生命製法売ります H code5
「で、どうしてこうなるんですか」
「おまえの要望だろう」
辟易して問いただしたわたしにすげなく返しながら、お部屋のソファに深く腰掛けた師匠がそれを矯めつ眇めつ、持ち上げたり引っ張ってみたりして最終検査します。
師匠の前に立たされたわたしは、荒っぽい手つきに身をすくませてしまいます。
「いっ、痛っ、ししょっ、強っ」
「ふむ。感度良好。ちゃんと定着したみたいだな」
腸の肉詰めのようなその管は、わたしが盗み出したエメラルドタブレット――タブレットの出所に関して、事の顛末を知ったエルマさんは三日間ほど聖母をやめてしまいました――を元に師匠が設計、開発した道具、
タブレットの内部と表面の傷によって屈折、反射された光で映し出された図形は、光を当てた角度によっても変化し、すべての面から浮かび上がった図形を組み合わせることで初めて設計図となり、そうして初めてエメラルドタブレットはそのレシピとしての機能を発揮するのです。なるほど確かにおいそれとは読み解けません。
そうして魂魄再編成液の対となり、エルマさんの、
ですが。
「どうして、こういうかたちになるんですか」
「おまえの要望だろう」
螺旋因子は簡単に説明すれば、魂魄再編成液がもともと螺旋を持つ者の螺旋を砕いて再構成し、螺旋になりつつある
ともかく、エルマさんの螺旋を始めるにはきちんとした螺旋を持つ者の螺旋が必要だそうで――
そこまではよかったのですが、くだんの螺旋因子を体液から精製する器具は、なんと――わたしの股の間に取り付けられたのです。まるで、その……男性のあれのように。
しかもご丁寧にも
「なんだ、何か不満があるのか。一生このままか心配しているんなら、問題ない。あとで外してやるから安心しろ」
「当たり前です! いや、あのですね、もちろんそれもありますけど……わたし……こんなかたちにしてくださいだなんて、言った覚えはありません」
「エルマを孕ませたいと言ったのはおまえだろう、エルシー。おまえの要望を聞き届け、忠実にペニスとして再現したあたしを崇め敬い奉るがいい。それにだな、意味合い的にも儀式然としてよいではないか。これは新たな生命体を完成させる神秘の瞬間なんだぞ? さらにあわせて、実際の射精メカニズムを模倣した方が設計はてっとり早いし投与量も調整しやすい。これらに対する反駁を述べよ。ないなら、論破。以上」
いやいやいやいや、おかしいです。
真面目腐って高説を垂れる師匠のしたり顔を、今、わたしはひっぱたきたくて仕方がありません。
「師匠は、おかあさんとして、いいんですか」
「他に適任もおらんしな。おまえとしても願ったり叶ったりだろう」
「それはそうかもしれないですけど……なんか違います。師匠はおんなごころをわかってなさすぎです!」
できますよ、じゃあしてください、で喜び勇んでできるほど、わたしの精神のからくりは簡素な作りをしていません。
「普段ろくすっぽ言うこと聞いてくれないのに、なんでこんなときだけ……」
「それはまぁ、おまえが――娘の命の恩人、だからな」
そう言い切った師匠の表情は、いつもより柔らかいものでした。血肉を削り、魂を売り、エルマさんを救うために費やしてきたこの数年間が、今、実を結ぼうとしているのです。ようやく、ひとり娘が救われ、苦悩のくびきから解放されるのです。方法はともあれ。
「――あの……」
そして、わたしの背後、ベッドの端に肩身が狭そうにちょこんと座ったエルマさんが、頬を朱に染めながらうつむいて、わたしのワンピースの裾をきゅっと引っ張りました。
「エルマも含むところはありますけど……エルシーじゃないと、いやです」
「おねえちゃん……」
「エルシーは、エルマとするのは、いやですか?」
「そんなことないです! わたしも、おねえちゃんとしたいですし、おねえちゃんが他のひととするのは、いやです!」
エルマさんの手を取って語気を荒げて力説すると、エルマさんはますます赤くなってしまいました。
「ぁ、う……、その、あ、ありがとうございます……」
エルマさんがわたしのおねえちゃんになって以来、なかなか見せてくれなかったはにかみ屋さんの一面に、わたしはかつてないときめきを覚えました。
師匠がぱん、と手を打ち合わせて立ち上がります。
