白いウサギは人肌に溶ける~執筆中=彼氏持ちレフィーヤ光のNTRストーリー 作:37級犬築士
リフトに揺られ昇り切った山の尾根、を見上げるぐらいの、中腹ぐらいの高さで僕たちは講習を受けた。ここの旅館で止まった人は無料で受けられる簡単なスキー講習、僕とレフィーヤさんは慣れない装備に四苦八苦しながらも、スキー滑りなる者の基本を習得した。
僕たちがいるここ、整地された雪の斜面が広く見渡せる場所、ゲレンデというものらしい。スキーという遊びの為に馴らされた雪の丘、寒さに息が白くなるけど体はずっと暖かい。
風邪を切って、雪面を爽快に滑っていく、ただそれだけがとても気持ちいい。初心者の基本である内またの滑りなんてのはとうに忘れ、僕はスピードを全開に我を忘れて突っ走る。
後ろから叫ぶレフィーヤさんの声も気に留めず、目標は少し盛り上がった雪の上り坂。発射台のようになっていて、その用途は聞かずとも理解できた。
「はッ!!」
勢いよく滑り出し、盛り上がった雪の坂を駆けのぼって空を舞う。
予想以上に高く飛んで、二転三転と入れ替わる天地の中、僕は思考もせずに体だけが自動で動いていく。
捻り、周り、縦に二回転して綺麗に着地、左右と軽く滑って最後はブレーキ。
「――――ッ!?」
さすがにやりすぎたか、地に足を付けてゴーグルを外し、口元を隠すウォーマーを下ろした。
「「「「―――――――ッ!!?!?」」」」
「へ!?」
歓声、気づけば自分の周りを囲む他のスキー客が思い思いの言葉を贈る。
賛辞の声につい恥ずかしくなり、ネックウォーマーを深めにあげて顔を隠した。
……なんだろう、そんなにすごい事したのかな?
戸惑うベル、しかし公衆の面前でいきなりサプライズの曲芸、本人からすれば勢い余って飛んでしまったら勢いで出来てしまっただけのこと、しかしその勢いでやれてしまったという点こそ、やはり冒険者。チートステータスなのだとベルは理解せざるを得ない。
「……まったく、なにやっているんですか?」
「あ、レフィーヤさん」
集団の合間を縫って、雪を滑り歩きベルの元へ駆け寄る。
華麗に技を決めたスキープレイヤーへの視線から、今度は
……うわ、あの娘可愛い
……スキー上手い彼氏と、美少女エルフの彼女、出来過ぎかよ
「えっと……ぼくたち、そういうのじゃ」
「……ほら」
とんと、ベルの胸に甲で叩く。首根っこを掴んで、レフィーヤは連行するようにベルを連れていく。
「行きますよ。目立つことしないでください、恥ずかしい」
「……ぁ、ごめん」
「ふん」
不機嫌そうに、というのはいったい何にか
ベルは謝罪の言葉を繰り返すが、レフィーヤには届いていない。
レフィーヤの頬が赤く染まっている。それは寒さゆえか、またはほかの理由が
「……誰が……ですかッ、誰が」
「え、今何か」
「言ってません! もう、私よりも上手いからって調子に乗らないでください!」
わかりやすいツンデレ反応でベルを困らせる。だが、レフィーヤの怒り感情はただの八つ当たりでしかない
……だれが、恋人ですかッ
二人旅行、気の迷いでとんでもないことをしてしまったか、今更になって後悔じみた感情が胸中で渦巻き出す。
「……レフィーヤさん、レフィーヤさん?」
「うぅ、うるさ~~いッ!!」
「!」
× × ×
場所を変えて、二人は人気の少ないコースでまた滑り出した。
ベルと違い、レフィーヤは未だスキーに慣れていない。ベルはそんなレフィーヤに気遣い、インストラクターのごとく付き添って教えて、時折転ぶレフィーヤを起こして
「きゃっ」
「あぁ……怪我は」
雪の塊に足を滑らし尻もちを打つ。スキー板が外れ、顔が雪にまみれて少し哀れな姿だ。
スキーを始めてもう二時間、昼食を食べることも忘れて二人は熱中している。と、他人から見ればそう映るだろうが
「も、もう一回ッ」
「……ぁ、はい」
むきになって、意固地になったレフィーヤにベルは振り回される。同じ冒険者、体を動かすのは例え後衛とはいえ下手ではないはず、そう思い始めてみたウィンタースポーツだが結果は見え見え
どんくさい、不器用、レフィーヤは今朝の怒りも忘れ、ひたすらにポンコツエルフをベルに晒してるのだった。
「うぅ……どうして、レベル4なのに、恩恵があるのに!」
「それは、その……どうしてですかねえ」
「あ、今絶対……こいつ、ポンコツエルフだなぁ……面倒くさいなぁ…………もういいや、他の女に鞍替えしてやるぜ、みたいなこと思ってたでしょ!そうに違いない!!
