白いウサギは人肌に溶ける~執筆中=彼氏持ちレフィーヤ光のNTRストーリー 作:37級犬築士
ハイエロフ is リヴェリア・ママ!!
少し時間を置いてから浴場を出た。施設の食堂に立ち寄ってみたけどレフィーヤさんはどこにもいなくて、もう本館の方へ戻っているのかもしれないここを後にした。
雪の降る街を降りて数分、石階段を踏み温泉街の街並みを少し抜けて、またここへと戻ってきた。夕時の喧騒が不思議と遠く、すでに知っているこの場所がまたも異質なもののように肌で感じた。
「……ッ」
部屋の番号が書かれた扉、意を決しその戸を押し開ける。部屋の暖かい空気が、今は少し息苦しい。でも、その息苦しさは自分の心がそう感じさせるせいだ。部屋の空気は依然澄みきっていて、むしろ良い匂いとすら感じられる。
……匂い、花の
種類も知らない。だけど、淡く甘いその香りは女性の使う香料を含んだバスアイテムのものだ。
部屋の中で、木網とクッションで出来たリラックスチェアに腰掛ける麗人が一人。いつもはくくった髪を下ろしていて、湿り気の残る一本が頬に触れてひっかかっている。見れば見る程、その微細な情報全てがこの人の美麗さを称賛する要素となっていくのだ。
「……ごめん、なさい」
「?」
「ごはん、食べてないですよね。わたし、そのこと忘れてすぐに部屋とか言うから」
恥ずかしそうに、もじもじとしながら言うのだ。頬を赤くする様を見るだけで、こっちの心は無条件に突疲れて震えてしまう。
「……その、今さらですけど、食べに」
「へ、あぁ……その、勝手ながら僕」
こういうものを、と持っていた袋を差し出す。
「!」
「買っておきました。夜食用の、その……おにぎりと、お惣菜にスープ。それに、飲み物も」
「……な、じゃあそれで」
席を立つ。掘り炬燵のテーブルへと移動し、レフィーヤさんは
「!!」
近づいた。無言でうつむいたまま、すっと僕の手から袋を取る。
気恥ずかしさ、気まずさ、緊張でいたたまれなくなっているのがわかりすぎてしまう。
「じゃあ、食事にしましょうか……ぁ、お金は後でお返しします」
「……あ、はい」
不思議、そう思わざるを得ない。
今ここにいるのは、今朝のことの清算を果たすため。悪いことをした僕が、レフィーヤさんに誠意をもって謝罪するはずだと思っていた。思っていたし、それが正しくてするべきだと心していた。
……レフィーヤさんは、怒っているはず、だよね
前までの関係ならそれで成り立つはずが、今はその想定を何度覆したことか
関係は変わっている。変化を望もうと望まなかろうと、僕とこの人の今までは遠い過去なのかもしれない。今、この旅館で共にいる間、僕とレフィーヤさんは知人なのか、友達なのか……親友なのか…………それとも
「……食べましょうか。お腹、減っちゃいましたし」
「え、えぇ……いただきます」
僕とレフィーヤさんの関係、それは想定よりも
ずっと、上の場所なのだろうか、と
× × ×
「ごはん、ありがとうございます。あの、ゴミは片付けますね」
「……ありがとうございます。」
食事、特に会話も無く、急ぐことも無いまま平穏に時間が過ぎていく。不思議なほどに空気は穏やかで、
……話、しないのかな?
