『私だって、一応は幼馴染なのにどこで距離が出来ちゃったのだろう』
幼馴染以上の気持ちを優に抱いていた果南はある行動に出て──。
一日目
「おはよう、果南」
「あれっ? 優、どうしたの?」
果南が毎朝の日課としていつもと同じように階段を駆け上っていくと、誰もいないと思っていた場所に見知った顔がおり。
乱れた呼吸を歩いて整えながら見知った顔──優へと近づいて声をかける。
「これ、あげるよ」
「え、うん。ありがとう……じゃなくて」
自然な動作で飲み物を手渡してくる優に果南も素直に受け取り、質問に答えてもらっていないことに気づく。
「急にランニングなんてどうしたの? 運動不足?」
服の上からでは少し分かりにくいが、優の身体はそれなりに締まっており、そうじゃないと理解しつつも果南は冗談交じりにそう口にする。
「んー、半分はそんな感じかな?」
「何か運動でも始めたの?」
間違ってないことに少しの驚きと、何を始めたのか興味を持ち。
果南が聞けば、優は少し答えにくそうにしながら口を開く。
「……千歌がスクールアイドルを始めるって言うからさ」
「……そう」
少し気不味い空気になるが、元はと言えば自分のせいだと果南は切り替える。
「まっ、頑張りなよ」
「うん。果南もね」
翌日。
「や、おはよう」
「なんでまた?」
「取り敢えずこれ」
「うん、ありがと」
階段を駆け上っていくと、昨日と同じように優がおり、手渡された飲み物を受け取る。
結局、千歌がスクールアイドルを始めるって事しか聞いておらず、優が何故走っているのか教えてもらってないなと今更ながらに思い、それを尋ねれば。
「ここ、体力作りで走らせようかなって。ついでに自分も習慣付けしようかと」
「そういう事」
そのまま暫く他愛もない話をし、優と分かれた果南は機嫌が良かった。
幼馴染である優とは昔よく遊んでいたが、徐々にそれも減っていき、見かけても挨拶をするぐらいとなっていたのだが。
昨日もそうであったが、あの頃と変わる事なく接してくれたことが思いのほか嬉しく。
「ふふっ」
思わず笑みが溢れてしまうほどであった。
数日が経ち、あれから毎日のように話をしていた果南だが。
「とーちゃくっ! 優くん飲み物ちょーだい!」
「お疲れ、曜」
体力作りを千歌たちが始めたことでその時間は短くなり、水泳をやっていて運動ができる曜が日に日に速くなってきたため、話す時間はさらに無くなっていた。
楽しそうに二人が話しているのを見ていられず、果南は声をかけてその場を後にする。
曜も幼馴染であるのだが、同い年だからなのか優と学校が別になってもよく一緒にいるところを見かけていた。
ただ年が一つ違うだけでこんなにも差が出るのかと、果南は胸が少し痛くなる。
幼馴染は恋愛感情に発展しにくいだなんて話はよくあるが、よくハグをしていた果南は早くから男女の違いを意識し、いつからか優のことを異性として見ていた。
それは優と距離ができて顕著になり、見かけるたび男として意識するようになってしまい。
またあの頃と変わりなく話すようになった今だとハグをしても大丈夫だろうかと思う反面、これで距離が出来たらと臆病になっていた。
そんなある日、いつもと同じように階段を駆け上っていき、今日はどんな話をしようかと口元を緩めていたが。
「あれ?」
優の荷物が置いてあるものの、姿は見えない。
お手洗いにでも行っているのかとも考えた時、果南は微かに声が聞こえた気がした。
嫌な予感を抱きつつ、息を潜め音を立てないように奥へと進んでいき、物陰から奥をそっと覗き見れば。
「んっ、優くんもっと舌出して」
「もう、んっ、果南来るから」
「もう少しだけ、んちゅ」
そこでは優と曜が抱きしめあい、キスをしていた。
嫌な予感が当たってしまい、しばし呆然としていた果南だが。
バレる前に立ち去り、階段を少し降りたとこにあるちょっとした広場のイスへ腰掛ける。
先ほど見た光景が忘れられず胸が痛み、涙で視界がにじむも深呼吸をして気持ちをなんとか落ち着かせ。
袖で目元を拭って再び階段を駆け上っていく。
今度はきちんと二人いたことに内心ホッとしつつ、今来たとばかりに声をかける。
「おはよ、優、曜」
「おはヨーソロー! 果南ちゃん!」
「おはよう、果南。今日は少し遅かったね」
「途中で目にゴミがはいってさ。そこの広場で少し休憩してたんだ」
そのまま他愛もない話をして果南が知ったのは、元々今日は練習が休みの日であり、走るのは優だけの予定だったのだが。
それを知った曜が急遽参加することになったらしい。
「あっ! もうこんな時間っ?! 私、千歌ちゃんと梨子ちゃんと約束してることあるから先に帰るね!」
不意に時間を見て慌て始めた曜は急いで荷物をまとめ、走り去っていった。
その後ろ姿を苦笑いで見送っていた優も帰るか、と一言呟き、荷物をまとめていく。
「ねえ、優」
「ん? どうした?」
胸の痛みが大きくなりすぎて我慢ができなくなった果南に一つの案が思い浮かぶ。
だがそれは悪魔の囁きであり、今の関係を壊しかねないものであったが。
「──ハグ、しよっ?」
それでも果南は、その誘惑に身を任せてしまった。
昨日、投稿し忘れました…
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