チケットを提示し、ここの旅館と連携した馬車を用いたからか、向こうはレフィーヤの顔を見るなりすぐに接客を始める。慣れないかしこまった振る舞いに、レフィーヤは戸惑いながらも荷物を受け渡す。

 

 

……これが、極東のオモテナシッ

 

 

 誘導されるままに、奥のエントランス受付に並ぶ。列で待つ間に、レフィーヤは周囲に視線をめぐらした。

 

 目に刺さるほどのまばゆい明り。雪空で冷えた肌をほぐす暖炉の温もりが血の巡りを元に戻す。証明も暖房器具も、何もかもが目新しい文明の利器で、オラリオの標準ともいえる文化色がちらほらと目に留まる。

 

 文化の入り混じる旅館の風情、何処かの神が言ったかレトロで、且つハイカラな仕様。意味は知らないが、どことなく雰囲気の良さだけは素直に感じ取れる。

 

 

「……」 

 

 

……やっぱり、良い思いなんですよね。得してるんだ、私

 

 

 

 誰もが行きたいと口をそろえる有名な温泉郷で、しかもここの宿は最も値段が高い良い所。まあ高いとはいえまったく庶民の手が届かないと言う訳でもないが、それでもそれなりの額だ。

 

 

 

「……しちゃってますね。ふふ」

 

 

 列を進める。自分の番でチケットを提示、確認が取れればレフィーヤはそのまま回れ右と、目指すは部屋。荷をほどき、浴衣に着替え、その次はさっそく入浴か

 

 ここまでくれば気分は高揚する。一人旅という切なさも今は姿をひそめ、レフィーヤは気の良いままにロビーを後にする。

 

 

「お風呂、それも極東の……楽しみだなぁ」

 

 

 する、はずだったが

 

 

 

 

……あの、お客様

 

 

 

……すみません、どうにか空きは

 

 

 

 

……残念ですが、当旅館としては対応を出来かねます。

 

 

 

 

……そんな、そんなぁ

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 聞き覚えのある声に足が止まる。まさか、まさかいるはずが

 

 

「そんな、せめて空き部屋はッ」

 

「申し訳ございません。他のお客様の為にも、例外を作るわけにはいきません」

 

 

 

 

「……うん」

 

 だが、振り向くとそこに彼はいた

 

 

……ベル・クラネル

 

 

 何か悪いことをしているわけでもない、ただ偶然の出会い、というのだろうか

 

 しかし、額に手を置きレフィーヤはため息を吐いた。またかと、何故そうも自分の近くに現れるのだと。さすがにもう顔を知り合ってそれなりに月日は経つから、面白くない相手とはいえ別段大嫌いというほどではない。ただ、本当に面白くない相手なのだ、それがレフィーヤにとって今の彼に対する印象だ。

 

 

 

……なにか、困っているみたいですね

 

 

 

 向こうは気づいてない。このまま立ち去るのも後ろ髪が控えるだろうから、レフィーヤはさりげなく聞き耳を立ててみることにした。

 

 聞くところ、そして彼の手元を見るに、どうやら

 

 

 

……偽の無料券と知らなくて、僕は

 

 

 

 

……申し訳ございません。御気の毒とご理解します、ですが部屋をご用意することはできません。それと、シーズン中であれば、他の宿も同様かと

 

 

 

 

……それって……もう、帰るしか

 

 

 

 

「?」

 

 聞き耳を立てていれば、話はなんともあらぬ方向へと進んでしまった。

 

 

……私と、同じ

 

 

 貰い物のチケットで一人旅行、のようらしい。周囲には彼と付き添う仲間たちはいない。

 

 自分と同じく、一人この地へと

 

 

「……」

 

 

 

 

 ベル・クラネルが困っている。いつもなら遠めに見て、飽きれ言葉の一つでも吐いてその場を去るはず、そこまで積極的に、あの男とかかわりを持つ気はない。そう割り切って、踵を返しこの場をされればどれだけ楽か。