今朝がたの件、打ち明けるタイミングだったはずなのに、どうしてかレフィーヤさんは大人しい。避けている?のなら
……僕から、言わないと
「……あの、レフィーヤさん」
「!」
呼び止める。袋を包み、未使用のキッチンスペースへと赴く途中だ。
立ち止まるその姿、僕は足跡を追って、一歩手前で踏み止まる。声の届く位置、レフィーヤさんと僕だけが存在する。床の畳が偶然にも、正方形に僕らを閉じていた。
「まず、言わせてください」
「……」
振り向かず、無言でただ待っているような、そう見えた。なら、言葉をこのまま続けよう
息継ぎをした、そのついでに呼吸も整える。意を確かに決して、思いを正確に
「……昨日、の夜。僕は、悪いことをしました。」
誘われた、それは良いわけでしかないから省略する。
「寝ているレフィーヤさんの、隣に……入って、寝てしまって。ごめんなさい、嫌な気持ちにさせたのに……今の今まで、謝らなくて、すみませんでした。」
頭を下げた。けれどもレフィーヤさんはまだ動かない。下げた頭のまま、僕は続ける。
「いけないと、思っていたのに……離れられなくて、よくないことなのに、ダメなことなのに」
頭では理解していた。是非を承知したうえで、何故か、それは
……僕は、レフィーヤさんを抱きしめて…………それで、僕は
「……ッ!」
「なんで……ですか?」
かかる声、ふわり通した花弁のように、僕の頭に手の平が降りてきた。
「!?」
下げた頭に、押し上げる力がこもる。
触れた手の感触、少し冷えた肌の温度で、レフィーヤさんの指の細さ、手の平の形、全てが理解できてしまった。
「……どうして、離れなかったんですか。わかっていたんですよね、イケないって」
「ぇ……それ、は」
何も反応を示さない、さっきも触れる気配も無かった。けど、またあの時と同じだ。
混浴場で、僕を見下ろしていた時の、どこか艶のある静かな様子。レフィーヤさんは僕に面を上げさせて、その両手が頬に触れて真っ直ぐに視線を合わせんとしている。
見てしまう。レフィーヤさんの尊顔は、息をのむほどに美しい。
「……ッ」
「理由、あるんでしょ……なら、聞かせてくれないと、フェアじゃないですから」
何をもってフェアなのか、しかしまたもレフィーヤさんは黙している。回答を待って、逃げる選択肢は与えない。
言わないといけない。あの夜、僕が感じたことを、全部
「……感じたこと、だけなら」
見つめ合う距離、畳で区切られたこの境界は脱出不可の結界となった。羞恥で加速する鼓動が息を乱し、どうにか落ち着けんと自分で胸を抑えた。
レフィーヤさんは待ってくれている。怒りも、動揺もなく、むしろどこか期待のような色が、その奥の感情にあるようで
「……ぼ、ぼくは」
言わないといけない。なら、鮮明に、そして明確に、連ねる言葉の為にもあの時のことを掘り起こさなければ。
隣へと手招かれ、一緒に包まれてみればすごく暖かくて居心地が良くて、なにより
「……気分が、良かったんです。こんなこと、良くないと思いますけど、でも」
布団一枚、しかしそれで保たれた人の熱はなによりも暖かくて、その暖かみは素直に体へと溶け込んできた。
……抱きしめて、引き寄せて
胸板に乗る額の感触。腕の内側にいてくれるという満足感。あの心地は、今でも忘れられない感動を覚える。
「僕は、したくてしてました。止めたく、無かったんです」
「……」
「レフィーヤさんが、暖かくて、柔らかくて……か、かわいくて…………だから」
否定できない。たとえそれを理由に謗られるとしても、僕は
「……放したく、無かった。レフィーヤさんを、ずっと抱きしめていたかった」
「!」
× × ×
告げた、ベルはレフィーヤに対し己の内側を打ち明けた。口にしながら、我ながら初めて晒したのかもしれないと、どこか抜けた思考のまま、それはつまり心と思考が釣り合っていないのだ。
告げた。そして、その行為は続いていく。思いを告げるの次に連続して行う行為。先手、不意打ち、はたから見ればそう思われても仕方のない追撃であった。
……あぁ、暖かい。こんなに、小さいんだ
「え……ええ!?」
「…………ッ」
抱きしめている。言葉を告げてから、それとも告げる前か、それすら曖昧なぐらいに無意識の行動だった。
抱きしめている。両手をベルの頬にあてがった体勢で、ベルは一歩前に進みレフィーヤの内側へと踏み込んだのだ。脇の下から腕を通して、その背中を抱擁で結び包み込んだ。離さないように、溢さないように
深く、深く、ただ静かに抱きしめている。
もはや、良いわけも何もない。ベルは確信犯だ。その罪過を超えてでも、行為は優先されるモノであったということだ。
「……れふぃーや、さん」
「――――ッ」
震える声で名前を呼んだ。愛しい、切ない、そんな思いが胸の内で荒れ狂う。
思いが制御できない。こうしないとダメになるから、そんな身勝手な理屈ですら内心でまかり通てしまっている。
判断は、正常じゃない。僕は、今異常なまでに
「……どう、して……なんで」
「したい、からです」
食い気味に答えた。ベルは、もう躊躇いも罪悪感も感じていない。
欲の赴くまま。ただ己の“したい”に従っている。
……触れたい、一緒にいたい、もっと近くで
「僕は……レフィーヤさんと、ぼくは」
次回に続く
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