白いウサギは人肌に溶ける~執筆中=彼氏持ちレフィーヤ光のNTRストーリー 作:37級犬築士
きっかけはほんの小さなことだった。単独でダンジョンに潜り、無理をしない範囲で探索を続けていた。
なんてことはない、ただの採集のクエスト。そんな中で、僕はとあるモンスターを見かけた。以前に戦ったモスヒュージと同じ変異種のデッドリ―ホーネット。茂みからのぞくそれはいくつもの群れを従えて、まさに一触即発の危険地帯がそこにはあった。故に、選ぶべきは退却、情報を伝え、しかるべき対処を待てばいい、それだけの事。
……けれど、僕はその選択ができなかった。
一匹の牡鹿がいたのだ。首布を巻き、怯えた感情を宿したその眼には確かな意思があった。通常のモンスターとは違う、その眼を僕は何度も見てきた。
「……ッ!?」
……異端者、なのか!
牡鹿のモンスターはその場で動けず、じりじりと羽音を立てて近づく蜂の大軍を前に竦んだ足は石と化している。
「……クソッ!!」
思わず、悪態の言葉が口から漏れ出てしまった。らしくはない振る舞いとは重々にわかっている。けれども、そうでもしないと余計な躊躇で覚悟にひびが入る気がした。
茂みから飛び出し、最速の一撃を大群の中に打ち込む。なんどもなんども、敵の狙いを集中させるために、ファイヤボルトで焼き尽くす。じりじりと金属を削るような断末魔が響き渡り、蜂の首魁はこっちを捉える。
「―――ッ!!」
ようやく我を戻したのか、牡鹿は足を動かし一目散に背後の森林へ逃げ去っていく。
「……」
ひとまず目的は果たした。だが安心はできない。群れの半分を奇襲で失ったせいか、その複眼はおどろしい感情を込めてこっちを見定めている。
中央に坐する大型の強化種、アルビノのような白色に毒々しい赤紫の模様が入り混じった危険色はひときわ集団の中で異彩を放っている。
「――――ッ!!!」
「……来る」
ナイフを構える。警戒を最大に、敵が変異しているなあらその戦闘力や、はたまた戦い方も別物と考えるべきだ。
周囲を飛び交う蜂が向かってくる。咢をかち鳴らし、毒針を打ち込まんとベルの周囲を包囲する。
「!?」
戦いが始まる。下層での激闘、深増を生き抜いた死闘の経験をフルで動員し、ベルは敵の攻め手を一つ一つ確実にさばききっていく。一手一手、確実に正しい選択肢を選ぶ。腕を裂かれ、足を貫かれようと、それらすべては勝利へと至らんとするため。
「…来い、モンスターッ!!!?!?」
生き残る。すべてはそのために、ベル・クラネルは刃をふるう。
〇
―リヴィラ―
宿の中に二人、ベッドに横たわる少年は各所に包帯がまかれ、その口からはかすれるような音で呼吸音が聞こえる。
「……アルゴノゥトくん」
心配そうに眺める彼女の視界には、それはそれはなんとも痛々しい姿が写っていた。
ティオナがベル抱えリヴィラに駆け込んだ時にはすでに、ホーネットの毒針はベルの体を蝕んでいた。本来であれば毒で疲弊していくうちに体力が尽きてしまうのだろうが、幸運なことにベルの体を蝕む毒は無事取り去ることに成功した。とっさの判断で回収したドロップの毒針、それをもとに調合したポーションが無事特効薬として効いたようだ。
…高くついたけど、仕方ないよね。
リヴィラという町で、いかに緊急であってもここでは慈善はまかり通らない。治療が終わったあと、そ知らぬ顔で金銭を要求されたときはさすがのティオナも手が出そうになった。というか出した。
「……ぁ……うぅ」
「…まだ、苦しいのかな」
うめき声が上がる。治療を終えて半刻ほどすぎて、時折苦しそうに声をあげるが未だ目を覚ます様子はない。それほどの疲弊なのか、先の戦いで魔法も随分使っていたようで、肉体と精神共にすり減ったベルはそう簡単に目覚める様子はない。
毒が取りされたとはいえ、消耗しきったベルの肉体は免疫が弱っているのか、傷口を塞ぎ、安静にしてなお体は熱で浮かされ、その不快感から安眠が叶わないようだ。
「……アルゴノゥトくん」
「くっ………ぅ」
