呪いのゲーム(笑)をプレイした幼馴染(♂)が女になったんだが 作:鶴山
『ヘルプ。ボク史上最大にヤバイ』
『とにかくヤバイ』
『ヤバイからウチ来て』
保育園の頃からの幼馴染、
緊迫感のカケラも無い端的なメッセージに無視を決め込もうかとも思ったが、後で拗ねられても面倒だ。
仕方なく服を着て、徒歩3分の幼馴染宅に到着。
マコトの母ちゃんに挨拶して部屋に上がると、ベッドの上で布団を頭からかぶってこちらに背中を向ける幼馴染が。
オレが部屋に入ったのにも気づかず、何やらブツブツ呟いている。
「ったく、なんなんだよー。オレ、今日は一日中ゴロゴロするのに忙しかったんだぞ」
「っ…………ユウジ?」
声を掛けると、ビクッと布団が震え、恐る恐ると言った感じでマコトが振り向いた。
風邪でもひいてるのか、声がいつもより高い気がする。
「その、ごめんね、いきなり変なメッセージ送って……ボクも正直ワケわかってないっていうか、ちょっとまだ信じられないっていうか、見てもらったらわかるかもだけど、見せるのも怖いっていうか……」
要領を得ない言葉にちょっとイラつく。こっちは寝不足なんだぞ。
しかも二度寝しようとしてた人のこと呼びつけておいて自分は布団から出てこない性根が気に食わん。
義憤に駆られたオレは、ずんずん足音立ててベッドに近づくと、マコトが被ってる布団の端を掴む。
「ワケわかんねえこと言ってないで、とりあえず布団から出てこいや!」
「あ、ちょ!?」
そのまま力任せに引っ張ると、布団にしがみつこうとして引き離されたチビ男がこてん、とベッドの上に転がる。
そう、思っていたのだが────
どたぷんっ。
音にすると、そんな感じだろうか。
マコトのベッドの上で、マコトのタンクトップを着た、マコトに似た雰囲気の女。
タンクトップからこぼれそうな(というか脇の部分から半分以上こぼれてる)巨乳──いや、爆乳を揺らしながら、その女はベッドの上に転がった。
「は?」
思わずアホみたいな声を出したオレを誰が責められよう。
呆然とするオレの前で、女はバツが悪そうに笑いながら口を開く。
「えっと…………なんかボク、女の子になっちゃったみたい」
「オバさんオバさんオバさん、マコトがヤベェって!! 病院っ、病院連れてこう!」
「待って待ってユウジ! 無駄だから! 意味ないから!!」
正気を取り戻したオレは、即座にマコトを担いでリビングにいるマコトの母ちゃんの前に連れ出した。
「あらユウちゃん、どうしたの?」
「どうしたのじゃねえって! コレ! 見ろよ、マコトが女になってる!」
呑気なオバさんの目を覚ますべく、オレはマコトのタンクトップをめくり上げて胸部を剥き出しにする。
ええいマコト! 「ひゃん!?」とか声を出してる場合か!!
ところが、服をひん剥かれた拍子に、だぽんっ、どぷんっ、と重たげに揺れる脂肪を見てもオバさんは慌てない。
いや、ちょっと気まずそうな恥ずかしそうな顔をしてるが、なんか思ってたリアクションと違う!
「えっと、ユウちゃん? オバさんね、小さい頃から知ってるユウちゃんにならマコちゃんのこと任せても大丈夫だと思ってるのよ? でもね、やっぱり母親に向かって娘が『女になった』なんて、ちょっと反応に困るかなー、なんて……」
そのまま黄昏つつ、「そう、あんなに小さかった二人も、もう男と女の関係なのね……」なんて妙なことを言うオバさん。
ってか娘ってなんだよ!?
「もう! ユウジ、良いから! 部屋戻るよ!」
オレが動揺していると、顔を真っ赤にしてタンクトップを着直したマコトに強引に手を引っ張って自室に連れ戻された。
その間もオバさんは、「孫の顔が見れる日も近いかしら……」とかブツブツ言ってた。
「で、何がどうなってんだよ」
マコトの部屋で、クッションに腰を下ろしたオレは目の前のマコト?らしき女に改めて質問する。正直、頭おかしくなりそうです。
するとマコトは、一本のゲームパッケージを手に取った。
タイトルは片仮名で、『ジ・チェンジライフ』?