「――さて。では、双方の同意を得たところで、実験を始めるか。いいか、
「出てってください」「出てってください」
あたしも同席して性能試験がどうのと並べ立てる師匠を、わたしとエルマさんは全力で追いだしました。
日光に晒されて行為をするのは初めてだからでしょうか、なんだか無性に気恥ずかしくなって、お互いに目のやり場に困ってしまい、それを紛らわすように、何度も接吻を交わします。
「なんだか、緊張しますね」
おかしそうに笑ってわたしの唇をはむ下で、エルマさんがわたしににょっきりと生えた肉の管を指先でなぞります。
「んんっ……」
「痛くないですか?」
「く、くすぐったいというか、むずがゆいというか……」
「あら、なんだか大きくなってきたような――」
管に血液がじわじわと流れ込んでいく感覚がありました。
「気持ち悪くなったりしてませんか?」
微量とは言え、血や水分を変換させているわけですから、貧血や脱水症状の恐れがなきにしもあらずです。実験は生理が終わってそれなりの日数が経つのを待ちましたが、設計ミスの可能性も踏まえて、しっかり調べておかなければなりません。
「だいじょうぶですけど、なんだか、その、それが、切なくって、もどかしくって、落ち着かないです」
未知の――当然です――感覚に、わたしは戸惑います。こういうものなのでしょうか。
もじもじと脚を動かしていると、エルマさんがおもむろに、体液で満たされつつある管をすべすべした手のひらで優しく包みこみました。
「ふわっ!?」
全身の神経が集中したみたいに過敏なそこを温かな手でくるまれて、わたし自身が抱きしめられたような快感に身震いします。思わずエルマさんのふわふわした身体に抱きついてしまいました。甘く香るバニラの肢体が、わたしを受け止めます。
「つ、強すぎました?」
「いえっ……その……、きもちよすぎて……」
「ならいいんですけど――わ、すごく膨らんできました」
緩やかに上下にしごかれて、いつしかエルマさんの手のひらに収まりきらないぐらい長く、わたしの腕より太くぱんぱんに張り詰めて、管はむくむく育ってしまいました。
これは……少し大きすぎやしないでしょうか。調整の必要ありと師匠に伝えなければなりません。また使用しなければならないなら、ですが。
管の根元で煮えたぎるような熱に、わたしの息が荒くなってきます。
「かちかちですね……」
そしてエルマさんが、硬く凶暴にそそり立った管をまじまじ観察していたかと思うと、何を考えたのか、おもむろにぱくりとくわえてきました。とろとろした唾液と、ぬるぬるした粘膜が管に絡みついてきます。
「はあうっ!? お、おねえちゃっ!?」
「はむっ、んっ……エルマが、体内摂取しないと、意味ないですから……」
ぼそぼそと恥ずかしそうにそう呟いて、瑞々しい唇で肉棒をとろかせます。そのまま頭を前後に振って、肉厚な舌が管の裏側をこすり、先端に口蓋がこつこつぶつかります。
「おっ、ねえっ、ちゃんっ……! とけっ、とけちゃうぅ……!」
「ん……っ、ふ……っ、んふ……、んむっ……」
悲鳴のような声を上げるわたしに構わず、エルマさんはお口で管に甘い奉仕を続けます。
力加減をうかがうように、どこか熱っぽく潤んだブラウンの瞳で、上目遣いでわたしを見上げてきます。その物欲しそうでいて可憐な視線が、わたしの名状しがたい動物的な本能を衝き動かしました。
「もうっ、あぁっ、おねえちゃんっ、もっ、出そうっ! なんか出そうっ!」
そう訴えるわたしに受け入れる意思を示すような優しげな瞳をするや、エルマさんは快楽に戸惑うわたしの片手を安心させるみたいにぎゅっと握りしめ、もう片方の手でわたしの腰に手をまわし、ずるずると喉の奥までくわえ込みながら、吸引しました。
「あああっ! 出まっ、出ますっ!」
これにはたまらず、わたしの下半身で作られていた快感と
「ふーっ……、うっ……、くっ……」
下腹部を鼻息にくすぐられ、こくこくと喉を動かして
管の中身がすべて吸い出され、甘美すぎた口腔からようやく解き放たれます。
「……ふふ、ごちそうさまです」
ぺろりと唇を舐め、いつもの夜の調子でなまめかしく浮かべられた頬笑みが、わたしをぞくりとさせました。それはわたしに被虐的な体験を想起させます。
「でもまだ元気そうですね、この子。また充填されたんでしょうか」