 

 だが、現実にはそうできない。そうするべきではないと、迷いがある

 

 

 

「……ッ」

 

 

 肩に下げたバッグ、その中にはもう一間のチケットがある。この宿の無料券、本来であれば部屋は二人部屋であったはず。だが、今はそこに一人、一人だけで使うのだ

 

 相部屋、それを提案すれば、彼は

 

 

「……そんな、こと」

 

 

 

 人として、善意を施すことは当たり前だ、しかし個人のしがらみをそれだけで取り払えればどんなに人は容易いことか

 

 はっきり言えば、レフィーヤにとってベル・クラネルは親しい友でもなく、しかし憎むべき敵でもない。呉越同舟とまでは行かなくとも、自分と彼の関係はマイナス寄りと自覚している。

 

 

 

 助けるべき、レフィーヤの根っこは今そう判断してしまっている。

 

 

 

「――――ッ」

 

 

 ため息を吐いた。こんな運のめぐりあわせに在る自分の身を、今レフィーヤは憐憫にさえ感じている。

 

 

 

……ほんと、嫌に縁のある人です。けど

 

 

 

「……仕方ない、ですね」

 

 

 

 ため息を吐く、大きく吐いた息で反動を得て、レフィーヤは思い腰を上げることにした。

 

 

……ああもう、何だってこんなこと

 

 

「あの、すみません!」

 

 

 

 

 

〇

 

 

 

 

 

 チケットを貰った。福引で得た温泉宿への無料券、でも僕には一緒に行く人はいなかった。お金がないわけじゃなくて、単純に予定の問題で、皆都合が悪かったのだ。

 皆用事があって、神さまもオラリオから離れられず、惜しむ声を上げるも皆最後は背中を押した。せっかくだから、体を休めてくればいいと

 

 仕方ない、そう割り切って一人旅行を決意した。少し寂しいけど、お土産を持って帰って皆を喜ばせればいいと、そう切り替えて、僕はたどり着いた。

 

 

「……ッ」

 

 

 

 着物のお姉さんに案内されて、たどり着いた部屋はなんとも広く、外の景色もきれいに映えている。湖畔の傍に立つ旅館で、ここは湖に面したスイートの部屋だから、その景色は余すことなく一望できる仕上がりになっている。

 

 

……外のデッキ、露天風呂もあるんだ

 

 

 荷物を置き、ガラス張りの面に近づき外を一望する。外は雪も止み、夜空には月明かりが灯っている。下の街の灯も合わさって、なんとも暖かな夜景が一望できるものだ。

 

 

 

「すごい、本当に良い部屋ですね」

 

「……」

 

「あの、レフィーヤさん?」

 

「……調子に」

 

「へ?」

 

 

 うつむいて不自然なほどおとなしく、しかしレフィーヤは最小のモーションで投球を

 

 

「調子に、乗らないでください!!」

 

 

「はえ……へぶっ!!」

 

 

 命中、衣類やらなんやらが詰まったレフィーヤのバックがベルの顔面にスパーキン

 

 その光景を前に従業員は戸惑いを見せ、そして何を察したか後ろず去りで静かに立ち去る。痴話喧嘩が始まった、部屋や施設の説明はそのあとにと、懸命な判断である。だが、後にそうした客への気遣いが、また問題を起こすとは知らず。

 

 

「……が、レフィーヤさん……ひどい」

 

「ふん……借りを作ってるんです。これぐらい黙って受け止めてください、ふん!」

 

「……え、えぇ」

 

「まったく、なんで私がこんなこと」

 

 おもしろくない、そう何度も一人言を並べて、爪をギリギリと噛んで不機嫌極まりない様子だ。

 

 

……仕方ないとはいえ、ベル・クラネルと同室なんて

 

 

 

「……あの」

 

「は、はい!」

 

