※この作品はR-18です。

魔斬姫伝外伝 ~復活のマーカス~   作:KUMO1986

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第3話

 

 

■再開

 八雲は法子が消えたその場所を何度も訪れていた。

 連絡があってから数日、連絡のあったところを中心に探してもみたのだが、法子はあの連絡後、連絡が取れないだけではなく、見たという人もいなかった。

 まあ、当然か……。相手はただの人間ではない。淫魔なのだから。

 法子がそこに居たのは確かなはずだったのに、今や法子の姿はない。

 そうなると考えられるのは決まっていた。

 敵に連れ去られたか……。

 それとも、殺されたのか……。

 いや、殺されることはほとんどないだろう。

 何せ相手は淫魔だ。

 生死で考えれば生きていることの方が可能性としては非常に高い。

 そう考えた八雲は焦りそうになる自分を抑えて、法子を捜索した。

 どうか無事でいてくれと願いながら。

 そう思いながら八雲はその法子から最後の連絡があった場所を訪れ、法子を攫った淫魔を待っていた。

 きっとここで待っていれば敵は来る。

 そうでなければ、法子に連絡なんてさせないだろうし、連絡させたのはわざとだとしか考えようがないのだ。

 相手は誰かを待っている。

 それは私かもしれない……。

 八雲は今までいろんな淫魔を倒してきた。

 それだけ、恨まれる数も半端ではなかった。

 もし、八雲を恨んでいる者の犯行であるならば、淫魔は一体どんなやつなのか。

 その情報も欲しかったが、何も出てこない上に、知っているはずの法子は連れ去られてしまっている。

 さて、もし敵の淫魔が現れたとして、どう戦えばいいのか。

 対策をしておきたかったが、どうにも対策するために必要な情報が足りない。

 仕方なしに、敵の情報を覗いた周りの地形、恐らく敵が出現するであろう場所、それらを見て八雲は敵の情報がないということ以外は万全の対策を立てて敵を迎え撃つ準備をしていた。

 それから少しして、その日も八雲はその場所に来ていた。

 しかし一時間、二時間と経っても何も現れない。

 五感も、第六感も働かせても、敵は現れそうにない……。

 今日も無駄骨か、そう思っていた。

 もうここに来ても淫魔は来ないのだろうかと、そこまで考えてしまったが、ここに必ず来るはずだと八雲の勘は言っていた。

 どうしたらいいのか八雲は非常に悩んだが、自分の勘を信じることにした。

 淫魔が法子を攫ったのなら、それを助けなければならない。

 もちろん、淫魔を倒して。

 そのためにも、いくら無駄骨になろうとも現場に来ることをやめるわけにはいかなかった。

 法子のためにも……。

 そして淫魔が出るのをひたすら待つ。

 その日はとても長い時間待ったような気がする。

 八雲は自分を「先輩、先輩」と慕ってくれる法子を思い出す。

 厳しい訓練も、あの子は必死に頑張っていた。

「いつか先輩の隣に立てるくらい、頑張りますね!」なんて、言っていたこともあった。

 そんな後輩を嫌いになるような者はそうそういないだろう。

 八雲も法子のことは嫌いではなかった。

 むしろよくここまで成長して、宣言通り隣に立てるように頑張っていたと法子を高く評価していた。

 コンビを組むことが、この先あるかもしれない。

 そう思っていた矢先、法子が連れ去られてしまったのだった。

 だが、感情に流されず、八雲はひたすら敵を待つ。

 無事、法子を連れて帰るためにも。

 すると……。

「こんばんは」

 優男のような声が聞こえた。

 こんなところに、他の人間が入って来るはずがない。

 そう思った八雲は、声がした方を思い切り振り返り、距離を取る。

 好青年風に見えるその男は、かつて倒したはずの敵だった。

 マーカス……!