暑さにもがくように息を乱す。濡れた布巾で体を拭いてやり、何度も熱を冷まそうとする。
「…………」
ベルの体に触れる、肉体の形、傷跡、普段は決して注視することのない異性の体を気が付けば隅々まで見渡していた。
…結構、体大きい。こんな可愛い顔なのに、ちゃんと男の子なんだ。
腕やわき下、胸板を拭きながらその顔を見下ろす。あどけない、いかにも純朴な少年の顔つき、先の戦いで見せた勇ましい面とは変わって、今の顔はどこか庇護欲を感じる。無意識にティオナはそんなベルの表情に魅入っているのだ。
「……」
「氷、持ってきたぜ。アマゾン」
「……!」
とっさにからだが飛びのく。間近まで近づけた顔を離し、何事もないように姿勢を直す。
「…おら、ここにおいて……なんか、お前さん変じゃねえか。何をそんな肩ひじ張って」
「えっ……あぁ、さあね……なんでもないって。あはは……」
……急に入ってこないでよ!!心臓止まるかと思ったじゃん!!?
「……まあ、いいか。とりあえず、仲間に連絡を頼んどいたしよ、そいつは明日にでも連れて帰んな」
「うん、一応安静にしないとね。お医者さんも言ってたし、私はここで見てるよ」
「そうか。じゃあ、俺はこれで」
「……」
ボールスが去り、改めて部屋には自分と少年の二人きりであることを実感する。
「……ねえ、アルゴノゥトくん。」
返事はない。一人独白するように、ティオナは言葉を続ける。
「……さっきのこと、本当は謝るべきなんだけどさ」
ベルとホーネットの戦い、途中からとはいえ、見かけてすぐに加勢すればその身に付いた傷のいくつかは回避できたかもしれない。けれど
「あたしさ、君の戦いの邪魔したくなくて……だって」
一度目と二度目、自分よりもレベルの低い冒険者であるのに、その姿に惹かれてしまった。それゆえにアルゴノゥト、ティオナにとってベルの挑む姿はまさしく本で見知った英雄の姿そのものだった。
……かっこよかったなぁ
「あたし、やっぱり君のファンだよ……レベルは私の方が上だけど、でも……やっぱり憧れるなぁ」
痛ましいその傷さえも、ベル・クラネルという人物を引き立てる飾りにすら見える。戦いを見届け、そして休息に浸る今この瞬間、傍に居続ける自分の居場所はどこか特等席のように感じる。
「……んっ…ぅ」
「…あっ、ちょっと待ってね、今氷用意するから」
皮袋中に先ほどボールスが持ってきた氷を詰める。細かく砕いたそれを硬く縛り、布でくるんだそれを枕の下に敷く。
「んぁ……」
「ほら、頭上げて……よし、あとは」
ダメ押しに絞ったタオルを小さくたたみ、ベルの額に乗せる。熱が抜けて気持ちいのか、ベルの表情が次第に和らぐ。
「……ぁ」
「……うん、きもちいんだね。アルゴノゥトくん」
最後の布団をかけ、首元には汗を吸うタオルを巻く。
…なんか、これ風邪の看病みたい
風邪をひく、冒険者として堅牢な肉体を得た今となってはまったくもって遠い概念だ。ティオナ自身、最後に発症したのはずいぶん前、ここオラリオに来る前の頃、年幼い幼女の頃に数度だけ
「確か、昔もこんなふうに看病されたっけ。」
看病と言うにはあまりにも乏しい、実際自分が発症した時もティオネが必死にタオルで汗を拭ってくれて、氷や、ましてや薬なんてものもなかった。
……でも、あの時のティオネの手、すっごく優しかったよね。
ふと、自分の手を見る。細い指と手の小ささは紛れもなく女性のモノだが、大剣を振るうだけあって所々皮膚が硬く厚くなっているし、拳の部分も骨が平らに砕けて戦いに成らされている。
よくよく見ればそれは普通の女の子と比べてやはり武骨に見える。
「………?」
ベルの手が動く。無意識なのか、何かを掴もうとして伸ばし、どこか不安定に
「んっ……みんな、くっ……!!」
「!」
うなされている。見ているものはティオナにはわからないけど、それでもその不安げな様子は嫌でも伝わってくる。
「…えっと!……ねえ、大丈夫だよ。ここは安全だから、だから……」
「はぁ………みんな、みんながッ!!」
「……」
……ぎゅっ!