「言っておきますけど、あくまで道・徳・的・な配慮ですから、あなたと一緒の部屋に泊まりたいなんて、勝手に勘違いしないでくださいねッ」

 

「し、しません!絶対しません!!」

 

「部屋のルールは私が決めます。もし破廉恥なことをしてみてください、その時はロッジに放り出します!寒空でジャーベットにしてやります!」

 

「ひ!」

 

「わかったら返事!」

 

 ぴしゃりと、その手に鞭があれば今まさにその音が響いたであろう、そんな形相にベルは直立不動で宣誓を余儀なくされる

 

「は……はい、レフィーヤさんの言う通りにします……です、から……なにとぞ、なにとぞぉ」

 

 

 畳みかけるレフィーヤの声に、ベルは若干涙目にひざまずいている。土下座とまではいかないが、正座でひたすらに頭を下げて背中を小さくしている。

 

 見下ろすようにふんぞり返り、しかし感情を吐き出しきってしまったせいか、少し

 

 

「……ぅ」

 

 

 

……言いすぎ、ですよね。

 

 

 

 ふと、ガラスに反射して映る自分たちの姿が目に留まる。膝をつくベルの前にそびえたつ自分の姿、その構図は罪悪感を抱かせるに十分であった。

 

 

「……良くない、ですね」

 

 

 自分の悪い所が出てしまった。最近になって自覚はあるのだ。自分がベルクラネルに対してきつくあたりすぎることを、レフィーヤは内心で自覚し、そんな自分を良くないと認めている。

 

 そう思えば、自分がしていることは 

 

  

「…………ベル、クラネル」

 

「?」

 

「もう、いいです……別に、怒っているわけじゃ……いや、今怒りましたけど、もういいです。ほら、こんなぐらいで泣かないでください」

 

 ベルに近寄り、ハンカチで顔を拭ってやる。触れた頬は寒空で冷え切っていて、微かに震えている。

 

「あ、そんな……汚いですから」

 

「……ごめんなさい」

 

「!」

 

「別に、あなたが悪いわけじゃないのに……私、別に一人にこだわっているわけでもないんです。」

 

「……じゃあ、ロッジで寝なくても」

 

「ほ、本気にしないでください! 私、あなたに対してそこまで……その、嫌いでもないんです。あなたは、別かもしれませんが」

 

「?」

 

「だって、私あなたに対してあたりが強いし……でも、それは本心じゃなくて、ただ……ただその」

 

「……その?」

 

「うぅ……それは」

 

 

 言葉に詰まる。首をかしげ言葉を待つベルに、どうしてかレフィーヤは続きが出せない。

 

 さりげない流れで、自分がベルに対してどう思っているか、そう口にする行為にためらいが、恥じらいが沸き起こる。

 

 

……な、なに意識してるんですか……こんなヒューマン、別になんでも 

 

 

「……えっと、レフィーヤさん?」

 

「!」

 

 顔が近い、さっきまで涙を浮かべていたくでに、あどけなくて綺麗な顔で、宝石のようにどこか蠱惑的な瞳をこちらに合わせてくる。

 

 手に力が入る、前々であればそのまま紅葉を張り付けていたが、傍に近寄ったのも自分の責任

 

 手を指し伸ばしたのも自分、そう全て自分だ

 

 

 

「……別に、何も」

 

 

「?」

 

 

 

 部屋に招き、同室になったのも自分の責任

 

 そのことを実感させられる。我ながら甘いと、よくよく考えて選んでいなかったとレフィーヤは痛感する。ベル・クラネル、彼と共に過ごすこの旅行、その意味を

 

 

 

「……レフィーヤ、さん」

 

 

 

 オラリオから遠く離れた地、知る者は誰もいない、ただ彼一人を除いて

 

 誰もいない、誰も知らない、誰も手を出せない。この地で、レフィーヤ・ウィリディスとベル・クラネルは、どうあがいても二人きりなのだから

 