 八雲は即座に戦闘態勢に入った。

 胸当てのないその大きな胸を揺らしながら、マーカスとの距離をさらに取った。

 距離を取っただけだというのに、この威圧感は……。もう以前のマーカスとは違うのだな。

 戦いは始まり、八雲はマーカスが以前よりも強くなっているということがわかった。

 これは、並大抵の退魔師では歯が立たないな。

 八雲がそう思いながらマーカスの攻撃を避ける。

 触手を伸ばし、八雲の足を掴もうとするが、当然そんなものは八雲には通じない。

 ならばとマーカスはわざと隙を作り、八雲が前進した際に、マーカスは仕掛けていた床の擬態触手で足を取ろうとするが……。

 法子には有効だったこの手が、八雲にはそんなものを避けるのは造作のないことだった。

 八雲は間一髪でその触手を避けた。

 その姿は計算しつくされていて、偶然ではない動きだった。

 マーカスは目を見開いた。

「これで法子は一発でしたが、さすがですね」

 やはり八雲は違う。

 そう思ったマーカスは目を妖しく光らせた。

 これは楽しめそうだ、と……。

「……舐めるなよ」

 そんなマーカスの思考を読み取った八雲は静かにそう言うと、刀を構える。

 八雲は怒りのためか、少々手に無駄な力が入ってしまった。

 この淫魔のせいで、法子は今どんな目に遭っているのか……。

 それを想像するだけで八雲は闘志が燃えてきた。

 絶対に負けない。負けて堪るものか。

 法子のためにも、自分のためにも……。

 八雲は素早く動き、攻撃してくる触手を次から次へと避けていく。

 だが、以前のマーカスとは違うと、身体で感じ取る。

 触手のスピードや身体の動きで、マーカスが以前よりも強くなったと八雲は感じていたのだ。

 そしてマーカスには新しい能力、隠している能力があるかもしれないと考える。

 さらに法子が救難信号も出さずに倒されたことから、一瞬で法子を倒したことも予測していた。

 間違いない。マーカスは、前とは違う何かがある。

 そう考えると慎重に動くしかなくなる。

 八雲はマーカスに負けないためにわざと挑発する。

 相手が怒りに満ちれば、それだけ本気の技を見せるだろうし、怒りというものは長くは続かない。つまり、マーカスの怒りの集中力が途切れた時こそ勝機が見えるのだ。

 そう思いながら、八雲は言葉をマーカスに吐き捨てる。

「前のように泣いて謝る姿は変わらないだろうがな」

 マーカスにとって、屈辱的だったあの出来事……。

「……っ」

 マーカスは余裕そうだった表情が崩れた。

 前回負けたことを思い出したのだろう。

 マーカスは触手を動かし、八雲を追い詰めようとする。

 しかし、表情を歪めたマーカスが連続で攻撃を仕掛けるも、それを八雲は軽々と避けてこう言う。

「私に会った時に目が一瞬泳いでいたぞ。切り札が通用するか不安だったんだろう? 勝てるかどうか、不安で怖かったんだろう?」

 図星だった。

 マーカスは過去に負けたことで、八雲と出会った時、一瞬だけ目を泳がせていたし、いくら切り札があるとは言え、油断ならない相手だと不安に思っていたからだ。

 だが、怖いとは感じていない。

 マーカスは八雲の言葉を聞き流しながら、八雲の身体をじっと見ていた。

「……」

 何も言わないマーカスに、八雲はさらに言葉を続ける。

「どうした。何も言えないのか?」

 八雲がそう言って、刀を向ける。

 私はいつでもお前を倒せると挑発するかのように。

 マーカスは軽く鼻で笑った。

「いやいや、そのド迫力の胸に言葉が出なかっただけですよ」

 そう。マーカスは八雲の規格外の大きな胸を見ていたのだ。

 そしてマーカスは酷く歪んだ口で八雲を辱める。

「お可哀相に。過去に淫魔にこれでもかと犯されて、つまらないコンプレックスで自衛軍に入り、つまらないコンプレックスで退魔師になり、つまらないコンプレックスで今も過去の調教という名の一夜を忘れられない」

