「優さん、少し相談したいことがありますの」
そう言ってダイヤが優を呼び出したのは、トイレでの事があってから三日後のことだ。
あれから二人の行為を覗き見る、聞くことがなくなったダイヤは自慰を変わらず続けながらも少しずつ冷静になっていった。
もしかしたらまた、学校のどこかで見つからないように致しているのではないか。
そう考えた時、冷静になったダイヤは性欲よりも理性が勝った。
「(ふ、不健全ですわ!)」
少し前のダイヤでは付き合うことすら許さなかったであろう。
だがAqoursのみんなと過ごしていくうちに多少なり心の余裕ができたため、交際、そしてきちんとした場所での行為は認めようと決めたのである。
「それでダイヤ。相談って?」
本日の練習を終え、二人残った部室で向かい合い立っている。
普段と変わらない優と違い、いざ対面して話そうとなると恥ずかしさが出てきて口ごもるダイヤ。
中々相談を口にしないダイヤに対し、優は特に急かすこともなくお茶の用意をして間を潰す。
用意してもらったお茶にお礼を口にし、揺らめく湯気を暫く見ていたダイヤはようやく覚悟を決め。
「性行為をするな、とはいいません。ですが、学校のトイレなどでするのはおやめなさい」
ぼかしたりせず、どストレートに切り込んできた。
優も何を言われたのかすぐに理解できず、固まっている。
「それと、いくらルビィがピルを飲んでいるからといっても避妊は確実じゃないのですから、それも今後気をつけなさい」
「え、いや……え?」
「え? ではありません」
まだ驚きから思考が安定していない優へ畳み掛けるように続けていく。
「これはマナーの問題ですわ。まだお互いに高校生なのですから──」
「ダイヤ、あそこのトイレに居たの?」
「まだ話の途中ですのに……。私だってトイレに行きますわ。人間ですもの」
「バレないよう人が来ないところを選んだのに、ダイヤはなんであそこを……?」
「それは……っ」
しかし思いがけない返しにダイヤの動きが止まる。
あの日、ダイヤが使ったトイレは普段人が使わない場所であった。
それはどこか後ろめたいこと、気持ちがあったため人気のないところを使いたかったからであるが、それを口にするわけにはいかない。
「べ、別に私がどこのトイレを使おうが自由ですわ!」
「えっと……すみません?」
どう返したらいいか困ったダイヤは逆ギレで誤魔化すことにした。
ただ聞いただけなのに、と不思議そうにしながらも優は取り敢えず謝罪を口にする。
「男が苦手なルビィも優さんに心を開いているようですし。先ほども言ったとおりするなとはいいませんが、清い交際を心がけてくださいまし」
言いたいことを言い切ったダイヤは少し時間が経ってぬるくなったお茶を一気に飲み干す。
緊張で喉が渇いていたことに今更気づき、ふっと息を漏らした。
「あの、ダイヤ」
「どうかしましたか?」
「別に僕、ルビィと付き合っているわけじゃないよ」
「…………もう一度、言っていただけませんか?」
「ルビィと付き合ってないよ」
「──あなたっ!?」
聞き間違いではないと分かったダイヤは優の襟元へと掴みかかり、自身の方へと引き寄せて睨みつける。
「く、くび、しまって……」
「まさかそのような方だとは思いませんでしたわ。今すぐに私の、私たちの前から消えてください!」
完全に決まってそれどころではない優は緩めるようダイヤの腕を軽く叩くしか出来ないでいた。
多少冷静な部分を取り戻したダイヤは手を離すが、目は鋭く優を睨みつけていた。
「けほっ……ん、けほっ」
解放された優は咳き込み、落ち着くためお茶を飲み。
ほっと息を漏らし、違和感が残るのか首をさすりながらダイヤへと向き直った優は困っような笑みを浮かべて口を開く。
「マネージャーの方は困るけど……ルビィは僕としても少し思うところがあってさ」
「……何が言いたいんですの」
「今の関係って、僕からじゃなくてルビィから言い出したことなんだよね」
「そんな嘘で私は誤魔化されませんわよ」
「トイレでの事を知ってるなら分かってるんじゃない? ルビィから連れ込んだ事」
「…………」
そう言われ、あの日のことを思い返せば確かにルビィが連れ込み、誘っていた。
が、純粋無垢な妹がまさかそんな……と、ダイヤのなかでは認めがたい事だったが、実際にその場面を聞いてしまっている。
「……本当に、ルビィからですの?」
「本人に聞いてみればいいよ」
多少なりとも人を見る目はあると思っているダイヤは、優が嘘をついているように思えなかった。
必然的にルビィがそのような事をしているとなってしまうが、それはそれでダイヤにとって受け入れがたい事である。
「……ルビィからの誘いを断ることは出来ませんの?」
「誘ってるのは僕からじゃないとはいえクズなこと言うけど、色々と溜まっちゃうからさ」
何が溜まるのか、一瞬理解できなかったダイヤだが。
視線が優の下半身へと向かい、言っている意味に気づいて顔を真っ赤にさせ、体ごとそっぽを向く。
「な、何をおっしゃってますの!」
「素直に答えただけなのに」
互いに何も話さなくなり、時折優が咳き込んでお茶を飲む音だけが響き渡る。
それを横目にチラチラと見ていたダイヤは再び優へと向き直り、頭を下げる。
「早とちりで、その……優さんに申し訳ない事をしてしまいましたわ」
「頭あげてよ。結局、してることには変わりないんだからさ」
「その事なのですが……、その……」
「ん?」
頭をあげたダイヤの顔は真っ赤になっており、視線を優に向けては逸らすを繰り返し。
何かを言おうと口を開いては閉じ、胸に手を当てながら深呼吸をして落ち着こうとしている。
「わ、私が、優さんの……その、溜まっているものをどうにかすれば、ルビィのは断って……いただけますの?」
覚悟を決めて口にしたセリフを聞いて優はきょとんとしていたが、その意味を理解して頭からつま先までを眺める。
「ダイヤ、言ってる意味分かってる?」
「ええ、分かっていますわ」
「知っての通り僕、だいぶクズだよ?」
「……そのようですわね」
今から楽しみだ。とでもいうように笑みを浮かべる優を見て、ダイヤはその身を一度震わせる。
果たしてそれはこれから来るであろう未来にどのような感情を持ってのことなのだろうか。
ダイヤへと近づいた優は頰へと手を伸ばし、親指で撫でるように指を動かす。
それを擽ったそうにしながらもダイヤは大人しく受け入れていた。
「きちんと、約束は守っていただきますわよ」
「大丈夫。ダイヤとしている間はルビィとやらないよ」
「それならいいんです──んむっ」
話している途中だというのに雰囲気も何もなく、あっさりとダイヤのファーストキスは奪われた。
名前は使い回しですが、性格はだいぶ違う感じです
既に堕ちてる気がするのは気のせいです
話を一つにまとめるか、まとめないか(まとめた場合、章タイトルに現在のタイトルが入ります
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