 

 

 

「ぼく、察しが悪いから……たぶん、気を遣わせていると思います。実際、一緒の部屋になって、迷惑は掛かってますよね、男と一緒だなんて」

 

 

 

「だから、そのことは「でも、それでもレフィーヤさんは……手を差し伸べてくれました、だから」

 

「!」 

 

 

 まっすぐに、恥ずかしげもなく視線を合わせて、ベルは言葉を送った。正面から、混じりけの無い想いを

 

 

 

 

『ほんとうに、ありがとうございます……僕は、レフィーヤさんを嫌いになったりしません』

 

 

「!!」 

 

 

 臆面もなく吐いた言葉の一撃、それを食らってしまうのも、つまるところ

 

 

 

『レフィーヤさんは優しい人です。良い先輩で……できればもっと、仲良くしたいです。これは、僕の本音です』

 

 

 

 

 

「――――ッ!?」

 

 

 

 

 

 全て、自己責任である。どんなに不器用に接しても、彼は素直に、そして誠実に返すのみ

 

 逃げ場はなく、全て受け止めなくてはいけないのだ。なぜなら

 

 

 

 

 

……こ、こんな人と……一緒の部屋に

 

 

 

 

 温泉宿への宿泊、ベル・クラネルと同じものを食べ、同じ部屋で夜を明かす、そんな道を自分自身で選んでしまった故に

 

 

 

 

「bうfくぶdヴぇsfhrv「^@@\\^」

 

 

「れ、レフィーヤさん!!」

 

 

 湯に入ってもいないのに、レフィーヤの肌は真っ赤に染まる。湯気を拭き、壊れた脳でどこの世界にもない言葉を吐きながら、ただオーバーヒートしたまま揺れるだけ

 

 肩を掴み、大丈夫かとゆするベル、だがそれが余計にレフィーヤを赤く染めていると知らず。

 

 

「ひゃ!」

 

 

「熱が、ああ風邪でも引いてたら大変です!今すぐ人を……へぶ」

 

 

「……ひゃ、あぁ、ふぇ?」

 

 

 戸惑い、てんぱって、結果レフィーヤは無心で手を突き放った。偶然にも握った握り拳、うち放った角度が悪く、ベルの顎をピンポイントにかすめる

 

 

「……な、んで」

 

 

 ばたりと、脳が揺らされベルはノックダウン。ゴングがあればけたたましく鳴いていることだろう

 

「………へ?」

 

 訳も分からず、困惑したレフィーヤがしでかしたことに気づくまでもうしばらく。

 

 

 

 

 

 

 雪降る秘境の温泉宿、訪れたるは二人の若者。偶然の重なりで合わさった二人の出だし、それはなんともテンポの悪い始まりであることこのうえない。

 

 ベル・クラネル、そしてレフィーヤ・ウィリディス、二人の今の関係はそんなものだ

 

 

 だが、それもいつまでのことか

 

 

 二人だけ、邪魔する者は誰もいない。環境は十分満たされていて、積み上げた関係性もすでに上々、つまりは

 

 

 

 

 

「へ、あれ……私、何を」

 

「あ、レフィーヤさん……良いパンチ、でしたよ」

 

「え、えぇ……私なんで、ちょっと赤くなってますよ……氷、氷!」

 

 

 

 

 

 

 

 意識してるとか、曖昧で言葉にできていないでいる。そんな青い春はずっと続くものではない。男女の関係は、ふとしたきっかけで進展して、そして場合によれば至ってしまうものなのだ。

 

 遠くて近いは男女の仲、結ばれる結果は合縁奇縁と皆口をそろえていうもの。だから、きっかけさえあれば……きっかけ、さえ

 

 

 

次回に続く

 




今回はここまで、スローペースでゆっくりと

感想評価などあればよろしくお願いします。次回の投稿も早めに、できればいいなぁ
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