そんなことを言いながら、ふたりの体液でどろどろになった管を、人差し指と親指で作ったわっかでしごきはじめました。放出したばかりであるのと、ぬめりで割り増しされた痺れが、腰を貫きます。
「はぁうっ……でもっ、もう……、摂取されましたし……」
「せっかくこういうかたちにしてもらったんですし、ちょっとしゃくですけど、試してみませんか? その……、最近してなかったですし」
だいぶ余裕を取り戻したらしいエルマさんを相手に、わたしに拒否権はありません。こくりと首を縦に振ったわたしをゆっくりと押し倒し、おとなっぽい黒い下着を脱ぎすてると、エルマさんは屹立する管の先端をネグリジェの中の温かいぬかるみにあてがいました。
そのままゆっくりと腰をおろしていき、肉の管が熟した甘い粘膜をかきわけていきます。お口よりも柔らかでいて肉質的な穴が、わたしをふんわりと迎えました。
体内を押し広げられる痛みに、エルマさんが顔をゆがめます。
「つっ……! や、やっぱり、大きすぎ……るみたい、ですね……」
「あっ、あのっ、無理しないで、ください……」
制止のつもりで突きだした両手に、するりと指が絡められます。そうしてのろのろと管はエルマさんの中へ埋没していき、やがて根元まで飲み込まれたとき、存在感のある重さ――ごめんなさい、おねえちゃん――がわたしをベッドに押し付け、エルマさんが深く息を吐きだしました。
「……ふふ、繋がっちゃいましたね」
「……はい」
穏やかな、慈しむような面持ちで、エルマさんがわたしを見下ろします。
管を介して、エルマさんの脈動や体温が伝わり、同調していき、お腹の底からじんわり溶けあうような気がしてきました。その温かさは、わたしの胸を愛するひとへの愛おしさでいっぱいにします。
そのままの体勢で、わたしとエルマさんはしばらく見つめ合っていました。
「エルシー」
「……どうかしましたか?」
「好きです」
「……わたしも好きです」
「愛してます」
「……わたしも愛してます」
「ずっと一緒にいてください」
「……妹だから、当然です」
ひとつになれたことになんだか感極まってきて溢れさせていた涙を、エルマさんが屈んでぺろりと舐めました。そして頬に軽く、額に優しく、鼻梁に熱く、唇に甘く、口づけてきます。焼き菓子の香りの栗色の毛先が鼻腔をくすぐります。
エルマさんがわたしに完全に上体を預けると、ぐにゅりと豊かな乳房がわたしのまな板の上で潰れました。唇を重ねたままエルマさんの腰が揺すぶられ、管に、それ自体意思をもった生き物のごとく柔軟に肉が吸いついてきます。
口唇の隙間からどちらともとれない吐息が漏れていきます。官能よりも劣情よりも、ただ離れたくないという愛情のみだけに掻きたてられて、押し付ける程度だった唇の触れあいは次第に互いの熱を貪るような激しいものへと変わっていきました。エルマさんの胎内に、
ふたりして息を切らし、横になって抱き合います。
「……しちゃいましたね」
「わたしはなんだかちょっぴり複雑ですけど……」
「エルマがつけた方がよかったですか?」
「そ、そういうわけじゃなくって……いえ、そうなんでしょうか……うーん……」
「でも、かたちはどうあれ、エルマはエルシーとひとつになれて、嬉しいです」
「わたしもです、おねえちゃん」
しばらく交わりの余情に意識をたゆたわれていると、不意にエルマさんが苦い表情を見せました。ネグリジェをまくりあげると、丁寧に揃えられた淡い栗色の茂みの下から滴る赤い液体が、シーツを汚していました。初めての証にしては、遅い出血です。つまり――。
「……始まっちゃった、みたいです」
それは、螺旋の始まり。命の引き金。魂の、続き。
エルマさんの痛みを露わにしていた顔は、泣き笑いのようなものへ移り変わり、濃いブラウンの瞳に涙が膜を張っていきます。
「……エル、シー……っ」
「どうかしましたか?」
「……ありがとう……っ、ございっ……、ます……っ」
「……妹だから、当然です」
そして何より、あなたが、おねえちゃんだから。
痺れを切らした師匠が水を差しに来るまで、赤ん坊のように泣きじゃくるおねえちゃんの頭を、撫でていてあげました。
「で、どうしてこうなるんですか」
「おまえの要望だろう」
ふたりがひとつになれた日からエルマさんの
