白いウサギは人肌に溶ける~執筆中=彼氏持ちレフィーヤ光のNTRストーリー 作:37級犬築士
男の体なのに女の子の服が似合ってしまう。
喉仏の起伏に肩周りの骨格、男であると断定できる要素は見つけられるけども、それ以上にこの外見が男であることを否定する。
鏡の前に立つ僕は、どう見ても女の子にしか見えない。女の子としか思えない。
「そう、貴方は可愛い女の子」
「……とっても綺麗な女の子は、ちゃんとおしゃれもしないといけないわ」
「じっとしてて、いい子ね……可愛い女の子にしてあげるから」
保湿した肌、チークはナチュラル。軽くリップには色を足して、目元にはアイシャドウも入れる。
全部、この手で行っている。教えられた通りに、僕は自分を女の子に変える。
可愛いと思われたいから、だからあの人は手を貸した。そして、僕をそそのかした。
深みに落ちていく、この道は抜け出せない下り坂だ。それも限りなく垂直に近い。
だけど、知ってしまったから
「……ほら、前を見ていなさい」
「ぁ、はぃ……ぁ、ああぁッ」
抜け出せない、抜けたくないから留まっている。緩やかな落下に身を任せて、堕ちていく。
つま先から頭のてっぺんまで、感じてはいけない甘露な刺激に喜んでいる。
男として生まれてきたのに、男の心を持っているのに、僕は女の子の自分を求めている。
可愛い、とっても可愛い女の子。そして、鏡の前に映る僕は、とっても可愛い女の子だから、強い冒険者なわけがない。
弱い、弱いことを強いられている。
強くない、抗えない。
僕は、弱い。
〇
~数日前~
戦争遊戯が終わり、ベル・クラネルは休息と言える期間を過ごしていた。学区の到来、ニイナ・チュールとの青春、等々出来事もあったが基本的に穏やかな日々を過ごしていた。
アドバイザーのエイナの言葉を受け、ベルは荒くれた日々で疲弊した心身の調子を取り戻す意味を込めて、久しくやっていなかったことを思い出し、そして今日も彼は顔を出す。
賑やかな酒場、豊穣の女主人にてベルは給仕の手伝いを買って出た。なお、都合により精神的なフラッシュバックを避けるためフレイヤファミリアの皆はその日だけ給仕の仕事から外れることになった。当然の処置である。
目まぐるしく、そして騒々しい。しかし、今のベルにはこの酒場で働く労働の疲労が恋しくあった。同じくファミリアの一員となったリューと共に懐かしさを感じながら今日も今日とて楽しい給仕の仕事に励む。
なんてことのない話だ。
「ベル子ちゃん!こっちもお酒!!肉大盛も頼むよ!!」
「ベル子ちゃん!神(おれ)達にも酒をくれよ!あと、コンバートもお願いだ!!」
「ベル子ちゃんが好きです!神(おれ)の為にウェディングドレスを着て欲しい!!」
「は、はーい!注文今伺います!……あと、それ以外はごめんなさい!僕男です!!」
「「「それのどこに問題が!?」」」
ただ、ただ少し、その働き方にいささか突っ込む点が一つ。
「にゃ、にゃんで白坊主は女装にゃ?」
「あれしかないにゃ……あと、需要にゃ♡」
「アーニャ、貴方は働きなさい……クロエ、貴方はよだれを拭きなさい」
ベル・クラネルは容姿があどけない。顔立ちも中性的である為、装いとメイクに髪型を変えれば誰が見ても女性に変わる。
天性の女装適正。
給仕の服で身を飾れば、誰もが目を奪われる完璧な男の娘。ここ一週間、ベルはウェイトレスの姿で給仕に励んでいる。
そこだけ切り取れば中々良い趣味をしている話だが、既にベルは何度も過去にこういうことをされているわけで、なので驚くものはあまりいない。むしろ喜ぶ者が大半。
店主であるミアも、ベルの女装による集客効果を言葉にこそしないが味を占めている。なので、都合よくウェイターの制服が無いのも、仕方のない事。
「いらっしゃいませ、お席に案内しますね……あ、お飲み物はいつものでいいですか。ふふ、じゃあ人数分持ってきますね……ごゆっくり、今日もお楽しみださいね」
一週間、ここ連日女装で接客をしているせいか妙に言葉尻も柔らかい。
常連の顔を覚え、接客にも丁寧さが顕著に表れる。
スカートを纏ったベルの足取りに迷いは無い。のびのびと、楽しんで接客の仕事に邁進し笑顔を振りまいている。
一級冒険者でありながら、レコードホルダーでありながら、誰もがみとめる若き英雄でありながら、今はただ可愛い可愛い町娘でしかない。
皆、その笑顔を見たくて足を運ぶ。