なんだろう、糞ゲー感あふれるタイトルセンスとフォントだ。『ザ・』じゃなくて『ジ・』な時点で嫌な予感しかしない。
「えっとさ、先月ウチのおじいちゃん亡くなったじゃん?」
「あぁ、覚えてる」
安達
幼かった頃のオレやマコトと遊んでくれた爺さんだ。小学校の頃の土日は、庭越爺さんに釣りやら遊園地やらによく連れてってもらったり、爺さんが集めたゲームを一緒にプレイしたりしたもんだ。
「おじいちゃん結構なゲーマーでさ、色んなゲーム集めてたんだよね。で、遺言に全部ボクに譲るから遊ぶなり売っ払うなり好きにしてくれって書いてたらしいんだ」
遊ぶもんが遺産とは、あの爺さんらしい。
「せっかくボクに遺してくれたんだからさ、とりあえず一通りクリアしていこうと思ったんだよね」
「おぉ……何年もかかりそうだな……」
「うん、百本以上あるしね……」
苦笑しながら、マコトは先ほどのゲームをセットして起動する。
「で、その中にこのゲームが入ってたんだ。説明書も何も無くて、とりあえずプレイすればわかるかなーって始めたらさ」
テレビにゲーム画面が映る。
双六の盤面みたいな背景に、女キャラの3Dモデル。隣にそのキャラのステータス画面。一番下に、『ミッションを遂行してください。制限時間→22:17:36』と書かれている。最後の数字は時間のようで、目の前で36が35になり、今34になった。
「今はこんなんだけどさ、最初に起動した時は『キャラメイクを行ってください』って文字でね、男女とか、身長とか、色々弄れたんだ。で、まぁ色々試して、良い感じにできたから確定したらさ、『反映しますか?』って文字が出て、とりあえず『YES』を選んだら……」
こんな感じになっちゃった、と胸部の肉を持ち上げるマコト。
え、要するに、ゲームでキャラクリしたら、自分がその姿になっちゃったってことか? そんな、非科学的な、いや、そんなことよりもっと大事なことがある。
つまりマコトは────
「お前、貧乳好きって言ってたろ……! なんで爆乳キャラ作ってんだよ……!」
「気になるとこそこ!?」
「当たり前だろうが……! 男同士の性癖談義に嘘とか誤魔化しが許されると思ってんのか!」
「めちゃくちゃブチ切れるじゃん! いや、いったんそれは置いとこう!? 話進まないからさ!」
チッ、仕方ねえ。しかし、いずれこの話はきっちり問い詰めようと脳内メモに刻んでおく。
「まぁとにかく、めちゃくちゃビビってたら、ゲーム画面にメッセージが出てきて、これから出題される幾つかのミッションを制限時間内に現実世界でクリアしたら、元の姿に戻れるらしいんだ」
「おぉ、マジか! やったじゃねえか!」
「…………うん」
喜ぶオレとは対照的に、マコトは歯切れが悪い。
これはアレだ。言いづらいことを切り出そうとしてる時のマコトの癖だ。
仕方ない、幼馴染として、オレが助け舟を出してやろう。
「……オーケー、わかったよマコト。アレだろ? そのミッションってのをクリアするのに、オレの助けが必要なんだろ?」
「…………うん、そうなんだ。ごめんね、ユウジ。変なことに巻き込んじゃって」
「気にすんなよ、オレとお前の仲だろ」
我ながらクサイ台詞だが、不安がってる幼馴染の前だ。格好くらいつけてやるとも。
そんな想いが通じたのか、マコトはベッドの上で居住まいを正し、背筋を伸ばした。
「ユウジ、改めてお願いがあるんだ。ミッション攻略のために────
ボクのおっぱい揉んでイカせて♡」
『ジ・チェンジライフ』のルール
①プレイヤーは理想の容姿を設定してください。
②反映を行った場合、現実世界の貴方の存在は①に書き換えられます。