さて、例のエメラルドタブレット強奪事件が世間の方でどうなったかと言えば、盗んだものがものですし、さまざまな証拠物件を残してきてしまったので、あっさりわたしたちは
これ以上は秘匿できないぞと言い募る高官さんに、師匠はわたしたちの前では知らぬ存ぜぬで押し通し、三日も経たぬうちに高官さんはその制服と金ぴかバッジを見せなくなり、指名手配が取り下げられました。いったい裏でどんな取引がなされていたのやら知りたくはありませんが――わたしはこの時点で察するべきでした――、ともかく、ほとぼりも冷め、ようよう何ひとつ脅かすもののない平和な日常が戻ってきた、そんな時分でありました。
「確かにこれも言いましたけれども……」
わたしの視線の先には、がちがちに充血した、あの
エルマさんは涙ぐみながら、師匠の手を取って熱弁します。
「お師匠さま……今日のお師匠さまは、エルマの目に、いつもの三倍は偉大に映っております……!」
「そうだろう、そうだろう。崇め敬い奉るがいい」
前回と一変して、何故だかエルマさんはのりのりです。その、管の方も。
唯一の味方を失い、よよよと泣き崩れるわたしに、師匠は諭すように語りかけ、肩を叩きます。
「この実験がうまくいけば、ともすれば人口不足はある程度解消されるかもしれん。おまえはその一端を担っているんだ。おんなとおんなで子をなせる――これを歴史的瞬間と呼ばずして何と呼ぶ。これは世紀の大発明だ。エルシー、おまえもその第一人者となって、後世まで語り継がれることだろう」
「語り継がれなくて結構です!」
師匠はあの後も
「それにだな、この研究で成果を出し、事業化せねば
そうなのです。この新技術を約束に、師匠は
「だからって……わたしたちを実験台にしないでくださいっ!」
「だが、願ったりかなったりだろう。ほら、エルマもあんなに喜んでいることだし」
師匠が顎で指した先には、上機嫌で鼻歌交じりに念入りにベッドメイキングしているエルマさんの姿があります。その無邪気さは、お花畑で駆けまわる童女さながらで――管さえついていなければ――微笑ましくもあります。
「まぁ、というわけで、諸君、我が家の明るい未来のために励んでくれたまえ。お邪魔虫は退散することとしよう。あとはお若いおふたりで、な」
わたしの胡乱な眼つきがお部屋のドアが閉じられるのを見送るが早いか、いつの間にか後ろに立っていたエルマさんがお腹に腕をまわしてきました。
「まぁまぁ、いいじゃないですか。これも人類の繁栄のためですし」
心地よく反発する豊満な胸を枕に、エルマさんを振り仰ぎます。
「でもぉ……」
「エルシーは、ほしくないんですか? エルマたちの、あかちゃん」
「……それは――あの、ほしい、です」
「じゃあ……つくりましょうか」
「……はい、おねえちゃん」
ふたり分の重みを支えて、ベッドが軋みを上げます。血行も良くするらしい師匠印の排卵誘発剤を飲まされていたからか、突っつき合うようなキスだけで、身体がぽかぽか、頭がくらくらしてきます。酩酊とは、たぶん今のわたしのような状態なのでしょう。
まもなくして、太ももが汗ばんできた頃です。
「エルシー、ちょっと目を閉じていてくださいな」
「……?」
怪訝に思いながらも、居住まいを正して向き直り、言われたとおりにしていると、左手を持ち上げられて――。
「はい、いいですよ」
「……これって――」
「かなり遅くなっちゃいましたけど、誕生日プレゼントです」
「……っ」
感激のあまりに二の句が継げないでいると、聖母は、
「エルシー、エルマの、妹じゃなくて、お嫁さんになってもらえますか」
そう、おっしゃられました。
わたしの左手、甲のその外側から二番目、薬指にはめられていたのは、慎ましやかな白金の煌めき。
その指輪、その証、その関係。
家族――我が家。微妙に引っかかっていた師匠の言いまわしが再生されます。師匠にはあらかじめ、告げられていたのでしょう。まったく、憎いひとです。師匠も、エルマさんも。
目の端に浮かぶ水滴を拭きとって、わたしのきもちを伝えます。
「――はい、喜んで。……だんなさま」
「ぁ、う……、改めてそう言われると、なんだか複雑な心境になりますね……嬉しいですけども、エルマも、お嫁さんがよかったです……」
「これが上手くいったら、おねえちゃんも、お嫁さんにしてあげます」
「……ふふ、きっとですよ」