「お客様のお帰りです!……また、お越しくださいね。足元に気を付けてお帰りくださいませ。」
「なあ、あの子可愛いな」
「白髪の子だろ、でも男だぞ」
「馬鹿野郎、ベル子ちゃんだからいいんだよ」
「「「「ベル子ちゃんは正義」」」」
ねっとりしたファンたちの声にも慣れているのか動じない。
しかし、そんなベルとベルに視線を向ける客達を見れば、中々異様なものだとリュー含む給仕の彼女達は思う。そして、クロエだけは鼻血を抑えている。
繁盛しているのは良い。ベルも楽しんで、健全な労働に汗を流しているのは良い事。だが、まるで神アポロンが増殖したような光景が連日見られるのはいかがなものかと。
「まあ、あの子のあれ可愛いから仕方ないよね」
ルノアが感心している。
「尻が良いにゃ、妙に色っぽいにゃ……ごくりんこ」
クロエは変態趣味を隠せていない。
「……けど、あの子ばっかり目を集めているのはどうなの」
「ニャ?」
「いや、気にしてないけど……でも、ほら…………同じ女として、沽券が」
「ルノアが坊主に嫉妬してるにゃ、おい豚ども、指名して慰めてやれにゃ」
「な、変なこと言うな!あ、あんた!!」
ルノアが必死に訂正する中、相変わらずベルは客達から人気を独占している。
連日繁盛する理由がベルにある。この店には顔の良い給仕の花見が以前からも売りであったが、今は特に目にしたいと口から手も足も不埒な者も出てしまう、そんな極上の白い薔薇が咲いている。ならば足しげく通わないわけにはいかないのだ。
その上、他の花と違う良い点として、おどおどする素振りや見られて恥じらう点もあるが、触れられてもどこか申し訳なさそうな反応ばかりでセクハラに対して嫌がりが薄いのも大きなポイントだ。
女性であれば即ノックアウトだが、この花はおしべのある花だ。当時者ですら、男である意識からか少し冗談と流している様子にも見える。
男が男に触られても問題はない。あぁ、女の人と間違っているのだなと、御免なさい僕は男ですとむしろ謝罪するだけで咎めたりはしない。
なればこそ皆触る。
「おっと手が滑ってしまった!」
「きゃ!……お、男神様、その……離れてください、お仕事が出来ません」
配膳の際、通り過ぎる際、偶然を装うことも酔った振りも、なんだって利用する。
「あの……すみません、僕男ですから……その、ダメですよ。女の人こういうことしちゃ、僕だったからよかったものを」
そんな風に言われてしまえば、皆ガチ恋、そのままクレーバーに抱きしめてやろうとする悪い悪漢たち。しかし、今日も重く痛い女給仕たちの鉄槌(比喩ではない)が響く。
「何を間抜けなこと言ってるニャ、おみゃあを目当てにセクハラしてるニャ、こいつらは神(変態)ニャ」
「あ、クロエさん」
「そうです、今は貴方も劣情の対象です……不愉快に感じるなら強く払わなければいけない」
「リューさんも……はは、そうですね」
未だにわかっていない様子、給仕二人の手でおイタをしでかした冒険者(男)と神(男)がノックアウトされている。
本来ならどうとでも出来るのに、あまりにも無抵抗で、まるで本当にか弱い女の子かと間違われるような振る舞い。
いい加減に、と
クロエは鼻血をぬぐいながら諭す言葉を続ける。
「おみゃーなら馬鹿どもも一発ニャ、ぶっ飛ばせばいい薬になるのにしないから調子に乗るんだって話……それとも、触られて女の気分を楽しんでるとかなら、ちょっと気を付けるニャ」
「……クロエさん……ひゃ」
「ん、良い尻にゃ……ん、ってこの感触」
「クロエ、いい加減に「少年!おみゃーショーツを履いてるにゃ!!」……ッ!?」
クロエの言葉が強く響いた。
そして、その瞬間酔って談笑するテーブルの客たちが一斉に視線を向ける。無論、一点にだ。
「あ、あの」
「ま、まさかそこまで……ジュル、いたいけな少年が下着まで女物に……ぁ、見たい……スカートをまくりたい♡」
「く、クロエさん……か、顔が怖いデス」
「ちょっと少年……スケベ、しようにゃ♡」
「言葉も怖いです!!」
沸き立つ歓声、ゆらゆら揺れて今にも飛び掛かりそうな黒猫にベルは手を組んで一歩二歩と下がる。
酒が回る深夜帯、客たちはショウが見られるとばかりに勘違い。沸き立つ声は次第にシンクロを見せていく。誰かが悪乗りで言った言葉に、皆が同調するからだ。
……見せろ
……スカートをまくれ
……まくれ……まくれ、まくれまくれまくれ!!