「…大丈夫だよ。あたしがついてるから、ね」
宙を行く手を掴み、そっと安心させるように握ってやる。いつかに自分がしてもらった時のように、ティオナは
「…ごめんね、こんな手で。あたし、女の子らしくないから、あんまり嬉しくないよね」
女の子らしい、いつかにそれを求めてダンジョンでめちゃくちゃなことになったのを思い出す。結局、ガレスからはあきらめろとの一言を貰い、自分らしさ、強い女の子としての自分を大事にすればいいという結論を得た。けれども、今この時だけは
「……なんだか、リヴェリアやレフィーヤがうらやましいな。アルゴノゥトくんも、そっちのほうが嬉しいよね」
男に好まれる、それはティオナではない。本当に好かれるのはティオネの方、色恋とは程遠い、そんな自分には、きっとこういうことはらしくないのだと、どこか蓋をしてしまう。
天真爛漫で誰とでも接するポジティブな彼女にとって、異性と向き合うこのひとときだけはどうにもネガティブよりな思考に陥ってしまう。
「あたし、おっぱいも小さいし、馬鹿だし、しおらしさなんて絶対無理。だから……ごめんね」
「……」
「えっ?」
握った手が今一瞬握り返された。顔を除くが今だ起きている様子はない。けれど、その手はしっかりと
……起きて、ないよね。
「…………さん」
「……?」
かすかに、吹けば消えてしまいそうなそんな細い声で、今確かに、ベルは
「……ッ!」
そっと、握った手に、もう一方の手も重ねる。どこか満足気に、ティオナはベルに柔和な笑顔を向ける。
「しかたないなぁ。……あたしでよかったら、ずっと握ってて上げるね。だから、おやすみ」
「……」
消え入りそうな声で微かに、しかししっかりとその声は届いた。苦悶の中、どこか甘えるようにぼやいたその言葉が、ティオナの胸中にいつまでも残り続ける。
……名前、呼んでくれたの嬉しい……。
「なんか……いいな、これ」
異性の面倒を見る。まるで自分が姉になったかのように、それは満ち足りた気分を与えてくれる。
「……」
「……タオル、替えてあげるね」
甲斐甲斐しく、けれどもどこか楽しげにティオナはベルの世話を続ける。
今回はここまで。ティオナの人間性がどんなものか、色々と自分なりに考えているんですが、やっぱり根っこにある思いやりと優しさ、その中にある弱さとか色々と掘り下げたいです。天真爛漫で、どっちかと言えばアホの娘な印象が強いですが、意外に姉よりもしっかりしてるところもあって、調べれば調べるほどいい姉妹なんですよね。
エロくするなら発情させれば一発ですが、やはりキャラの心情からちゃんと好意を深めた上でことに至る流れ、それを大事にしたいですね。ていいながら今までのもだいぶ強引な展開しちゃってますけど。
まあ、とにかく。褐色もスレンダーも初の試みなので、しっかりと良いものに書きあけたいです。次回は明日に