「めおとだから、当然です」
くすくすと笑いあって、再び顔を寄せあいます。膝立ちになって肉感的なエルマさんを逃さぬようにと抱擁し、薄い尻っぺたをもにゅもにゅと揉まれながら、おへそに熱くたぎった管が当たるのを感じました。
エルマさんの欲望の塊であるそれから、性欲が熱量に変換されて伝達してきたかのように、おへその内側がひとりでにきもちよく熱を孕みます。
「んふ……、エルシーのおなか……、すべすべして、きもちいいです……」
先走りの改良型
それとわかるほど呼吸をすさませ、どろどろと秘部からの粘液が這う脚をひきつらせていると、見透かしたように、エルマさんが耳朶を甘噛みしながら耳打ちしてきました。
「……ふふ、まだイっちゃだめですよ」
「ひぁうっ! へっ……、んうっ……、へっちゃらっ……、ですっ」
「そうですか? なら、いいんですけど」
意地悪く笑みをこぼして、耳の裏や首筋を唇でなぞりながら、指先で背や足の付け根を引っかいていきます。その愛撫に引きつけられるように、腹腔にとどまっていた性感と意識が、皮膚のあちらこちらで弾けて芽吹き、全身に眠っていた性感帯の存在を確かめさせていきました。
「ふぅっ、くふっ、んんっ……! おねえ、ちゃ……っ」
身体全体が切なさに覆われ、堪え切れずに鼻にかかった甘い声が漏れてしまいました。エルマさんは黙したままわたしを弄びつづけ、たおやかに、そして確実に絶頂への扉をこじ開けていきます。
「ひゃめっ……、っく、……おねっ……ちゃっ、いきっ、そ……、です……」
しかし、その甘すぎて優しすぎる高みに連れて行かれる直前で、わたしは力を振り絞ってエルマさんを突き飛ばします。
「あうっ!? ど、どうしたんですか」
とすっ、とエルマさんが――本当はどすっ、くらいの衝撃だったような気もしますが――ベッドに仰向けになります。びっくりして目を白黒させるエルマさんに、肩を上下させながらまたがりました。
「きょっ、今日は……、わたしが、してあげ、ます」
愛するひと同じ方法で、初めてのときぐらいは、わたしをちゃんと感じていてほしかったから。ですが、その思いは――。
「エ、エルマはやっぱり、重かったですか……」
しょんぼりしたようなお顔で、なんだかよくわからない方向に曲解されてしまいます。
「そっ、そんなことないです! ただ、たまには、わたしがきもちよくしてあげたくって……」
取り繕うように、そして続きを許さないように、硬直した管に手を添え、すっかりしとどに潤い、ゆるみきった穴に押し当てます。大きすぎると報告しておいたのに管はむしろ、わずかに太く長くなっている気がして師匠をひっぱたきたくていてもたってもいられなくなりでしたが、背に腹は代えられません。
度胸と根性です、とこころの中で呟いて、重力に引かれるようにゆっくりとエルマさんを迎えていきます。
「あの、結構痛いので、無理しないように……」
「く、は、あ、ぁ……ぅ」
案じるエルマさんの声は、内部から股を引き裂くような巨大な圧迫感と質量、痛覚によって遮られていました。侵入してくる規格外の異物に激痛を覚えながらも、しかし、絶頂を求めて疼いていたわたしの粘膜は、その圧迫感の中から貪欲にも被虐的な快楽を見出しはじめていました。
「は――、あ――、あ――っ!」
ずるずるずると禍々しい管を飲み込むたびに、単なる熱感覚としか認識できないほどの刺激が下半身を襲い、思考を焼き尽くしながら、熱っぽい息を吐き出させます。そして管がわたしの未成熟な狭い体内を巻き込みながら拡張していき、とめどなく液を滴らせて待ちうける、開発されきった最奥を押し上げた瞬間。
「――っ! ――っ! ――っ!」
満たされるべきところを満たされたからでしょうか、あるいは愛するひととひとつになったことで感情が昂ぶりすぎていたからでしょうか、今まで経験したことのない鮮烈でいて重厚な最高の悦楽が突きあげてきました。目を見開いて呼吸もままならず残響に打ち震えていると、痙攣によって身体を支えきれなくなり、腰が一気に落ちてしまいます。
「かふ――っ!?」
管はわたしの中に収まりきらなかったため、瘤状の尖端とわたしの子宮口に全体重がかかります。その圧力は、エルマさんの甘いマシュマロに上半身を委ねるまで、わたしをエクスタシーに押し上げ続けていました。