「!」
「あ、あ~あ……まずいにゃね」
流石に申し訳ないと、クロエも冷静になり如何に周りを鎮めるか、それとも沈めるかを考える。
「貴方達は、羽目を外し過ぎる……ッ」
当然黙っていられないと、思い人に不埒なことを求める者達にリューが怒りを見せないわけがない。
今にも手をスカートに伸ばさんとする適当な男に手を出そうとした。リューの手が振り上げられようとしたとき
「「「—————————————————————ッッ!?!?!?」」」
言葉に形容できない、そんな叫びが上がった。
あまりの声に、リューは懐から護身用の短刀を抜かんとしたほどだ。しかし、その原因を見てリューも言葉を失くした。
「にゃ、にゃぁあッ……ぁ、まじかにゃぁ♡♡」
血だらけの顔を抑え込む。
鼻血物な光景を前にクロエはスカートがまくり上げられんばかりに尻尾を振っていた。
男達も歓声を上げて、そしてある程度声が静まれば皆唾液を飲んだ。
「な、なぜ……ベル」
「……ぁ、あの……これで、いいですかね、アハハ」
ベルは、自らスカートをまくった
まくり上げて、そして恥ずかしくなってスカートを降ろした。
時間にして、数秒程度。しかし、皆見てしまった。少女の姿をして、少女にしか見えないあどけない容姿の彼の股間を、ショーツを履いていても隠せない淡い膨らみ。
隠してこそいるが、確かに男である証明があった。だが、だがそれがどうしたと男たちは目を向けた。
「あ、あの……すみません、流されて……だから、今のはその」
恥じらいながら弁明、空気が妙に熱を帯びる中、ベルの種に染まる頬にもしやと、変な勘繰りを向ける男も数名。
しかし、論議も始めることなく、場の空気は大きな怒声で吹き飛ばされた
「ばかども!何をふざけているんだいッ!!」
ミアの怒声が響く、その声に誰もがはっと我に返って、視線をそれぞれ別の方向にそらした。
何事も無かったかのように、皆忘れていたさっきまでの会話をぎこちなく再開。
触れないように、しかしやはり気になるのかベルの方をちらちらと
「ベル、どうしてあのような……」
「……ッ」
リュー・アストレア。同じファミリアとなった彼女にとって、それは度し難い行いだった。
この数週間、給仕の手伝いで見ていた限り、何も感じていなかった。ただ、楽しく給仕の仕事に励むベルを見ていた。
だからこそ、理解に及ばず精神の異常を心配した。
「ベル、その……突かれているなら無理をしないで欲しい。私の以前使っていた部屋で休んで……その、さっきみたいなことは」
「……リューさん」
諭されるように言葉をかけられる。
ベル自身、自分で何故さっきの行為をしたか理解できないでいる。
故に、どう返答したものか詰まっていた。
「坊主、リューの言うとおりだ……休みな。そんで、もう変な気を起こすんじゃないよ」
「……は、はい」
威勢良く返事、その場で客達やリューにも頭を下げる。
そんな素振りに、リューも安心してかベルの背中を見送る。かける言葉は無く、むしろ追い出すように。
早く忘れようと、リューは仕事に戻った。
……気の迷いだろう、ベルもまだ若い年頃の男児、ならきっと仕方ない
女性の姿で仕事をさせているから。
そう何度も言い聞かせて、忘れてしまおうと、触れずにいた。
「……私、心配だから見てくる」
「し、シル」
「大丈夫、ちょっと見てくるだけだから」
続きは明日投稿
追記
手直しで少し遅れます。火曜日には更新します。