「偏見、偏見が偏り過ぎてます!!あぁ、関係ない周囲の女性が離れていく……ッ」
痴話喧嘩は犬も食わない、実際はそんな理由から周囲の人間は遠のいてくのだが、そんなこと二人には知る由など無い。
「まったく、どうして私だけ……け…………」
尻もちをついて、悔しさから雪を掴んで、ふと
「…………ふひ」
「ふひ?」
不気味に笑みを浮かべたレフィーヤ、一体どうしたと思い顔を伺う。そこへ
「ぶべ!」
「……よしッ」
ギラっと輝く眼光、悪いエルフの顔を見せたと思いきやすかさず雪玉をスパーキング。ベルが驚きおののくところへ立て続けに追撃
「あは、ハハハ……真っ白け、髪の色、同じ、くくく、キャハハ」
「れ、レフィー……」
あっけにとられ、困惑するベルを他所にレフィーヤは子気味良く笑っている。
顔についた雪を拭い、ふとした思い出、ベルは
「えっと……えい」
「はは……あはは、くすす、べふっ!?」
スパーキング、軽く放り投げた雪玉がレフィーヤの顔面に炸裂。
鼻や髪に白い雪がこびりついて、それが可笑しくてベルは腹の奥のむず痒さを感じた。
「……ふふ、やりましたね」
「いや、レフィーヤこそ……って、おわ!」
飛び交う雪玉、慌てて回避しようにも雪に足がとられ交わしきれない。
新雪ゆえに痛くはないが、こうもされてはやり返さずにはいられない。
「……もう、容赦しないよ!」
「!」
勢いよく両手で雪をすくい、レフィーヤ目掛け放り投げる。
ばさりと、レフィーヤに降りかかる大量の雪、自分以上に真っ白に染まる姿はいけないことに痛快だ。
「きゃ!」
「えへへ、僕だってこれぐらい……って、レフィーヤ?」
「……」
「へ、まって……もしかして、どこか痛い所に」
「……ふふ」
「!」
飛び交う雪玉。またもやたらめったらと投げられる雪玉にベルは追われる。
「ちょ、ズルいですってレフィーやさん!」
「知りません! 引っかかる方が悪いんです!」
「……そんな、だったら」
追いかけ合い、たどり着いたのは平地。自然とスキーヤーの邪魔にならない場所を見つけ、互いに雪玉を急いで作り始める。
「容赦、しませんからねッ」
……パシュッ
「ふん、それはこっちのセリフです! えぇぇいッ!!」
……パシュ、パシュッ
ぶつけ合い、ぶつけられ合う雪合戦。互いに雪で真っ白になりながら、鼻面と頬を真っ赤に染めて無我夢中に笑いあう。
今朝のことなど気にも留めず、二人は周囲に仲睦ましいカップルの姿をさらすのだった。
次回またお風呂シーン