熱い体液を結合部からしぶきながら手足を引きつらせているわたしを抱きとめ、エルマさんがきょとんとします。
「あ、れ……エルシー? もしかして……」
「ぃ……、イって……、にゃい……れふ」
問われもしてないのに呂律のまわらない口調で否定するわたしに対し、エルマさんの瞳は嗜虐的な輝きに彩られます。
「でも、エルシーのなか、すっごく締め付けてきてますけど」
「イって……ないっ、れす……っ」
「痛みは、ありますか?」
「いたく……ない、れす……」
「じゃあ、頑張って、エルマもきもちよくしてください」
「――っ!? ふぁ、ふぁい……」
はしたない子だと思われたくなくて嘘をついたのが裏目に出たようです。緊張の抜け切った足腰を強引に持ち上げ、下ろすも、
「ふっ! んふっ! あっ! あっ! あっ! はああっ!」
一度達して敏感になり増幅された淫靡な灼熱が、わたしから口を閉じる力さえ奪っていき、エルマさんのぷにぷにしたお腹がわたしのこぼした唾液でべとべとになっていきます。涙腺からも水分が漏れだしていき、視界がぼやけはじめます。
やがてすぐにまた摩擦に負けて絶頂を極め、はしたなく穴で管を絞りあげながら突っ伏してしまいました。
「どうしたんですか? 動きが止まってますよ?」
「ふーっ……、ふーっ、ふーっ……、んくっ……、きゅ、きゅうけい……れふ……ぃ、いって……にゃい、れふっ……」
「もう、本当にこらえ性のない子なんですから。仕方ないですね……」
「……ふぇえっ!?」
唐突に、むくりとエルマさんが身体を起こしました。身を委ねるものを失ったわたしは、自然と体奥に尖端が押し込まれるかたちとなり――。
「ぉ――っ! ぅ――っ!」
エルマさんの甘い芳香を放つ乳房に鼻面を埋めながら、懲りずにまたイってしまいます。そればかりか、エルマさんはわたしのお尻を掴んで上下に揺り動かし、蠕動が止まない膣を管で撹拌してきたのです。
「ぁ……、ぉ……、ぉ……、ぅ……」
波状的に打ちよせる淫蕩な頂きに、エルマさんの首に腕をまわしてしがみつくことしかできず、頭をかくかくさせてなかば意識を飛ばしていると、お腹の中で暴れまわっていた管がひときわ硬度を増して膨張し、不規則に振動しはじめました。本能的にそれが、
そしてびゅくびゅくと子宮の入り口に叩きつけられる熱い粘液に、今はっきりと、わたしはおねえちゃんのものになったのだと実感させられました。
そのままお尻を揉みほぐされながら管で奥を圧迫されて、絶頂してはその強張りを弛緩させられまた絶頂するのを繰り返し、おねえちゃんの子種を受け止め続けました。
日中のユニオンロッジの喧騒は、
窓口の奥では
そんなとびきり煩雑なただ中にあの子を連れてくるわけにもいきませんでしたから、列に並びながらわたしは終始、気もそぞろで、引き返す口実を見つけられないか抱えた封筒の中身を何度もチェックしていました。
「そこまで気にしなくても、お師匠さまは仮にも一児の母なんですよ。子守りならちゃんとできますって――たぶんですけど」
エルマさんはわたしの不安を汲み取ったのか、握っていた手に慰めるようにぎゅっと力を込めました。
「こんなに離れたのは初めてですから……それに、怪しげな薬の実験台にされてないか心配で心配で――」
「あー……、そう言われるとなんだかエルマも落ち着かなくなってきました……」
「こんなことなら師匠を使いに出せばよかったです……」
「そういうわけにはいきません。こんな大任、あのひとには任せられません。お師匠さまなら、この荷物のどれひとつ落とさずにはロッジにたどり着けませんから」
おどけたように言って、エルマさんは肩に担いだつぎはぎだらけの背嚢を抱え直します。
「エルシーも、おかあさんの顔になってきましたね」
「おかあさんだから、当然です」
そうしてくすくすと笑いあっていると、
「次の方」
窓口の
「ご用件は」
わたしは小脇に抱えていた封筒を差し出して、
「出生届を出しに来ました。それと――」
エルマさんが背嚢の中から大層重そうな布包みをよっこらしょとカウンターに、その上に三枚分の評価タブレットを、そして新事業発足申請書を重ね、
「生命製法、売ります」
「H code5:Hermaphroditos's ex tend
ヘルマプロディートス流拡張的行為及び献身」