「……」

 八雲の顔が険しくなった。

 八雲の触れられたくなかった部分を、マーカスはずかずかど土足で上がり込んでさらに泥を塗りたくったようなものだ。

 八雲は湧き上がりそうな怒りを鎮めて、ひたすら冷静であれと自制する。

 こんなところで怒りを露わにして、マーカスを倒せなくなったらどうする。

 法子を助け出すことすら出来なくなってしまうだろう。

 そして自分さえも、守ることが出来なくなる。

 今はただひたすら耐えなければならない。

 マーカスに、何を言われようとただただ耐えるのみ。

 怒るな、泣くな、感情を制御しろ。

 八雲は自分にそう言い聞かせていた。

 感情をコントロールするのは簡単だ。

 いつも通りにしていればいいだけ。

 ただ、戦闘に集中さえしていれば、それで問題はない。

 敵に何を言われようと、それは敵の考えてることであって私自身の本当のことではない。

 そう考えれば、怒りなんて湧きはしない。

 しかしそんなこと、マーカスには関係がないといった様子だった。

 マーカスは八雲の胸を見て、「ふむ」と言って目を細める。

「サイズはGですか? スリーサイズで言うと、96、57、89くらいでしょうか。さぞ、今まで淫魔に愛されたでしょう?」

「……」

 何を下品な……。

 これだから淫魔は……と、八雲は呆れてしまった。

 だが、今までのことを見抜かれたのは痛かった。

 八雲は少しだけ眉を動かした。

 そのわずかな変化に、マーカスは気づいた。

「おや、どうやら当たっていたようですね。いつもの冷静な目が、少し鋭く尖っている……。眉まで動かして、余程イイ思いをされたのでしょう?」

「……馬鹿を言うな」

 そう言って、八雲はぎりりと奥歯を噛み締める。

 イイ思いなどしたことはない。

 そう自分に言い聞かせる。

 わずかに胸にある飛び出しそうな気持ちを、悟られる訳にはいかない。

 この気持ちを、認める訳にはいかない。

 認めてしまったら、負けることになってしまうのだ。

 マーカスに、負けられない。

 勝って、法子を助けなければ……。

 そう思いながら、隙がないかと八雲はマーカスの様子を窺っていた。

 そうだ。こんなところで、負けてはいけられないんだと……。

 しかし、マーカスは続けてこう言う。

「ああ、その肉体も、本当は淫魔に犯されたがっている心も、もうすぐ私のものになるかと思うと楽しみですね」

 とても楽しそうに、顔を笑みで歪めて高笑いでもしそうなマーカス。

 どこか不気味に、にたりと笑みを浮かべたマーカスは、八雲を早く手に入れたいと触手を揺れ動かす。

 その動き方はマーカスの喜びを表現していて、見ていて気味が悪くなるくらいだ。

 八雲はそんなマーカスに嫌悪感を丸出しにしてこう吐き捨てる。

「どうやら死にたいらしいな」

 そう言いながらも八雲は嫌な予感がした。

 一瞬で殺さないと不味い。

 何か、得体の知れない力を持っているのだろう。

 そうでなければ、こんなにも自信があるはずがない。

 それに……。

 法子の件も気になる。

 法子のいる場所の情報をどうにか吐かせたい。

 しかし、それよりも先に、今までの経験と勘がすぐに殺さないと不味いと心が、身体が叫んでいた。

 戦闘はすぐに再開し、八雲はマーカスの背後を取った。

 守る触手も間に合わないほどの八雲の動き。

 マーカスの目が大きく見開いたのが見えた。

 勝った……! 八雲は内心そう思った。

 しかし、実際に負けたのは八雲の方だった。

「いやはや、本当に不味かったですね。これがなければどうなっていたことか」

 時間停止、それがマーカスを助けた。

 八雲の急所を攻撃し、時間を再び進める。

「うあ……っ!」

 そう呻いて、八雲は何が何だかわからないまま、意識を失ってしまった。

 マーカスは喜びの感情で満たされている。

 ようやく八雲を自分のものに出来たのだ。

 嬉しくないわけがない。

 これで八雲も自分のものだ。

 そう思いながら、触手で八雲を包む。

 ずっと欲しかったものが手に入ったマーカスは、新しいおもちゃを与えられた子供のように喜び、八雲の感触を味わっていた。

 そしてこの新しい能力があって、本当に良かったと、心の底から思った。




これはbc8c3zがあらすじ・設定を作り、それを元に根本鈴子先生に書いてもらった綾守竜樹先生著・魔斬姫伝の2次創作です。
綾守竜樹先生のファンの方に読んでいただければ、それに勝る喜びはありません。
一瞬でも先生がいなくなったことの皆さんの孔を埋めれれば幸いです。
感想があれば励みになりますのでお書きください。
またアンケートだけでもいただけたら今後の参考になりますので入れてください。
綾守竜樹ファンサイト(更新もこちらが早くて、分量も多いです)も作りましたのでそちらもご覧いただければ幸いです。

https://ben1986.sakura.ne.jp/ben1986.sakura.ne.jp/

よろしくお願いします。
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